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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第一章  転生
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第19話  初任務

 剣術の基礎修行を終えたあとはギルドに戻り夕食を摂った後、明日の依頼について話し合う。



「預かっていた刀だ。返しておく」


 そう言ってギルさんは鞄の中から霧一振を取り出しそれを受け取る。



「ありがとうございます。うん。やっぱり木刀よりしっくりくる感じがします」


「明日からは常に装備していつでも使えるようにしておけ。いよいよ初仕事だからな」


「はい! そういえば依頼はどうやって受けるんですか?」


「依頼を達成するには2通りある」


 ギルさんは指を2本立て説明する。



「一つ目はギルド1階のボードに張り出されている難易度ランクに合わせた張り紙がある。その中から自分に合った依頼を探し受付を済ませ達成する方法。二つ目は事後納品だ。

 事後納品というのは主に採取系の依頼なら私物から納品してもいいし、たまたま倒したモンスターが討伐対象だったってこともある。ただし、証拠は持って帰らなきゃならんがな」


 そういえば初めてギルさんとニコルさんに会ったときも荷車で移動してたな。



「それなら事後納品のほうが簡単そうですね。一度狩りに出かけてたくさん採取したりモンスターを狩れば一気に稼げるんですもんね」


「それはそうだが、一度に狩り過ぎてもギルドに持ち帰らなければ意味がない。適切な処置をしなければ死体は腐っていくし、荷物も重くなる」


「この世界には四次元ポケットみたいな便利グッズはないんですか?」


「四次元ポケット? なんだそれは?」


「えぇ~と、簡単に言えばどんなものでも入っていつでも出し入れ可能な軽い袋みたいなものです」


「そんなものあるわけないだろう。お前のいた世界ではあったのか?」


「いや、無いんですけどね。もしかしたらあるかな~……なんて」


「まぁ仮にあるとするならば間違いなく能力の一種だろうな」


「不可能じゃないんですね!?」


「ああ。支援職のギルドにならいるかもな。だが、そんな便利な能力をもっているなら引く手数多だろう。俺も欲しいくらいだ」



 う~ん、もし俺の【創造】の能力が四次元ポケットなら便利かなぁ。



「それに事後納品だと納品数が上限に達した時点で終了となる。締め切ったあとに持って行っても買い取ってはくれないぞ。

 その点、受付を済ませた依頼はたとえ他の冒険者と依頼が重複していても期間内ならいつでも買い取ってくれる」


「事後納品は早い者勝ちなんですね」


「そうだ。日用品の採取ならいくらでも買い取ってくれるだろうが希少種は数に限りがあるからな」


「なるほど! なんとなく分かってきました。それで明日の初仕事はどっちでいくんですか?」


「お前はまだ経験が足りないから受付を済ませてからだ。どんな依頼かは……明日のお楽しみだ」



 そう言ったギルさんの口元はニヤリと笑っていた。

 出会ってまだ短い付き合いだが、良からぬことを考えているということは理解していた。




 翌日。


 ぐっすり寝て、しっかり朝食を摂り、ビシッと準備を決めた俺はボードの前でギルさんを待つ。

 腰のベルトには霧一振を携えて。


 <Dランク>と書かれた看板の下に2畳ほどの大きさのコルクボードがある。その中に依頼内容が書かれた30枚以上の依頼書がところ狭しと張り出されていた。

 俺は現在、星無しのDランクなのでいくつか依頼を見てみる。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

急募!!

【依頼内容】おつかい

・穴掘りネズミ除けの天然薬液×20kg

・食害ナメクジ用撃退塩×20kg


【依者主】農家 コメット

手塩にかけて作った野菜を出荷前に食い荒らされた!!

収穫で忙しいから代わりに買ってきてくれ!!

畑を食い荒らす害獣にぶっかけてやる!!


【納品期限】

2日以内


【場所】

コメット農場


【報酬】

6S


【難易度ランク】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

募集

【依頼内容】掃除

・海岸に打ち上げられた流木やゴミの撤去


【依頼主】ミーティア議会所 環境担当 フィリット

毎月恒例の海浜清掃のお願い

美しい砂浜を維持するために力をお貸し下さい


【納品期限】

8月末まで


【場所】

ミーティア議会所 環境部


【報酬】

日給8S


【難易度ランク】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

求む!!

