[第九十三話、ギンギラギンなアドレナリン]
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どうぞよろしゅうに〜
10/ 3
緊張のせいだろうか、目が覚めた瞬間、胃の中が鉛みたいに重く感じた。布団から抜け出すのにも少し勇気がいった。舞台初日。主役として、みんなの期待を背負う日だ。
「ふぅ…」
軽く息を吐いて頭を振る。俺はベッド脇のテーブルに置いてあった水を一気に飲み干し、鏡の前に立った。
鏡越しに映る自分の顔はどことなく青白い。情けないと思われても仕方ないような顔だった。だけど、俺は負けるわけにはいかない。
「大丈夫だ、俺ならやれる。…やれるって。」
鏡に向かって自分に言い聞かせる。でも、その声はどこか震えていて、自信なんてまるで感じられなかった。
「ルー!」
突然、背中から聞こえる明るい声にびっくりして振り返ると、ホッパーが小さな拳を握りしめて飛び跳ねていた。
「ユウマ、ホパも応援してるルー! 頑張るルー!」
その小さな体全体を使った精一杯の応援に、自然と頬が緩む。
「ありがとうな、ホッパー。お前のその姿を見てると逆に緊張が和らぐよ。」
「笑顔は大事ルー!」
ホッパーが満面の笑みで胸を張る。こいつは本当にどこまでも前向きだ。
俺はホッパーの頭を軽く撫でると、気合を入れ直すようにシャワーを浴び、いつものように制服に着替えた。緊張で震えた手で髪を整えていると、ホッパーが鏡越しににんまりと笑う。
「ルー、ユウマがカッコよくなったルー!」
「俺はいつもカッコいいだろ?」
そう返しながらも、少しだけ肩の力が抜ける自分がいた。
準備を終え、荷物をまとめて部屋を出る。冷たい空気が頬に当たり、少しだけ胃の不快感が和らぐ気がした。
文化祭、その幕開けを告げる朝は、活気と喧騒で満ち溢れていた。校庭には色とりどりのテントが立ち並び、焼き菓子の甘い香りや香ばしい肉の匂いが漂う。生徒たちの笑い声や、どこからか聞こえてくる軽快な音楽が絶え間なく響き渡り、まるでお祭りのようだ。体育館の外には鮮やかな旗が風になびき、ポップな飾りつけがまぶしい。魔法を使ったアトラクションや、メイドカフェにお化け屋敷。活気に満ちたその光景は、非日常のワクワク感を存分に詰め込んだ、まさに夢のような世界だった。
そして1日目にして一番の大イベント
体育館の外では、観客たちが波のように押し寄せてくる。開場を知らせるベルの音が響くと、待ちきれない人々が足早に中へと吸い込まれていく。
一方、舞台裏はまさに戦場のような賑わいだ。
「ライトはOKかしら?」
「いまセットしてまーす」
「ルー! ルー!」
「俺様の邪魔をするな!」
「そっちがどけにょ!」
「衣装の裾、引きずらないように気をつけてでち
!」
「はーい♡」
誰が話してるかもわからないほど慌ただしく行き交う様子が繰り広げられてる中、舞台袖にはもうすぐ出番であろうメンバーたちが揃っていた。
「よし、全員いるな。」レイヴンが冷静な声で周囲を見渡す。
リンがその言葉を受けて、明るく力強く言葉を紡ぐ。
「全員、観客に夢を見せるつもりでいきましょう!」
「や、やるぞー... !」
ユウマが緊張で身体をブルブルと震えさせながらも笑顔を見せる。そんな姿に思わず吹き出しそうになるメンバーを横目に、フェイが舞台監督らしく手を挙げて全員を引き締めた。
「みんな!ここまでやってきたんやから!ぜーーったい成功させるで!」
その力強い声に、全員が深く頷く。
