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「まずい。非常にまずい。リアルタイムでは思いっきりクリスマスが終わってしまう」


 ニコラオスは、大量の荷物をそれぞれのトナカイ達にも背負わせながら、落ち着きないように忙しげに歩を進めていた。


「それでも10件近くは配ってきたわよ」


 ヴィクセンは何とかフォローするが、それが返って余計に彼の焦燥感を煽ってしまった。


「そうだ。そうなんじゃよ。もうすぐクリスマスが終わろうってのに、まだ10件近くしか配っていない。何せお前達も分かるように、まだこれだけ大量の荷物があるんだ!」


「ピュギプギ……!」


 ウリ坊ダッシャーもその怪力を買われて、もれなく手乗りサイズの小ささでも猫用の胴体ベルトを着用させられて、荷物運びに頑張っている。寧ろ、引き摺る形になっているのは、仕方がない。


「おやおや。続いての宛先は、マンション住まいの方ですか。これはいい。少なくとも、数件分はまとめて配れそうですよ」


 一つのマンションの前で足を止めると、冷静沈着にドンターが優しくニコラオスの気持ちを宥める。


「うむ。そうだな……って、ここ煙突ないやんけ!」


「まだ今のご時世で煙突から入るつもりだったのかい? 今まで何の為にポストINしてきたかの意味を、少しは学習して欲しいなぁ」


 マンションを見るやそう騒ぐニコラオスに、キューピッドは苦笑する。


「だけどさ。今までは一軒家だったりしたから、玄関先に置いていても問題はなかったけど、マンションとなるとその手段は通用しそうにないよな。プレゼント次第では、ポストに入る大きさばかりとは限らない訳だし」


 プランサーはマンションの最上階まで見上げながら口にする。するとみんなの前に、大きく進み出たのはルドルフだった。


「ここは私に任せて、アンタは他へ急ぎな」


「ルドリー……。ありがとう。恩に着て朝の就寝時には、お礼に脱衣を手伝ってやろう!」


「いっ、いいから早く先に行けったら! ニコルのバカ!」


 夫の言葉に、ルドルフは頬を紅潮させると次へと促した。


「こんな老僕にまだ喜びと恥じらいを感じられるだなんて……。ハニーも物好きだなぁ」


「ワシの手足となって働くトナカイが、主に向かって老僕とはなんだ! そこまで下卑た目でお前もワシをみてんのか!? キューピッド!」


 しかし言い終わらない内に、そのトナカイ達はみんなして先へと前進していた。


「ほら! こっちだよニコル! 僕らに手を引かれないと、満足に歩行もままならないのか!?」


 そう遠くから叫ぶプランサーに、ニコラオスは愕然としながら屈辱気に後を追った。


「全く。お前らトナカイときたら、主人であるサンタのワシを気遣う事もせんとは……って、あれ? ダッシャーは?」


 漸くトナカイ達に追い着いたニコラオスはそうぼやきながらも、ふと思っていた数より少ない事に気付く。


「あら、本当だわ。ダッシャーがいないわね」


「大方ミセスにくっ付いて行ったんでしょう」


 ヴィクセンとドンターが平然と口にしながらも、その足を止めることはなかった。




 一方、マンションでは騒々しい破壊音が響き渡っていた。


「行けぃ! ダッシャー! この小癪な鉄ドアの更にチェーン付きの分際で、抜けシャアシャアとサンタにプレゼントを要求しておきながら、戸締りに抜かりない訪問先のドアを、片っ端からクラッシャーアタックしてブチ壊しちまえぃ!!」


「ピギーーーー!!」


 ドオオォォーーン!!

 ドガアァァアァーーン!!

 ズドオォォーーン!!


 こうしてド派手に正面突破するや、プレゼントの対象児の寝顔にのめり込むようにしてそれを押し付けながら、配っていた……。



 

 ヤベェ。

クリスマス、終わっちまった……orz

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