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[第九十五話、糸の色は褪せ、亡き月に沈む王行き着く先は絶望]

毎週、月、水、土、絶賛更新中!!


さらにベジタブルンジャーの短編も投稿したよん!


高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜

レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん


どうぞよろしゅうに〜


長い長い1日目の文化祭が終わった。


俺はなんだか無性にジョンに会いたくなって、自分の部屋に帰るのではなく、俺の部屋から五つ目のジョンの部屋に転がり込んだ。


「今日は舞台にフェイ先輩のことに、お疲れ様。」


ジョンは小さな冷蔵庫からエーテルバブルを取り出し、俺に手渡してくれた。ガラスのような透明な缶に入った炭酸飲料は、冷たく、キラキラと魔力の粒子を帯びている。


「サンキュ♪」


一気に喉を潤す。炭酸が喉を刺すように弾けるのが心地よく、ぐちゃぐちゃとした気持ちを洗い流してくれるようだった。


「どうして、フェイ先輩のことフったのさ?」


ジョンの問いかけに、俺は少しだけ缶を傾けながら考え込む。


「どうしてか... どうしてと言われても、ハッキリこうだ! みたいな理由はないけど、なんか俺が幸せにしてあげられない気がするんだよな。」


「それって、なんか曖昧すぎない? だったら後の四人も同じことが言えないと、振られたフェイ先輩が可哀想だと思うな…。」


うっ… 痛いところをついてきやがる、この親友さんは…。


「レオさんもよく僕たちの魔術学研究所に遊びに来て、シルベスターさんに今のユウマと似たようなこと言ってるの、何度か見たことがあるよ。」


ジョンは呆れたようにやれやれと首を横に振る。


エーテルバブルを一口飲み、ふぅと息をついた。


「ちなみにだけど、レオさんの恋多き悩みを聞いてるときのシルベスターさんって、どんな回答するんだ? あの人から的確なアドバイスが出るとは、俺には到底想像もつかん…。」


俺の素朴な疑問に、ジョンはニヤリと笑って答えた。


「死ね、って言ってるよ。」


「だろうな…。」


そうだよな。こんな曖昧な振り方をする奴なんか、死ねって思われても仕方ない。


俺はゆっくりと背中を後ろへ傾け、クッションに身を委ねた。寝室の奥ではホッパーとモナークがキャッキャッと楽しそうにじゃれ合っているのが見える。


「あぁ〜、いいな〜。俺も星獣になりたいなー。」


そんな俺のボヤきに反応したのか、ホッパーとモナークがトテトテと二足歩行で俺の前に来る。


「ユウマが星獣になったら、きっと馬の星獣だココ。」


「ウマ!? ティアと一緒ルー?」


「違う、あれはポニーだココ。」


あぁ、なんだかわかる気がする。そんな顔で頷くジョンに、俺とホッパーは頭にハテナを浮かべる。


「モナーク、なんで俺が馬なんだよ?」


俺の純粋無垢な質問に、モナークは嘘だろ? このバカ真剣(まじ)? みたいな顔をしながら、俺に背を向けつつ笑いながら言い放った。


「馬の性欲をソサマで調べてみるココー!」


「…は?」


なんだよ、アイツ… 馬の性欲ってなんだよ。俺はモナークに言われるがままにソサマを手に取り、調べてみることにした。


あっ…


 


そんなこんなで時間は過ぎ、そろそろ帰らないとな…と思うのだが、今晩はなぜか帰りたくない気持ちが強い。


「ユウマ、そろそろ帰ってよ。早く寝ないと、僕は明日魔術学研究所の出し物があるんだよ。暇なユウマとは違うんだからね。」


「えぇぇ、帰りたくないよー。」


「そんなこと言っても、ベッドは一つしかないんだよ?」


「俺は平気だ。」


「僕は平気じゃない。もしかしてユウマ、男の子も大丈夫な人?」


「なわけ! ーーー でも、強いて言うならキース先輩なら? あの人可愛い顔してるし。ナハハ! なんちゃって」


ジョンは一瞬沈黙した後、すっと視線を落とし、冷たく言い放った。


「…死ね。」


 

