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ニャンコと私と異世界と  作者: たちばな樹
第一部
10/85

10 ニャンコと振出しと追求と奸計と


「私の名前は、遠野リラと言います」

私の素性を話す事になった。



遠野が上手く言えず皆がトゥーノ?トォーゥノ?と発音確認している。



異世界転移は流石に話せないので、それ以外を話した。



「簡単に信じられる訳がない」

バーマンは嘘言うな。と言う顔をしている。セシルもシーニアも驚いたまま黙っている。ドウェルとディルムンは相変わらず無表情だ。


「猫を助け木から落ち、気が付いたら猫になって、ここに居た。なかなか理解の難しい状況ですね?」

( 魔術師のシャルトにも難しいか。そりゃそうよね。私には更に難しいです )


私は困り顔で溜め息を吐くもこのよく分からない状況の打開策は見つからない。



「リラはどこの国の人なんだい?」

シーニアは私を安心させる様に優しく話し掛けてくれる。



「ここの大陸ではありません。日本と言う海に囲まれた島国です」

望郷の想いを伏せるかの様に目を伏せる。余計な事を思い出さない様に…。



「聞かせてもらえるか?」



私はブランブルの質問に当たり障りなく答えた。


海に囲まれた島国で、内陸は山が多く自然豊かな国だと。識字率も高く、学校があり読み書き計算は国民全員普通にできる事に目を見開いて驚かれる。戦争もなく平和なため夜中女性一人で歩ける事を言えば、治安の良さに更に驚愕された。



「そう言えばリラはいくつなの?」

セレンはふと聞いてきた。

「23です」

サラリと答えれば、何とも気まずい雰囲気が流れる。

「十代だと思ってたわ……」

セレンは唖然とし、シャルトは私をシッカリ見つめ、シーニアに至っては手を口に当て顔を横に向けていた。


( まぁ猫とはいえ一緒に寝てたわけだし…って、そうよね。うん、恥ずかしいわよね。うん、メチャメチャハズカシイィ!!! )

今更自分の思考がパニックを起す。



「リラが島国から海を越えこの国に来たと言う事は…………転移したと言う事ですかね…………」


そう言うシャルトの顔は深刻そうに瞳を翳らせた。





隊長達はまだ仕事もあり、一旦解散すると言うブランブルの一言で終わった。


セレンには、また引き続きお世話になる様でよろしくお願いします。気を遣わせて申し訳ないです。と伝え私は早々に宿舎に戻る事になった。



宿舎にはシャルトが送ってくれ、道すがら魔力の基礎などについて軽く説明してくれた。

シャルトは私の魔力が不安定だからとピアスを渡してくれた。

「魔力安定させる為にも外さない様にして下さいね」

そう言うとシャルトは戻っていった。




**********



結果的に私の間諜容疑は解けた。


ただ身元不明な不審人物である事には変わらず身柄は騎士団預かりのままとなった。疑いは晴れたが獣化の問題は残ったため監視はするそうだ。

また狙われない様にとの事らしい。



私には何故か仕事が与えられている。

私は経理助手、と言う扱いらしい。

仕事をするにあたり仕事着を支給された。

事務所用作業着なため、ジャケットとパンツだ。流石に騎士団内をワンピースでウロウロするのも不味いだろうとの判断だ。

前と変わらない。と言われても前の記憶が無いので分かりません。と言うとセレンに生活様式や施設案内、ここのルールなどを一から教えて貰う事になった。


おまけに給金も貰えた。

仕事をして無いのに何故?支度金?前払い?とブランブルに聞いたら、記憶の無い時の仕事分の給金だ。と渡された。


「仕事したんだから受け取るのは当然だろ。貰っとけ」

私はお礼を言って貰ったが、記憶の無い時の仕事の給金を貰うのは何だか微妙な気分だった。



6番隊で計算仕事するのは変わらないらしいのですが、どうして?と思うも決定の様です。


ディルムンには私が猫の時散々威嚇され殺気に晒され怖い思いをしている為あまり近寄りたく無いのだが…………。

経緯をブランブルから聞きましたが、理不尽です。

それでも仕事は無いよりマシなので私は黙って計算します。仕事無しの居候では居心地が悪いので。



私は朝セレンと食事後ディルムンの所で計算をし、休憩時間は休憩室でシーニア、セレン達とお喋りをする。


前と変わらないね。そう言われても私には前の記憶が無いので返事に困る。

シーニアはお菓子を差し入れてくれたりお喋りも楽しく気晴らししてくれる事にありがたい。“ さん ”付けで呼んでいると、無しで良いから名前だけで。とセレンやシーニアに言われた。


