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そのじゅういち

恵まれた容姿、物腰、佇まい、存在感。それが、古賀 雅人という少年が周囲から誤解される要因だった。



「っていうか、詐欺だと思うよ、私」

放課後、学食で待ち合わせた友人達にぼやくと、何ともいえない苦笑が返ってきた。

「黙って見ていれば、ね」

「いや、話しいても十分格好いいよ。ただ、会話が成り立たないけど」

声変わりした後のバリトンボイス。そこら辺の声優さんも真っ青だ。



「よく、キリってば理解できると思うよ」

「小学5,6年の同じクラスでの日直活動、中学の部活三年。流石に慣れた、というか慣らされた」

視線で、ちょっとした動作で。私より付き合いの長い須本君が近くに居て解説してくれていたのも、それに拍車を掛けていたと思う。

「外見は遺伝子だよね、試合見に来られたご両親にご挨拶したけど、美男美女のカップルだし」

「親公認」


笑いながら言う朱音ちゃんは、実は私が習っていたピアノ教室の先生のお嬢さん。受験を機に辞めてしまったけど、入試で会った時にはお互い驚いた。


「やめて、それ」

「お父さん、建築会社の社長さんだっけ?」

「うん、小、中学校で何回かPTA会長も勤めたことあるらしいよ」

これは、別の科に進んだ同中の友人の台詞。教育熱心、というわけではないが、親分肌のお父さんだ。部活にも差し入れを持ってちょくちょく遊びに来てくださった。

「硬派、だよね。喧嘩強くても自分からは売らないし」

「お母さん方のおじいさんが古武道の道場やっているんだって」

これは、須本君情報。今でも二人揃って、週に一度は稽古をしてもらいに通っているらしい。

「須本君曰く、武道を習っているから、喧嘩はご法度なんだって。あれは、相手の力を流しているだけだ、っていうけど、よく解りません」

確かに、相手に怪我させたって話も聞かないしね。

あ、待てよ。一度だけあったわ…うん。表沙汰にならなかっただけで。



「好条件、だねぇ」

「好条件、だよね。会話さえ成り立てば」

「面倒くさがりなんだよ。古賀君見ていると、家の兄貴の方がよっぽどマメだって思っちゃうもん」

「ええっ!?佐野先輩が?いつもきちんとしてそうなのに」

「甘いよ、さっちゃん。アノヒト、放っておけば、2,3日着替えない、風呂入らない、平気でするから」

「いや~先輩のイメージがぁ~」


学校から帰って、ご飯食べて、そのまま寝ちゃおうとするからね。五月蝿く言って、服着替えさせて、不潔なお兄ちゃんなんか嫌いとか何とか言ってお風呂入らせて…ああ、慎兄の苦労が目に見えるようだ。



「そこまで理解しているのなら、付き合っちゃえば?」

「女の子扱いしてくれない彼氏はいらない」

「うわ、きっぱり」

「でも、確かにね~中学のとき見ていて思ったもん。キリちゃんへの扱い、完全に男子と同じ」

「ふふふ、合宿で『風呂いくぞ』には、流石に周囲の先輩達に袋叩きにされていましたよ」

「嘘っ!?」


実話ですとも。須本君さえ呆れて先輩に加勢しましたから。


「友達同士で一緒に出かけたとき、スカート履いていったら『らしくないから、止めろ』これ、照れ隠しとかじゃないから」

素で言って、これまた須本君に叩かれたし、美波ちゃんに叱られたけど、本人絶対に分かっていなかったと思うぞ。言っておくけど運動苦手な私と美波ちゃんが一緒だったため、あの日行ったのは映画だった。最初から、そういう約束だった。



「じゃあさ、女の子扱いしてくれるなら、付き合う?」

「私はわが身が大切です。そっち方面で絡まれるのは身内だけで十分」

「あー、先輩もそうだけど、尚志くんも将来楽しみな顔立ちしているもんね」

全く、我が家のDNAは本当に男に有利にできているもんな。

「第一、牽制に使われるって解っているのに、不必要な敵作りたくはありません」

「牽制なの?っていうか、誰が誰に対して?」

「古賀君が周囲の女の子に対して、だよね?キリ中学のときもやられていたもん」

朱音ちゃんの問いに答えてくれたのは、小学校から一緒の川上さん。さっちゃんと同じ商業科。


「本人としては不本意らしいけど、自分の容姿が周囲にどう映るか自覚しているもん。お兄さんもいるしさ」

「古賀君、お兄さんいるんだ?」

「うん、私立の中学行ったけどね」


有名私立男子校の名前を挙げると、周囲が頷いた。そこは、将来、医者とか法曹界、経済界に進む存在が集まっているような所だ。


「そのお兄さん見ているからね。自分の外見が女の子にどう映るのかは、ちゃんと知っている。だからといって女の子を周囲に侍らすような趣味もないし、ましてや好きでもない子と『とりあえず』付き合ってみることもしない」

「厄介だよね。中学のとき、キリ、結構陰口言われてたから、古賀君にべったりひっついて、邪魔をする、って」

「まぁ、中学はねぇ、兄貴がいたから、私が面食いとかじゃないこと殆どの子たちが知っていたんで、言われても実害は無かったんだけどね」

「何か言われた?」

心配そうに聞いてくるさっちゃんに、軽く肩を竦める。


「古賀君がかわいそうだから、離れてあげて」


うわーとか、なにそれーとか。友情に厚い女の子は有り難いです。





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