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新たな新世界へ  作者: 先生きのこ
第三章  果たせぬ約束
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第132話  GGG防衛チーム 三日目 全ての元凶

♢ ギルドGGGホーム  Olbatoオルバート・K・Shinシン ♢


 アイシャさんを治癒師ギルドに預けたあと、俺はスコルピオンと共にギルドへと戻ってきていた。

 ミーティアにはGGGの他にもたくさんのギルドや建物があるにも関わらず、何故かウチのギルドだけが集中的に荒らされ、破壊されていた。


 つまり、犯人の求めるものがここにあったと考えるべきだ。  

 踏み込んできた犯人と会敵したアイシャさんは何とか食い止めようと立ち向かったが力及ばず、破れてしまったのだろう。


 その時、ニコルさんや他のメンバーがいたかどうかは定かではないがみすみすやられるハズもない。

 今はもぬけの殻だとしても手掛かりが残っているとすればここ以外にない。


 今一度、念入りに捜索し同時に行方知れずのギルさんとニコルさんも捜す。

 二人が無事なら必ずこの場所に戻ってくることだけは確かだ。



 スコルピオンと手分けして瓦礫をどかし、埋もれて身動きが取れない人や生存者を捜したが一向に見つからない。見つからないということは良いことかもしれないが、そうなると余計に不可解だった。


 

 これだけ破壊されているのに、人的被害が少なすぎるのだ。

 今のところ被害を受け発見できたのはアイシャさんのみ。


 内装や家具は大いに荒らされているにも関わらず、争った形跡や血痕がない。

 僅かに血の付着した包帯や布が残されていたが、それらがあるということは怪我の手当てを受けていたということになる。

 

 

 それに負傷したアイシャさんだけを放っておき、それ以外の人物は跡形もなく片付けるなんて不自然すぎる。

 いくら緊急時とはいえ、あの騒動の中GGGの建物内にアイシャさん一人だけしかいなかった、なんてことも有り得ない。



 となると、危険を察知した誰かが建物内から人々を逃がしたのだろう。

 一体誰が?


 そんなの決まってる。

 ニコルさんだ。


 でも、ニコルさんはここにはいない。

 つまり犯人に連れ去られたか場所を移したということだろう。

 その道中でギルさんと合流し、共に移動したと考えれば二人の姿が見えないことに辻褄が合う。


 

 いや、待て待て。

 そうじゃない!


 それだと、アイシャさんは誰にやられたんだ?

 順番が逆か?


 最初にニコルさんとギルさんをギルドから連れ出し、その後にやってきた別の者がギルドを襲った。

 その際、残ったアイシャさんが人々を逃がし犯人と戦ったが破れる。


 うん、これだろう。

 そう考えるのが一番筋が通っている。



 犯人は複数だ。

 ニコルさんとギルさんを連れ出した者は二人に任せるとして、アイシャさんを倒した者がまだ残っている。


 そもそも犯人の目的はなんだろう?

 なぜ、GGGを襲ったんだ?

 

 金か? 

 いや、俺が借りている私室は荒らされていたが部屋に置いていた金に手は付けられていなかった。


 GGGに恨みがあるのか?

 違うな。それなら街を攻撃するという回りくどいやり方をせず、ギルドだけを爆撃すればもっと簡単で大ダメージを与えることが出来る。



 となると……、何だ?

 クソッ、分かんねぇ……。


 と、いつの間にか手を動かすことを止め、物思いに耽っていると横から野次が飛んできた。



「おいおい、なにボケっと突っ立ってんだよ! お前のギルドなのにお前が働かなくてどうする? まさか諦めたんじゃないよな?」


 ハッと顔を上げると不満げな顔をしたスコルピオンに注意された。

 


「あぁ、スマン。けど、ちょっと気になることがあってさ……。なんでギルドを襲った奴は“金”も“命”も取らず、荒らすだけ荒らしていなくなったんだ? 奴等の目的は何だと思う?」


