[第七十四話、照明・音響が機能するまで EP1]
お知らせです。
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あと1話しかない緊急事態のため、来週は投稿おやすみして再来週の30日から投稿します。
毎週、月、水、土、絶賛更新中!!
高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜
レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん
どうぞよろしゅうに〜
9/3
−−2年生の教室−−
「えーですから…」
担任のライラが黒板にチョークを走らせながら授業を進めている。その声は規則正しく響いているはずなのに、ジュリアの耳にはほとんど入っていない。机の上でペンをクルクルと回しながら、彼女は深く考え込んでいた。
(うーん…音響とか照明とか言われても、正直ピンとこないな〜。私、てっきりお姫様とか占い師の役をやると思ってたのに。一番想像できない裏方に回るなんて…)
黒板を見るために顔を上げるが、彼女の表情はまだ曇ったままだった。その様子を背後から見ていたルナが、少し眉をひそめながらジュリアの肩をツンツンと指で突いた。
「な、なに…? どうしたのルナ?」
「勉強に集中しないと。」
小声ながらも、ルナの言葉には柔らかいが強い意志が込められている。ジュリアは一瞬たじろぎ、目を泳がせながらも返事をした。
「わ、わかってるけど…」
「後で話聞くから。だから今は集中して。」
「はーい。」
不承不承ながらもジュリアは授業に視線を戻す。しかし心の中には、舞台への不安がぐるぐると渦巻いていた。
昼休み、中庭では2年生全員がそれぞれ持ち寄った弁当を広げていた。爽やかな風が木々を揺らし、小鳥のさえずりが聞こえる中、話題はやはり舞台のことに集中していた。
「俺の出番、めちゃくちゃ短いんだけどさ、それでも緊張するんだよね。」
キースが手にしたサンドイッチをかじりながら、そう漏らす。
「そうね、確かにあのレイヴン先輩の父親役なんてプレッシャーすごいわよね。」
そう言いながら、ルナは食べていたクロワッサンの食べカスをスカートから払い落とす。
「それ言うなら、僕のプレッシャーもエグいですよ。だって僕、レイヴン先輩の付き人の魔法使い役ですからね!」
「アカン!みんな甘いわ…うちなんか舞台監督やで。毎日毎日吐きそうになるっちゅうねん。」
フェイはアツアツのたこ焼きを頬張りながらそう言う。言葉とは裏腹に、その食欲は凄まじく、どこか余裕さえ感じさせる彼女の姿に、周りはコイツなら大丈夫だろと思った。
だが、その場の空気とは対照的に、ひとりだけため息を繰り返す人物がいた。緩く巻いた髪を指でクルクル巻きながら、またひとつ、深いため息をつくジュリア。その様子に気づいたキースが、目を細め心配そうに声をかけた。
「ため息多いね。どした、ジュリア?」
「うん…。私、ちゃんとできるかなって不安で…。今日の放課後から練習が始まるでしょ?私、エフェクターとかオーディオプレイヤーとか触ったことないもん…。」
その言葉には、普段のあざといジュリアらしさはなく、本当に心からの不安が滲み出ていた。
そんな彼女に追い打ちをかけるように、ルーシーが煽るようなことを言う。
「それに…星獣が手伝うって話、余計に不安じゃないですか?特にあのホッパーがいるとなると…」
その言葉に場が一瞬沈黙する。ホッパーの無邪気な姿が頭をよぎるたび、全員の脳裏に「大丈夫かな」という同じ不安がよぎった。
やがて、ジュリアは持っていたおにぎりを少しかじったが、味がほとんど分からなかった。おそらく、他の4人も同じだろう。今日のお昼ご飯は、正直あまり美味しくないと思った。
--放課後、体育館--
今日から文化祭の舞台練習が始まった。
体育館の中はキャスト陣やスタッフ、星獣たちの声が交錯し、早くも活気に満ちている。ユウマやレイヴン、リンらキャストたちは体操着に着替え、台本を手に立ち位置や台詞の確認をしている。
