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不可思議なる夢another story episode1

作者: 高島啓市監修小林摩也

実には蝶には思い人ならぬ思い蝶がいた。その蝶は毒花の番人たる役目を押しつけられていたもので勝手に毒花によその蝶や蜂が近づかぬよう四六時中見張り役をさせられていたため毒花の、おりを受けてその蝶もまた飛べなくなっていたのである。

しかし思いだけはかろうじて毒花を通じて交換しあえた二匹の蝶だった。

毒花はその二匹の蝶のことを気づかい、さまざまな手段を尽くして招き入れようと画策していたが共に飛べなくなっていた二匹の蝶にとっては無用のものであった。そして季節は過ぎ冬至を迎える頃に二匹の蝶に決定的な別れが訪れた。

まがまがしき雄蝶が心返ししてしまうのである。それに気づいた毒花は雌蝶に注進するのである。

「もうあの雄蝶のことを思うのは諦めてはどう?心代わりをしたみたいよ」その言葉をそしゃくする時のない雌蝶は絶望するでもなくこう言った。

「わかりきっていたことよ。私にとって大した話じゃないわ」そう言い切る雌蝶を見、かすかに悲しんだ毒花はこう言い添えた。

「私のせいねきっと。でも私にはもうあなたは必要ではないのよ。実をつけるべく受精も果たしたしこれ以上誰も近づく危険は去ったわ。あなたに最後の飛ぶ力を誰か与えてくれないかしら」

「ふん、それがわかっていたらとっくの昔にここから飛びさっていたわよ」毒花は雄蝶にパルスを送り「ただの裏切り蝶ねあなたは」と語りかけた。

「お互い思いあっていることはわかっている。しかし僕はもう飛べる体ではないんだ。しかも僕に合う雌蝶なんか本当はここら辺りにはいないんだよ」

「本当?」と雌蝶。

「嘘をついてすまない。しかし僕はもう……」

「ああ何をか言いたいのだけれど言葉が継げないみたいね」と毒花。

「その雄蝶は嘘つきよ」

「違うのよ」「何が?」と雌蝶。

「あなたのことを心底思うがゆえに近づく手段を考えに考えたのだけれど遂にかなう道筋が見つからずに絶望してしまったのよ」「ふんだ、誰がそんな話信じるものか。とっとと死にやがれとでも伝えといてくんな」「あなた達引かれあっているくせに」「何言ってんだこのすっとこどっこいが。あんたのせいで私は飛べなくなったんだよ。自分だけ種を付けやがって私は置いてきぼりさ。せいぜい私はあんたを見限って近くの雄蝶の相手でもしてくるよ」「ああ……」とうめく毒花と雄蝶。

「しまった、完全に怒らせてしまったみたい。どうしょう」と毒花。その一瞬パルスがきらめいた。

「諦めちゃいけない。まだ僕は最善を尽くしてはいないんだ。君のことを心から思っている。必ず僕は復活するから」「………」雌蝶はそれっきり返答をするのはやめてしまった。その後二匹の蝶のことは誰も気づかなくなり数年が過ぎた。そしてどうやらパルスの交換だけは細々と続いたようだった。

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