拳を突き上げたその瞬間、全員の想いが一つに重なる。揺るぎない団結感が、舞台袖の一角を一層輝かせた。
いよいよ幕が上がる。
体育館は、魔法の光に包まれたように鮮やかで、観客席には期待に満ちた表情の人々が並んでいた。舞台の上では、ユウマ演じるゼノンが膝をつき、剣を握りしめながら涙を流す。その震える声が、体育館全体に響き渡る。
ゼノン(ユウマ)
(涙をこらえながら)
「俺が信じてきたものは…すべて嘘だったのか…。父さん、母さん…ごめん…。俺は何も守れなかった…。」
その声は切実で、観客席の空気を一変させた。涙を浮かべる者、息を飲む者、全員がゼノンの悲劇に心を奪われていた。
場面が変わり、舞台上には魔女が登場する。彼女の狂気に満ちた笑い声が観客の胸を打つ。
魔女
(鋭い笑みを浮かべながら)
「光も希望もすべて消し去った!これからは私が支配する!誰も抗えない!」
舞台全体が赤く染まり、魔女の影が巨大に映し出される。その不気味さに、観客席からすすり泣きが聞こえた。
ナレーション(ミシェル)
「光の消失、希望の崩壊。そして訪れたのは、狂気と絶望の支配。物語は終わりを告げる。しかし、その先に新たな始まりがあるのか…それは、誰にもわからない。」
舞台が完全に暗転し、数秒の静寂が訪れる。観客は息を潜め、余韻を楽しむようにその場に留まった。その後、静けさを破るように一人の拍手が始まり、次第に体育館全体が熱狂的な拍手に包まれた。
ユウマは舞台裏でその音を聞きながら、手が震えるのを感じていた。
終わった…本当に、終わったんだ…。
拍手の音が大きくなり、仲間たちが笑顔で肩を叩いてくれる。
舞台の幕が完全に降りると、校長のソフィアが立ち上がり声を張り上げた。
「全員、素晴らしかったです!あなたたちは歴史に残る舞台を作り上げました!」
その言葉にユウマは思わず涙を浮かべ、仲間たちと一緒に拳を突き上げた。体育館は歓声と拍手の嵐に包まれ、舞台の成功を誰もが確信していた。
「やっと... やっと終わったやんや...」
フェイは楽屋の隅であした〇ジョーのように灰になっている。
「リンちゃんの演技すごかったわ...」
メリファは卓越した彼女の演技をただただ褒める。
「ありがとうございます。私も本番であんなに感情をむき出すとは思ってもみなかったです。」
リンは頬を赤らめ、控えめに微笑む。しかしその笑顔に、周囲のメンバーは一瞬ヒヤリとした表情を見せた。
「それより、問題はアイツよアイツ。」
レイラが指差す先には、床に倒れ込むユウマの姿があった。全力を出し切り、完全に燃え尽きている。
「大丈夫?…」
銀髪の頭をツンツンと人差し指で突きながら、ルナが静かにユウマに話しかける。その声にユウマは反応することはない。
「ねぇ、せっかく舞台は終わったんだから文化祭、誰か一緒に周ろうよ〜。」
ジュリアは楽屋の雰囲気を打破するように明るく声を上げると、キースの腕にしがみつき強引に引っ張る。
「ちょっ…待てって!俺、まだ休んでたいんだけど!」
キースが抗議するも聞く耳を持たず、ジュリアはそのまま楽屋を後にする。
その様子を見ていたルーシーとレオも軽やかに出ていき、楽屋はあっという間に静かになった。
残されたのは、灰になったフェイと床に倒れ込むユウマの二人だけになった。
−−−−−−
気が付くと、楽屋には俺一人しかいなかった。
「…あれ? みんな、どこ行ったんだ?」
最後に覚えているのは、舞台の幕が降りた安堵感に包まれて、そのまま気を失った...
