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神姫1  作者: 悠矢
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少女の心

第四話

 私は思いを巡らせた。この人について行って何になる?私を苦しめた張本人が目の前にいるんだ。何も見なかったことにしていつもの日々に戻ろうか。でもあんなことを聞いてしまった。

 『あなたは世界の王です』と。

 こんな私になぜ頼んだのだろう。いったい何をすればいいのだろう。今更。今更過ぎる。だから私はこの話を「はい」と簡単に受け答えることは出来ないのだ。またそれで不思議なのが、目の前にいる人が私を脅さないこと。普通だったら、「はい」というまでわたしにつめよるでしょう。

 

 なぜだろう。

 解らないことは考えればよい。

   

 

 きっと


 きっと


 この人が私を畏怖しているから?




 頭の中が目の前の人の言葉でぐるぐると廻る。


「どうかいたしましたか」

優しさのこもった声が私を我に戻す。怖いなんて感情は私には一切向けられていない。私を信じているから彼は私に優しく接するのだろうか。だったら私はこの人の気持ちを受け取って、「はい」というべきなのだろうか。でもその前に私には疑問がある。

 この人を信じていいのだろうか。

 この優しさは本物だろうか。

 偽善者なら沢山見てきた。私をもてあそんで、苛めるやつ。罠に嵌めるやつ。この人はその部類にはいるのだろうか。

 この人にさっき、出会った。それだったらまだ「いいえ」といってもいいのでは。でも私はこの人を信用しかけている。心の奥底で鍵をかけて檻の中にいるもう一人の自分が、『この人の心をみてみろ。期待しているぞ。だから「はい」と返事をして信じろ』と訴えている。

「大丈夫です」

短く答える。男の人は困惑した表情でこちらを見つめる。


ひどい頭痛がする。吐き気もする。

 




 だんだん思考が鈍ってきた。怪我のせいだ。この人を信じるなんて。そんなのは絵空事だ。結局は裏切られる。そんなのは自然の法則である。






 眼の前が霞む。大丈夫ではないことは解った。けどここで倒れるわけにはいかない。何をされるかわかったものではない。






 帰ろう。そうだ、帰ればよいのだ。こんなことに気付かなかったのは今までの中で一番の汚点とも言えるであろう。

 立とう。壁をつたって。

 

 足に力が入らない。


 男の人が私に近づく。


 怖い 恐い こわい  コワイ


 抵抗もする余力なんてない。言葉も発することさえ可能には出来なさそうだ。





 意識が持っていかれる。



 目の前が真っ暗に。



 あれ? これって今日2回目? いろんなことが一気に起こったな。こんな事をなんて言うんだっけ。


 意識を失う前にこんな情けない事を考えていた。もっと別のことを考えるべきだったのではないか。後悔してももう遅い。

 

 次に目を覚ますときはいったいどんな部屋にいてどこにいるのか。何を考えても私の意識は闇の中へ落ちていく。それと同時に私の意志も落ちてゆく。

 

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