 俺の問いに少しだけ考えたスコルピオンは人差し指を上げすぐに答えを示した。



「そりゃ、“ 人 ”だろうな」


「……人?」


 俺が思いもしなかった答えをいとも簡単に導く。



「あぁ。厳密に言えば、人というより“ 能力 ”って言ったほうが分かりやすいか。

 知っての通り、魔力は千差万別で多種多様。魔力を用いれば大抵のことはなんだってできる。けど、それも魔系統による適正と能力の発現次第だ。

 人ひとりで発現できる能力は限られてるわけだから、どんなに便利で優秀な能力でも全てを手にすることは不可能。

 だから、人を攫ってきたり奴隷にしてでも欲しい能力を手に入れるっつー、強引な考え方をする奴は多いぜ」


「ッ!!」


 なんてことだ。

 スコルピオンの推測が正しければ、ウチのギルドの誰かが人攫いの標的にされているということになる。

 一体、誰を狙ってる?


 右京か? 左京か?

 あの二人なら自然タイプでレアなはずだ。

 レアというなら俺だってそうだ。確か以前、聞いた話によれば創造タイプが一番稀少だと言っていた。


 いや、そもそもどうやって相手の魔系統を知るんだよ。

 俺が創造タイプだと知ってる人は少ないし、ギルさんとの修行で自分の魔系統は隠すよう教えられていた。 



 おそらく犯人に確証はない。

 けど、なんらかの予測を立てGGGに目当ての能力を持った人物がいる可能性が高いことを突き止めた。

 そのために邪魔な人物をギルドから遠ざけ戦力を分散させる。


 まさか、今回の一連の襲撃は陽動?

 全ては俺達をバラけさせるために?


 そこまで考えが纏まった時、またもスコルピオンから声が掛かった。



「おいシン、誰かこっちにくるぞ。お前の仲間か? それに……、なにか引きずってる?」


 一旦考えることを中断し、ニコルさんかギルさんが戻って来たのではないかと近付いてくる人物に目を向けるが、俺の期待は脆くも崩れ去った。



 そして、目にする。

 銀髪をオールバックに整えた若い男、切れ長の目で真っ直ぐこちらを見つめ額には小さな角が一つ生えており、その表情は薄く笑みを湛えていた。


 見間違うハズもない、……鬼人族だ。

 

 

 しかし、銀髪の鬼人族はこれまで出会った白鬼や黒鬼、黄鬼とは別格の魔力を滲ませ視界に入れた瞬間、背筋に悪寒が走る。

 更に奴が右手で引きずっていたものを見たとき、それまでごちゃごちゃと巡らせていた思考が真っ白に塗り潰された。




 それは、瀕死の右京とスウィフトさんの姿であった。 


 二人はすでに意識が無いのか人形のように力無く引き摺られるまま無抵抗で、長い距離をそうして引っ張られてきたのか服が泥で汚れている。


 銀鬼はギルド前まで来ると二人の襟首を片手で掴みながら乱雑に俺たちの前へと放り投げ、一瞥したのち口を開く。 

 


『一度だけ聞こう。予知の能力者(・・・・・・)はどこだ? 選べ。喋って生きるか、ただ死ぬか。どっちだ?』


 何の脈絡もなく問いかけられた言葉の意味が分からない。

 否、それ以前に俺の怒りは頂点に達し、とうに聞く耳など持ち合わせてはいなかった。



「シン。……た、頼むから落ち着け。なっ!? ぜ、絶対に暴走するんじゃないぞ。あいつはヤバすぎる! あんな不吉な魔力を纏っている奴は見たことねぇッ! 戦ったらあっという間に殺されるぞ!」


 額に脂汗を滲ませているスコルピオンは俺と鬼人族、両者を刺激しないよう必死に宥めようとしている。



 俺とて戦う前から勝敗が決していることは肌で感じていた。

 万が一にも勝ち目はない。

 スコルピオンと共闘したところで何も出来ずに負けるだろう。

 


 だがッ! それでも!!

 たとえ、ここで死んだとしてもッッ!!

  


「お前だけは!! 許さねぇッッ!!!」


 もう我慢しない。 


 俺の全てを。

 俺のありったけを。


 今、この瞬間に出し尽くす!! 



「ゥオオオォォオォォッッッ!!!」 


 全魔力を開放した俺は叫び声を上げながら霧一振を抜き取り、銀鬼へと突っ込んだ。


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