-------




影も形も消え去ったかのような、不気味なほど澄んだ静寂の午前3時。


エンチャントレルムの隣にある深い森。その闇の奥から、徐々に影の集団が姿を現す。


「さぁさぁ、着きましたコン」


両手を広げ、魔王イクノシアにドヤる雛音。


しかし、魔王は微笑むことなく、真剣な面持ちで腕を組んだ。


「案内ご苦労。」


結界を前に立ち尽くす集団。静寂を破るように、ダミアナが冷笑を漏らす。


「なんとご立派な結界ですこと……。外からくる部外者は絶対にいれてやらねぇ、そんな"自己満足"が滲み出てますわね。」


彼女は、鼻で笑いながら結界を形成している街灯に似た魔法具を鋭いヒールで蹴る。



一方で、魔王イクノシアは人差し指を結界に押し付ける。


バリバリバリッッ——!!


まるで拒絶するように、結界は暴れ狂い、魔王の指を消し去ろうと激しく反発した。しかし、魔王は表情ひとつ変えず、仲間たちに向けてこれからの流れを語り始めた。


「我が完全に復活するために、我とアリヤ、雛音の3人で侵入する。ダミアナとサミラは、我が生まれ育った憎き場所……セレナヴェールの修道院へ行け。」


「……?」


サミラが戸惑いの表情を見せると、魔王は冷たい笑みを浮かべた。


「場所がどこかわからないと言った顔をしているではないか。大丈夫、わかりやすいぐらい目立っているさ……。"太陽と十字架がシンボル"の、汚れきった場所だ。」


魔王の怒りが込められた声色に、サミラは思わず恐怖で下を向いた。


対して、ダミアナは気にすることもなく、道端に咲いていた小さな花を無造作に踏み潰す。


「わたくしとサミラは、その修道院で何をすればよろしいのです?」


「お前たちは**"ミカエルの身体"**を探せ。」


その言葉に、場の空気が変わる。


「もし修道院にミカエルの身体があるなら、千年の時を経て**"骨だけ"**になっているはずだ……。」


すると、魔王の言葉に覆いかぶさるように、ダミアナが愉悦の滲んだ声で続ける。


「修道院にいる人間たちから、魂も肉体もすべて奪い、ミカエル様の身体を修復しろ……そういうことでよろしいですわね?」


魔王は満足げに頷いた。


「うむ。」


すると、ダミアナは魔王の前で深々と跪き、恭しく視線を上げた。


「では、魔王様——このダミアナに力を授けてください。」


深く敬意を込めた声。彼女の長いまつ毛が揺れ、真紅の瞳が妖しく煌めく。


魔王は無言でダミアナの顎を掴み、顔を近づけた。


妖艶な目が、彼女の奥深くを射抜くように覗き込む。


「我が魔力よ、汝の力と共鳴せよ。」


イクノシアの身体から魔力が溢れ手の甲にユウマと同じぼんやりとした黒い紋章が浮かびあがる、そしてダミアナに魔力を注ぐように口付けをした。


魔王の魔力がダミアナの身体に注ぎ込まれ、背筋が痺れるような快感が彼女を包み込む。


「っ……あぁ……♡」


眩い漆黒のオーラが、ダミアナの全身を覆い尽くす。闇が、彼女の背後で揺れ狂うように燃え上がる。


「はぁ……っ♡」


口から漏れる甘美な息。


魔王の魔力は決して優しくない。それは、まるで魂を喰らい尽くすかのような暴力的なエネルギー。


それでもダミアナは、うっとりと目を閉じ、陶酔するように魔王の魔力を受け入れる。


この命が尽きようとも、魔王の魔力を浴びることこそが歓喜。


「これで、完璧に……ですわね……」


濃密に注がれた魔力が、ダミアナの体内で燃え滾る(タギ)