一方、体育館の隅ではジュリアがミキサーやタブレットを操作していた。音響と照明の操作を任された彼女は、機材に向き合いながら試行錯誤している。
「ここはこうで…あれ?なんかグルグル回ってる。」
照明の調整をしているつもりが、誤操作なのかミラーボールのように激しく回転し始めた。天井で光が反射してぐるぐると回る様子は、舞台というよりまるでディスコだ。
舞台上では、村人ロック役のジョンがセリフを読み上げている。
「聞いたか…また魔女の声が昨夜響いたらしいな。まるで俺たちを弄ぶかのように。」
その隣で、村人リリン役のレイラも台詞を読むが、照明が奇妙に回転する様子に気を取られてしまう。
「ええ、聞こえたわ…『少女が自由を手に入れたとき、王国の真の支配者が生まれる』…そんな…ん?なによ、なんか照明おかしくない?」
挙動不審な照明がどうにも気になり、レイラはセリフに集中できないようだった。
「ジュリア!すまないが照明を戻してほしい!」
レイヴンが厳しい声で指示を飛ばす。しかし、ジュリアはタブレットを何度も操作しようとするものの、状況は悪化するばかり。ついには全ての照明が一斉にグルグルと回り始め、体育館全体がまるでカーニバルのような状態になった。
「凄い凄い!楽しいダンスの時間ルー!」
ホッパーは大喜びで体育館を駆け回り、光の中を跳ね回る。その姿にジュリアは余計に焦りを感じ、ついにタブレットを乱暴に叩く。
「なんで戻らないの…もうー!イラつくー!」
すると、見かねたミケロスがジュリアに近づいてきた。無言で彼女の隣に立つと、スッとタブレットを受け取り、手際よく操作し始める。その手元は驚くほどスムーズで、あっという間に照明が元に戻った。
「ありがとう…」
ジュリアが呆然と礼を言うと、ミケロスは冷たい視線で彼女を一瞥する。
「できないなら、誰かに聞くことぐらいしろ。」
「だってー…」
「だってもクソもあるか。いつも誰かが助けてくれると思ったら大間違いだぞ。」
その冷たい言葉に、ジュリアはしゅんと肩を落とした。
「ごめんなさい…」
ミケロスは少しだけため息をつき、再びタブレットに視線を戻す。
「照明を動かすのに、そんなにたくさん触らなくていいんだ。こうすればほら…」
彼が数回指を滑らせると、リンとユウマが掛け合っているミステリアスなシーンにピッタリの、柔らかくも暗い照明が場を包み込んだ。その光の動きは、まるで台詞の空気をさらに引き立てるような効果を生んでいた。
「すごい…」
ジュリアは思わずその光景に見入ってしまう。その場にぴったりな照明の力を初めて実感し、自分もこんな風に操作できたらと胸が熱くなった。
「わからないなら、誰か詳しい人に聞くべきだ。」
ミケロスの一言が心に刺さる。ジュリアは勢いよく手を挙げるようにして声を上げた。
「じゃあ! ミケロスくんお願いします!」
「い!? お、俺!? ま、まぁいいけど…」
突然のお願いに戸惑いつつも、ミケロスは真っ赤な顔をして照れたように視線を逸らす。
「お兄様〜!早くこっちにきてナレーションの練習しましょう!」
遠くからミシェルが呼ぶ声が聞こえ、ミケロスはジュリアに短く「じゃあまた後で」と告げると、ナレーション席に向かって走っていった。
柔らかなスポットライトが舞台を包む中、リンがユウマに向き合いながら静かに微笑む。その柔らかな笑みにも、どこか底知れないものを感じさせる。
占い師役のリンが口を開く。
「運命は才能を選ばない。アナタには、この世界を変える力がある。ある国に魔女がいるの。その魔女を倒して、ウランという少女を救う力がアナタにはある英雄になる力がね。それを信じるかどうかは、アナタ次第だけど。」
リンの台詞に合わせるように、照明を操作するジュリア。しかし、スポットライトの明るさがまだ強すぎる。リンの妖艶な雰囲気をかき消してしまっているのを見て、監督席に座るフェイがメガホンを手に声を飛ばす。
「アカン! アカン! ジュリア、もうちょい暗くして! 妖艶な感じが欲しいんや! 明るすぎてリンの顔が丸見えや!」
フェイの指摘に、ジュリアは無言で頷き、再びタブレットに目を落とす。照明の色合いや光の強さを微調整するが、集中する彼女の肩を、ヤマトマルが羽で軽く叩く。
