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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第一章  転生
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第39話  奇襲

 右京の能力によって虫を一掃したあとグリフォンを地面へと着地させる。



「大丈夫? 左京」


「……うん。ありがとう、助かったよ姉さん」


 右京は周りの木々に燃え広がった炎を魔力を操り消化している。



「いいのよ。それよりなんで追われてたのよ? さっきは触ってても全く襲ってこなかったじゃない」


「……僕にも分からないんだ。死体の棘を抜き取ろうと虫をどかしたらいきなり襲ってきた。

 逃げるうちにどんどん集まってきて僕一人の力じゃどうしようもできなかったし、サンプルも取り損ねた」


「……そのまま走って逃げてる時に姉さんの声が聞こえて合図を送ったんだ」


「そう、やっぱり何かおかしいわね。急いでこの森を離れましょう。左京、すぐに準備して」


「……うん」


 左京は来るときと同じように急いで防寒具に身を包みグリフォンに乗る。

 それを確認した右京が指示を出す。



「サンプルは諦める! 夕暮れまで休憩なしで飛行するわよ。遅れないようしっかりついてきなさい!」


 右京は簡潔に告げるとグリフォンを走らせ、空へと舞う。俺達も遅れないよう続く。

 ぐんぐん高度を上げ、あっという間に森を抜けると視界が開ける。

 眼下には先ほど右京が焼き尽くした森の一辺が黒く塗りつぶされるようにぽっかりと空いていた。


 隊列を組み、右京を筆頭に気流に乗ると少しづつスピードも上がり体感温度も低くなる。

 無事に左京と合流しこのまま街へと戻ろうと進んでいるとき、それは起きた。

 


