[第九十七話、馬の耳にラブソング]
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レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん
どうぞよろしゅうに〜
あの人ならもうどこかに遊びに行ってそうなんだけど、まだいるかな……
ジュリア先輩、最近俺にベタベタしてくること少なくなった気がする。
……いや、これは考えすぎか?
でも昨日はフェイ先輩にも告白されたし、もしかして今日一緒に周ってたらワンチャン、ジュリア先輩にも告白されるのだろうか。
ダメだダメだ!!
つまらないことを考えるな、俺……!
余計なことを考えそうになるたびに、ザワザワした気持ちが膨らんでくる。だから俺は、その感情を振り払うために、ギルドの扉の前で自分の頬を思いっきりビンタした。
「よし、冷静に……冷静にだ……!」
頬がジンジンとヒリヒリする。でも、痛みのおかげで少しだけ心が落ち着いた気がする。
そして、気持ちを整えながらギルドの扉を開けた。
──その瞬間。
「あ♡ いぃ♡ 奥がいいのぉ♡」
……え?
な、なんだこの声……?
ものすっごく色気のある声が響いてきた。
まさか……ジュリア先輩、こんな場所で誰かと……?
「らめぇ// そこは弱いから♡」
う、嘘だろ……!?
声の調子からして、確実に1人ではない。
しかも、微かに聞こえるハァハァという呼吸音が2つ……
……いや、待て待て待て!! 俺は今、交わっている現場に踏み込もうとしてるんじゃないのか!?
だが、このまま引き返すのもなんか気持ち悪い。俺は思い切って、恐る恐る仮眠室の扉を開けた。
──すると、そこにいたのは。
「なにが肩コリが酷いだ、プニプニじゃないか。嘘つくなおばさん。」
「だってぇ……でも気持ちいいよ?」
ベッドの上でマッサージを受けているジュリア先輩と、呆れ顔でため息をつきながら渋々肩を揉んでいるミケロスだった。
「俺をこんなことで呼び出しやがって……こんな雑用、クソユウマにやらせばよかろう。」
「ダメダメ♡ ユウマくんにマッサージしてもらったら始まっちゃうんだもん♡」
「死ね! クソババア!!」
……マッサージかよ!!!!!!!
さっきの色っぽい声、完全にジュリア先輩の勘違いされる発声のせいじゃねぇか!!
心臓のドキドキを返せ!!!!!
俺は大きく息を吐いて、落ち着きを取り戻しながら、そっと2人に声をかけた。
「あの〜……お取り込み中すみませんが、2人とも暇してる? 暇なら文化祭、一緒にとかどうかな〜?」
俺の声に、びっくりした2人はまるで逃げ惑う猫のようにバタバタと暴れまわり、
なにもしてなかったですから
みたいな顔で椅子に座った。
顔を真っ赤にしながら固まる2人を前に、俺は、無駄に疲れた。
ということで、俺とミケロス、ジュリア先輩という異色の文化祭巡りが始まった。
「なんか、年下の男の子達とこうしてデートするなんて珍しいからしんせーん♡」
ジュリア先輩がウキウキと小さく身体を揺らしながら楽しそうに笑う。
その姿を、ミケロスは哀れむような目で見つめ、つまらなそうにパンフレットに目を落とした。
「俺はここに行きたい。」
そう言って指差したのは、体育館の前で開かれている写真部の展示だった。
「ミケロスって、写真とか興味あるんだ。」
いつも嫌味しか言わないし、まともに話したことが少ないコイツにこんな趣味があるなんて意外だ。
「そうかそうか」と小さく頷いていると、ミケロスがいつもの調子で──
「意外だなと言いたそうな顔をしているな? まぁ、意外でもなんでも女にしか興味がない男よりはマシな趣味だと思うが。」
満足気に目を細め、得意げに鼻を鳴らすミケロス。
クッソぉぉぉぉ!!
なにも言い返せん……!!
「そんなピリピリしないで、仲良くしよう♡」
ジュリア先輩が俺とミケロスの手をそれぞれ繋ぎ、楽しそうに鼻歌を歌いながら歩き始めた。
白いテントの中へ足を踏み入れると、そこにはまるでCGのような幻想的な写真が並んでいた。
「この写真、すごく綺麗だ……」
思わず独り言のように呟くと、隣でジュリア先輩が写真ではなく、俺の顔をじっと見ていた。
「……なんか顔についてます?」
「ううん、とってもキラキラしててかっこいいなーって♡」
恥ずっ……
そうだ、忘れてた。この人はいつも素直で、しかもド直球なんだった……。
「ジュリア先輩って、恥ずかしいって感情ないんですか?」
「恥ずかしい感情ぐらいあるよ〜 ただ、こういう素直な気持ちは伝えないと、一分後になにがあるかわからないでしょ?」
「ま、まぁその感覚はわからなくもないですけど……流石に毎回言われても慣れないなーって。」
「慣れなくてもいいよ♡ だって慣れちゃうと楽しくないでしょ? 色んなことを含めて♡」
くぅぅ!! そのウィンク、可愛い……!! 可愛いよぉぉ!!
