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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第二章  導かれる運命
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第46話  真名

 俺はガイアでの名前を二人に告げる。

 それを聞いた熊八とハルシアは驚愕の表情を浮かべていた。



「バッカ、お前。俺の話しちゃんと聞いてたんか? 【真名まな】は簡単に人に教えるもんじゃねぇって言っただろう!!」


「そうですよ!! なんで喋っちゃうんですか!? あっ! なんなら私、聞かなかったことにしますか?」


 慌てる二人をよそに俺は平然としていた。



「いや、大丈夫だよ。だって俺は二人に命を救われたんだから信頼の証だ。これ以上、他の人に教える気もないしな」


「そうは言ってもよぉ……。あーー、まぁいいか! 俺等が言わなけりゃそれでいい訳だし。ハルシアもうっかり喋るんじゃねぇぞ」


「もちろんですよ。それより熊八さんのほうがうっかり喋りそうですけどね」



 なんとなく分かる気がする。

 どことなくハルシアはしっかりしてそうだが、熊八はこんな性格だからボロが出そうだ。

 やっぱり、早まったかな?


 でも、別に真名を知られたからと言って困ることは無いし、別にいいよね?

 俺の認識だと苗字みたいな感覚なんだけど、違うのかな?



「そんで……、真名のことは置いといて、なんでアラタなんだ?」


 熊八は机に頬杖をつきながら聞いてくる。



「アラタって言葉には新しいって意味が含まれてるんだ。今の俺にぴったりの名前だろ?」


「なんでぇ、なんの捻りもねぇな。だが覚えやすい! いいじゃねぇか、アラタ!」


 そう言って熊八はゲラゲラ笑いながら俺の首に毛むくじゃらの太い右腕を巻いてくる。



「あーー! アラタさんだけズルい! 私も混ぜて!」


 どこか大人びいて見えていたハルシアも羨ましくなったのか熊八の左手に潜り込んでくる。自分の気持ちにストレートなんだな。



 熊八は俺とハルシアを抱きながらゲラゲラ笑いハルシアも幸せそうだ。

 強引なところもあるが、どこか懐かしいような少し照れくさい不思議な気持ちになった。

 こんな気持ちになるのは随分久しぶりな気がする。



「そんで、アラタはこれからどうするんだ?家に帰るか?」


 熊八は俺を解放するとそう聞いてくる。

 しかし、転生者である俺にとって家などない。


 いや、元の身体の持ち主の家があるのかもしれないが、その記憶は引き継がれていないため俺には分からない。そもそも、この近くの住人なのかも怪しいもんだ。

 転生のことを伏せつつうまく説明しなければ。



「それが家のことはおろか家族のことも全く思い出せないんだ。その上、この街の名前も分からないしここの住人かも覚えてない。誰か俺を知っている人はいないかな?」


「この街は<マスウード・ミーティア>って交易都市で国内外から多くの人種が出入りしている。街の名前に聞き覚えはないか?」



 熊八はアゴ髭を撫でながら問うてくる。

 というか、あれは髭なのか?



「ん~全然知らんな。近くに交番はないか? そこで俺の手掛かりになるようなものが見つかるかもしれない」


 だが、俺の質問に熊八とハルシアは疑問の表情を浮かべている。



「その” コウバン ”ってやつは一体、何のことだ? 異国の言葉か?」


 そうか、この世界に交番という言葉はないのか。

 なら警察に似た組織はあっても別の言い方かもしれない。例えば、自警団とか義勇兵とか。


 しかし、まいったな。これじゃ、この身体に関する情報が何も聞き出せない。

 自称神様の話しだとこの世界にネットなんて便利なものは無いだろうし、知人に出会うまで聞き込みするのは時間と労力が掛かりすぎる。



「交番ってのはつまり、人助けの集団みたいなもんかな? 困っている人がいたら相談に乗ってくれて解決するまで手伝ってくれるみたいな」


「それって議会のことなんじゃないですか?」


 話しを聞いていたハルシアが提案してくる。



「議会なら冒険者の登録番号も控えてますし住民の情報も豊富です。アラタさん、何か手がかりになるようなものは持ってないですか?」


 そういえば、俺はまだ新しい肉体のことを何も知らないな。持ち物の確認と一緒にいろいろ見てみるか。



 俺はテーブルを降り自分の足で立つ。まだ少しふらつくが問題ない。

 そして、俺はアラタとしての俺を調べ始めた。



 身長は約170cm後半。髪は黒。男性。やや筋肉質。五体満足、五感良好。

 服は白いYシャツのような上着で紺のベストを着ており、下はブーツに黒ズボン。ベルトには何かを括りつけていたようだが溺れていた時に落としたのか、何も残っていない。


 ただ、ポケットの中に一枚の金色のコインとカードケースのようなものが入っていた。

 カードケースを開いてみるとクレジットカードサイズのカードが3枚入っている。


 一度、中身を全て取り出し机の上に並べてみた。



「あっ、これ冒険者カードですよ!」


 するとハルシアが嬉々として教えてくれる。

 その冒険者カードってのはなんなんだ?



「よかったですね! これさえあれば名前も家も分かりますよ」


 ハルシアから詳しく話しを聞いてみると、この世界には【議会】なる組織が存在し、専ら警察や役所など公務員のような仕事をこなしているという。

 そこに行ってカードに記載されている番号を照らし合わせれば登録時の情報を聞き出せるとのことだった。

 なので俺は今から議会に行き情報を聞いてくることにした。



「そんで、おめぇは議会の場所は分かってんのか?」


 熊八がグラスに注いだ水を飲みながら聞いてくる。



「あ~、知らないな。すまないが議会の場所を教えてくれないか?」


「ならハルシアに案内してもらうといい。ハルシア、アラタに付き添ってやんな」


「はい。ですが、そろそろ仕込みを始めないと夜の営業に間に合いませんよ?」



 営業というのはこの食堂のことか?

 記憶喪失で話しを通してるとは言え、仕事に支障をきたすのは申し訳ないな。


 すると、熊八は大きく胸を張り手を当てる。



「バカ言ってんじゃねぇ。ここは俺の縄張シマだぜ。俺様が一人いれば問題ねぇ。いいから、ハルシアは心配しねぇで行ってきな」


「分かりました。できるだけ早く戻りますね。さっ、アラタさん行きましょう」



 そう言ってハルシアは俺の手を引き出口へと向かう。

 俺は手を引かれるまま、振り向き熊八に向け言った。



「ありがとう熊八! この恩は絶対に返すからな!」


「気にすんな! いいってことよ! ガッハッハ」



 熊八は笑顔で手を振り、見送ってくれた。

 そして、俺はハルシアに案内され議会を目指す。


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