昼に会ったこと。
特に意味はない。
ただ、今日のことを忘れないように書いておこうと思った。
昼下がりの舗道は、陽射しに照らされて白く眩しかった。
コンビニに寄って飲み物でも買おうと思いながら歩いていた。甘いのにするか、炭酸にするか、まだ決めきれていなかった。行き交う人々はそれぞれの時間を進めていて、ただの昼の風景に見えた。
電話をしながら歩いてくる男が視界に入った瞬間、ふと胸ポケットの重みに気づいた。昨日のバイトで使ったままのボールペン。
「これ、人間に刺せるな」と思った。
考えるより早く、手は動いていた。
ペン先が相手の体に沈み込むと、男は電話を取り落として崩れた。周囲がざわつく。誰もが戸惑った顔をしている。なるほど、こういう場面に慣れていないから、まともな行動もできない。俺はそんな彼らを見て「そんなんじゃダメだよ」と思った。
やがて、群衆は一斉に逃げ始めた。倒れた男を置き去りにして。
「放置してどうすんの?」と心の中で呟く。
俺は少し考え、救急車を呼んでやろうと思った。だが相手のスマホはロックがかかっていて開けない。仕方なく自分のスマホで「他人の携帯 ロック解除 やり方」をYouTubeで検索する。
ふと、あることに気づいた。――このボールペン、これが最後の一本だった。よく無くしていたから。
抜き取ると、案の定インクと血で汚れていた。相手の服で拭こうかと一瞬考えたが、なんだかかわいそうに思えてやめた。代わりに自分の服で拭う。この服は、高校生のとき親が買ってきたものだ。もう古いし、汚れても問題ない。
さて、と立ち上がる。
――何しに出かけたんだっけ。忘れた。
「まあいいや、帰ろう」
空を見上げると、雲がゆっくり流れていた。今夜の晩飯、何にしようか。
晩飯は結局、冷凍のうどんを食べた。