そんなやり取りをしながら写真を見ていると──
1枚の写真の前で足を止め、ずっと眺めているミケロスの姿が視界に入った。
「なんか気になった写真あったー?」
俺は隣に立ち、同じ写真を眺める。
それは、さっきまでの幻想的な写真とは違い、月明かりだけに照らされたキッチンの床に座る女性の写真だった。
「この人、知り合い?」
「なわけあるか。」
「なんか怖くね?」
「いや、むしろ美しい。」
「えー、意味わからん。」
「芸術とはそういうものだ。」
テンポのいい会話をしていると、ジュリア先輩が俺達の間に割って入ってきた。
「なんの写真見てるのー? うわー、とっても綺麗な人……モデルさんかな?」
「いや、違うだろ。モデルだったらもう少し身なりを気にするはずだ。この写真にはそれが感じられない。ただただ自然に撮ったのだろう。」
ミケロスって、意外に芸術通なのか?
普段の嫌味ったらしい態度とは違って、この写真に対しては妙に真剣な目をしている。
だけど最近、ミケロスらしくない時が多い気がする。特にジュリア先輩が近くにいるとき。
俺がじーっとミケロスの顔を眺めていると、彼は誇らしげに襟元を正しながら──
「まっ、ガキにはわからんことだ。」
はい、いまの全部撤回。やっぱ嫌い。
写真展を一回りした俺たちは、近くの売店でドリンクを買い、体育館入口前の石造りの階段に腰を下ろした。
「写真、すっごく綺麗だったねー!」
「おばさんに写真の良さがわかるのか?」
「わかるもーん!!」
「お前はユウマのことだけだろう。」
「それは間違ってない♡」
間違ってないのかよ……
2人のやり取りを聞きながら黙って飲み物を飲む俺。
すると、ジュリア先輩がミケロスの顔を覗き込み、髪が垂れ下がってこないように抑えながら甘い声で言葉を放った。
「写真が好きなら、今度私のこと撮ってよ♡」
その瞬間、ミケロスは
完全に固まった。
ただ黙り込み、動揺を抑えようと飲み物を口に運ぶが、それは全く意味をなさず、みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。
わかりやすい。
俺は確信した。
ミケロスはジュリア先輩のことが好きだ。
寡黙でクソガキなコイツが、誰かを好きになるなんて微塵も思ってなかった俺は、口元のニヤけが止まらなかった。
バレないように辺りを見渡し、別のことに集中しようと心掛ける。
だけど、それでもニヤけてしまう。
ミケロスのジュリア先輩を見る目が、いつもとは全然違っていることを。
小さく身体が震え、笑いを堪えていた俺だったが──
突然、体育館の中から力強いドラムの音が響いた。
「うぉ! なんだなんだ!?」
大きな音に驚きながら、パンフレットに目を通すと、ちょうど今からライブが始まる時間だった。
「お二人さん、今から体育館でライブ始まるみたいだけど、見に行ってみる?」
俺の提案に、ジュリア先輩はノリノリで「イク行くー♪」と手を挙げ、
ミケロスは「仕方ない、行ってやろう。」とした顔で立ち上がった。
体育館に入ると、すでに大勢の生徒たちが詰めかけていた。
前列に行くことはできそうになかったのでとりあえず突っ立っていると、突然、俺の前に眼鏡をかけた女子生徒が現れた。
「キミ、ユウマくんだよね?」
「はい、そうですけど……」
「ちょうどよかった! あの子誘いなよって言ってたのに、誘わなかったみたいで。」
「あの子?」
「まぁまぁ♪ 一番前で見せてあげるから、ついてきて!」
「え? でも……って、うわ!」
強引に手を引っ張られ、思わず足をとられそうになるが、女子生徒はお構いなしに前へ進む。
後ろを振り返ると、ジュリア先輩とミケロスがバイバーイと手を振っていた。
えぇぇ……あの子って誰なの……!?
