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[第五十六話、A Diamond in the Rough]

毎週、月、水、土、絶賛更新中!!


高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜

レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん


どうぞよろしゅうに〜


8/23



「もう一度言ってもらってもいいですか?」


あまりに突然の言葉に、俺は思わずローザさんに聞き返した。先程、園芸委員に頼まれて持ってきた土肥料が入った袋を手に。


ローザさんが、肩まで流れる今日も絶好調のグルグル茶髪をサラリと払い、俺を見つめる。


「ボーイは今日から私の婚約者よ」


「師匠とユウマ結婚ルー?」

 

俺の足元で、ちょこんと立つ小さなホッパーが興奮気味に跳ねる。


「それはビッグイベントざます!」

 

ホッパーの隣で、赤いたてがみを揺らしながら優雅に首を上げるティアが、深々と頷いた。


「いやいや!待って、ちょい待ってマジで話が掴めないっすよ!」



その間もローザさんは、淡々と土をならし、花の苗を丁寧に植え続けている。まるで彼女にとって、これがごく日常の一コマであるかのようだ。


「なにかご不満?」ローザさんが顔を上げ、少し笑みを浮かべながら問いかける。


ローザさんはさらに「もしかしてボーイにはもう心に決めた人が?」と言った


「決めた人って言うか…そう言われると…で、ですけど!」



その頃、学園内の石畳を堂々と歩く二つの影があった。赤い髪に葉巻をくわえた大柄な男。肩幅が広く、ゴツゴツとした体型で一歩ごとに重厚な響きを放っている。そしてその隣には、ドレスもカバンも、さらにはネイルに至るまでルビーをこれでもかと散りばめた派手な女性が、堂々と歩調を合わせていた。


二人が歩くたび、廊下の学生たちはそっと立ち止まり、囁き始める。


「ねぇ…あの人って」

 

「見間違いじゃないなら、モルテ・パットンじゃない?」

 

「パットンって、あの有名な?」


「そうそう!ローザ先輩の」 


学生たちのヒソヒソ声にも、二人は全く反応せず、ただ真っすぐに進む。やがてモルテが葉巻の煙をゆっくりと吐き出し、低く渋い声で言い放った。


「愛娘のローザはどこだ?」

 

「最近は園芸委員に所属したと聞きましたけど?」


と、女が気取った声で答える。


「ふん!なにが園芸委員だ、くだらん!魔法遺産調査団を辞めてから、ろくなギルドに入っとらんなあやつは!」




「あのね、ボーイ。聞いてほしいんだけど…」


ローザさんがなにか言いかけた瞬間、勢いよく扉が開いた。突然の出来事に、俺もホッパーもびくっとして振り返る。


「ローザはどこだ!?」


入ってきたのは、葉巻をくゆらせる大柄な男と、目がくらむほどルビーを身にまとった派手派手な女性。男は鼻から煙をふかし、堂々とした様子で室内を見渡している。


「あの…どちら様でしょうか?」と、そばにいたメリファさんが驚きのあまり口を開く。が、その表情がすぐに変わり、「あら…あなたは…」


その横でティアが声を上げた。「ローザのパパとママざます!」


派手なルビーの女性が優雅に手を振ると、ティアに向かって満面の笑みで「お久しぶりね♪」と声をかける。


俺とホッパーは目の前のゴージャスな二人組に、ただただ圧倒されるばかりだ。口がぽかんと開いてしまう「パパとママって…」俺の視線に気づいたローザさんが、少し気まずそうに肩をすくめる。


「私のパパとママ、モルテ・パットンとカレン・パットンよ」



カレンは入ってくるなり、娘のローザに駆け寄り、大胆に抱きしめる。


「会いたかったわーマイベイビー♡」

 

「私もよ、ママ…」


モルテさんも少し眉をひそめながらローザさんに近づき


「連絡もよこさんで、なにをしている」


「ごめんなさい、パパ…少し忙しくて」と、ローザさんは軽く目を伏せて謝る。


その時、部屋の外から駆け足で現れたのは、園芸委員の顧問ガイ・バートラム先生。騒ぎを聞きつけてきたようで、笑顔でパットン夫妻に近づくと、陽気に挨拶をした。


「こんにちは!こんにちは!ようこそエンチャントレルム魔法学校へ!」

 