「ねぇ〜ジュリアちゃーん♡ オレっちなにしたらいいっスか?」
ジュリアはヤマトマルを横目でちらっと見ると、適当にあしらうように答えた。
「んー...とりあえずこのシーンに合った音響を鳴らしてみて。」
「了解でござる♪」
元気よく答えるヤマトマルは、ミキサーの前に飛び乗ると、クチバシで器用にボタンを触りながら「どんな音にしようかな〜」と悩み始めた。
その時、体育館の隅からホッパーの元気な声が響く。
「アハハ、見てみて! ヤマトマルさっきお師匠が作ったメリファのティアラ被らせてもらったルー!」
ローザが作った仮のティアラを頭に載せたホッパーが、得意げにヤマトマルに見せびらかしている。その後ろからは、浮遊するエシャが追いかけてきた。
「ホッパー、嘘ついたらダメにゅ…。被らせてもらったんじゃなくて勝手に被っただけにゅ。」
「違うルー!」
「そうだにょ。」
言い合いを始めるホッパーとエシャを無視して、ヤマトマルはミキサーに向き直る。
「いまオレっちはリン様が話してるシーンにぴったりな音楽を探すのに忙しいでござる。遊ぶのは後にしてっス。」
ホッパーは構わずミキサーに近づき、ボタンを押し始めた。
「ホパも照明と音響担当だルー! ホパもその機械触りたいルー!」
ホッパーが適当に触ると、体育館内にムーディな曲が流れ始める。その場に不釣り合いな音楽にヤマトマルが慌てて反応する。
「勝手に触るなでござる!」
ヤマトマルもミキサーに飛びつき、再調整を試みる。しかし、ヤマトマルが触ると今度はひょうきんな曲が流れ出し、場内の雰囲気がさらにカオスに。
タブレットに集中していたジュリアは、ついにその異変に気づき顔を上げる。
「な、なにしてるの!?」
「なにってジュリアちゃんが音響触ってって言ったから触ってたでござる。」
「…あ、ありがとうね。でも、そうか、私がちゃんと話を聞いてなかったから…。あぁーもう…!」
ジュリアはタブレットを抱きしめながら、責任を感じる自分と混乱する星獣たちを見て、気持ちが爆発しそうになる。どうしてもうまくいかない焦りが胸の中で膨らんでいく。
その瞬間、ペンドルトンが、みんなの飲み物を詰めたクーラーボックスを引きながら、ペンペンと軽快な足音を立てて現れた。状況を察したペンドルトンは、さっとミキサーを操作し、リンの台詞にぴったりのミステリアスな音楽を流す。
「ボク達星獣は、お荷物になるだけだから、ジュリアの言うことだけ聞くのが吉ロン。」
ペンドルトンの冷静な一言に、ホッパーとヤマトマルは「むむ…」と黙り込む
「ありがとうね、助かったよペンドルトン」
「どういたしゅましてロン!」
今日の稽古が終わり、みんながぞろぞろと体育館を出ていく中、ジュリアはミケロスを呼び止めた。
「ミケロスくーん、少しだけ教えてほしいんだけど。」
ミケロスは立ち止まり、振り返る。その目は少し面倒くさそうだったが、どこか断りきれない様子も見えた。
「なんだオバサンか。仕方ないな。」
「お兄様、私先に帰ってますね。」
ミケロスの背後から、妹のミシェルがアイシャとエシャを連れて声をかける。ミケロスは軽く手を振った。
「あぁ、また明日。」
「ジュリア先輩、お疲れ様でした。」
「お疲れ様♡」
ミシェルは丁寧に礼を述べ、妹らしい控えめな笑顔を残して寮へと帰っていった。体育館には、夕焼けが差し込み、黄色い絵の具を垂らしたような柔らかな光が床に落ちていた。
ミケロスが近づき、腕を組みながらジュリアを見下ろす。
「で、何を教えてほしいんだ?」
「完璧にしようとするから焦っちゃうんだよね…どう操作すればもっとスムーズに照明を動かせるのか、コツとかあったら教えてほしい。」
ミケロスは腕を解き、少し笑う。
「ようはタイミングだ。例えばここにユウマがいると仮定して、あいつが舞台の下手から上手に走り抜けるシーンを照明で追いかけるとする。どう動かせばいいか分かるか?」
「えっと…こうやって…かな?」
ジュリアはタブレットを触りながら試行錯誤するが、指先が迷い、照明はミケロスの意図する動きには程遠い。
「貸してみろ。」
ミケロスはタブレットを手に取り、丁寧に操作を教えながらジュリアに説明を始めた。
