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そのきゅう

人生進めていけば、顔を覆いたくなるような黒歴史の二つや三つ…いや、この先もっと増えていくだろう。

やり直しの中学3年間――やり直し、じゃないね、新しい、だ――の中で、後悔は山ほどしたけど、でも自分が選んで決めたことばかりなので、それなりに納得して過ごしてきた。

向こうで有る程度成長して、社会人になって見にしみたことが、同じ後悔するのであれば、自分が決めて行動しての後悔の方が納得がいく、というものだった。

それをこの時代から実践しただけ。






とりあえず、平穏無事かは兎も角、楽しい三年間だったと思う。いい友人にも恵まれたし、古賀君たちが締めていた事もあって大きな問題を起す学年でもなかった。

進学するに当たって、向こうとは違う道を自ら選んだ。

兄貴の協力と自身の努力で、そこそこの成績を収めていたので、進学先は兄貴ほどではなかったけど、向こうに比べて選択肢の幅が広かった。自分が知っている世界と異なるとはいえ、文明の進む先に大きな差異はない、と思い選んだのが情報処理の学科を有する商業高校だった。


今の成績なら、もっと上のレベルの学校に行ける、そちら方面なら大学になって進めばいいと先生たちは言ったが、自分が選んだのなら、と父も義母も兄も応援してくれた。ここが、実母と義母の違いだろう。実母はこの先、色々有利だからと、桜花とはまた別の有名女子校に私を入学させたのだ。

まぁ、あの高校と大学の時代は、それなりに楽しかったし、結婚後もつきあっていけた友人たちに巡り会えもしたけれど、それを差し置いても、私自身そちら方面に興味があったのだ。


彼の友人たちには、この先縁があれば、また別の方面で巡り会えるだろう。ただ、その時の彼女たちが、自分の知っている相手だとは限らないけれど。


環境や選択が変われば、人は変わることが出来ると自分自身を振り返ってそう思う。

人の顔色ばかり窺って、卑屈だった私はここには居ない。身の丈以上を望む母も居ない。

自分の掌の中で、できるだけ多くを掴み取り、それ以上を望まないように、そんな人生をこの先も歩んで生きたいと思う。

だから、此処から先「むこう」と「こちら」を比べることは止めよう。異世界トリップでも、タイムトラベラーでも無い、この世界を唯一に生きていこうと思う。


高校の合格と共に、自分自身で決めた大きな始めの一歩。




ちなみに、同中からここに進学したメンバーの中に古賀君がいるのは、何の因果か。7割女子の商業高校、須本君は慎兄が卒業した工業高校に進学した。古賀君もそっちに行くと思っていたんだけどな。






「多分、お前たちは似ているんだろう」

卒業前、同じ高校を希望している、しかも学科も同じということがわかった後、須本君はそう言った。

「考え方とか、方向性。一緒に部活で過ごして思った。良く似ているなぁ、ってさ」

そうかな?と首を捻ると、本人たちはそんなものだろう、と彼は笑う。

「特に雅人なんか見ていると思う。将来を、未来を見据えているんだな、ってさ」

確かに、部活では一歩先を読む司令塔だったけどね。

「意味は違うけど…まぁ、いいさ。卒業しても遊ぼうぜ。美波もそういっているし」

美波ちゃんとは、言わずと知れた須本君の彼女の名前だ。



将来を見据える、という事なら彼にも同じことが言えると思う。だって、美波ちゃんのお家って、電気工事関係の会社を経営しているんだもんね。後が怖いからあえて突っ込まないけどさ。


「そうだね、受験で暫く会っていないから、美波ちゃんとも会いたいね」

俺は会っていたぞ、とのたまう奴は放っておいて。

因みに、兄貴は最高学府へと見事入学を果たした。本人は、地元の国立大学に行きたがっていたようだけど法曹界を目指すなら、そちら方面の方が有利だと周囲に説得されて、渋々進学を決めた。なんて、罰当たりな。

本当は就職するつもりだった慎兄は、兄貴に引きずられ都内の工業大学に進学した。特に慎兄は学校創設以来始めての国立大学入学者と話題になったらしいけど、だってねぇ、兄貴と同じコースの予備校に通っていたんだもん、しっかり受験対策はできていたと思うよ、うん。


何故、就職希望の慎兄が予備校にって?兄貴の陰謀と叔父さんの思惑が一致した結果ですよ。ご自分の学歴が低いことを気にしていらっしゃったおじさんが、家の父親に相談されたのが、慎兄の不幸…もとい、この結果を生むことになった、とだけ申しておきましょう。




私はといえば、第一志望にに見事合格しました、おかげさまで。いくら、在学中の成績が良くて、自己採点もまぁまぁ、だと思っていても、自分の受験番号を確認するまでは不安でしたよ、はい。

商業科を受験したさっちゃんこと、岩下佐織ちゃんと一緒に抱き合って喜びましたとも。書類抱えて、二人して先生に報告に行きました。古賀君?さあ?受験番号が一番しか違わないから、合格したのは知っているけど、そういえば向こうで会わなかったね。



そう思っていたら、その夜美波ちゃんから電話を貰って、須本君の合格報告と共に、4人で遊びに行こうって話しになりました。

当日、ジーパンとトレーナーで出かけようとした私は、義母に捕まり、何時の間に買って来たのか、「ハマトラ」系の服。ブラウスにベストにスカート、という出で立ちに替えられてしまった。

断じて言うが「友達と遊びに行く」のであって、デートではないのですよ、お義母さま。



15分前行動の私を良く知っているので、殆ど待つことなく美波ちゃんもやってきた。お互いの服を見て「可愛い」とやっていたら残りの二人が連れ立ってやってきた。二人とも、無地のカッターとジーパンという装い。時間ぎりぎりだけど、遅れなかっただけでも良しとしよう。




そこで、はたと気が付いた。


私服で会うの初めてじゃん。



対外試合は当然ユニホームか体操服、もしくは制服。一緒に何処かへ遊びに行く、なんて女子だけでやっていたから男子と出かける事なんて基本無かった。

そして、おもわず固まりましたよ。スポーツやっていたから、二人ともそれなりに体つきがいいんだけど、それにしても。


須本君はこの3年で、強面に甘さが加わり、特に美波ちゃんが絡むと視線が優しくなり顔つきも穏やかになる。古賀君も幼さがとれて、甘かったマスクに精悍さが加わった。

170cmを越える身長はまだまだ伸び盛り。際立った格好をしているわけではないのに、さっきから周囲の女の子の視線が集まっている。




当然内二人は、カレカノなので行動は自然古賀君と取ることになり。



こんな苦行、二度とごめんだと思ったのは言うまでもない。


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