ガイ先生は礼儀正しく手を差し伸べ、モルテさんと握手を交わそうとするが、モルテさんはポケットに手を突っ込んだまま、鋭い目で言い放った。


「お前か?娘の婚約者というのは?」


「は?」思わずガイ先生の顔が疑問符だらけになる。


するとローザさんが急いで両手を振り、「ガイ先生は私の顧問で婚約者じゃないの!こちらの彼が、えーっと…私の婚約者の…」


「どうしたんすか?ローザさん?いつもみたいにボーイって呼んで…」


焦ったローザさんが俺に顔を近づけ、こっそり耳打ちしてきた。「今は普段のローザじゃないの…ボーイの名前教えてもらえない?いつも名前で呼ばないから忘れちゃって」


「ユウマです」


「Thank you」


てんきゅーと、ローザさんはさっと感謝を告げると、自信満々に両親へ笑顔を向けた。


「1年生のユウマと言うのよ!彼ったら私に一目惚れしちゃって…つい先日プロポーズを受けたの、そうよね!ボーイじゃなかった..ユウマ!」


ローザさんがウィンクしてこちらに合わせろと合図してくるので、俺は仕方なく合わせることにした。


「そ、そうなんですよ…こんなに綺麗で、面白…じゃなかった、可憐で正義感のある女性に出会えるなんて、一生に一度だと思って!ダメ元でプロポーズしてみたら…」


俺の適当な作り話に、モルテさんは重々しく葉巻を吸い込み、深い煙を吐き出しながらローザさんに問いかける。


「ローザよ、この男のどこに惚れたのだ?」



「ユウマのどこに惚れた…?えーっと、そうねー」


おぃぃぃ!焦るなよ!パパさんについた嘘がバレるじゃないか!!なんでもいいから、褒めるところあるだろうよ!イケメンとか、優しいとか、早くなんでもいいから話してよ、ローザさん!


俺の祈りが通じたのか、ようやくローザさんが口を開いた。


「…普通なところ?」


その場が一瞬、シンと静まり返った。


「ティア、普通ってなにルー?」

 

「普通というのは、なんの変哲もない、つまらない男という意味ざます!」


「ユウマは普通!普通!ルー♪ルー♪」


ホッパーがリズムに乗って楽しげに踊りだす。


後で覚えてろよお前ら…!


「普通」その言葉を聞いたモルテさんが、鋭い視線で俺を見据えた。


「結婚は許さん」


「ど、どうして!」


「普通の男なんぞお前には似合わん。お前には、もっと世界を知る男でなければダメだ」


「違うのよ!パパ!ユウマは確かに普通だけど、そういう悪い意味ではなくて…」


ローザさんの弁解をかき消すように、モルテさんが一喝する。


「黙れ!お前は自由に結婚相手を選べる立場ではない!」


温室内に響きわたる怒号に、ローザさんは怯んだように小さくなり、視線を落とした。俺は何もできず、ただ隣に立っているしかない。


しばらくの沈黙の後、モルテさんが再び口を開く。


「明日、我が社で最高のルビーが発掘された記念の披露宴を開く。お前もそのパーティーに来い。その場で、お前にふさわしい婚約者を紹介してやる」


「勝手に決めないで……あっ!ちょっと待って、パパ!」


だが、モルテさんはローザさんの言葉に耳を貸さず、そのまま立ち去ってしまった。慌てて後を追うようにカレンさんも歩き出し、出口に向かう。


立ち去る間際にカレンさんが振り返り、ローザさんに優しい口調で語りかける。


「ローザちゃん…貴女のためなのよ」


「ママ…でも、私…」


カレンさんはひと息つくように少し黙ったあと、微笑んで一言。


「そうだわ、よろしかったら先生とフツメンも一緒にどうぞ」


そう言い残し、優雅に立ち去っていった。



「フツメンってなんすか…」


俺は地面にひれ伏し、シクシクと泣いていた。そんな俺をよそに、ホッパーとティアが「普通!普通!」と楽しげに踊り始める。二匹のはしゃぎっぷりに、正直、泣きたさが増す。


そんな中、ローザさんが少し申し訳なさそうに俺に話しかけてきた。「ボーイ、巻き込んでごめんなさい…パーティーなんて予測してなかったけど、私がボーイに婚約者を頼んだのはこういう事だったのよ」


