1 ニャンコと猫と異世界と
小説書くのが初めてです。
稚拙な文章にお付き合い頂けたら幸いです。
吾輩は猫である。
名前はエレである。
ーーいや。
本当は猫ではない。
名前もエレではない。
本当の名前は 遠野 リラ。
日本生まれの23歳の社会人。
日々画面に向かい残業し締め切りに追われ……
大変だった毎日が懐かしい。
あぁ過去形が悲しい…………。
うん。日課にかかろう。
『ニャ〜オ』
ベッドでまだ夢の中の住人に朝を知らせる。
スリスリと頭に身体を寄せ肉球で頬をフニフニする。
( 私が肉球フニフニしたいわー。自分でやっても無意味だわ。つまらないー!)
住人はモゾモゾと寝ぼけ眼で起き上がった。
「ありがとうエレ。今日は合同だわー。冬の日の出前の早起きはツライわねー」
寝起きの割りにシッカリとした動きでサッサと着替える住人。
「エレ、食堂に行くわよー」
『ニャウン』
( その言葉を待ってました。早起きでお腹すいた〜 )
私は抱っこをしてもらい食堂へ向かった。
私はいつもどおりに小皿に盛られた美味しいご飯を食べる。鳥のささみだ。味は薄いけど。
住人は沢山いる。
私は目覚まし代りに部屋に連れて行かれる事がある。朝ご飯の催促に起こされるから目覚ましに丁度良いと思われているらしい。
( 違うし。ちゃんと分かって起こしてるし。私に感謝しなさいよ〜だ )
今日の住人は第1騎士団2番隊警備部隊隊長セレンさん。淡黄色の髪で黄緑の瞳、背が高く毅然としたナイスバディな美人さんだ。
周りで住人の同僚達が一緒に食事をしている。
「今日はダリいなぁ」
茶髪を右分けにして寝癖を付けたまま眠そうに食べているのは第1騎士団4番隊騎兵補給部隊隊長シーニア。
私を拾ってくれた人だ。シーニアは整った顔付きにタレ目気味の目で瑠璃色の瞳の美丈夫だ。
「お前は補給部隊なんだから楽だろ? ウチはアッチと足並みそろえるんだ。毎回面倒でたまらん」
チョット偉そうに愚痴ってるのが貴族意識高っ!な第1騎士団1番隊近衛騎兵部隊隊長バーマン。葡萄色の髪に錫色の瞳で整ってるが厳しい顔付きで偉そうにしている。
あと2人居るが黙々と食べている。
体格の良い鶯色の髪でツンツンな短髪の強面三白眼なおっさん、第1騎士団5番隊保安部隊隊長ドウェル。
もう一人も体格は良いが目付きが最悪な秘色色の髪で深緑色の瞳のおっさん第1騎士団6番隊外部部隊隊長ディルムン。
「早く食べて準備しろよ」
のしのし歩いて来るのは第1騎士団団長ブランブル。山吹色の髪に栗色の瞳の勇ましい風貌のシブいおっさんだ。
最初にここに来た時は、騎士だの貴族だの王族だとか耳に入り、中世位の時代かと思ってたが……。
「魔術師と息を合わせるのも戦術のうちだ。身体で覚えろ」
ブランブル団長に言われれば仕方ないとばかりに皆食事を進める。
( うん。魔術師だって。タイムスリップじゃなくてトリップよね… )
やっぱり……と思いながら私は食事をする。
( まあ、髪の色があり得ないからねぇ……… )
広い食堂を見回せば色々な髪色が見て取れる。
異世界だねぇ。と、誰にも聞かれない呟きを口にする。
『ウニャァァン』と。
*
ここは魔術師がいる世界みたい。
中世位の文明?で貴族、騎士、王族なんかいるみたい。
この国はイシェルワ国と言って、他にもガープラ国、レイニアン帝国があるらしい。他にも幾つかある様だが聞き取れなかった。
レイニアン帝国と仲が悪くて、ガープラ国は同盟国らしい。
将軍派と宰相派の下っ端同士が王宮で揉めて大変だったとか言ってた。
他にも第1騎士団、第2騎士団とか言ってたから騎士団も幾つかあるのかな?
