第四章:『タベロニア空中庭園』 第九話「110次元うちう。53次元の旅」
「こちらをご覧ください」私は、背の高さほどの何もない空間を示されました。
「ここに、大きなブロックがあります。透明で硬いブロックです」
「? 何も見えません」私は答えました。
「横50㎝、縦20㎝、高さ10㎝ほどの水色のブロックです」と言われると、目の前にブロックが現れてきました。
「じわ~~~ん」紛れもなくブロックが存在していました。
「何もなかったのに、突然出てきました! 何ですか! このブロックは!」
「落ち着いてください。これは、『信じるココロ』の表れなのです」
「信じるココロとは?」
「簡単な例で説明しましょう。悪い奴だという先入観でヒトを見ていれば、そのヒトの良いところは見えません」
「ふむふむ・・・」
「ですが、『何かしら良いトコロもあるのではないか?』と見てみれば、長所が一つくらい見つかるものなのです」
「ふむふむ・・・」
「ですから、その小さな積み重ねが巨大なブロックを作り上げたのです」
「・・・」話が突飛すぎて、まだ理解が追い付いていませんでした。
「それでは、練習してみましょう」と言って、リウさんは、水色のブロックの下にもぐりこみました。
「ない!」と言って、3mほどジャンプして、
「ある!」と言って、水色のブロックに飛び乗りました。
「どうです? ねこたさん。あるハズのブロックを通過して、見えないブロックに飛び乗りました」
「・・・す・ご・い。ものを見てしまいました・・・」私は驚きました。
「ねこたさんもやってみましょう」私は、半信半疑でした。水色のブロックの下にもぐりこみ、
「ない!」と言って、ジャンプすると、
「ごすっ」とブロックに頭突きをしました。
「いった~~~~っ!」
「ねこたさんは、ブロックがあるということを信じていました。だからブロックをすり抜けられなかったのです」
「なるほど・・・」私は、マジマジとブロックを見つめました。
「ない!」と信じてブロックを触ると、何もありませんでした。
「ある!」と信じると、そこに水色のブロックが存在していました。
「? これはどういうことなのでしょう・・・」リウさんが、説明してくれました。
「見通しが良い場所で駆けずり回っても、何かにぶつかることはありません」
「ふむふむ・・・」
「ですが、考え事をしていたり、『何もない』という心が弱まっている時には、何かにつまずいたり滑って転んだりするものです」
「ふむふむ・・・」
「このブロックほどの大きさもない、何かにつまずいているのです」
「な・る・ほ・ど・・・」なんとなく理解出来てきました。
「バビロニアの空中庭園も同じ理由なのです。想像力の強い方が、『バビロニアの空中庭園はある!』と信じた結果、存在していた庭園が本当に見えたのです。もっとも、見えたからと言って、本当にそこに辿り着けるとは限りません」
「! ということは、斜面に作られた段々の庭園ではない『空中庭園』は存在するのですか?」
「するのです!」リウさんの目は、輝いていました。そして太陽は既に傾きかけていました。
「そこに辿り着けるのは、ごまんたるで料理を食べた人か、『信じるココロ』が強く、偶然に、誰の助けもなしで辿り着けたヒトだけなのです」私がするつもりでいた質問に、リウさんは両腕を広げて太陽に向かって答えました。そしてリウさんは、こちらを振り向いて言いました。
「『タベロニア空中庭園』は、魅力的で最も危険な場所です。アナタは帰りたくないという感情に逆らえないかもしれません」
「すると、どうなりますか?」
「世間的には失踪者扱いになります。死体も出てきませんから・・・」
「・・・どんな場所なんだろう・・・」私は、背筋が凍りました。そして、説明できない好奇心に包まれていました。
「(行かなければいけない! そして、確かめなければいけない!)」と言う思いにかられました。
「(何を、確かめるんだろう・・・?)」思いを抱いた途端に疑問も湧いてきました。
「ねこたさん、この世は何次元まであるか、ご存知でしょうか?」急な質問でした。
「『超ひも理論』によれば、11次元だそうですが分かりません」
