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 こうしてなんだかんだで、ニコラオスとルドルフ夫婦は警察から追い出されるかのように釈放され、そんな二人の身元引受人としてやって来た双子の息子と共に、トナカイ達をそっちのけで一足早くフィンランドの自宅に帰った、無責任なサンタクロース一家。


 クランプスと一緒にいたヒグマのブリッツェンは、最早寒さも馴染んできたらしく壊れたように笑いながら、半ばトランス状態で口からヨダレをたらしている。


「ねぇラプス。ブリッツェンが口からエクトプラズム垂れ流してるけど、何かしたのかい?」


 兄クランペンに問われて、弟クランプスはあっけらかんとした口調で返答した。


「いやぁ、別に。ただあいつが動きすぎて腹減ったって言うから、ひとまずこれでも食っとけって、南米に行った時に偶然そこにあった木の実を食わせてやっただけだ」


「それって、赤い小粒の実じゃなかった?」


「おお。さすがラペン。よく分かったな」


「うん。それ間違いなく、コカの実だから」


「コカの実? 猫にマタタビみたいなもんか?」


「多分適当な言い方すれば、そうとも言えるかな。人間にも効果抜群みたいだよ」


 猫にマタタビだなんて、そんな物とは訳が違うのだが。

 詰まる所の麻薬、コカインの原料である。

 神経を興奮させる作用がある為、気分が良くなり、眠気や疲れがなくなったり体が軽く感じられる様になる。

 ただし、乱用を続けると、虫が体の中を動き回っているような不快な感覚になり、実在しないその虫を殺そうと針で体を刺して傷付け始めたりする事もある。

 しまいには、コカインを大量に使用した場合、呼吸ができなくなり死亡する事があるので、良い子は決して絶っっ対に使用してはナッシング。


「そうかそうか。そいつは良かった」


 そんな事も露知らずクランプスは、笑いながら上の空になっているヒグマのブリッツェンの背中を、激励するかの様に何度も足蹴した。


「ラプスのだんな~。オイラ、何だか外に出てはしゃぎたい気分でさぁ~」


「おお、そうかブリッツェン。そういや季節も三月に入って、もう春と変わらねぇもんな。思う存分、春を満喫して来い」


 クランプスに促されて、ブリッツェンはフラフラしながら外へと出て行った。

 その後に続く床の上に滴り落ちている彼のヨダレの跡に、冷ややかにルドルフが息子に言い放つ。


「ラプス。責任持って、お前があのラリックマのエクトプラズム、拭き取っておきなよ」


「キュピブッギー!」


 ブリッツェンをまるで某有名ユルキャラ、“リラックマ”の様に言うのを賛同するかのように、彼女の腕の中にいるウリ坊のダッシャーが甲高い声で鳴いた。

 鬼母の言う事は、迂闊に逆らえないのでクランプスは、重い腰を上げる。

 と、その時家の表で派手な音が響き渡った。


 キキキーーー!! ドゴォーーーン!!


 何事かと、玄関のドアが開け放たれたままの外を、サンタクロース一家が覗き込むと、そこには真っ赤な車とそれに轢かれて悶絶している、ヒグマのブリッツェンの姿があった。


「おやおや。最近の若者の運転は荒いのぅ」


 呑気にそう言うニコラオスを他所に、車内から次々と置き去りにされたトナカイ達が降車してきた。


「ちょっと! こっちがクリスマスプレゼント配ってきたってのに、何呑気に先に家でくつろいでんだ!」


 真っ先に怒鳴り込んできたのは、男勝りのメストナカイ、プランサーだった。


「はて? クリスマスプレゼントとな。もう桃の節句も終わったこの時期に、何を寝ぼけた事を」


 ニコラオスは無責任にも、季節のせいにしてとぼけてみせる。


「何を言っても無駄だ。最早このジジイ、耄碌して死期も近い」


「どわ~れが死にかけだ。この役立たずトナカイ!」


 ちゃっかり一緒に戻って来た、孤高のトナカイ王コメットの言葉に、自分の立場を棚に上げて役立たず扱いにするニコラオス。


「あんた以外にそれが当てはまる奴が、他にいるのか? ボ ビ ー ・ オ ロ ゴ ン さ ん」


「え? なんでそこでその名前? 無理矢理名前の共通点を探しても“オ”しか一緒じゃない上に、寧ろ肌の色すら違ってるよ? オイ」


 コメットのツッコミに困っているニコラオスと、車の下敷きになってその重量で半ばチアノーゼ状態にある、ヒグマのブリッツェンを他所に、ようやく窮屈な車内から解放されたメストナカイのダンサーが、嬉しそうに歌を口ずさみながらクルクルと踊っていた。




 ゴメン。

 今回おもろくないかも(汗。

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