第9話 説明と出発
新たにシンという名前を命名した俺にギルさんがギルドについて尋ねてくる。
「あの……、ギルドってなんですか?」
「そうか、ギルドのことも知らないのか。よし、その辺も踏まえて説明してやろう」
【ギルド】
ギルドとは冒険者たちの集り。
ギルドによって趣は異なり、気の合う者や目的の近い者同士が協力し一人では困難な依頼を達成していく。議会に認められた冒険者が設立でき生産職、支援職、戦闘職、回復職など内容は多岐にわたる。
【議会】
議会とはすべての街に存在し、秩序を正す番人。犯罪を犯した者を裁く権利を持っている。
王族との繋がりも深く、あらゆる面で人々との関係を持つ。
【難易度ランク】
難易度ランクとは、依頼の達成難易度を表わす指数。
SS・S・A・B・C・Dの六段階ありランクSSに近くなるほど依頼達成が困難である。
個人の星の数によって受けることのできるランクが変わっていく。
内訳は以下の通り。
ランクD・・・・おつかい、掃除、安全地帯への荷物の配達など雑務全般を任される。【星無し】
ランクC・・・・下級モンスターの討伐、調査。一般人の護衛、日常品の採取。【一ツ星】
ランクB・・・・中級モンスターの討伐、調査。要人の護衛、特産品の採取。【二ツ星】
ランクA・・・・上級モンスターの討伐、調査。重要人物の護衛、稀少品の採取。【三ツ星】
ランクS・・・・魔族、異生物の討伐、調査。国王級の護衛、国宝品の採取。【四ツ星】
ランクSS・・・未踏地の開拓。【五ツ星】
【星】
星とは個人の実力や功績を示す指標。
星無し・一ツ星・二ツ星・三ツ星・四ツ星・五ツ星の六段階に分けられる。
功績を残した者に議会から星が与えられる。
「とまぁ、こんな具合だ。分かったか?」
簡単に説明を終えたギルさんが確認をとってくる。
「はい、なんとか大丈夫です。ちなみにギルさんやニコルさんの星はいくつなんですか?」
「俺とニコルはともに【四ツ星】だ。ランクSまでの任務を受けられる」
そう言ったギルさんは懐に手を入れると一枚のカードを取り出した。
「これが冒険者の証である冒険者カードだ。星を与えられたものにはこのカードに星が刻まれる」
手渡されたカードはクレジットカードほどのサイズで表には黄金の盾を鳥の鉤爪が掴んでいるのようなマークが書かれており、裏を見ると星のマークが四つ刻印されている。
星の下には小さく十六桁の数字が羅列されていた。
「この星を増やすことが冒険者としてのステータスとなるんだがこれがなかなか大変でな。俺たちもようやくここまで来たという感じだ」
ギルさんの口ぶりからに【星】を増やすことはかなりの重労働なのだろう。
カードをギルさんに返すと面白いものを見せてくれた。
「このカードは個人専用で冒険者の証明にもなる。見てろ」
すると先ほどまでカードの裏面に描かれていた星の模様がじんわりと薄くなっていき、代わりに文字が浮かび上がってきた。
そこには【レイハーネフ・L・ギルフィード】とギルドの名前である【GGG】と記されていた。
「すごい! どうやったんですか?」
「この世界には【魔力】というものがあってな。魔力は一つとして同じものは無い。このカードは最初に魔力を流し込んだものの魔力を記憶する特殊な素材で作られている。それ以降、本人以外が魔力を流しても文字は浮かび上がらない仕組みだ。一度、魔力を流せば十分くらいはこのままだ」
魔力って便利だな。指紋のようなものなのか?
「ギルさん。冒険者って俺でもなれるんですか?」
「ああ、議会に書類を提出すれば誰でも冒険者になることができる。だが、実力が伴わなければ犬死だがな。シンは冒険者になりたいのか?」
「本当は板前として自分の店を持てればいいんですが、まずはこの世界のことを知らないとどうしようもないので……。それにお二人のように強くなって恩返しがしたいです!」
「そうか。なら冒険者になるのが手っ取り早いな」
と、そこまで話したところで食事の後片付けを終えたニコルさんも話に加わる。
「それなら街に行って冒険者の登録をしないとね。けど街への道のりは分かるの? ここからでも最低二日はかかるよ?」
「……わかりません」
転生後、目覚めた地がこの場所なのだ。道のりどころかここ以外何も知らない。
「なら僕たちと一緒に行動しなよ! 僕たちもちょうど任務を終えて街に帰る途中だったんだ。一緒にいればモンスターに襲われても心配無いし、食事に困ることもない。うん! そうしなよ! これも何かの縁ってことで! ギルも構わないよね?」
「ああ」
「そうして頂けると有難いです。足手まといにしかなりませんが宜しくお願いします」
願ってもないニコルさんからの提案に俺は迷うことなく飛びついた。
「いいのいいの! こんなご時世だからね。助け合っていこうじゃないか! それと堅苦しい言葉遣いはしなくていいよ! こっちまで疲れちゃうからね」
「まぁ、舐めた口を利くようなら俺がまたぶん殴ってやるがな」
ギルさんの口元は笑っているがあの人の目は本気だ。くれぐれも出しゃばることはしないでおこうと決めた。
ニコルさんとギルさんの荷物を積んだ犀に似た恐竜のようなモンスターが牽く荷台に乗せてもらい街を目指す。
その間も何度か好戦的な獣と出くわしたが二人の圧倒的な力の前に逃げ帰るばかりだった。
後ろで見ているだけでも二人が相当の実力者であることは容易に計り知れる。
まだまだ余力を残し、無用な殺生はせず追い払うだけに留めていた。
そして二日後。
俺達は街へと辿り着く。
第10話は明日、18時に更新致します。