style.19
「え? サンタさんが盗まれた!?」
「え? サンタさんが誘拐された!?」
「え? サンタさんが行方不明になった!?」
「え? ついにあの耄碌ジジイが徘徊を始めたって?」
後半は明らかに悪意のこもった間違いだが何事も無かったようにスルーして。
トナカイ達は嬉々として騒ぎ始めた。
「まぁ、せっかくのクリスマスにこき使われるお前らの嬉しい気持ちは分からんでもないが、一応建前的に救出しねぇとここにいる全員の命が危ない」
クランプスはそういって、背後でギスギスと感じる母親ルドルフの灼眼の視線にダラダラと冷や汗を流すしか出来なかった。
「まぁとにかく、探すしかないね」
「探すって簡単に言うけど一体どこを探しゃあいいんだ」
兄クランペンの呑気な言葉に弟クランプスは憮然として訊ねる。
「う~ん。そうだね……とりあえずその辺とか?」
「その辺にいたらいいねー!?」
そしたらこんな無駄な苦労はしないんだよと内心思いながら、クランプスは精一杯の作り笑いを見せた。
結局どこから手をつけていいのかも分からないまま、みんなで真っ白い雪の覆う森林を捜索しているとふと雪ダルマを発見した。
「あ、雪ダルマだ!」
「誰がこんなところに作ったんだろう」
「足跡つけちゃえ」
トナカイ達は好き勝手言いながら足を押し付けた。
途端、それは振り向いた。
「誰がスノーマンじゃボケェ~……!」
よくよく見るとそれには手足が生えている。
「うわ何こいつメッチャガラ悪っ!」
「ワシはジャックフロストちゅう妖精じゃコラァ~……」
某ゲームでおなじみ有名なそれの口からは強烈なにおいがした。
「何だコイツ酒臭っ!」
「酔っ払いかよ!?」
嫌な表情をして顔を背けるトナカイ達。
「すみませんおじさん。僕達サンタクロースを探してるんですけど見ませんでしたか?」
クランペンが一切の悪気も無くジャックフロストをおじさん呼ばわりした。
「サンタクロースやと!? おどれら何夢みたいな事抜かしとんじゃ!!」
「キレるポイントそこ!?」
クランプスが何かがずれているこの妖精に突っ込みを入れる。
するとかすかな声が聞こえてきた。
「……だ……ここだよぅ~……」
その声に導かれて上を見上げると、そこには見覚えのある人物が木の上で縛られていた。
サンタクロース、本名ニコラオスだ。
「あんた!!」
妻ルドルフが目を見開く中、すかさずトナカイ達は今の内とばかりに雪玉をニコラオスにぶつけている。
時々石まで混じっているのでニコラオスは額から流血を始めた。
言うまでも無く石を投げたのはトナカイ王であるコメットだった。
「死ねジジイ。くたばれジジイ」
「どさくさに主であるワシに何してくれてんのお前ら!?」
それを他所に舌打ちするジャックフロスト。
「チッ……バレたか」
「うちの旦那をさらったのはお前かい!?」
ルドルフの質問を不敵にジャックフロストは答えた。
「フッフッフ……その通り! サンタさんを頂いたのはこのジャ――」
ドカッ!!☆ヽ(#゜Д゜)ノ┌┛Σ(ノ´Д`)ノアウッ!!
言葉が終わらないうちにクランプスから蹴りを入れられて倒れ込むジャックフロスト。
「フッフッフじゃねぇよコラ。てめぇのせいでこちとら迷惑してんだよコロスぞ」
どうやらクランプスは捜索前に母親ルドルフから喰らった灼眼ビームでご立腹らしい。
「待っててパパン。今下ろしてあげるからねコメットが」
「え! なんで予が!?」
クランペンの言葉に驚愕の表情で勢い良く振り返るコメット。
「だって空飛べるじゃない」
「自分で登ればぁ!? トナカイ頼らないで!!」
「トナカイ頼って生きてるのが僕達サンタファミリーなんだよ?」
青筋立てながら抗議するコメットに、悠然とした笑顔でクランペンは受け答える。
するとヨロヨロと立ち上がったジャックフロストが声を絞り出す。
「ワシだって……ワシだってサンタさんからクリスマスプレゼント欲しいぜよ!!」
……なんでそこで土佐弁?
内心そう思わずにはいられないみんなだった。
トナカイ達の名前が省略されている件ww
次回はなるべく表示するよう努力します。
トナカイ達の名前覚えるの大変なんだよ(汗。
つかクリスマス当日まで間に合うのかこれww(自信ないけど)