「まず、ここで照明の範囲を狭める。そして、このボタンでスムーズに追尾させるんだ。こうやって動かすとほら…」
ジュリアはその動きを真剣に見つめ、何度も頷いた。夕焼けがすっかり消え、体育館の中には月明かりが差し込み始める頃には、照明と音響の基礎を一通り教わっていた。
「ほんとにありがとう…照明だけじゃなくて音響まで教えてくれて。」
ミケロスは少し照れたように頬を赤らめ、視線を泳がせながら短く答えた。
「か、構わない…。」
ジュリアは近くのクーラーボックスから飲み物を取り出し、微笑みながら提案する。
「ねぇ、ちょっとだけ休憩してから帰らない?」
二人は舞台に腰を下ろし、飲み物を片手に雑談を始めた。
「私ね…ホントは演者側がやりたかったんだ。」
ジュリアがぽつりとこぼすと、ミケロスは当然のように答える。
「だろうな。くじ引きじゃなかったら絶対立候補してるだろう。」
「だってさ、なんか裏方ってどんなに努力しても評価されない存在でしょ。今日だってそう…。ユウマくんやリンちゃんなんかすごく楽しそうに演じてて、私はフェイちゃんに怒られるしテンパるしでホント最悪。」
ジュリアの吐露に、ミケロスは一瞬だけ黙り込む。そして、いつもの皮肉げな口調でこう言った。
「そう思ってるなら、お前は一生あのバカユウマをものにすることはできないな。」
「な…! ど、どうしてそんなことが言えるのよ!」
「考えてみろよ。あいつらが輝けるのは、俺たち裏方がいるからなんだ。それに、あいつらだって相当なプレッシャーだと思うぞ。誰も気楽な気持ちでこの舞台を作ってる奴なんかいない。」
「それとユウマくんとなんの関係があるの?」
ミケロスは飲み物を一口飲んで、少しだけ真剣な顔になる。
「自分の置かれた立場に不平不満ばかり漏らす人間なんか、これっぽっちも魅力的じゃないってことだ。オバサンがホントにあのバカを好きなら、この舞台で一番の功績を残すぐらい輝け。そしたらあのバカだって少しは感心するさ。」
いつもくそガキ発言ばかりのミケロスが、今日は妙に男らしく見えた。ジュリアはぽつりと笑いながら言う。
「ミケロスくんってホントはすっごくいい子なんだね♡ なんか惚れちゃいそう。」
「は、はぁ!? 言っとくが俺はいい子でもなんでもない! 俺はただのエリート高校生だ! そ、それに惚れるとか適当なこと言うな。それはあれだ、更年期ってやつだ」
「ひっどーい!」
ミケロスの慌てた言葉に、ジュリアは笑い声を上げる。月明かりに包まれる体育館で、少しだけ心が軽くなる瞬間だった。
[おまけ]
さんくちゅありのメイキング♡Vol.2
定点カメラに近づいたリンがポツリと本音を漏らした
「占い師シズ役のリンです...あぁ、もうヤダほんと最悪...よりにもよってユウマの役ゼノンに殺されちゃう占い師なんてやりたくないよ」
すると、ツインテールを揺らしながら近づてきたレイラがリンにギュッと抱きつきイチャイチャをしながら
「アンタまだウダウダ言ってんの?」
「だってー、占い師だよ?殺されるんだよ?」
「そんなのフェイ先輩が作る話しなんだからわからないじゃない、もしかしたら魔女とゼノンが結ばれるラブストーリーかもよ」
「そ、それだったら嬉しいな」
「でしょー?だからグチグチ言わないの!」
「うん」
「あとさ、このカメラってメイキング映像のカメラよね? やっほー!アタシ村人のリリン役レイラ・ノクターナルでーす!」
レイラとリンはテーブルにあったお菓子を食べ話してるとそこに沢山の荷物をもったシルベスターが現れた
「なんだ、お前らなにをイチャイチャしている」
「あっシルベスターさん、なんかリンがウダウダ言ってたから慰めてたんですよ」
「フン、こんなところでイチャイチャするな吐き気がするわ」
そう言い放ち、さっそうと持ち場に戻るシルベスターをみて二人は思った
お前もな、と
次回![第七十五話、美術監督は頑固 EP1]
第七十四話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧
書きたくなかったんやないねん....
思い浮かばへんかってんやん...




