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「しかし何だね。こんだけクリスマス終わってるにも関わらず、未だモタ付きながらもプレゼント配り? こうなったら、遅れたサンタと言うより先走り過ぎてるサンタだね」


「失礼な。ワシは相手を何度もイかせても、先走るなんていう男の恥は未だ一度も経験しておらん、我慢強いジュニアに育っておる」


「言うと思ったよ。この下ネタジジイ」


 取調室で、警察相手に負けじと言い合いしている、ニコラオス。


「正直思わないか? 見返りも無しで子供達の笑顔の為にプレゼント配りだなんて、我々にとっては暇人のする事だよ」


「それがどうした。いくらでもなじりたかったらなじるが良いわ。この聖なる爺さんを。しかしお主はそう言った事を、今後後悔して一生恥を抱えて生きる事になるぞ」


「逮捕されてるのに、随分強気な爺さんだね。さすがサンタさん。何を根拠にそこまで断言できる訳」


 おまわりさんは、半ば逮捕した事をいろんな意味で後悔しながら、面倒そうに向かいで腰をかけている椅子の背凭れに体重をかけて、後ろ足だけで支える形で前足を浮かせ後方斜めの姿勢で訊いてきた。

 すると、そんな彼へ真っ直ぐに目を向けるとニコラオスは、深く頷きながらゆっくりと語りかけ始めた。


「暇になってごらん……」


 そうして始まった彼の言葉は、どこかで聞き覚えのある歌詞にそっくりだった。

 ただ、有名なフレーズを“ヒマジン(暇人)”に変更して。


 語り終えてしみじみとした表情を見せるニコラオス。


 長らく続く沈黙。


 おまわりさんは、口元を手で覆い隠し必死に顔を伏せている。

 その様子は、余りにもニコラオスの今の言葉に感化されて、懸命に涙を堪えている様に見えた。

 そんな健気な彼の様子に、ニコラオスは微笑むと優しい口調で声をかけた。


「いいんじゃ。何も自分を責めることはない。君は職務として、この聖なる老人を心を鬼にしてまで、逮捕してしまった。それだけの事なのだから。さぁ、顔を上げて……」


 言われるがままに、おまわりさんは顔をゆっくりと上げる。が、その目は据わっていた。

 よくよく見ると、こめかみに血管が浮き出ている。

 そして椅子を蹴るようにして勢い良く立ち上がると、怒鳴りつけた。


「そいつはジ●ン・レノンの“イ●ジン”だろうが! 何さり気無く自分の言葉に変えちゃってんだ!? このパクリジジイが――」


「誰が“ポックリ逝けよジジイ”だコルアアァァアァァーーー!!」


 おまわりさんの言葉の語尾は、突然開け放たれたドアと罵声に掻き消され尚且つ、音速の域に達する回し蹴りでたちまちノックアウトされてしまった。

 その相手を見るや、ニコラオスは嬉しそうな笑顔で名を呼んだ。


「ルドリー! 君なのか! 逢いたかった我妻よ! で? ホントに今この人ワシの事を、“ポックリ逝けよ”だなんて言ってたかね?」


「ヤダン! 当たり前じゃない! そうでなきゃ、どうして私がこのクソ野郎を襲撃すると思うんだい?」


 こうして同じ取調室に連行されてきたルドルフは、愛しそうに旦那のニコラオスに駆け寄って、手錠の掛かったままの手で彼の手を握り返した。それに思わず興奮を覚えるニコラオス。


「ル、ルドリー! まさか今日は拘束プレイかい!?」


「そうだったらいいんだけど、私こいつ等に捕まってレイプの危機なんだよ!」


「……え? 何こいつら、夫婦の上に、二人揃って状況理解してないの?」


 ルドルフを連行してきたおまわりさんは、呆気に取られるともう取り調べも面倒臭がり、身元引受人記入用紙を取りに出て行ってしまった……。



 サンタとルドルフの声を、脳内変換で「マスオとサザエ」にして読むと、結構面白いww。



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