どうやら俺だけ置いてけぼりを食らったらしい。
とりあえず…起きるか。
力の入らない身体をゆっくり起こし、制服に着替えて楽屋を出る。扉を開けると、外はまだまだお祭りムードの真っ最中だった。
「眩し…」
思わず手で日差しを遮る。久しぶりの太陽に目を細めながら辺りを見渡す。
右、左、そして前。
「っうわ! びっくりした!!」
目の前に立っていたのはリンだった。俺の驚きに彼女は軽く眉を寄せる。
「人の顔見てびっくりするなんて、失礼しちゃう。」
「あれ? 1人?」
俺が尋ねると、リンはLLサイズのポップコーンを抱えながら小さく頷いた。
「うん。ヤマトマルたち星獣はみんなで遊びに行っちゃったし、私はこういうガヤガヤしたのがちょっと苦手で。」
そう言いつつも、片手にはぎっしり詰まったポップコーン。どうやら苦手というわりには文化祭を満喫しているらしい。
「そ、そうだ! ユウマ、このあとなにも予定ないなら、一緒に文化祭を回らない?」
そう言うと、リンは少し照れたような笑顔を浮かべながら言葉を続ける。
「どうしても見たいショーがあってさ。」
「まぁ、特に予定もないし、いいけど。」
俺が答えると、リンはほっとしたように「よかった」と微笑む。その笑顔がなんだかやたらと可愛く見えて、心臓が一瞬だけ高鳴ったのはここだけの話だ。
リンが見たがっていたショーの会場に着いて、俺は少し驚いた。
「まさかの刀愛好家ギルドのショーとは…。」
俺が小声で漏らすと、リンは少し気まずそうに視線を逸らした後、目を輝かせて言った。
「ほら! もうすぐ始まるよ!」
ワクワクした声色のリンを見て、俺はなんだかんだで彼女のこういうところが好きだな、と思わずにはいられなかった。
刀愛好家ギルドのショーは、静まり返る観客の前で幕を開けた。一瞬の静寂の後、剣士たちが一糸乱れぬ動きで刀を振るう。その速さと正確さに、思わず息を呑む。剣が交わる音が響くたび、リンが嬉しそうに身を乗り出して拍手を送る。
「見て!あの動き、すごく綺麗!」
リンが目を輝かせて隣でつぶやく。その純粋な反応に、俺はつい微笑んでしまう。
最後に剣士全員が揃って刀を振り下ろすと、場内には大きな拍手が鳴り響いた。リンは感激したように立ち上がり、力強く手を叩いている。
「あそこであの刀が出てくるなんて...カッコよかった」
リンが目を輝かせながら話している。さっきまで見ていた刀のショーの余韻がまだ残っているようだ。
「なんか、刀見てるときのリンって、ヒーローショー見てる男の子みたいだったな」
つい口をついて出た俺の言葉に、リンが顔を赤くしてムッとした表情をする。
「それ、褒めてるの?」
「もちろん、すっごく楽しそうだったからさ」
そんな他愛ない話をしながら歩いていると、急に声が飛んできた。
「あれ? あの子って魔女役の…」
「うそー! やーん! サインしてー!!」
瞬く間にリンの周りに人だかりができた。最初は一人だったのが、あっという間に二人、三人と増え、気が付けば大勢の人がリンを囲んでいる。
「え? あっ...ちょ... ユ、ユウマ〜!」
困惑した顔で助けを求めるリンの声が聞こえる。だけど、この状況、俺にはどうすることもできない。
「すまん、リン...」
ぽつりと呟きながら途方に暮れていると、突然俺の腕が強引に引っ張られた。
「な、なんだぁ!?」
振り返る間もなく連れ去られる俺。その犯人は…
「|Just shut up and follow me. I wanna us be alone.《黙ってついきなさい、2人きりになりたいの》」
イタズラっぽい笑顔を浮かべながら、流れるような言葉を口にするローザさんだった。
「えっ…今のってどういう…」
「気にしないで♡ 行くわよ♡」
彼女の勢いに飲まれるように、俺はどんどんと引っ張られていく。
廊下を光が滑るように、俺たちはひたすらに走った。ローザさんがぎゅっと俺の手を握ってくる。その感触に気づいた俺も思わず握り返すと、彼女が少しだけニヤけているのが視界の端でわかる。
やがて辿り着いたのは、見た目からして不気味な建物だった。
「ここってお化け屋敷ですか?」
「そうよ。文化祭のパンフレットに載っててずっと来たいと思ってたのよ。」
そう答える彼女の目は、子供みたいに輝いていた。その瞬間、黒い垂れ幕の中から雪女に扮した生徒がスッと現れる。
「ようこそ…オカルト研究会のお化け屋敷へ。」
オカルト研究会のお化け屋敷って、そのまんまやんけ!
