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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第二章  導かれる運命
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第48話  人の性

 俺は元の身体の持ち主の個人情報が記された羊皮紙を受け取り目を通す。

 そこにはこう書かれていた。



───────────────────────────────────────────


【 名前 】

Cinstanceコンスタンス・A・Agataアガタ


【 登録時年齢 】

 12歳


【 登録議会所 】

 澪標みおつくし 議会所


【 登録住所 】

 鳳仙帝国 白烏しろがらす 三番地


【 登録日時 】

 葵年あおいどし 残秋ざんしゅう


【 星 】

 星無し


【 職業 】

 漁師フィッシャー


【 ギルド 】

 大海水たいかいすい 水蛇みずち


【 最終更新履歴 】

 葵年 残秋


【 魔系統 】

 TYPE創造


【 推薦者 】

 伊織


【 金庫番号 】

 U497321 V073865 参


───────────────────────────────────────────




ふむ。


 一通り目を通して分かったことは、何も分からないってことだな。

 いや、書いてあることは読めるが、そのほとんどの場所や意味が理解できない。


なんだ魔系統って?

TYPE創造?


 どう見ても身体つきからして12歳には見えないけど?


 住所どこだよ。

 登録日時に関しては何一つ頭に入ってこない。


 せいぜい名前と職業くらいしか分からなかった。

 つーか、12歳で漁師って。早くないか?

 

金庫番号? もしかして貯金あるのか?




 俺が羊皮紙とにらめっこしているとハルシアが尋ねてくる。



「欲しい情報は得られましたか?」


「ん? ん~、それが使えそうな情報は書いてあるんだけどその意味が分からないからどうしようもないんだ。ハルシアちょっと、見てくれないか?」


「いいんですか? 個人情報ですよ?」


「いいさ、ここで隠してても仕方ないからな。頼む」


「分かりました。では失礼します」


 ハルシアは羊皮紙を受け取ると黙読していく。

 やがてその表情はどんどん曇っていき、目を見開き驚愕の声をあげた。



「アラタさん……、これ凄い内容ですよ。順を追って説明しますね。と、その前に場所を変えましょう。ここは人目に付きすぎます」


 何やら、不穏な空気を出してくるハルシアに俺も不安になってきた。そんなにヤバイ情報なのかこれ?

 前の身体の持ち主もしかして、とんでもない人物だったのか?



 それから俺とハルシアは来場者用の開けた休憩スペースを見つけ、人が周りにいないことを確認し話しの続きを聞く。



「ここなら人もいないし大丈夫でしょう。いいですかアラタさん。上から順番に説明していきますね」


 俺は唾をゴクリと嚥下する。



「まず年齢ですが、これは登録した年齢なのでそこまで問題ではありません。ただし、これ以降、一度もカードの更新に訪れていないようですね。

 なので、登録時の情報のままになっています。おそらく、記憶を失う前の性格はズボラで面倒くさがりな人だったのでしょう」


「ふむ。それで?」


「次に登録議会所と住所です。この住所は現在、私たちがいるこのエーデルシュタイン王国ではなく鳳仙帝国という国外のことです。どうやらアラタさんは海を渡ってきたみたいです」


「なるほどな、続けてくれ」


「登録日時・最終更新履歴・星に関しては先ほどお伝えした通り、登録後更新をしていないので置いておきましょう。職業に関してもよくある職業の一つなので不思議ではないです」


「うん」


「問題なのはここからです。このギルド<大海水たいかいすい 水蛇みずち>は鳳仙帝国、屈指のギルドとして有名です。間違いなく鳳仙帝国で5本の指に入る実力を備えているでしょう。

 そしてTYPEです。アラタさんは創造タイプのようですが、このTYPEはレアで数が少ないんです。それ故に、各ギルドからの勧誘もたくさん受けてきたはずです。

 いえ、だからこそ水蛇みずちに所属しているのかもしれませんね」


「お、おう。よく分からんが、なんだかえらいことになってきたな」


「驚くのはまだ早いです。この推薦者の名前を見て下さい。<伊織いおり>と書いてありますよね。 この人はギルド<大海水たいかいすい 水蛇みずち>の団長です。

 これだけ有名なギルドの団長を務めるほどの大物に推薦されることなんて、まず有り得ません。それも若干12歳でですよ? いったい何をしてきたんですか?」


「いや、俺に聞かれても困るんだが……」


「そうですね、すみません。私も興奮してます。少し落ち着きますね」


 そう言ってハルシアは2・3回、深呼吸をしている。



「では、最後に……」


「まだあるのか!?」


 俺はどえらい人物の知り合いということだけでも一杯一杯なのだが、まだあるようだ。



「ええ、これで最後です。この金庫番号なんですが文字と数字が使われているのは分かりますね?」


俺は黙って首肯する。



「数字は個人を特定するための番号なのでいいのですが、重要なのはこの文字です。全部でA~Zまで26文字あるんですが、この文字は順番が後になるほどお金持ちという意味なんです。

 そして、ここに書かれている番号はUとV。21番目と22番目です。つまり、アラタさんは大金持ちということになるのです……」


「ち、ちなみに、その額はどれくらいなんだ?」


「私も初めて目にしたので詳しくは分かりませんが、おそらく10,000,000プラ。この建物を購入しても、お釣りがくるくらいじゃないでしょうか……?」



 待て。待て待て待て。

 ちょっと待ってくれ。ここにくるまで少し街を歩いたがここいらの建物で一番大きい建物だったよな、ここ。

 嘘だろ?おい。それを買ってもおつりがくる?


 なんて棚ぼただ。いや、ぼた餅どころではない。棚から徳川埋蔵金だ。

 我ながら、意味がわからん。ふへへ。



「アラタさん……。さっき貸した1シルバなんですけど、ちょっと利子がついて10,000プラになっちゃったんですけど、いいですよね?」


 上目使いで恥じらいながら聞いてくるハルシア。

 通貨の基準が分からないけど、吹っ掛けられていることだけは分かるぞ!!


 ハルシアの冗談を聞き流したあと、俺はこの世界の通貨の単位を教えてもらった。

 冗談だよね?



 ずばり、円にすると10億円。

 うひゃ~~~~。

 へっ、へっ、へっ。



 ついに俺の時代が来たか?

 というより、ハルシアよ。さっきの千円を百万円にして返してもらおうと思ったのか?

 見た目によらず、がめついな。



「あ、でも一つ大切なことが」


ハルシアが何かを思い出したようだ。



「鳳仙帝国に預けているお金はここエーデルシュタイン王国では下ろせませんよ?」



俺の夢の自堕落生活が崩れ去る音が聞こえた。




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