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 ジャラリ……。ジャラリ……。

 夜な夜な響く、何やら金属物を引き摺るような、不気味な音。

 ジャラリ……。ジャラララ……。

 消灯された真っ暗な部屋で、少女は一人恐怖に戦きながら怖々とベッドサイドのライトに、震える手を伸ばす。

 ジャラララ……。ジャララン……。ジャリン。

 少女の部屋の前で、その音はピタリと止まった。

 その窓のカーテン越しに、揺らめくように浮かび上がる、真っ黒な影。

 少女は咄嗟に悲鳴を上げ、ライトを点けるべく伸ばされていたその手は、無情にもそのライトを誤って倒してしまった……。



「ヒ……。も――許して……アアッ! やめてぇ~……、ハァ、ハァ」


「その割には何だか、もっと調教されたがってるようにその潤んだ瞳が、恍惚として見えるんだけど。気のせいか、なぁ!?」


 パシィィィーーー!


 甘い声で優しく囁きかける声と共に、少女の柔肌を打つ(かば)の鞭。


「キャアゥ!!」


「さぁ誓え。来年こそは良い子である事を。それとも、また僕にこうしていたぶられたいんなら、別だけど」


「ご、ごめんなさい……。来年は良い子になりま――」


 ピシィィィーーー!!


「ヒャウン!!」


「惜しいなぁ。君が後四つばかり年を取っていれば、もっと濃厚的に、調教できるんだけど、ねぇ」


 クランペンは言いながら、齢12歳の少女の華奢な顎を掴むと上へと向かせる。

 少女はあろう事か、パジャマは着ているとは言え、彼が持参した錆びた鎖で亀甲縛りをされている。


 そう。クランペンも“悪い子一斉処分セール実施中”であり、体罰担当なのだがその対象は、彼個人の趣向に重視され女子ばかりが狙われていた。


 しかし彼は男ながらに妖艶なまでに美しく、甘美なまでに色っぽい。女であれば誰もが振り向くいい男だ。

 無論、同じ双子の弟であるクランプスも同様だが、クランプスの場合は凶悪オーラ全開な為に兄のようなセクシーな魅力は、微塵も感じられない。

 弟クランプスが邪悪なまでの悪魔なら、兄クランペンは天使のような悪魔だ。

 恋心を意識しだす微妙な年頃の12歳の少女は、今まさにそんなクランペンへときめく蕾を開かんとしていた。

 そんな彼女の気持ちなど、女扱いに手馴れているクランペンには一目瞭然。

 それを承知の上で、彼からの口づけを望まんとする少女にクランペンは、顎を掴んでいた手を離すと同時に躊躇う事無く嬉々としてまだハリのある少女の頬を、平手打ちにした。


「今年悪い子だった君には、まだ僕からのキスはお預けだ。欲しければ、良い子にしてサンタさんに頼むんだね」


 そうして再び、少女をその身に纏うパジャマの上へと鞭を振り下ろした。この腹黒い彼の口説き文句に、どういう訳か喜びを感じてしまう少女。自分がしっかりクランペンから最早調教済みになっている事など、気付く事も出来なかった。




「さぁ~、あなたから~メリークリスマス。俺様からメリークリスマス。Krampus is coming to town~ってなぁ! ブリッツェン」


「眠っちゃダメだ。眠っちゃダメだ。眠っちゃダメだぁぁああぁぁあぁぁ~~~……」


 意気揚々と雪道を歩くクランプスの後ろから、ヒグマのブリッツェンがまるで機械仕掛けの古いロボットのようなカクカクした動きで付いて来ながら、寒さで震える声でどこかの主人公の様に同じ言葉を繰り返し、自分を必死に励ましている。


「ねぇ~、聞こえて~くるで~しょ~鈴の~音~が~すぐそこに~、Krampus is coming to town~っと、おお、次の獲物はここだぜブリッツェン。一丁気合入れに、今度はお前から窓を叩き割りやがれぇぇいっや!」


 言うや否や、クランプスは素早くブリッツェンの背後に回ってここぞとばかりに、尻尾に向かって跳び膝蹴りをお見舞いした。

 その勢いで、飛び上がったブリッツェンと彼の跳び膝蹴りの威力がプラスして、見事に次のターゲット宅の窓を叩き割った。――と言うより、頭から突っ込んでしまった。


 しかしヒグマが窓を突き破って入ってきたというだけで、十二分にその驚異を発揮してその家の女児は絶叫と共に、すっかりお漏らししてしまった。

 しかしそんな女児に、クランプスは何事もなかったかのように窓から室内に入ると、詫びを入れた。


「いやぁ、すまんすまん。今回は君のサンタさんへのプレゼントとして、ここに来たんだリーラ。毎晩お酒を飲んで暴力振るうから、優しい父親にしてくれるよう、2話目のシーンにあった手紙で送ってきてただろう? てな訳で、その悪たれ親父は今どこにいる?」


「よよよよ、酔い潰れて、リビングソファーで寝てます……」


「OKリーラ。後はこの悪い子一斉処分ハンター、クランプス様に任せとけ。行くぞブリッツェン!」


「おいら今、メッチャガラスの破片が全身に刺さってんスけど。ねぇ、あの。気付いてます? ラプスの旦那ぁ。つか、完全無視ッスよね? 労りとか――」


「ねぇよ」


 ブリッツェンの訴えに、そう引き続き言葉を付け加えながらクランプスは彼の毛皮に刺さっている大きめのガラス片へと、ストンピングする。

 よって余計深々と体内に突き刺さった為、喀血(かっけつ)しながら渋々ブリッツェンは主の後を追った。

 そして呑気にリビングソファーで大いびきを掻いでいる、父親へとクランプスは踏ん反り返りながら見下すと、手にしていた錆びた鐘を軽く撫でた。

 するとそれは、錆びた釘が無数に刺さるバットへと姿を変える。

 クランプスはその釘バットから一本の釘を、意味深にぺロリと舐めると高々と持ち上げた。


「待ちきれないで、おやすみした子に、きっと素ん晴らスィー、プレゼント――持 うぉ っ てぇいぃぃっ!!」


 一切の躊躇いも気遣いもなしに、振り下ろされる錆びた釘バット。


「ぎゃああああああああああああああ!!」


 後は見るも無残。諸君のご想像にお任せしよう。




 ちなみに、ただでさえ毎晩泥酔した父親に暴力を振るわれているリーラちゃんが、更に二つも三つもトラウマが増えたのは言うまでもない……。




 クランペンの調教シーンは、何度も己の中で頭をもたげる濡獣と戦いながら、自粛したww。

 そんな自分を褒めてやりt(ry←

 つか、R規制なしの作品目指すなら、クランプスの釘バットシーンも自粛するべきだったか?

 …

 ……

 ま、いっか!ww。細かい事はきにしない☆ww。←

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