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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第二章  導かれる運命
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第55話  食糧庫

更新、遅れてすみません。

単なる風邪かと思ってたら扁桃腺炎でした。

初めてだったのでビックリしました。

 市場で熊八から目利きの及第点を貰うことは出来たが、最後の条件として獲物を仕留めるテストをするという。

 行き先を教えてくれない熊八は仕入れた食品を置いてくるために一度、ギルドの食堂に戻ると言った。



 そういえば、この世界に冷蔵庫や調理設備は存在するのだろうか?

 昨日、遠目から厨房を見た感じではそこまで技術が発展しているようには見えなかった。

 竈に薪をくべて鍋を沸かしていたし、水だって樽に入っているものを使っていた。

 外の街灯や屋内の明かりも燭台やランタンを使用している。


 そもそも電気や水道・ガスなどといったライフラインは整備されているのか?

 もし、無いならば調理するのは重労働だろう。


 たった今、買ってきた魚や貝も常温放置で置いておくわけにもいかないし、一体どうするつもりなのだろうか?



 ギルドまで帰ってきた俺達は、普段使用している正面の扉ではなく建物脇の小道を通り裏口へと周る。

 そこには搬入用のスペースと大きな門扉が開かれており、熊八はそこで台車を停めた。



「うっし、アラタ。仕入れてきた食材を仕舞うから運ぶの手伝ってくれ」


「それは構わないけど、どこに仕舞うんだよ?」


「ついてくりゃ分かる。ほら、こいつ持って」


 熊八は片手で軽そうに麻の袋を渡してきたが受け取った瞬間、そのあまりの重さに驚き地面に落としてしまった。



「重っっも!!」


 片手で渡してきたのでそこまで重くないと思っていたが、結構重い。

 多分、20キロは越していると思う。

 昨日のハルシアもそうだったが、熊八もとんでもない怪力だ。この世界の住人は皆マッチョなのか?

 外見からは全く想像できないんだが……。



「おいおい、しっかり持てって。中身が漏れたらもったいないだろが」


「なんだよこれ!? 滅茶苦茶重いぞ。中に何が入ってるんだ?」


「何って塩だよ。ここは海が近いから塩も豊富だけど買えば高いんだからな! 大事に扱ってくれよ」


「つーか、熊八よく片手で持てるな。どんだけ力持ちなんだよ」


「あたりめぇよ。俺を誰だと思ってやがる。<剛腕の熊八>たぁ、俺様のことよ」


また、それか。もういいよ。



「まぁ冗談はさておき、魔力を使えば誰だってこれくらいできらぁな。お前さんだって冒険者なんだろ? なら簡単だろうに」


 魔力。

 カードの時もそうだったが、どうやら魔力を使えば筋力が格段に上がるらしい。それでハルシアも重い荷物を運べたんだな。

 俺も早く自在に使えるようにならなければ日常生活に支障を来たすな。



 今は魔力を操ることは出来ないので、自力で塩の入った袋を運ぶ。

 前を行く熊八は両手いっぱいに荷物を抱え、本来なら持ち上げることはできないほどの食糧品を運んでいる。


 そのまま屋内に入ると目の前に、地下へと降りる階段と建物を貫くように繋がるロープと滑車のようなものがあった。

 それはまるで、むき出しのエレベーターのようだ。


 地下への階段を降りてみると、薄暗くひんやりとした空気が肌を撫で徐々に気温が下がっていくのが分かる。


 辿り着いた地下道には不思議な淡い光を放つ植物が自生しており、足元をぼんやりと照らしてくれる。地面にはレールのようなものが敷いてあり、その上には手漕ぎ式のトロッコが乗っていた。

 その上に持ってきた荷物をどんどん乗せ、いっぱいになったところでトロッコを漕ぐ。


 だいぶ奥まで進んだところで荷物を降ろすと壁一面にたくさんの樽や袋、木箱が並び多くの備蓄品が貯蔵されていた。


 奥に進むにつれ更に気温は下がっていき、外気は完全に遮断されているようだ。

所謂、氷室というやつだろう。



「ここはギルド所有の冷暗所でな。すぐに使わないものや傷みやすいものはここに保管しておくんだ。 

 地下だから気温や湿度は常に一定に保たれるし天候に左右されることもねぇ。便利なもんだろ?」


 どこか誇らしげに話す熊八は鼻が高い。つまり、冷蔵庫や電気は整備されてないってことね。

 それにしても寒い。いくら地下だからといってもここまで気温が下がるものだろうか?



