[第九十六話、仰天驚愕]
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ジリリ!!
耳をつんざくような音に、俺は布団の中で顔をしかめた。
うるさ……
何度目かの目覚まし音で、ようやく重い瞼を開く。見知らぬ天井が視界に映り、昨日のことを思い出した。
ああ、そうだ……ジョンの部屋に泊まったんだった
寝返りを打ち、部屋を見渡すと、ホッパーが丸くなって「スピースピー」と寝息を立てている。その呑気な姿に思わず笑いがこみ上げたが、それよりもまず起きなければ。
リビングに向かうと、ジョンの姿はなく、代わりに机の上に手紙が置いてあった。
> 「僕は魔術学研究所の出し物があるので先に行きます。鍵は締めたらポストの中に入れといてね。」
「文化祭2日目か……」
そう呟きながら、俺はまだ眠り込んでいるホッパーを抱き上げ、自分の部屋へ戻ることにした。
シャワーを浴びてスッキリした俺は足早にホッパーと学校に向う
到着すると1日目も凄かったけど2日目も比にならないほど凄い。
俺はカバンの中から文化祭のパンフレットを取り出し、ホッパーと次の目的地を考える。
「2日目も相変わらず、すげぇな……」
「今日はホパと一緒にいろんなところ行くルー!」
「そうだな、そうしよう」
真っ先に思い浮かんだのは、ジョンが所属している魔術学研究所ギルド。シルベスターさんやキース先輩もいるし、どんな出し物をしているのか気になっていた。
「よし、まずは魔術学研究所に行くか!」
--魔術学研究所--
「いらっしゃいませ……」
「ブフォ!!」
入った瞬間、思わず吹き出してしまった。
目の前にいたのは、フリフリのメイド服にツインテールのウィッグを被ったジョン。白いニーソにフリルエプロンまで完璧なコーディネート……って、なんだこれ!?
「ジョン、スカート履いてるルー!」
「もう! 見ないでよ……」
両手でスカートの裾を押さえて赤面するジョン。その姿が、妙に似合っているのがまたタチが悪い。
「ニャハハ! ユウマくん、どうかね? これがライラ先生考案の女装メイド喫茶さ!」
魔術学研究所の顧問、ライラ先生が満面の笑みで自慢げに語る。
「女装メイド喫茶!?」
「そうさ! いつも男だらけでむさ苦しいこのギルドも、今日は可愛いメイドさんだけしかいない……あぁ、先生、とっても幸せ!」
ライラ先生が夢見心地で語る中、視界の端にさらなる衝撃が飛び込んできた。
猫耳カチューシャをつけたキース先輩が、艶やかな微笑みを浮かべながら紅茶を運んでいる。
「え……キース先輩、可愛すぎん!?」
俺の驚愕をよそに、ライラ先生は彼にすり寄り、頬をナデナデ。
「キースくん……もう君を男扱いなんてできないよぉ……♡」
「クソ女、俺様のキースに触るな」
ライラ先生のすぐ後ろから、女王様風メイド服を着たシルベスターさんが鞭を片手に登場。
メイドじゃなくて完全にドS女王様じゃん……
そして、俺の視線に気づいたシルベスターさんが、ガニ股のままズカズカと近寄ってきた。
「ユウマ、お前今笑ってたな?」
「い、いいえ……」
「嘘つけ、俺様を見て笑ってただろ?」
俺の顎をガシッと掴み、鋭い眼差しで睨みつけてくる。
怖い怖い怖い!!
見兼ねたキース先輩が、不安定な足取りで歩み寄り、優しくシルベスターさんの肩に触れる。
「シルベスターさん、お客さんを怖がらせるのは禁止ですよ?」
「なっ……だって……」
「だってもないです! ごめんね、ユウマ」
「い、いえ、大丈夫です……」
ていうか、やっぱ可愛い……
どうやら俺と同じことを考えていたのか、シルベスターさんは耐えきれなくなったように、キース先輩の肩を抱いてバックヤードへと消えていった。
あーあ……行っちゃった……
「ジョンはどこかな……」
店内を見渡していると、すぐに見つかった。
ルナ先輩が、メイド姿のジョンを前に、夢中で写真を撮っていた。
「ちょっとルナ先輩!? さすがに撮りすぎじゃ……」
「ダメ? 可愛いんだから仕方ないでしょ」
ルナ先輩がシャッターを押すたびに、ジョンの顔が赤くなっていく。その様子を、遠巻きに見ていたホッパーがテーブルの上で手をバタバタさせながら叫んだ。
「ジョン可愛いルー!」
そして満足げにストローをくわえ、シュワシュワとメロンソーダを楽しんでいた。
「よし、次は魔法遺産調査団に行くか!」
レオさん、ルーシー先輩、リンがいるギルド。どんな出し物をしているのか楽しみだ。
こうして、俺とホッパーは魔術学研究所を後にし、次の目的地へと歩き出した。
魔法遺産調査団ギルドへ向かう途中、俺は廊下に異常なほどの大行列ができているのを目撃した。
「なんだなんだ、この行列は……」
「すごいすごーい! みんなヘビみたいルー!」
行列の先を見ても終わりが見えないほどの人混み。とんでもなく人気のギルドがあるんだな、と感心しながら近づくと、なんだか胸騒ぎがしてきた。
いや、まさか……この行列って……
ほら、やっぱり。
俺の予感は的中し、行列の正体は魔法遺産調査団のブースだった。
「なんと……只今の待ち時間5時間待ち」
俺はパンフレットと時計を見比べる。現在の時刻は朝9時。最後尾に並んだら入れるのは昼の14時ってこと!?
