蝶と少女の夢
少女は夢を見た。
「私は魔法が使える」
「私は誰かを救える」
「誰かが見た夢を私も見て、現実に叶えてあげられる魔法」
少女は誰かの夢を叶えた。
「ユウキ君は野球選手の道を進むことができた! あれだけ頑張ったんだから、プロ行かなきゃ!」
少女は誰かの夢を叶えた。
「ハルちゃんの大好きな彼は顔もいいし、優しいし、ハルちゃんにぴったり! ハルちゃんもいい子だからお似合いだね!お幸せに!」
少女は夢を叶えた。
夢の中で。
誰の?
誰の夢?
全て、魔法が使えることも何もかもが夢でしかないことに。
彼女は気づかない。
なぜなら彼女は夢の中だから。
とある人は蝶になる夢を見た。
その夢を見たのは蝶だった。
蝶は人間に憧れていた。
蝶はーーー
少女はベッドの上で静かに眠っていた。
少女はもう夢から覚めない。
少女はもう永遠の夢の中なのだから。
だから、だから
少女は夢を見る。
誰かを助ける夢を。
誰かを救える自分の夢を。
自分を助けられなかったことを。
知っているから。