【依頼内容】配達

・ベテラン飛脚遠征中のため人員補給


【依頼主】配達屋 左衛門

飛脚の遠征中で商品の配達が滞っちまった!

体力と筋力に自信がある韋駄天、待ってるぜ!

街の外にはベテランしか出さないから初心者でも安心!


【納品期限】

3日


【場所】

配達屋 韋駄天


【報酬】

完全歩合制


【難易度ランク】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

募集

【依頼内容】散歩

・依頼主のペットの散歩


【依頼主】マダム エリザベス

わたくしの可愛いペット、プーちゃんのダイエットを頼みたいざます。

ダイエットに成功できましたらご褒美をあげますわ!


【納品期限】

1ヶ月


【場所】

クリアーナ宮廷 


【報酬】

1kgにつき1S

目標マイナス10kg


【難易度ランク】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

募集

【依頼内容】調理補助

・宿泊施設での調理補助


【依頼主】料理人 ケンホウ

連日の宴会で人手が足りないです!

経験者の方優遇! 素人の方でも丁寧に教えます!

やる気のある方歓迎!


【納品期限】

7日間


【場所】

ホテル 旬彩


【報酬】

日給7S


【難易度ランク】



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 依頼書の多岐にわたる仕事を見て悩む。


 う~ん、こうして見るといろんな依頼が来てるんだな。俺は調理補助の依頼がやりたいな。

 こっちの世界に来てからというものの全く調理をできなかったからなぁ。

 腕鈍ってなければいいけど……。



「気に入った依頼はあったか?」


 声を掛けられ振り向くといつの間にかギルさんが立っていた。



「だいたい目星は決めました」


「どれだ?」


「この調理補助募集なんていいんじゃないでしょうか。俺はもともと料理をやってたので少しは自信あります」


「そうか。安心しろ、それも受けるぞ」


「それも? 他にも何か受けるんですか?」


「全部だ」


「……え?」


「全部」


「全部って言いますとここに貼ってあるDランクの依頼全てってことですか?」


「そうだ」


「え? でも納品期限が即日のものもありますけど……」


「なら急がないとな。期限が近いものから片づけていくぞ。 今のお前に達成できない依頼はない。忙しくなるぞ」


「マジすか?」


「マジ」



 何度確認をとっても同じ答えが返ってくる。どうやら聞き間違いではなさそうだ。

 ギルさんの目は真剣そのもので冗談の類ではない。


 呆気にとられているとカウンターに近寄っていき、ギルドの受付であるアイシャさんに声を掛けた。



「おはよう、アイシャ。今日からまた依頼を再開するから宜しく頼む」


「あら~、待ちかねたわよギルさ~ん。新人君の教育は終わったのかしら~」



 アイシャさんの語尾が伸びる癖は相変わらずのようだ。今日も笑顔が素敵だ。



「まだまだこれからさ。現場で場数を踏んでいく。早速だがシンにDランクの任務全てを受けさせたいんだ。納品期限の短いものから順にリストアップしてくれ」


「は~い! ちょっと待っててね~」


 そう告げたアイシャさんは後ろにある引出しの中から手際良く書類を纏めていく。

 間のあいた口調とは裏腹にテキパキと仕事をこなし、次々と羊皮紙に判が押され重なっていく。



 あれ? アイシャさん驚いてない? 事の重大さを分かってるのかな? 今あるだけでも30件以上もの依頼だよ? 二人ともおかしいのかな?


 困惑する俺を尻目にものの数分で書類を纏めたアイシャさんが羊皮紙を束ねカウンターにとんとんと、角を揃え終わる。



「お待たせ、できたわよ~。上から順に期限が短くなってるわ~」


「アイシャは相変わらず仕事が早いな」


「うふふ、ありがと~。ギルさんは依頼受けないの? Sランクの任務もあるわよ~」


「俺はコイツのお守りをしなきゃならないんでな、また今度にする」


「そう、優しいわね~。知ってると思うけど依頼に失敗したときは違約金として報酬金額の2割を徴収するから気を付けてね~。ギルドの信頼にも関わるから頑張って~」



 え? そうなの? 初耳なんですけど。



「では、いってくる」


「いってらっしゃ~い」


「行くぞ、シン」


「ひゃい」



 アイシャさんは笑顔のままひらひらと手を振り二人を見送った。




ここから、異世界でのブラックな生活が幕を開ける。



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