「こりゃあ、ヤバいな……ホッパー、おとなしくここは撤退して……って、あれ? どこいった?」
ふと横を見ると、ホッパーの姿が消えていた。キョロキョロと周りを見回すと、魔法遺産調査団のドアの前で、駄々をこねているホッパーを発見。
「入りたいルー!」
「ダメです、ちゃんと並んでください。」
ルーシー先輩が困惑した顔でホッパーを諭しているが、ホッパーは床にへばりつき、足をじたばたさせて完全に駄々っ子モードに突入。
「やーだー!!」
その足元で、ルーシー先輩の星獣ペンドルトンも、呆れ顔でため息をつきながら言った。
「ダメなものはダメロン!」
「ホッパー、ダメなもんはダメなんだから次行くぞ。」
「ヤマトマルに会いたいからやーだー!!」
「……おい。」
まったく聞く耳を持たないホッパー。俺が頭を抱えていると、ギルドの中からレオさんとリンが現れた。
「あれ? ユウマ、どうしてここに?」
リンが俺に声をかける。
「リン達はどんな出し物をしてるのかなーって気になって遊びに来たんだけど、すごい人で並ぶのはやめようかなって思ってたら、ホッパーが駄々をこね始めたんだよ。」
俺は恥ずかしさを誤魔化すように鼻先をこすりながら答えた。
すると、リンは少し得意げに、
「私たちの魔法遺産調査団は、クレープを売ってるんだよ。」
「クレープか、いいな。」
「……私は下手だけどね。」
うん、知ってる。
以前、俺がリンの料理スキルを目の当たりにしたときの記憶が、鮮明によみがえる。が、あえて何も言わないでおいた。
そんなやり取りをしていると、突然、目の前にクレープが2つ差し出された。
「ほれ、ユウマとホッパーに俺のイケメンクレープどうぞ♪」
「ど、どうも……」
「わーい!」
エプロン姿のレオさんが眩しすぎる。
まさか、レオさんがクレープ作ってるとは……
とにかく、クレープを受け取ると同時に、ギルドの入り口付近が地割れレベルの歓声に包まれた。
「キャアアアアア!! レオ様がクレープ渡してるぅぅ!!」
……あー、やっぱりこうなるよな。
ファンクラブらしき女子たちが、羨望の眼差しでこちらを見つめている。目が合うと、まるで呪詛のような視線を送られた。
レオさんの人気半端ねぇ……
俺はレオさんのクレープを食べながら、ふと足元のホッパーを見ると、すでに完食していた。
こいつ、2口で食べやがった……
「もっと食べるルー!」
「ねぇよ!」
そんなことを言っていると、ホッパーがまたもや「ヤマトマルに会いたい!」と騒ぎ出し、ルーシー先輩に強引に中へ入れてもらおうとする。
結局、ホッパーの勢いに負けたルーシー先輩が「ホッパーだけなら特別に案内する」と言いかけた瞬間——
「ホッパー! おはよッス〜!」
元気いっぱいの声が響き、ヤマトマルがギルドから飛び出してきた。
「おはようルー! ねぇねぇ! 今からベジタブルンジャーのグッズ買いに行こうルー!」
「マジッスか!? それは行くしかないッス!」
ホッパーとヤマトマルは、嬉しさのあまり尻尾と翼をバタバタさせながら、風のようにビューン!とどこかへ飛び去ってしまった。
「なんだよ、ホッパーの奴……今日は一緒に周ろうって約束したところだったのに。」
俺がぽつりと呟くと、横にいたリンがくすっと笑いながら言った。
「暇してるなら、サンクチュアリにジュリア先輩がいたよ? 誘ってあげたら?」
そう言いながら、リンはポニーテールを結び直す。
「そうしようかな〜。……あっ、でもジュリア先輩と二人になるけど、リンは別にいいのか?」
俺が試しに聞いてみると、リンは少しだけ口を尖らせたが、すぐに視線をそらして小さく言った。
「……良くないけど。1人で寂しそうにしてる人を見る方が嫌だし、それに私は忙しくてそれどころじゃないから。」
このちょっとだけ見せるヤキモチが、たまらなく可愛いです。
俺は笑いながらリンに手を振り、
「じゃあ、そうすることにするよ。」
「気をつけてね。」
リンの言葉を背に、俺はジュリア先輩の元へ向かった。
次回![第九十七話、馬の耳にラブソング]
第九十六話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