猫の私が人に話を聞ける訳もなく、周りから聞こえてくる聞きかじりの情報しかない。
私がお世話になっている場所は第1騎士団。
目下の仕事は食料庫のネズミ捕りと目覚し代わり。
食料庫のネズミ番だけだったのが、お世話になっているシーニアを朝起こした事を聞いたセレンによって目覚しの仕事も増えた。
( あの日シーニアは酔ってたからねぇ。起こさなきゃ寝坊確定だったし )
だいたい酔っぱらった住人に確保され目覚しにされる。
( お酒臭くて嫌なのよね〜。ま、だいたいがシーニアなんだけどね )
酔ったシーニアは困る。服を脱いだまた寝るし。下着は付けてるけど目のやり場に困るから寝台の下に隠れなきゃならないし。シーニアを起こした後すぐ寝台の下に隠れるけど恥ずかしい事この上ない。
ネズミ捕りのハンティングはちょっと楽しい。
子供の頃、カゴの縁を棒で支えて斜めにして、紐で引くと捕獲できる罠でスズメを捕っていた。童心に戻り懐かしくて血が騒ぐ。
ネズミは食料庫の食料を食べて荒らすだけでなく糞尿でカビが生えたり衛生が悪くなるから退治すると喜ばれる。元々ネズミによる病気の感染などもあり猫がいることに厭わられる事はない。だから他にも何匹か猫を見かける。
ただネズミとはいえ息の根を止めるのが嫌なので、生きたまま持って行く。身体を噛んで運ぶのも抵抗あるからシッポを咥えて運ぶ。暴れているけど気にしない。
獲物を料理長に持って行くとイイ物が貰えるのも嬉しい。ネズミが生きてるから渡すと嫌な顔されるけどね。昨日はソーセージを貰った。
後はノンビリ昼寝三昧。
( ああ、毎日が過ぎていく……せめて人に戻りたい…… )
何故猫になったのか分からないから戻り方も分からない。
( どうしたら戻れるんだろ…………………… )
流れる雲を眺めながら私は途方に暮れ項垂れると耳と尻尾をしょんぼりと下げた。
*
青天の霹靂、寝耳に水。
猫の生活など誰が想像できる?
助けてくれたシーニアにニャウニャウ鳴いて前脚を床にタシタシ鳴らし意思を伝えてみたけど伝わらない。逆に抱き抱えられ撫でられモフられる。後脚でケリケリしても抵抗虚しくまたモフられる。ウニャゥウニャゥしか伝わらないのがもどかしい。
『ウニャーーーーーーーーー!ニャウーーーーーーーーーー!』
( だーかーらー触るなーーー!くすぐったいーーーーーーー! )
『ニャウ!ウニャウニャ!!』
( 人なの!猫じゃないの!! )
『フギャーーーーーーーーーーーーー!!!』
( 誰か分かる人呼んでーーーーーーー!!! )
心の叫びは伝わらない。
私の猫な日々は不自由無く過ごせている。
ご飯は普通に肉だったり魚だったり薄味だけど美味しい。基本自由にさせて貰っているからトイレは外でしている。恥ずかしいけどね!!!
周りを確認して確認して確認して確認して確認し確認して確認して用を済ませる。野生の本能か気配を察知するのが長けてきた様な気がする………。
『ニャウニャウニャーーーーーーーーーーーー!!!』
( 早く人に戻りたいーーーーーーーーーーー!!! )
*
今の私は外見は猫だが中身はちゃんと人だ。
元の人の姿は、髪は黒く前髪を右分けにして天パーでウエーブがかかり顎くらいの長さで、後ろ髪は腰近く伸ばし髪留めで結い上げていた。髪が長い方が天パーが暴れないから伸ばしていたが洗うのが面倒なのでそろそろ切りたかったが、今は猫だ。うん、戻ったら切ろう……。戻れたら…………。
身長は167cmある。ヒールを履くと電車の中で頭一つ出る長身だ。男性と目線が同じ位になる為、長身がコンプレックスになっているのだが、胸もFもあると身長と相まって人からの視線が痛いのでつい猫背になる。
顔はそれなり?目鼻立ちは普通だと思うが仕事で人と話しをすると大抵仕事後に、個人的にお食事でもどうですか?と誘われるのでそれなりだと思う。個人の携帯番号を裏書きされた名刺をもらうが扱いにいつも困る。
