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4月5日昼飯 《カップラーメン》

出会い。

「俺って不幸だよな」

 俺はそんな言葉をボヤきながら実家のダルマに話しかける。当然答えが返ってくる訳は無い。

「いやさ、別に超幸運で宝くじ当たりまくり!とかさ?競馬で一山とかそう言うのを求めてる訳じゃなくて、ただ普通の毎日が送りたいだけなんだけどさ?」

 意味もなく畳のへりを踏まないようにつま先立ち歩きしながら、俺はダルマに話し続ける。

「そういうのって逆に難しいのかな?別に高望みしてるわけじゃ無いのになー?」

 白目を剥いたダルマは、うんともすんとも言わない。

 ……何やってるんだろうな、俺は朝から。

 やがてアホらしくなったので、俺はダルマとの問答をやめて台所に向かう事にした。


 ◇


 俺の実家は割と都会にある。

 と言っても、近くには寂れた商店街があったり、駅も割と離れていたりと超大都会という訳では無い。

 学校も普通に自転車で通える距離にあるし、スーパーマーケットも少し自転車を漕げば行ける距離にあるし。

「これぐらいの都市部が最高なんだよなぁ!」

 とは父親の談。

 ちなみにここは元々おばあちゃんの家だったのだが、おばあちゃんが亡くなってから、おじいさん一人で暮らしていた。

 そのおじいさんもこの前亡くなり、ついに人が居なくなったので、俺たち家族がここに来たという訳だ。


 元々この近くに引っ越してくる予定だったので、そこは良かったのだけど……。

「まさかの一人にされるとはねぇ」

 台所をゴソゴソと探しながら、俺は何か無いかと探してみる。

 既に時刻は昼、そして俺は朝ごはんを食べていない。

「───やはり何事も、飯食ってから考えないと頭回らねぇんだよなぁ。にしても何にもないな」

 俺は冷蔵庫の中を探してみたのだが、食材はほとんど無かった。

 あるのは俺があまり得意じゃない海老と白菜。それから米と……ぅぅん、これ豚肉か。

「こんなにバカでかい冷蔵庫のくせに中身スッカラカンってなんだよ。まぁここに来る前に両親が少しだけ寄ったぐらいだし?むしろあるだけマシ…………でもなぁ」

 俺はぶっちゃけた話料理は嫌いだ。

 手間が多い癖に対して美味しくない。あと高い。

「うーん、まぁウーバーとかスーパー辺りで弁当でも買って……めんどいやカップ麺にしよっと」

 そういう事で俺はカップ麺を買うためにスーパーに行く事にした。


「……っ、……です!……も……」

 出る間際、何か声が聞こえた気がしたが、きっと疲れているのだろう。


 ◇


 スーパー手間川。格安の商品を売る、この地区の中では割と有名なスーパーマーケットだ。

 ちなみに有名な理由は、閉店するする詐欺である。

「らっしゃいませー」

 気の抜けた店員の声をバックに、俺は足早く目的の品をめざして歩き出した。

 先程スマホのウォレット残高を確認したら、10万程入っていた。ちなみに水光熱費インターネットは両親が全部払っておいてくれるらしい。

 とはいえ、だ。

 ゲームの課金もしたいし、服とかも買いたいし、あんまり使いたくない。万が一もあるしね。


 そういう訳で俺はなるべく目移りしないようにしながら……。

「あ、『キットキミニカット』じゃん。アレの抹茶味が……ん、あれは『収監少年ゲリラマガジン』じゃん!……おいおい、新作カップ麺……『麺なしラーメン』?!」

 ───気がつくと俺は割とカゴに入れて買いかけていた。


 ◇


「結局カップ麺を割と買えたし、まぁいいか」

 ビニール袋の中に山盛りに入っているカップ麺を自転車のカゴに乗せ、俺は家に帰っていた。


 家に帰ると、俺はとりあえず汗を拭きながら浄水の水をポットに入れ、それからスイッチを押して横になる。

「くー、ここ数年地球はどうなってんだよ!四月なのに28度ってアホ、バカ、クソ!」

 本日のお日柄は晴れ。真夏日らしい。

 そう言いながら動画視聴アプリを開き、のんびりと待つこと三分。

 湧き上がったお湯をカップ麺に注ぐべく俺は立ち上がった。

「さてさてどれにすっかな……ここは『サルガッソ海のタコ入りシーフードヌードル』にするか、はたまた『世界初麺が透明な坦々麺』もあり。……『魚介+肉+野菜+麺オールミックスヌードル』……これだな」


 俺は『魚介+肉+野菜+麺オールミックスヌードル』以後ミックスヌードルの蓋をベリベリ剥がし、そこにドバーッとお湯を流し込む。

「あ、やっべこれ火薬と麺分かれてるタイプか」

 慌てて俺は菜箸を使って火薬を取り出し、火薬を中に落としてそれから蓋を閉じる。


 ──三分後、出来上がったミックスヌードルは……。


「ふぅー、いいじゃんいいじゃん!いただきます!!あーこれこれ、これよ!やっぱ絶妙なバランスがいいんだよなぁ!」

 少し外が暑かったが故に、チョイスを間違えたかと思っていたが、やはり暑い日の熱いものはそれはそれで美味しいのだ。

 あっという間にズルズルとすすり終える。

 そうしてスープをグイッと飲み干そうとして。

「ゴホッゴホッ!?」

 辛さに思わずむせた。

「あー死ぬかと。はぁ、カップ麺なぁ……美味いんだけど汁濃すぎんだよなぁ」

 まぁ、それはそれ。


「ごちそうさまでした!はぁーやっぱ美味いわ。市販の味サイコー」

 俺は食べ終えた容器をゴミ袋にシュート。(もちろん中身の汁は台所に捨てた)


 しばらくぼーっとした後、喉の乾きを潤すために水を飲み干し、それから。

「満腹。もーいいや、《《ご飯とか毎日カップ麺で良いや》》!」

 そう口に出したのだが、その瞬間───、



「いい?魚料理を食べるのよ!」

「野菜こそ人間の本懐なのです」

「肉だ肉!高校生なら肉を食えーー!」

「お米は毎日食べるべきだよ」


 突然雪崩のように、四つの声が俺の耳に入ってきた。しかもそれは全部女性の声だった。


「?!だ、誰っ!?」

 固まる俺の前に、四人の女性が現れた。


「フン」

「はぁ……」

「へへん!」

「えへへ」


 ────その日、俺の人生は動き出す。

 具体的に述べるなら、健康的で文化的な最低限度の生活が。




 _________________________


【本日の昼ごはん】

 長篠屋『魚介+肉+野菜+麺オールミックスヌードル』


 税込み《268円》










読みにくかったりしたら教えてください。

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