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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第一章  転生
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第21話  乾杯

「いやーーホント助かったよ! ありがとう! 君のおかげで無事船は出港して行ったよ。さすがGGGのメンバーだね」


「いやいや、そんなことありませんよ。時間もギリギリでしたし。でも間に合ってよかったです」


「ハハハ! 万事解決してめでたしめでたし! これは約束の報酬1Gね! では俺は仕事に戻るよ」



 無事に荷物を運び終えたアセリは快活に笑い依頼完了のサインをもらうとそのまま商店に戻っていった。

 初の依頼を無事にこなし、報酬として1Gを受け取る。



「初任務ご苦労。疲れたか?」


「少し疲れましたけど大事なことに気付けてよかったです! 魔力の存在をあえて教えてくれなかったのは自分で気付かせるためだったんですね」


「自分で観察し発見する力を培うことはとても大切だ。だが魔力の使いすぎには注意しろ。

 前にも言ったが魔力を底まで使い切れば死に至る。今そうして平気でいられるのは日々の研鑽の賜物だ。慢心することなく精進しろ」


「はい!」


「では次の依頼に移るぞ。まだこんなにあるんだからな」


 依頼書の束をバサバサと仰ぐようにしながら俺を急かし次の依頼主の元へと向かう。




「次の依頼はこれだ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

急募!!

【依頼内容】おつかい

・穴掘りネズミ除けの天然薬液×20kg

・食害ナメクジ用撃退塩×20kg


【依者主】農家 コメット

手塩にかけて作った野菜を出荷前に食い荒らされた!!

収穫で忙しいから代わりに買ってきてくれ!!

畑を食い荒らす害獣にぶっかけてやる!!


【納品期限】

2日以内


【場所】

コメット農場


【報酬】

6S


【難易度ランク】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 一つ目の依頼と同じように農場にて依頼主と会い、おつかい用の金額を渡され買い物に出かける。

 ただ農場ということもあり街から少し離れている場所にあるため目的地につくまでに少し時間が掛かった。


 移動手段は変わらず走ることだが魔力を纏うことによって格段にスピードとスタミナがアップした。

 この駆除剤を売っている店がたまたまアセリ商店だったのでアセリとの再会は早かった。


 買い物帰りに魔力の活用法を覚えた俺にとって20kg×2つは朝飯前だった。


 50分ほどでおつかいから戻ってきた俺達に依頼主のコメットは驚いていた。なにせ片道20kmの道のりを1時間もかからずに帰ってきたのだから。


 依頼完了のサインと報酬の6Sを受け取りまた街へと戻る。

 その道中、昼食と休憩を兼ねて疑問に思っていたことを聞いてみる。



「ギルさん。この世界の人たちはみんな魔力の存在を知っているんですよね。ならギルドに仕事を依頼しなくても自分で魔力を活用すればお金もかからないし早いんじゃないんですか?」


「それには理由がある。まず第一に魔力の操作は難しいということ。それは自分で分かってるだろ?」


「はい。最近ようやく落ち着いてきました」


「第二に魔力の使用はとても疲れやすく、常人ではすぐに魔力が枯渇してしまうためだ。一時的に使うことはあっても長時間使用することは無い」


「あれ? でも俺は魔力を覚えたばかりですけど1時間くらいは保てますよ?」


「それはお前の魔力量が常人離れしているからだ。おそらく総量だけで言えば現時点でもAランクの冒険者と比べても遜色ないだろう」


「おお! それは嬉しい特典付きですね。元の身体の持ち主に感謝です」


「これは俺の予想だが……、シンが転生する前の人格もきっと冒険者だったんだろう」


「自分自身、鍛えればまだまだ魔力は増えると思います。そんな気がします」



 俺達は休憩と昼食を摂り終え街へと走る。

 街に戻ったあとも期限の早い依頼から次々とこなしていく。



 配達屋の依頼は小さくて軽いものほど安く数も多い。

 例)書類、手紙、小包など鞄に入る大きさ。一つ配ると1C貰える。塵も積もれば商法。


 逆に大きくて重いものは値段が高く数も少ない。

例)酒樽、机、書籍など。一つ配ると1S貰える。


 貴重品や装備品の配達は盗難の恐れからDランクには持たせることはない。

 この依頼も無事にこなしサインと報酬8S貰った時点で依頼を終えた。



 次の依頼は宮廷で飼われているペットのダイエットのための散歩。

 依頼の期間はまだ余裕があるが、そう簡単に体重は落ちないと判断し早めに取り組むことにした。

 

