第12話 師弟と入団
冒険者の手続きを済ませた俺とニコルさんはギルドGGGへと戻ってきた。
「無事、冒険者にはなれたようだな」
食堂でまっていてくれたギルさんと合流し遅めの昼食を食べる。
ランチを食べながら三人はこれからの予定を立てるべく話しあう。
「おかげさまでここまできました! ありがとうございます」
「礼を言うにはまだ早いぞ。お前はこれから所属ギルドと職業を決めなきゃならん。何か希望はあるか?」
俺はもう心の中では決まっていた。
「ギルドはお二人の所属されている【GGG】に、職業は料理人を目指します。そういえばGGGってなんの略なんですか? 入団テストとかあるんですか?」
「GGGはこのギルドの創設者の名前だ。【Garrick・G・Gusman】。 かつて実在した五ツ星の仲間だ。
俺やニコル、このギルドの連中はグスマンと同じように五ツ星を目指し今も修行中だ。ちなみに現在、五ツ星はグスマンを除いてミーティアに2人しかいない」
「かつて……、ということはその方はもう亡くなったんですか? 一度会ってみたかったです」
「違うんだよシン。グスマンは死んだわけではないんだ。SSランクの任務中、仲間を逃がすために自分を犠牲にしてそれ以降、彼の姿を目にしたものはいないんだ」
「じゃあ、今もどこかで生きているんですか?」
「それは分からない。もう何年も帰ってこないから生死不明なんだ。議会は行方不明ということで処理しているけどね」
「そのために俺達は強くなり助けに行く。グスマンは必ず生きて俺たちが来るのを待っている。今度は俺たちが助ける番だ」
そう告げたギルさんの瞳は決意の焔に燃えている。
「なのに議会の奴らときたらいつまでたっても五ツ星に昇格させずに依頼を受けることもできない。クソが」
これまで何故ギルさんが議会の人間を嫌うのか不思議だったがこれで理由が分かった。
俺にとってギルさんやニコルさんが恩人のように二人にとってグスマンという人は恩人なのだろう。
できることなら今すぐにでも助けに行きたいはずだ。
「なら急がないといけませんね。きっと待ちくたびれていますよ」
それを聞いた二人は不敵に笑う。
「昨日今日この世界にきた若造がよく言うぜ。だがその通りだ。いずれお前の力も借りることになる。強くなれよシン!」
「はいっ!」
この日、新たな目標ができた。
自分のお店をかまえること。グスマンを助けに行くこと。
明確な目標がある人間の成長は早い。
「あれ? でも、はぐれた場所が分かってるなら議会を通さなくても直接、助けにいけばいいじゃないですか?」
「それができないから困ってるんだよ。前に簡単に説明したけど個人のランク、つまり【星】の数が多くないと難易度の高い依頼は受けることができない。これは分かってるよね?」
俺は黙って頷く。
「そして五ツ星の者でしか受けることが出来ない依頼がある。それはSSランク任務の未踏地の開拓」
ニコルさんは鞄から折りたたまれた1m四方の地図を取り出しテーブルの上に広げる。
縮尺の大きさからきっと世界地図だろう。
「これは今、確認されている最新の世界地図。ちなみにミーティアはここね」
ニコルさんが指差した場所は地図上部の大陸と地図下部の大陸に挟まれた真ん中の島国の海岸付近。
形で表わすと漢字の『三』に似ており、その2画目にあたる部分だ。
その他にもいくつか島国が点々としているがミーティアは比較的東寄りに位置している。それ以上進むと地図が見切れてしまうくらいに。
「この世界地図に載っている場所は人類が開拓した安全な地域なんだ。この上空なら空も飛べるし海も渡れる。けれどこの外の世界。そこはいまだ人類が足を踏み入れていない場所。
なにがいるかも分からないし、どんな地形かも分からない。常に死の危険が伴う超危険地帯なのさ」
「当時、グスマン率いるGGGは未踏地の開拓のために旅立った。僕とギルも同行した。
けれど結果はさっき言った通り。予想外の強さのモンスターに返り討ちに会い部隊は壊滅」
「グスマン一人を残して命からがら逃げ延びたってわけさ。被害は甚大。当時のギルドメンバーは80人はいたけど、その遠征で19人が殉職。
残りは脱退や移転で今では16人まで落ち込み、唯一の五ツ星を失ったGGGはSSランク任務を受けることが出来なくなった。そしてこれは3年前に起きた話し」
「これが助けに行きたくても行けない理由。僕らは非力だ。絶望的にね」
あまりのスケールの大きさに言葉を失った。
安全な地帯だけでも地球クラスなのにこのガイアはそれ以上。とてつもなくデカい星なんだ。
なにが地球に近い星に転生させただバカヤロー。
全然違うじゃねーか自称神様。
そんな重苦しい空気をギルさんが声で掻き消した。
「クヨクヨしててもしょうがない。そのために俺たちは修行を積み仲間を集め、グスマンを助けに行くと誓った! いいかシン! GGGに入るってことは外の世界に行くってことだ。
お前にその覚悟があるか? 今ならまだ変えられる。それでもGGGに入りたいか?」
ギルさんは真っ直ぐに俺の目を見て、問う。
「当たり前じゃないですか。俺は一度死んで蘇えった男ですよ。夢を叶えるまで死ねません。最後までお供させて下さい」
ニコルさんとギルさんは顔を会わせ、フフッと笑った。
「そうだったな。改めてようこそ【GGG】へ。歓迎するぞシン」
「よろしくね! シン! GGG代行団長としてギルド入団を認めよう!」
ニコルさんって現GGGの団長だったのね。そっちのが驚きだ。
二人と握手を交わし、晴れて俺はGGGの一員となった。
第13話は明日、18時に更新致します。