そして魔力供給が終わったダミアナはそそくさとサミラを連れ空へと舞い上がり、セレナヴェールへと向かっていった。

 

彼女たちの姿が遠ざかるのを見送りながら、魔王イクノシアは不意に視線を下ろす。


「ん? なんだお前たち? なにを赤くして見ておる」


驚いたような顔をしているのは、雛音とアリヤだった。


「いや〜、わっちも1000年前はバリバリ魔力供給していただいていたので慣れてはいたのですが、やっぱり魔王様の注ぎ方は刺激が強いコン」


「私は……初めてみた……なんか、ふしだらって感じ……」


雛音が耳を赤くしながらバタバタと両手を振る。アリヤは照れたように視線を逸らし、そわそわとした様子を隠せない。


それを見た魔王はグハハ!と高笑いを響かせる。


「直にアリヤと雛音にも魔力供給をしてやる。その時はしっかりと働いてもらうぞ。」


すると、ふと内部からひとり、こちらに歩いてくる影があった。


「雛音が言っていたアイツか?」


魔王が視線を向けると、雛音が胸を張って答える。


「はい! 今回もしっかりと操らせていただきましたコン♪」


ピンク色の長髪が夜風になびく。

整った顔立ちに、穏やかな微笑みを浮かべ、歩いてくる人物。


ユウマのクラスメイト、ミシェル・サイレンだった。


彼女はゆっくりと結界の外にいる魔王の前まで歩み寄り、ニッコリと笑顔を浮かべた。


「はじめまして。」


その光景に、魔王は眉を寄せる。


何かがおかしい。


操られている者が、意識を持っているはずがない。


古代魔法の一種である闇魔法には、"人を完全に支配する力"がある。しかし、その強力さ故に、操られた者は意識を失い、まるで人形のようになるものだ。


だが、目の前の少女は... あまりにも普通すぎる。


「……お主、まさかとは思うが操られていないな?」


魔王の問いかけに、雛音はギョッと目を見開いた。


「えぇぇ!? いやいや、わっちのブレスレットはちゃんと機能し……」


だが、それを遮るように、ミシェルはこの場に似つかわしくないほど清々しい笑顔で答えた。


「はい! 操られていません。私は、私の意志でここに来ました。」


——瞬間、場が静まり返る。


「……何故だ?」


魔王が問うと、ミシェルはまるで迷いなく、微笑みを浮かべたまま答えた。


「ユウマくんを守るためです。」


その言葉に、魔王はふっと鼻を鳴らした。


「守るためか……。愛は、時に人を狂わせる。」


——その瞬間、ローブの中から震えた声が響いた。


「ミシェル……もう帰ろうにょ……」


そこにいたのは、彼女の星獣であるアイシャだった。

ミシェルのローブの陰に隠れるように、小さな体を震わせながら、必死にミシェルに訴えかける。


「帰って、ミケロスとエシャと一緒に仲良く学校生活送ろうにょ……こんなこと、ダメにょ……」


アイシャの瞳には、涙が滲んでいた。


しかし——ミシェルの表情は、一瞬で冷たく変わった。


「……」


そして——


何の躊躇いもなく、その小さな首に手をかけると、ギリッと力を込めて締め上げた。


「アンタは私の星獣なの。星獣ごときが主に向かって指図するなんて許されないんだよ? わかるかな〜?」


——ぐぎゅっ……!


アイシャの小さな体がピクッと痙攣し、舌が力なく垂れ下がる。

 

白目を剥いたまま、息もできず、口からダラダラと唾液が垂れ流れる。


……本当に、このままだと死ぬ。


それを見たミシェルは、ようやく満足したかのように、首を絞める手を緩めた。


「こんなにすぐ弱るんだね。カワイイ♡」


まるで人形を愛でるような声色で、アイシャの頬を撫でるミシェル。


しかし——その長々としたやり取りに痺れを切らした魔王が、

チッ……と、苛立たしげに舌打ちをした。


「話はもういい。雛音、ミシェル、やるぞ。」


内部と外部、同時に結界を無効化する


魔王が合図を送ると、雛音は手に持った水晶玉を高く掲げた。


「これより、"接続"を開始するコン。」


水晶玉に雛音の魔力が注がれ、結界を作っている魔道具に禍々しい魔力を注ぐ、すると結界の外側に"歪み"が生じ始める。

 

バチバチバチバチ——ッッ!!


