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 “サンタさんへ。今年はオネショをしませんでした。なので、トランスフォーマーマスターピースMP-01コンボイのオモチャをください”


「だって。この子はアメリカNY在住のジョン君。10歳の男の子からだ」


「OK。ジョン。はい次」


 兄クランペンの手紙の朗読を聞きながら、次々とPCでリストアップして品物と照合していく弟のクランプス。


 “サンタクロースさん。お父さんが毎晩お酒を飲んでは暴力を振るってきます。優しいお父さんにしてください”


「お父さん、荒れてるねぇ。この子はドイツのリーラちゃん。ドレスデン在住の7歳の女の子」


「任せろリーラ。このお兄さんがそんなクソ野郎、釘バットで滅多打ちにして更生させてやろう。はい次」


 クランプスはリストアップした彼女のデータから、父親の画像を呼び出すとロックオンと表示した。


 “サンタさん。どうせ本当はこの世にはいないんでしょう。私知ってるのよ。それでも幼い頃に抱いていた僅かな夢と希望に縋りつくだなんて、私ったらバカな女……。3ヶ月前、2年間付き合った男と別れたわ。彼、ジャンキーだったの。しかも浮気性。最悪でしょう。彼と別れて私、タバコを始めたの。見る目がなかった私が悪かったのよ。今年のクリスマス、一人ぼっちで孤独だわ。こんな私に、温もりをプレゼントして欲しいわ”


「うわぁ~。痛い女だなそいつ。どうせお前行きだな。ラペン」


「うん。そうさせてもらおうか。ちなみにこの子はフランス在住のシャロン。13歳の女の子ね」


「13!? 大人の女じゃねぇのかよ! 随分冷めた性格してんのな! そのガキ! つか、13はさすがにお前無理だろ! ロリコンだぞ!」


「何言っちゃってんのラプス。こういう女の子こそ、早い内に女の喜びを教え込む必要があるんじゃないか……。彼女、ヴァージンでありますように」


 そうして両手を組んでから、天を仰いで陶酔した表情で祈る姿勢を見せるクランペンに、容赦なく頭突きを繰り出すクランプス。


「サンタの息子が誰に祈ろうってんだコルァ! てめぇお袋にバレたら殺されっぞ!」


「アハハ。だよね。じゃあ仕方ない。この子は鞭打ちの刑でMを開花させてやろう」


 弟の頭突きを受けた頭をさすりつつ、穏和な口調ながらもクランペンの表情には早くも、本来のドSな笑みが浮かび上がる。そんな兄に呆れながらクランプスは、その13歳のシャロンをブラックリストに入れて、ラペンターゲットの表示を打ち込んだ。


 “サンタさんへ。今日僕が学校から帰ってみると、家でパパがママを包丁で刺し殺して、そのパパが首を吊って死んでいました。二日前、夜中トイレに起きた時こっそりパパとママの話し声が聞こえてきました。僕の家はパパが友人の保証人になった時にそのまま騙されて、借金まみれで火の車なんだそうです。いつも休みになったら釣りやドライブに連れて行ってくれたパパ。料理が上手で優しかったママ。あの頃の幸せな家族に戻りたいです”


「以上。日本の横浜在住、たかし君6歳からだ」


「お前、凄ぇ神妙な顔で読み上げてっけど、こんなのどうしろってんだよ。お手上げじゃね? 最早サンタさんへのプレゼントの規模を超えてね? 何か読み進めていく内に、どんどん手紙の内容が深刻になってってんのは気のせいか? つぅか、お前何泣いちゃってんの!? ラペン!」


「だってさぁ、可哀想じゃないか。こんな幼い内にさぁ。戻してやってよラプス。たかし君を、幸せだった頃の家族にさぁ」


「いやいやいやいや。もうここまできたら、サンタの範囲外だから。神様の領域だから。知らないよ? 俺達カンケーないよ? 何普通に感化されちゃってんのこの人!」


 クランプスは即座にこのリストデータを神へと送信した。そして鬼だの悪魔だの罵ってくるクランペンに、次の手紙の朗読を要求する。彼は渋々涙を拭きながら、次の手紙を手に取った。


 “サンタクロースさんへ。今年は彼女と過ごしたいので、ソリ引きの仕事休ませてください。byコメット”


 それはサンタのソリを引く九頭のトナカイ――ニコルの妻、ルドルフも含む――の中の、八頭目のトナカイからの手紙だった……。


「コメットの野郎……。この仕事を舐めやがって。殺す。殺して燻製にして、乾し肉として冬の保存食にしてやるっ」


 コメットからの手紙をビリビリに引き裂くクランプスの隣で、次の手紙を手にしたクランペンがのんびりとした口調で言った。


「これ、二頭目のトナカイ、ダンサーからだよ。旅客機のチケットが僕達家族分入ってる。ほら、四枚」


「何だと!? って事はコメットの彼女ってぇのはダンサーの事か! 両方とも保存食逝きだクソトナカイがぁー!!」


 クランプスがそう絶叫を上げるや否や、ドアが叩き開けられけたたましい罵声と共に、彼の頭に空き缶が飛んできた。


「誰がクソトナカイだってぇ!? トナカイ馬鹿にするとただじゃおかないよ!!」


「ママンもトナカイだからねぇ」


「お袋……普段擬人化しておきながら、しっかりトナカイの自覚がまだ残ってやがったのか……」


 見事母親からの空き缶が額にクリティカルヒットして、椅子から床へと倒れ込む弟をクランペンはニコニコと笑顔を見せながら、他人事の様に覗き込むのだった。




 更新後に、実はトナカイにはそれぞれ性別と性格があると分かり、慌てて訂正しましたw。

 じゃあルドルフのオスという設定はどうなるのかって?

 ……無視ww。

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