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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第一章  転生
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第34話  能力の使い方

 オルバートの森で初のターゲットであるイグ・ボアを発見した俺達は右京から狩りを始める。


 右京は俺達を茂みの中に残すとイグ・ボアに向かってずんずん進んでいく。

 近づいてくる右京の存在に気が付いたイグ・ボアは警戒し興奮しているのか鼻を大きく鳴らしている。



「こんにちは、子豚ちゃん。悪いんだけどあなたの棘、何本か私にくれないかしら?」


 悠長に話しかける右京だが言葉が通じるわけもなく、興奮状態で蹄で地面を抉り今にも突進してきそうな構えだ。

 子豚ちゃんなどと言っているが相手はプレハブ小屋ほどの大きさで威圧感もハンパではない。

 常人ならば心中、穏やかではいられないだろう。


 しかし、余裕そうな右京は全く気にしていない様子だ。


 右京の能力、【私だけの火遊び(ラブ・ファイア)】を発動し右手に小さな火の玉を作り出す。

 赤くチリチリと燃える火の玉にフッと息を吹きかけると、ゆらゆらと揺れていた火の玉はスゥーと前に進んでいく。


 痺れを切らしたイグ・ボアは火の玉など気にも留めずに直線的に右京目掛けて突進してくる。攻撃的な性格は種族全体の特徴だ。


 ぐんぐん縮まっていく距離。それでも動かない右京。


 突進してくるイグ・ボアの鼻先が火の玉に触れる寸前のところで事態は急変した。

 それまでふわふわと浮いていた火の玉が目の前でカッと弾けると、まるで閃光弾のような強烈な光を放ち一瞬で視界を奪う。



「うわっ! 眩しっ」


 一部始終を見てい俺も突然の閃光に目をやられ視界が真っ白になる。

 咄嗟に手で光を遮ろうと翳すが、すでに遅かった。



 何が起きたのか理解できないイグ・ボアは動きを止め、首を振りながら視力が戻るのを待っている。

 その隙に右京は後ろに回り込み、棘を2本抜き取った。

 棘が抜かれたことなど全く意に介さないまま右京は棘を手に入れることに成功した。



「ほら、いつまでそうやってんのよ? 棘も手に入れたんだしさっさと離れるわよ」


 右京がそう告げるが俺はそれどころではなかった。

 ぼんやりとしか見えない視界で目の中がパニック状態だ。



「ちょっと、待てよ。あんなことするなら先に言ってくれ。俺の目も潰されちまったじゃないか」


 目を押さえながら抗議する。



「何言ってんのよ、あれくらい自分でなんとかしなさい。そんなんじゃ冒険者としてやっていけないわよ。

 左京、仕方ないから引っ張ってってあげなさい」


「……うん」



 左京に手を引かれ後をついていく。

 そのまま移動する間に視力は徐々に回復していった。



「ここまで来れば追ってこないかしら。ちょっとあんた、まだ目が見えないの?」


左京の手を離し右京に詰め寄る。



「お前な! 誰のせいでこんな目にあってると思ってんだよ! まだ目がシパシパするわ!」


「何よ!? 私のせいだって言うの?」


「ったりめーだ! やる前に一言教えてくれてもいいのに!」


「あんたね、あのくらいの状況自分だけで対応できないんなら対人戦なんて一生無理よ! 100%殺されるわ!」


「今は対人戦じゃないだろ!? 俺は右京の狩りを見てただけだ」


「呆れた。やっぱり素人ね。もし私が敵だったらあんた死んでるわよ。ほら、左京を見てみなさいよ。全然、平気そうじゃない」


 言われるまま左京を見ると相変わらず眠そうな顔をしている。



「……僕は姉さんがこの方法を使うのを知ってたら対処できたんだよ」


「ほらみろ。左京もこう言ってるじゃないか」


「……けど、初めて見たときも防いだけどね」


「………」


 

 俺の味方になってくれたと思ったがその言葉を聞いて返す言葉が見つからなかった。



「いい、良く聞きなさい。私はいちいち「これからあの技を使いますよ~、次はこの技を使うから注意してね~」なんて言うことは無いわ。

 戦いにおいても狩りにおいても一瞬の判断ミスが命取りに繋がることもあるんだから。

 いつ、何時、どんな状況に陥っても対応できる臨機応変さを養いなさい」


 言われっぱなしはムカつくが、言っていることは尤もなのでぐうの音もでない。



「分かったよ。これからは気を付ける」


「そ。分かればいいわ。これからは天才である私の技術を見て学ぶといいわ」


 この幼女め。一言多いんだよ。



「なんにせよ、これで一体目の棘を2本採取できたわね」


「……さっきの個体は単独で行動してたから大人だね。体も大きかったし」


「なぁ、さっきの技は凄かったけどイグ・ボアは平気なのか? あれだけ近くで爆発したら火傷してるんじゃないのか?」


「それなら平気よ。いい? 火の特性は大きく2つあるの。それは熱と光。

 さっきの技は目くらまし専用で極力熱を抑えて、光だけを強くしたから怪我はしないわ」


「そんなことも出来るのか?」


「私はそのどちらも自在に操ることができるから簡単よ。って言っても、天才である私にしかできないけどね」



 うーん、生意気に聞こえるが事実そうなのだろう。ニコルさんが双子は天才と言っていたことにも頷ける。



「よーし! この調子でどんどんいくわよ」


 採取した棘は約1m程で、その太さからは想像もできないほど軽く丈夫な為、持ち運ぶのに苦労しなかった。右京の狩りが成功に終わり、次のターゲットを探す。



 Cランク任務はまだ始まったばかりだ。



第35話は明日、18時に更新致します。

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