ただし誘いはやんわりと躱しお断りをする。女子高女子短卒には男性免疫皆無です。無理です。やんわり断るのが精々です。
それに男に振り回される友人達を見て恋愛に夢をみれなくなった……。おかげで友人達には、現実主義、夢が無い。と言われるが、普通に仕事して普通に生活する事が一番難しいと思う。と言えば呆れられる。うん。私自身、自分にも周りにも無頓着だと思う。ある意味諦めの境地な気分だ。
小さい頃から冷めた性格だったと思う。
両親は共働きで居らず、幼稚園の頃から玄関の鍵をかけていつもの所に鍵を隠し徒歩10分の幼稚園に一人で歩い通っていた訳だが、今なら育児放棄で通報物だろう。三人兄妹の末っ子なんて親からの扱いは雑な物だ。放置される事に慣れていると干渉されると逆にどうして良いか分からなくなる。
若干コミュ障気味だと思うが普通に社会人をやっていた。女子高女子短を経て就職し会社の広告を作る広報部に配属された。
広報部で広告を作り代理店に渡す。日夜締め切りに追われる中、職務怠慢の上司をせっついて原案をぶん取り原稿を仕上げる。
締め切りは守らない!が信条なのか?と言うくらい締め切りを守らない上司に締め切り突破で原案を仕上げ冷や汗をかき、どちらがクライアントなんだか分からなくなるくらい平身低頭で担当さんに原稿を渡す。印刷を始める輪転機を回してから原稿を渡す身にもなって欲しいもんだ。最近は上司に嘘の締め切りを伝え早々に仕上げる様になってから胃炎が少なくなってきた気がするが。
だが、上司の取り扱いに慣れた頃私に事件が起きた……。
◉登場人物覚え書き◉
◉黒猫エレ
ハワイ語、黒=エレ から。
◉遠野リラ 23歳 OL。167cm。
(リラ=薄紫色)
前髪、顎位の長さで天パーの為、ウエーブがかかっている。
後髪、腰位の長さ。長い髪の重さで天パーを抑えている。湿度が高いとウエーブが出て困る。
トレッキング、ボルダリングなどアウトドア派。 でも、基本ソロで動くのが好き。
女子高、女子短卒。共に合唱部。好きこそ物の上手なれ、で凄く上手い訳じゃない。そこそこ歌える程度。
基本は内気でネガティヴ思考気味。自分で出来る事には全力でするが、両親共働きで放置気味で育った為、諦めやすく、淡々と飄々とした性格。
◉騎士団◉
◉ブランブル・サルファー 197cm 53歳
第1騎士団団長。
山吹色の髪。栗色の瞳。
短か目の髪を後ろに流している。
勇ましい風貌のシブいおっさん。
ゴリマッチョ。
◉バーマン・アランブラ 185cm 32歳
第1騎士団1番隊近衛騎兵部隊隊長
ブドウ色の髪(葡萄色)、灰色の目 (錫色)
襟足程の長さの髪を額を出す様に上げている。
整ってるが厳しい顔付きで偉そうにしている。貴族意識が高く規律に煩い。
細マッチョ。
◉セレン・カスティール 177cm 27歳
第1騎士団2番隊警備部隊隊長
クリーム色の髪 マスカットグリーンの瞳 (薄黄緑色)
セミロングの髪をいつも結い上げ纏めている。
凛々しいく、優雅な立ち居振る舞いに目を引かれる美人。
ナイスバディ。
◉シーニア・スクワル 186cm 28歳
第1騎士団4番隊騎兵補給部隊隊長
茶髪 、 瑠璃色の瞳(青目)
前髪を右分けにしている襟足の短い髪
整った顔付きでタレ目気味の目。
マッチョ。
◉ドウェル・フラックス 185cm 35歳
第1騎士団5番隊保安部隊隊長
ウグイス色の髪(濃い黄土色)、紺色の瞳
ツンツンな短髪。
強面、厳つい骨格の三白眼。
ゴリゴリマッチョ。
◉ディルムン・ヴォルテール 190cm 31歳
第1騎士団6番隊外部部隊隊長
秘色色の髪 (薄い灰水色)、深緑の瞳
肩位の長さの髪を後ろに流している。
精悍で端整な顔付きだが眉間の皺と目付きの悪さから、氷の番犬の異名を持つ。
ガチマッチョ。
2016.12.4.誤字脱字改稿