「な、なるほど…でも、お父さんにすでに反対されたし、俺の役目はここで終わりじゃ…」


そう呟いた瞬間、俺の肩をガッ!と強く掴み。


「いいえ、ボーイ!まだ終わってないわ!あす、私と一緒にパーティーに出席して、パパに婚約を認めてもらうのよ!」


「そ、そんな~」


俺が途方に暮れていると、そばで見守っていたガイ先生が少し申し訳なさそうに一言。


「俺もぜひと言われたんだけど…顧問として一緒に行ったほうがいいかい?」


ローザさんは顔を真っ赤にして、「ガイ先生がわざわざ来てもらうなんて、そんなおこがましい…というか、この場合、嬉しいというか…Oh…No!!」と言いながら、豪速球でその場から飛び出していった。


「ありゃゃ、俺はどうしたらいいんだ?」と呆然とするガイ先生に、メリファさんが微笑みながらアドバイスをくれた。


「たまには先生も息抜きなされたら?ローザには後で私から言っておきますので、フフフ」


「じゃあそうしようか」となぜか納得したガイ先生は、「では後よろしく」と言い残し、温室を立ち去った。


残ったのは俺とメリファさんだけ。ふと、彼女が俺に少し真剣な表情で言った。


「ローザのこと、よろしくね。あの子、ガイ先生の前になると乙女になってしまうから」


「乙女…それってつまり」


「フフフ、今日は勘が鋭いのね。あの子、ガイ先生に恋をしてるのよ。いけない恋をね」


「でしたらガイ先生に頼んだほうが尚更いいのでは?」


俺がそう言うと、メリファさんは口元に指を当て「しー」と静かに制し、続けた。


「ユウマ君も知ってる通り、教師と生徒の恋愛はご法度なの。あの子はそれをわかっていて、ずっと片想いしているのよ」


「そうでした…俺ってば、なんにも考えず」


「いいのいいの♪ よかったら、ローザの様子を見てきてくれない?あの子なら、きっと…」


メリファさんに促され俺はローザさんの元に向かった。 


 

「やっぱここにいた、ローザさん」


鉄製の扉を開きながら俺はローザさんに声をかけると、彼女は振り返って微笑んだ。


「よくここがわかったわね、ボーイ。バタフライガールに聞いたのかしら?」


ローザさんが立っていたのは、青空がすっきりと見渡せる屋上だった。


「いい場所ですね」


「でしょ、気分転換によくここに来るの」


風が彼女のスカートを揺らし、髪をかきあげるするとローザさんが俺の方を見てふっと微笑み。


「少し、私に付き合ってくれない?」


そう誘われ、俺は彼女に着いていくことにした。


学園から車で5分ほど走ると、視界には広大な畑が広がる。


「デカ!広!」


思わず声が漏れる。学生は基本的に寮で暮らすのが普通だが、ローザさんだけはこの場所で一人暮らしをしているらしい。



「こんなに沢山野菜を一人で育てるなんて」と俺が驚くと、ローザさんは微笑みながら言った。


「一人で育てないわよ、ほら、あそこに。」


指差す先を見ると、「ホパ」と書かれた小さなクワやバケツが置かれていた。


「アイツ、たまに泥だらけで帰ってくる日があるのはこういう事だったのか……」


「ホッパーはとても心が綺麗よ。あの子を見ていると、私なんてまだまだだと思い知らされるわ。」


「ローザさんがまだまだなんて、そんなことないですよ。」


俺が笑うと、彼女は少し神妙な表情になり、過去の話を始めた。


「みんなから見ると、私はとても個性がある人間に見えるでしょ?でも、過去の私はこんなに個性があったわけじゃないのよ。」


私の父は、ロイヤルティアラカンパニーという有名なジュエリーショップを経営しているの。そのため、幼い頃から跡取りとしてたくさんの教育を受けてきたわ、だけど、どれも今ひとつだった。勉強もスポーツも魔法も、何をやっても成果が出なかった。


そんな私が何故この学校に入学できたか、それは父の力よ。


入学当初、周りはサンダーガールやプレイボーイ、シルベスターボーイ、バタフライガールと、素晴らしい才能を持つ人たちばかりで。私はプレッシャーに押しつぶされそうになったわ


どんなに頑張っても一番にはなれない……父や母は、カンパニーの娘として期待しているから、何もかも嫌になりそうだったけど、私にも一つだけ自分としていられる物を見つけたの。