「グギャッ」


 先頭を飛行する右京の乗ったグリフォンが突如、苦しそうな悲鳴を上げ飛行を止める。

 そのまま右京ともども地面へと墜落していった。



「きゃぁああぁぁーーー」


 急降下していくなか右京は叫び声をあげグリフォンにしがみついているが、この高度から地面に落下すれば右京もただでは済まないだろう。



「なんだ!? なにが起きた!?」


 俺は状況が飲み込めず混乱したが、それでも急降下する右京を追う。



「右京ぉぉぉぉーーー」


 頭から墜落していくグリフォンを追いかけるがその距離はなかなか縮まらない。

 俺は片手で手綱を握り、もう片方の手で右京へと手を差し伸べる。

 目の前には森の頂点の葉がすぐそこまで迫ってきており、森に入ってしまうと救出は難しい。



「右京、こっちに飛び移れ!!」


 右京は恐怖で泣きそうな顔をしながらも手を掴むべく空中へとその身を投じる。

 落下しながらも手を伸ばす右京の手を掴もうとする、その瞬間。



 俺の乗るバーナードは木に突っ込むことを恐れ、指示とは逆に急浮上をした。

 右京の手を掴むことは出来ずに。



「おい!! 追えよっ!!」


 たまらず怒号を飛ばしてしまうが、その願いも虚しくバーナードは枝に引っ掛かりながらもスレスレを飛行し追うことをやめた。

 先ほどまで右京の乗っていたグリフォンは猛スピードで森へと突っ込み、バキバキと枝を折りながら落ちていく。

 そして、右京も。



「……間に合えっ!!」


 左京は俺の後を追いながら【変幻自在の青(コンビニエンス・ブルー)】を発動させていた。

 右京が森に落下する前に円形の水の膜を1m間隔で何層も空中に展開させる。

 それで右京を受け止めては突き破り、また受け止めては突き破りと徐々にスピードを殺すことができた。



 しかし、それでも右京の勢いは止まらない。

 森に突っ込んだ右京は枝を折り、葉を揺らしながら地面に落下していく。


 興奮し暴れるバーナードをなんとか落ち着かせ急いで地面へと向かう。

 そこにはぐったりと地面にうつ伏せに倒れる右京と、その近くで絶命したグリフォンの亡骸が赤黒い血だまりを作りながら倒れていた。


 最悪をイメージした俺は急いで右京の元へと駆け寄り、水で濡れた右京を抱き起こす。



「右京!! しっかりしろ!!」


「姉さん!!」


 声を掛けるも、右京は意識を失い返事はない。

 その身体には至るところに枝に引っ掛けてできた切り傷を作り、打ち付けられた衝撃で手首が折れていた。


だが、かろうじて浅く息をしている。



「よし、生きてる。けど早く治療しないと! 左京なにか応急措置できるものはないか!?」


「傷薬ならあるけどこの様子じゃあまり効果がないと思う。それにもし、内臓にダメージを負ってたら効果がないんだ。シンさんは!?」


「俺だって魔力ポーションくらいだ。これじゃ飲めないだろうし傷も治せない。とにかく急いで街に戻ろう。そこまで保てば治癒師が助けてくれる」


「うん。はやくしないと姉さんが……」


「分かってる! 俺が最低限の荷物を運ぶから右京を頼む」



 先ほどの件でバーナードはまだ本気で俺を信用してくれていないと判断し左京に託す。右京の身体をなるべく動かさないように運ぼうとしたその時だった。



「おいおいおい。なんだよ、まだガキじゃねーか」


 まさか人がいるとは思わず驚いて顔を向けると、そこには二人の男が森の中からこちらに歩いてきていた。



 一人は大柄の男で浅黒い肌にスキンヘッド。身長は軽く2mは超している。

 鍛え上げられた肉体とがっしりとした体形は見ただけで実力者だと判断でき、上半身は前の開いた服で厚い胸板とくっきり割れた腹筋が目に入る。まるでプロレスラーのような体つきだ。


 無骨な見た目通り、ジロジロと値踏みするかのような嫌な視線を向けてきている。

 その額には角らしき小さい突起物が二つ隆起していた。



 もう一人は対照的に線が細く髪は黒。身長は170cm程だろうがスキンヘッドと並ぶとかなり小さく見えてしまう。

 目につくのは異常に白い肌だった。

 もはや病的に白い肌は生気を感じさせず冷たいオーラを放っている。

 服も白一色で統一されており、それだけ余計に黒髪が際立つ。この男も額から小さな角が1つ生えており、右手だけが赤い。


 俺は右京を襲ったのはこいつらだと瞬時に理解する。



「おい、ガキども。お前らここで何か見たか? つーか、さっきの能力お前らだろ?どいつだ?」


 図体のデカい男が高圧的に聞いてくるが俺は睨み付けながら答える。



「お前らこそ何者だ?」


「おい、クソガキ。口の利き方に気を付けろ。今聞いてんのは俺だ。死にたくなかったら俺の質問に馬鹿みてーに答えてりゃいいんだよ」


 男の気に障ったのかあきらかに怒りを露わにしてくる。



「もう一度だけ聞く。お前らここで何を見た?」


 俺は左京と目配せし極力、逆撫でしないよう慎重に答えた。



「俺達はギルドの冒険者だ。イグ・ボアの生態調査のためにこの森に入った。そこで目標の死骸を発見し報告のため帰る途中だった」


「そうかい。そこの青い髪のガキ。本当か?」



 左京を見ながら聞いてくる。左京は黙ったまま頷く。



「だとさ。こいつらどうするよ?」


 スキンヘッドの男がもう一人の白い男に問いかける。

 そこで初めて声を発する。



「嘘はついていないが核心は隠している。と、言ったところか。我等の計画は動きだしたが邪魔をされても面倒だ」


 俺はあえて天玉甲蟲の異常行動を伏せて説明したが見透かされていたことに焦る。

 それに計画?

 こいつら一体何者だ?



「せっかく暇つぶしの相手がいるんだ、遊んでこうぜ」


「好きにしろ。だが逃がすな」


「当たりめーだろ。一匹たりとも逃がさねーよ」


「お前にはまだやるべきことが残されていることを忘れるな」


「うるせぇな。なんでテメェに指図されなきゃなんねぇんだ? 俺は飛び回る害虫を駆除してるだけだ」


「………」


「それに俺は弱い奴は嫌いだが、弱いものを嬲るのは大好きなんだよぉぉ!!」


「……下衆が」


 二人の会話から察するに利害は一致しているが仲間ではなさそうだと推測する。

 しかし、デカい男が臨戦態勢に入ったとき力の差をまざまざと突き付けられた。


 得体の知れないスキンヘッドが魔力を纏うと、言いようのない不安感と圧迫感が辺りを包む。

 これまで無意識に呼吸をしていたが、息の吸い方を忘れてしまったかのように息苦しい。

 左京も額に汗を流し、苦悶の表情を浮かべているので同様のようだ。


 このまま見過ごしてくれそうになく戦う決心をする。右京をそっと地面に寝かせ、刀を抜き魔力を纏う。

 左京も臨戦態勢に移った。



 俺達がやる気だと確信したスキンヘッドは嫌な笑みを浮かべながら言う。



「そこの女は最後に殺してやるから安心して掛かってこい。もし、俺を止めることができればその女は無事だ」


 その言葉を聞いた俺と左京は右京を戦闘に巻き込まぬように距離をとる。



俺にとって初めて実戦での対人戦闘が始まる。



話しがいいとこなので本日は連投致します。

第40話は本日、21時に更新致します。

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