「『タベロニア空中庭園』では、110次元まであります。これは現在確認できている11次元とは、考え方が根本的に異なるものなのです」
「! そんなにありますか?」
「一つ目『3次元空間』、二つ目『時間的な空間』、三つ目『物質的な空間か精神的な空間』のそれぞれの優先順位が組み合わされて、タベロニア空中庭園の次元が形成されています」リウさんは、指を折り曲げながら説明してくれました。
「3×2×1だと、6種類ではないでしょうか?」
「その三つの優先順位で6種類あります。一つ目の空間は、1次元・2次元・3次元の3種類。二つ目の時間的な空間は、現在・過去・未来の3種類。そして物質的な空間か精神的な空間で2種類あります。3×3×2で18種類あります。6×18で108次元ありますが、それらに特殊な条件を加えると、1番目の『全ての始まりの次元』、そして110番目の『全ての終わりの次元』に辿り着くことが出来ます」
「? 分・か・ら・な・い!」私は、混乱しました。リウさんは、軽く笑って言いました。
「まぁ、ウソですから。心配無用です」私はホッとしました。
「ウソならば、安心です。でも全部見てみたいです」というと、リウさんは、
「『好奇心は猫を殺す』と言います。お気を付けください。あっ、ねこたさんは今イヌでしたね。失礼しました」と笑いながら言いました。
【好奇心は猫を殺す】
イギリスのことわざ。猫に九生あり(猫は9つの命を持っている)[Cat has nine lives.]。猫は容易には死なない。などとも言われている。「過剰な好奇心は、身を亡ぼす」という戒めで使われている。
「リウさんは、全てを見たのですか?」何気ない質問だった。この質問は想定していないらしかった。
「・・・まだです。探している途中なのです・・・」聞いてはいけない質問らしかった。
「などというのは、ウソです」と言って、また明るいリウさんに戻りました。
「それでは、お待たせしました。ご案内いたしましょう。何処へ行きたいですか?」と聞かれましたが、何も決まっていませんでした。
「? どうしてもそれが気になりますか? それではそこにしましょう」と言って、リウさんが行き先を決めてくれました。
「時間過去、3次元、精神アリ・物質なしの組み合わせです。『過去の思い出ナゾ解きコース』です。53次元に移動しましょう」と言って、私を促しました。
「今から100mずつジャンプしていただきます。110mほどのジャンプを繰り返す感覚です。100mずつ階層になっており、一つずつ違う次元につながっています。110回までジャンプ出来ますが、飛行機の高度が10,000mほどなので、それよりも少し高い高度です」
「空気抵抗が少ないですからね。高度が高いと飛行機は速く飛べます」
「さすが、ご存知の通りです。高度が高いほど空気は薄いのですが、高山病の心配は御座いません。ご安心ください」と説明してくれました。
「それでは、行ってみましょう」と言って、リウさんは高くジャンプしました。
「ない!」と言って100mを突き抜けると、
「ある!」と言って着地しました。私にはリウさんが空中で止まっているように見えました。私も後に続きました。
「ない!」と言って、110mジャンプして。最高点に辿り着くと落下し始めました。
「ねこたさん! 今です!」と言う、リウさんの合図で、
「ある!」と叫ぶと、リウさんと同じ高さの階層に着地出来ました。見渡す限り一面岩石砂漠の世界でした。
「ここは、簡単に説明すると100年前のウル・ジッグラトに時間移動した世界と言えます。」2回目にジャンプすると、未来のジッグラトに立っていました。その後もジャンプを繰り返し、私たちは53次元に立っていました。どういうメカニズムで移動したのか分かりませんでしたが、リウさんは私に次元を移動する練習をさせてくれたのだと思いました。
「さぁ、ねこたさん、着きました。『時間過去、3次元、精神アリ・物質なし』の世界です。私たちは今、精神世界の中にいます。他の人たちから私たちを見ることは出来ません。よほど霊感が強い人でなければ、私たちを発見出来ないので安心してください」と説明してくれました。