「なぁ、たとえ地下でも自然にここまで寒くなるもんなのか? ちょっと寒すぎやしないか?」


「ん? そりゃ、一番奥にはどでかい氷があるからな。そのおかげで冷気が満たされるってわけよ」


「氷があるのか? というか氷を作る技術があるんだな! どうやって作ったんだ?」


「そりゃあ、そういう能力を使う奴に頼んだのさ。安くはねーがな。 ったく、いい商売してるぜ」


 熊八がぼやいている。

 たしか魔系統というカテゴリーにTYPE自然があったよな。

 おそらく、氷を操る能力者や気温を変化させることが出来るの者がいるのだろう。まったく、凄い世界に来てしまったもんだ。



 その後、何度か地上と地下を往復して荷物を全て運び終わる。

 冷蔵庫が無い世界ってのは大変だな。文明の利器の有難さをここで知るはめになるとは思いもしなかったよ。



「うし、これで最後だな。そろそろハルシアが来るころだから一旦、食堂に行くぞ」



 俺は熊八に比べれば全然、荷物を運んでいないがそれでも少し疲れていた。

 重い荷を持ちながら階段を降りるのはしんどいし大変だ。

 食堂のあるフロアに上がるとすでに扉の鍵が開いている。


 中に入るとハルシアの姿があり備え付けの花瓶に活けてある花を交換していた。



「あっ、おはようございます。熊八さん、アラタさん。テストの結果はどうでした?」


「おう! ハルシア今日はずいぶん早いじゃねぇか」


「テストの結果が気になったので、早く来ちゃいました」


「そうかい。まぁ、取り敢えず目利きは出来るようだけど次は獲物を仕留める力を試しに行くから結果はまだ出てねぇんだ。だから朝の準備、頼んだわ」


「分かりました。食材は好きに使っていいですか?」


「ああ、いいぞ。今仕入れてきたものもあるから好きにやんな」


 熊八の言葉を聞いたハルシアはパァと顔が明るくなり、指をパチンと鳴らす。



「みんな! 起きて! 今日はパーティーよ!」


 すると次の瞬間には昨日の猫の獣人たちが次々と飛び出してきた。

 その姿はコックコートではなく、私服であり寝間着姿のものもいる。というか、茶トラ柄の猫だ。



「わーい! 今日の朝ごはんは魚で決まりだにゃ!」


「違うにゃ! 肉! 肉がいい!」


「僕はねこまんまがいいにゃ」


「ん~、うちは~、え~と~、なんでもいいにゃ!」


「マタタビ酒も飲んじゃおうよ、バレにゃいようにちょっとづつね。ヘヘ」


「吾輩、朝は牛乳たっぷりのミルクティーと決めている。異論は認めん」


「ご主人さま! ほんとにいいの!? やったー!」


「………zzz」


 元気よく出てきた7人の猫達は滑車のロープに飛び乗ると地下の食糧庫へと消えていく。ただ一匹だけは陽ざしの差し込むところに移動し丸くなって寝ていた。というか、茶トラ柄の猫だ。


「ちょっと、みんなー! メニューは私が決めるんだからね! 今日は朝からステーキよ! ひゃっほー! あっ、熊八さん、アラタさん。ここは私たちに任せて気兼ねなくテストしてきて下さいね! ではっ!」


 そう言い残したハルシアもロープを伝って地下へと降りて行く。



「いいのか? 熊八。帰ってきたらえらいことになってるかもしれないぞ?」


「ん~、ちと心配になってきたな。 けどまぁ、いいか! ガッハッハッハ!」


 いいのか? それで? 

 相変わらず大雑把なのか器が大きいのか、どちらにせよ懐は広いみたいだな。



「うし、ここはハルシアに任せて俺達は行くぞ。ついてきな」


「今度はどこに行くんだ? そろそろ教えてくれよ」


「海だ。この街は海も近いしテストするにゃもってこいだ。 それに海は食材の宝庫だし何と言っても、タダだからな」


「分かった。これで正式に弟子と認めてもらうぜ!」


「そりゃ、結果次第だ。先に言っとくが、そう簡単じゃねぇぞ」


 そうして俺と熊八はギルドを出て海へと向かった。

 一体、どんな獲物を相手にするかは知らないがこの世界で生きていくためにも絶対に成功してみせるさ。


 

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