 豪華な屋敷に到着すると執事が対応してくれ、依頼の受諾と挨拶を済ませ、ペットを預かる。

 しかし、依頼のペットがウサギなのだが大きさが問題であった。


 体長はなんと3mはあろうかという大きさで体重320kg 。身体が大きい分、食べる量も凄まじく一日に30kgもの食糧を必要とする。

 この大きさでは一般の人間では散歩に連れ出すことは不可能なのでギルドに依頼がきたそうだ。


 だが宮廷には広い庭があり外に出なくとも十分運動できるスペースがあったので好物の人参でおびき寄せあとは、ひたすら逃げるという方法をとった。

 ウサギのぷーちゃんはどこまででも追いかけてきたため魔力を纏って走らなければ自分の身体ごと食べられてしまいそうだった。


 食べる量も凄まじいが、その分出す量も多かったため一日で依頼を達成してしまった。

 久々に運動したぷーちゃんは満足そうに人参の山を食べるとそのまま寝てしまう。

 ダイエットというより運動による排便の促進とストレス発散がこの結果を生んだようだ。


 体重は309kgに減量しマイナス11kgものダイエットに成功した。

 この結果に大変満足したマダムは報酬として通常1G1Sのところ褒美として2G出すと言ってくれたが、ギルさんが契約通りの報酬だけ頂くと丁寧に断った。



 その後も今日が初任務とは感じさせない集中力と体力で残された依頼を達成していく。

 初日で達成した依頼は8件。報酬額は9Gに達した。




「本日の任務はここまでにしよう。残りは明日に持ち越しだ」


「お疲れ様でした」


 辺りはすっかり暗くなり、街の明かりが夜の暗闇を照らす。

 どこからか漂ってくる美味しそうな肉の焼ける香りに一日働いたお腹を刺激する。



「腹がへったろう。ギルドに戻って夕食にしよう」


「はい! 今日はいっぱい食べれそうです」



 二人はギルドに戻り受付のメイド、アイシャさんに達成したサイン入りの依頼書を渡し食堂に移る。

 テーブルの上に広げられた料理を次々と胃袋へと押し込んでいく。


 豪快な厚切りのステーキにみじん切りのにんにくがたっぷりと入ったソースかける。

 アツアツの鉄板で踊るように跳ねる脂。なんの肉かは分からないがとにかく美味い。


 山盛りのマッシュポテトをスプーン一杯に乗せ一口に頬張る。

 しっとりとしたポテトにステーキの肉汁が良く染み込んで相性抜群だ。


 付け合せの野菜も鮮度が良く塩ゆでしただけであろうブロッコリーはコリコリとした触感で噛むほどにうま味が増す。

 テールスープはうす塩味で脂っこい食事にぴったりだった。



 毎日利用している食堂は品数も豊富で見た目も色鮮やか。熟練のコックがいることは疑いようもなかった。

 客席からたまに熊のような人がコックコートを着て歩いている姿を見ることがあったのであの人が調理しているのだろう。



「そういえばギルさん。お金が手に入ったので食堂の支払いや宿泊施設の代金を支払いたいんですけど、どこで支払えばいいんですか?」


「それは気にするな。あらかじめ俺とニコルで当分の支払いは前もって渡してある。今まで請求されなかったのは前払い額から天引きされていたためだ」


「そうだったんですか!? なら今日稼いだこのお金で返します! 足りない分も働いて必ずお返しします!」


「気にするなと言ってるだろう。お前一人の生活費なんて大した額じゃない。俺はともかくニコルは金持ちだからな」



「誰が金持ちだって?」


 そこにはビールの入ったジョッキを3つ持ったニコルさんがニコニコしながら立っていた。

 そのまま俺の隣に腰掛けるとジョッキを配る。



「アイシャから聞いたよ。今日が初任務だったんだって? それも8件も達成したらしいじゃないか! これも修行の成果かな?」


「ありがとうございます! ギルさんの修行に比べたら任務は楽勝でした!」


「調子に乗るなよ、Dランクの依頼でもギルドの看板を背負ってるんだ。甘く見てると足元掬われるぞ。 なんなら任務は中断して精神の修行に入るか?」


「すみません。精一杯頑張らせていただきます」


「まぁまぁ、取り敢えずシンの初任務達成を祝って乾杯しようじゃないか!」



3人はジョッキを持ち構える。



「ではシンの初任務達成を祝って、乾杯!!」


 ニコルさんが音頭を取りガラス製のジョッキの澄んだ音が食堂に響く。



 こうして夜は更け、一日の疲れと酔いからベットに倒れ込むとそのまま眠ってしまった。


第22話は明日、18時に更新致します。

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