「ごめんねー! 通してねー!」
周囲の生徒たちに声をかけながら、俺をぐいぐい引っ張る女子生徒。
そしてあっという間に、ステージ最前列に到着した。
「それじゃ♪ ライブ楽しんでね〜!」
「え! ちょっと待って! 」
――ギターの鋭いリフが、空気を一瞬で塗り替えた。
ステージに現れたのは、ポップなガールズバンド。
そして、センターに立つのは──
レイラだった。
「来てくれてありがとー!!」
ギターをかき鳴らしながら、まるでステージの上から現れたロックスターのような存在感に圧倒された。赤と黒のチェック柄を基調とした服装は、レイラの個性を鮮烈に表現していて、どこか無邪気でありながら、しっかりと芯の強さを感じさせる。フリルのスカートが軽やかに揺れ、装飾のチェーンやレッグカバーのディテールが彼女の動きにアクセントを加えている。
弾ける笑顔を観客に向けたその瞬間、観客の熱気が爆発し、体育館は歓声の嵐に包まれた。
そして──
「なんで私が振り回されてるの?」
軽快なドラムのビートと共に、レイラの歌声が響き渡る。
「この胸の熱さ、君のせいでしょ?」
会場全体が、ビートに乗って跳ねる。
熱を帯びたギターのメロディと、レイラの歌声が絡み合い、俺の鼓膜を揺さぶった。
レイラの歌う姿は、普段の彼女とは違って見えた。
いつもは気が強く、どこか子供っぽさを感じるのに、今はただただカッコよくて、眩しい。
「勝手に笑って、勝手に夢中にさせて」
マイクを握る指先も、足を踏み鳴らす仕草も、すべてがステージに染まっている。
圧倒的な存在感で、観客を支配する。
「言いたいこと、山ほどあるんだから!」
レイラの力強い声が響く。
その瞬間、俺は──
完全に目を奪われていた。
観客の歓声が一瞬落ち着いたかと思うと、
レイラは目を細め、次のフレーズに入る。
「目が合うたび、余裕なふりをするけど、なんでこんなに焦ってるの?」
マイクを両手で握りながら、レイラの視線がこちらに向かう。
一瞬、俺の心臓が跳ねた。
「こんな気持ち知らなかった」
ギターのメロディが加速する。
ステージの照明がぐるりと回り、レイラの背後で光の演出が炸裂する。
そして、サビに入る直前──
レイラは俺の目を見て、確かに、微かに微笑んだ。
「強気なままでいたいけど」
レイラは、一瞬だけマイクを口から離し、
片手を耳元に添え、微かに首を傾げながら、"あえて"こちらを見つめた。
「君の一言で全部崩れる」
その仕草は、明らかに『俺にだけだった。』だった。
観客の熱狂の中、ほんのわずかの時間。
「不安なんていらない、負けたりしない!」
そのまま流れるようにギターをかき鳴らし、観客をさらに煽る。
だけど、俺の中では──
さっきの一瞬のレイラが、焼き付いて離れなかった。
「この手で未来を掴んでみせる!」
ステージが眩しく輝く中、レイラの歌声が響く。
観客は跳ね、叫び、拳を振り上げている。
俺はただ──
呆然と、彼女を見つめ続けていた。
[おまけ]
スポットライトの熱が、カーテン越しに肌を焦がすように感じる。
ドラムのスティックがカチカチとリズムを刻み、メンバーの呼吸が揃うのを待つ。
「うぅぅ……緊張するぅぅぅ!!!」
ぐるぐると歩き回るレイラ
手にはギターのネックを握りしめ、今にもへし折ってしまいそうなほどギュッと力を込めている。
「レイラ、そろそろ行くよー……って、どうしたの!? なんで壁に頭こすりつけてるの!?!?」
ドラムの女子生徒が声をかけるが緊張で変な体勢のレイラに驚きを隠せなかった。
「や、やばい……マジで緊張で死ぬかもしれないわ……」
「ちょっと!! あんたがバンドのメインボーカルなのに、そんなことでどうするの!!」
「わかってるけど!! なんか心臓がヤバイ!! バクバクしすぎて爆発するぅぅぅ!!!」
「大丈夫、大丈夫! レイラならできるって!! だって私たち、こんなに練習したじゃん!」
「そ、そうだよね!! うん!!!」
「それに……」
バンドメンバーの1人が、ニヤリと笑って、レイラの耳元で囁く。
「ユウマくん、見に来てくれるって。」
「!?!?!?」
レイラの顔が、一瞬にして真っ赤に染まった。
「ま、待って!? なんで知ってんの!??」
「さっき、体育館の前にいたの見たよ。だから、ミドリに頼んで最前列まで連れてきてもらったから♪」
「う、う、うそぉぉぉぉぉ!!! ちょ、待って、心の準備が……!!」
「さっ、行くよ!!」
レイラは深呼吸し、ギターを掻き鳴らした。
舞台袖から飛び出す瞬間、ステージの向こうで視線がぶつかる──。
ユウマの姿が、最前列にあった
ドクン、と心臓が跳ねる。
一瞬、頭が真っ白になりそうになったが、
レイラはすぐにニッと笑い、いつもの自分を取り戻した。
「よぉし!! やってやるわよ!!!」
彼女の声が体育館全体に響き渡り、ライブは開幕した。
次回![第九十八話、キタイとがっかりの別れ目]
第九十七話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧
私めのXに遊びに来てくださいましたら
今回のレイラが歌っていた曲が聴けるツイートをしておりましてよ。