ドウェルやディルムンもたまに休憩室に来るが相変わらず無口無表情だ。



たまに日本の事も聞かれるから気を付けながら話しをする。近代科学など理解出来ないだろうし私にも説明が難しいから避けている。

だから異世界転移の話はしなかったのだ。



どんな町に住んでいたか聞かれれば、ここと変わらない普通の町、ただ地震が多いから木造が主流で木造の利点や耐震を話したり、その地震について聞かれ、地質構造など話したり、たわいの無い会話をする。


ただ、どんな王政でそこまで高い治安を維持出来るか?と聞かれて困った。

流石騎士。目の付け所が違います。


「うーん。主君は居るけど主君は象徴としての存在で、今では国民の投票で国の代表を決めているの。国の代表と政治の指導者は別なの。権力の分散の為に三権分立と言って、国家、行政、法律を分けたりしているかな?」

キチンとした説明は面倒なので分かりやすい言葉に置き換えて言う。

「防衛に対しても、国を守る組織と国内警備の組織が別で、警備の人は町の中に幾つか詰め所を置いて警備してるよ」

( 自衛隊について説明が面倒なので以下略。お巡りさんの交番も詰め所に言い換えたから伝わるかな? )


皆真剣に聞いていた。



( 余り異文化の情報を入れ過ぎると文化侵略しちゃうから良く無いよね…… )


情報の線引きが難しいと感じる私だった。




**********





「彼女の持つ知識や情報は計り知れ無いですね」


ドウェルの意見をブランブルは静かに聞いている。


「様子を観ていれば言葉を選びながら話してるのが分かります。まだ何か隠しているのが分かりますね」


政治、軍備、建築、地質など、ここの平民では普通知らない知識だ。


「知っている知識も多岐に渡り質問には大半答えが返ってくる事に驚きます」


ブランブルから、ドウェル他にも聞き出せるか?との質問にドウェルは頭を横に振り、難しい。と答えた。


「彼女がまだ我々に対し警戒している以上難しいでしょうね」


会話の中で引き出すのが精々な今、追求しても簡単に彼女が答えるとは思えない。

「獣化の事もある。猫になって逃げられるのも面倒だ。時間は掛かるが仕方ない。暫くは待つか」



「で、事件の進展は如何だ?」

リラ誘拐の状況をドウェルは報告した。



魔術師のシャルトが騎士団に派遣され、シャルトが獣化術を調べ始めた事で騎士団そのものに目を付けられた。

次に、同時期に出現した不審人物のリラにも目を付けた。

シャルトは将軍の口添えで騎士団に派遣させられ、そのシャルトが付き纏うリラを重要視し狙った様だ。そして合同訓練の隙を狙われ攫われた。

だが犯人からは黒幕に辿り着く証拠は上げられなかった。


「リラを直接攫った女の足取りは?」

「女の身元も足取りも不明。捕らえた中にも居ません。その後を誰も知らない様なので消されたか、よっぽどの手練れかと」

「お粗末な対応だからな、前者だろう」


ブランブルは憮然と腕を組み椅子に身を預ける。

「トカゲの尻尾切りか。なかなか掴ませないな」


ただ分かった事がひとつ。獣化術の事で動きがあるなら相手は限られている。

「宰相派の見張りを増やせ。ダクティル将軍には俺から報告しておく」



獣化術は上層部ではタブーな話題だ。

将軍から大魔術師の遺された書籍や手紙などの捜査がブランブル団長とバーマン、ドウェルのみに命令が来ている。

魔術師団は研究もあるだろうから知っている者はそれなりに居るだろう。

ただ何処まで宰相派が食い込んでいるかが問題だ。





全ては大魔術師リアン・シュベーフェルから始まった。



この世界の魔術はまだ過渡期だ。

ワープもアイテムボックスもまだ開発されていない魔術が発展しきってない世界。

だから術も簡単に使えず、無詠唱もまだ無い。

魔剣士などもいない。

術師は術師。

剣士は剣士なのだ。


そのため、まだ生物転移術であるワープは存在しない。

生き物は転移術に耐えられない。

それが今時点での研究の結果だ。


物質転移はあるが小物のみで最大50cm四方程のサイズが限度だ。

転移では無いが召喚など、精霊召喚、霊獣召喚とあるが成功例は少ない様だ。





リアン・シュベーフェルは生物転移術を成功させたらしい。


獣化術を元に生物転移術を成功させたらしい。しかしその生物転移術で忽然と消えたらしい。だから全て、“らしい” なのだ。

一切資料は残されていない。

故にこの“らしい”は極秘なのだ。


親しき者への手紙のみに記された微かな証拠と軌跡。

彼女の軌跡を辿る為、皆躍起になっている。



新魔術式を開発、発見すると他国との取引にも使われる。


だいたいが生活使用の日常魔術だったりするが、簡単な術ですら特許権や使用料などで莫大な金額が動く。



大魔術士が居なくなって約百年。

生物転移術に辿り着くため、獣化術が必要なのだ。


2016.12.5加筆修正

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