結界が拒絶するように反発するが——それを、内部からミシェルが同時に崩しにかかった。


「——『転換の呪い、汝の主に従え。』」


ミシェルが身につけているブレスレットが黒く光る、なんの迷いもなく彼女はそのまま、手を結界に当てる。


バキバキバキッッ!!


結界が……"軋む"。


雛音の外部操作、ミシェルの内部崩壊——その"二重の作用"により、結界は耐えきれず、ゆっくりと"穴"を開け始めた。


「崩れましたコン♡」


「ミシェル、次は侵入の誘導だ。」


「承知しました」


ミシェルがその場でぺこりとお辞儀をし、結界が薄まった"侵入口"へと手をかざす。


「魔王様、どうぞ。」


「よし行くぞ。」


魔王イクノシアが、満足げに息を吐くと、ゆっくりと結界の中へと足を踏み入れた。


その背後で、雛音がくすくすと笑う。


「いよいよ、始まるコン……」


——ついに、オブキュラスが"侵入"を果たした。


[おまけ]


夜は深く、空気は重い。


カーテンの隙間からこぼれる月明かりが、ベッドの上の影を淡く揺らしている。薄闇の中、レイヴンは静かに息を整えながら、メリファの存在を感じていた。互いの熱が、ぴたりと肌を重ねたわけでもないのに、布越しに伝わってくる。


沈黙。


だが、それは何より雄弁だった。


メリファの微かな吐息が、緩やかにレイヴンの耳をかすめる。呼吸の間隔が、ゆっくりと近づいていくのを感じる。理性的であるはずのレイヴンが、こうして自分の感情に翻弄されるのは、メリファの存在だけだ。


指先が、ベッドシーツの上を彷徨う。わずかに触れるか触れないかの距離を保ちながら、迷うように滑る。



声にしない声。


触れたいのか、触れたくないのか、決めるのはどちらだ?


まるで試すように、メリファの白い指がそっと動く。微細な動きが、やけに鮮明に感じられるのは、夜がふたりを孤独に閉じ込めているからか。


レイヴンは、喉の奥で小さく息をのんだ。


──ほんの少し、指先が触れる。


熱い。


冷静なはずの自分が、愚かにもその小さな接触に囚われる。ほんの一瞬のことなのに、まるで全身を絡め取られたかのような錯覚に陥る。


けれど、次に動いたのはメリファだった。


「……レイヴン?」


声が低く、柔らかく、だけどどこか残酷だった。


どうするの? どうしたいの? そう問いかけるような、挑発に近い囁き。


レイヴンは唇を噛んだ。


その狭間で揺れる心は、理性の薄皮一枚でなんとか持ち堪えていた。


けれど──。


メリファは、それを容易く引き裂く。


「……ねぇ、逃げないで?」


指が絡む。逃げる道を閉ざすように。まるで蜘蛛の糸に囚われる蝶のように、レイヴンの手はメリファの指の間に絡め取られる。


甘美で、冷たくて、だけど熱い。


「……ふふ、ほんと、意地悪ね」


今度は、レイヴンが息をのむ番だった。


「メリファ...」 


呼吸が混じり合う距離で、メリファは静かに微笑む。


彼女は知っている。レイヴンが、いかに自制心を強く持とうと、それがどれほど脆いものかを。


だから、ゆっくりと、慎重に、そして貪るように──メリファは夜の静寂を壊す。


レイヴンの視界が、月の光に滲んで揺れた。


もう、何が境界線なのかすらわからない。


夜は深く、闇は甘く、そして何より──レイヴンの声は、囁きの中で妖しく響いていた。

  


次回![第九十六話、仰天驚愕]

第九十五話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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