「もしかして、ローザさんが他の誰よりも魔法を使わずに戦うのって?」


「Excellent!!そう、私はがむしゃらに武道を極めたの。それが結果になんて言い過ぎだけど、私は私の場所を自分で見つけられたのよ。」


ローザさんは少し微笑みながら言った。「ボーイも普通なんて言われるけど、ボーイもいつかは自分の居場所を見つけられるわ。」


その言葉に俺は何かを感じた。幼い頃から何をやっても普通で、その普通が嫌で、がむしゃらに頑張ろうとした時期もあったけれど、現実は残酷で、結局自分の居場所を見つけることができなかった。だけど俺もこの世界にきて沢山のことを学び俺も俺の居場所を見つけられそうな気がする。


「俺、勘違いしてました。ローザさんは悩みなんか全くないと思ってたけど、実はたどり着くまでにたくさん苦労したんですね。」


「悩みなんて人に見せたって格好悪いだけよ。『私は私の力で生きる』って決めたから、野菜を育てるのもその一つってことよ。」


「でも、ローザさん自身まだ課題が残ってるんじゃないですか?」


俺の言葉に、彼女は「oops」と言いながら少し驚いたように頷いた。「パパにちゃんと自分の思いを言わないとね。」


「そうです!俺、一緒に着いていきますから!明日、お父さんにちゃんと自分の思いを伝えましょう!大好きなガイ先生も誘って!」


その言葉に、ローザさんは慌てたように反応した。

 

「ガイ先生は、べ、別に関係ないじゃない!」


「あっ!照れてる〜。ローザさんが動揺してる姿、なんか新鮮!」


彼女は恥ずかしそうに顔を赤らめ、微笑んだ。これまでの強い姿とは違う、少し不器用な一面を見せるローザさんが、なんだか愛おしく思えた。



--闇ギルド、オブキュラス--


魔王イクノシアが高座に座り、アラビア三姉妹が深々と頭を下げている、すると長女のサミラが静かに口を開く。


「魔王様、あの男…モルテ・パットンが、あす披露宴を開くという情報を入手しました」


その名を聞いた魔王イクノシアの眉がわずかに動く。


「モルテ・パットン、お前たちが憎む相手、お前達の部族を壊滅に追いやった男のパーティーか」


次女ナディアが続けて、魔王に語りかけた。


「はい、奴の…ロイヤルティアラカンパニーの名のもとに、華やかな宴を開くそうです。魔王様、どうか私達に力を貸してください。私たちの命と引き換えにしてでも、あの男への復讐を果たしたい…」


ナディアの声には、強い決意と深い悲しみが込められていた。魔王イクノシアはその言葉を聞き、ゆっくりと口元を歪めて笑みを浮かべる。


「よかろう。お前たちの願いに応えようではないか。」


三女アリヤが一歩前に進み、力強く答えた。


「魔王様の御力があれば、あの忌々しいモルテを、この手で葬り去ることができるはず…!」



「では、我が復活の刻に向け、お前たちにはこの場で己の忠誠を示してもらおう。さすれば、我が最強の力を授けると誓おう。その時まで、己の憎しみを絶やさずに磨け。」


三姉妹は顔を見合わせ、深く頷いた。サミラが再び魔王に向き直り、強い決意を込めて言った。


「必ず、私たちの部族の仇を討ってみせます。魔王様に忠誠を誓い、この命を捧げます…」



「よかろう。己の憎しみを糧に、奴に相応の代償を払わせるがいい。今宵より、その男モルテはお前たち三人の獲物だ」


三姉妹は魔王の言葉を受け、闇の中で静かにその意志を燃やした。



[おまけ]


「あら?ガイ先生ではないですか..お疲れ様です..お一人でお買い物ですか?」


マジカラビアで偶然にガイと遭遇したオリビアは物珍しさに思わず声をかけた


「やぁやぁ!オリビア先生、実は明日ローザのお父さんが主催のパーティーに招待されてしまって..だけど俺、普段香水とかつけたりしないもんで..」


「あのロイヤルティアラカンパニーのパーティーに呼ばれた!?そんな一大イベントならこのオリビアにお任せあれです!」


そう言うとガイの手を握り


「私が普段愛用している香水専門店があるのでそこでガイ先生に合う香水を一緒に見つけましょう!大丈夫ですよ!男性用の香水もありますから」


善は急げですよーと二人は香水専門店に向う


強く握られた手を見てガイは


(まさかオリビア先生と一緒に買い物ができるなんて…)


少し頬を紅潮させ無言で引っ張られるガイであった


次回![第五十七話、It's what's inside that matters more than appearances, right?]

第五十六話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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