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「さて。ここのマンションのプレゼントは全て配り終わったし、次に行こうかね。ダッシャー」
「キュピプギギ♪」
自分の主であるルドルフに抱き上げられて、嬉しそうに腕の中で甘えるウリ坊のダッシャー。
その背後では、やたらとパトカーや大勢の人々で、騒然としているが気にする彼女ではない。
そして早々に旦那のニコラオスに追い着こうと、一歩足を踏み進めた時だった。
「あ~、ちょ~っといいかな。そこの君」
突然背後から、ルドルフを呼び止める声。
彼女はハッと身を固くした。
今夜は少しオシャレして、ツインテールの立て巻きヘアにヒイラギの飾り、そしてミニスカートのサンタファッション、トナカイのデザインのイヤリング。
剥き出しの素足には、真っ白い網タイツ姿。
これでナンパされないはずがない!
ルドルフは身構えながら、素早く振り返った。
敵は……4人。
こんな一見か弱そうな女の子に対して、男4人とはなんとも卑劣である。
これはどう考えても、女の子のルドルフ一人に4人の男達を相手にさせようと言う、5P狙いに違いない!
そのうちの一人が、軽い口調で声をかけてくる。
「君に用事があるから、こちらへ来てくれないかな?」
瞬間、ルドルフの脳裏にコマンド入力が現れた。
・戦う
・魔法
・召喚 ←
・防御
・アイテム
・逃げる
迷わず“召喚”にコマンド入力すると、ルドルフは腕に抱いていたダッシャーを解き放った。
「行け! ダッシャー!!」
「ピギー!!」
ダッシャーは迷わず4人のうち一人の男に向かって、電光石火猪突猛進を浴びせた。
その男は呻き声と共に崩れ落ちる。残るは3体だ。
「この! いきなり何をする!」
敵からの攻撃。
ルドルフのシステムコマンド。
・かわす
・カウンター
・防御
“カウンター”発動!
「ぬぅおるりゃああぁぁあぁぁあぁぁーーーー!!」
ルドルフの回転ハイキックが炸裂した。
「ぅぐは……! 毛糸パンツ、見えた……」
そう呻くと男は、バタリとその場に倒れこんだ。
残るは2体。だが。
「く、く、くうぉぬぉ~~~~……っっ! よくも私の下着を! まとめて撃破してくれるこのドスケベ共がああぁぁあぁぁーー!!」
「ちょ、ま、ちがっ!」
二人の男が懸命に、ルドルフが抱いている疑惑に気付き、大慌てで否定するが時既に遅し。
カッと毒々しく真っ赤に光る灼眼を開化させた。
システムコマンド、“魔法”。
「邪眼攻殺法!!」
「何だその●ッコロと天●飯の邪眼の、魔貫光殺法と気功砲が合体したような技はーーーー!!」
そう絶叫しながら2人の男は、見事ルドルフによって倒された。
「よし。これで地球の平和は守られた」
「いや、違うから。寧ろ平和を破壊してるの、お嬢ちゃん、アンタのほうだから」
その声と共に、ガチャリと音がしてふとその音の方を見ると、ルドルフの両手首には手錠がかけられていた。
「ぬぅっ!? きっ、貴様ぁっ! 今度は一体、何プレイを狙っている気だぁー!」
ルドルフの激昂と共に、再度双眸が灼熱の光を湛えるのを慌てて止めながら、相手の男は叫んだ。
「違あぁう! 我々は警察だ! 不法侵入及び器物破損、公務執行妨害で逮捕だよあんたは!!」
「何だと!? 人に喜ばれはされど、逆ギレされる覚えはないぞ! 私はクリスマスプレゼントを配っていただけだ!!」
「あのねぇ。君がクリスマスにどれだけ執着しているのかまで、こっちは知らないけど、もう終わったの。クリスマスどころか、ニューイヤーまで終わってるの」
「何だとぉ!? では、次は節分ではないか!」
「キュピプキィー!」
ルドルフが驚愕を口にするのを、会わせる様にしてウリ坊ダッシャーも騒ぎ声を上げる。
「何ソレ。思いっきり日本の文化行事だよね? とりあえず、詳しい事は署で聞かせてもらうから」
「おのれぇ! この屈辱、貴様来年のクリスマスには、うちの双子の息子を送りつけてやるからなぁ!」
「うん。それを言うなら、もう“今年”ね」
そうして往生際の悪いルドルフを押し込むようにして、警官は呆れながらパトカーに押し込むのだった。
………アフゥ♪ww。