内心、ツッコミを入れたくなったが、それよりもローザさんが口にした言葉のほうが俺の意識を奪った。
「恋人幻滅コースで。」
「恋人幻滅コースってなんすか?」
俺が尋ねると、雪女のコスプレをした生徒が静かに説明し始めた。
「いつもたくましい彼も、この恋人幻滅コースでは思わず子供に戻っちゃう…で有名なコースです。」
「ほうほう…って、俺たち恋人じゃないんすけど。」
そう言うと、ローザさんは「そんなことわかってるわよ」と言いたげな顔で、指を横に振りながら舌を鳴らす。
「2人でこのコースを乗り切って恋人になればいいじゃない?」
いやいや、ホラーとか無理だし、それに2人でこれを乗り切ったからって恋人になるとか、んなアホなぁぁぁ…。
俺がそう思っている間に、またしてもローザさんに腕を掴まれ、半ば強制的にお化け屋敷へと連行されていくのだった。
[おまけ]
『ベジタブルンジャー!スッペシャルショー!』
ド派手な看板の下、広々としたグラウンドの中央に位置する特設ステージにて文化祭の目玉イベントであるベジタブルンジャーが登場する。ヒーローショーが始まった。観客席は超満席 みんな大好き、パプリカレッド、モロコシイエロー、そしてビーツパープルが舞台の中央で勇敢に立ち、悪の化身、キスジノハミムシに挑んでいる。
「今日こそはお前を倒す!キスジノハミムシ!」
パプリカレッドが鮮やかなマントを翻しながら、悪を指差す。その声は爽やかで力強く、観客の心を掴む。
「キースキスキス!!やってみるならやってみな!」
キスジノハミムシが不敵に笑いながら応える。
「頑張れー!パプリカレッド!!」
観客席の最前列、ユウマの星獣ホッパーが小さな手をメガホンのように口元にあて、大声で声援を送る。
「行け行け!ビーツパープル!!オレっちが応援するッスよー!」
隣ではリンの星獣ヤマトマルがバッタバタと飛び回りながら、大興奮で叫ぶ。
しかし、一方で…
「こんなの子供だましだロン」
ルーシーの星獣ペンドルトンが冷めた様子でぼそり。
「ふわぁぁ…眠いっちゃね」
シルベスターの星獣リーナもあくびを噛み殺しながら、爪をのばして毛繕いを始める。熱気に包まれた会場の中で、この二匹だけがどこかマイペースだ。
そんな二匹に気づいたモロコシイエローが舞台上から声をかける。インカムマイク越しの声が会場中に響いた。
「2人とも!恥ずかしがらないで!私たちを応援してくれないと、私たちはキスジノハミムシに勝てないわ!」
その呼びかけに、ペンドルトンが小さく眉をひそめる。
「恥じゅかしがってるとかじゃ…」
言いかけたところに、ホッパーが割り込んできた。二匹の手と前足を大きく広げて叫ぶ。
「さぁ!手を挙げて応援するルー!」
観客席が一斉に沸き立つ中、仕方なくペンドルトンとリーナも渋々ショーを見守る羽目になった。
次回![第九十四話、吐息でNetwork]
第九十三話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




