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フツメンofウィザード 〜地味な俺が異世界魔法学園でなぜか注目される件〜  作者: ベルガ・モルザ


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[第百十四話、イクノシアの過去Part2]

一ヶ月たってから気づきました……

大事なエピソードがすっぽりと抜けてました。

すみません(。•́︿•̀。)



「ここからが本題だ」


イクノシアが指をスライドさせると、世界が再び歪んだ。視界が揺らぎ、意識が奥底へと沈んでいく感覚に襲われる。


——次に目を開いた時、目の前には壮絶な戦場が広がっていた。


咆哮、爆発、叫び声が入り混じる混沌の中、黒煙が立ち上る。魔力の奔流が大地を引き裂き、炎が大気を焦がしていた。


「……魔法戦争、授業で習ったやつか」


思わず息を呑む。こんなにも生々しく、こんなにも苛烈だったとは。


しかし。


「……お前、戦ってないじゃん?」


戦場の最前線にいるのは、操られた竜人族と、その上空を舞うドラゴンたち。そして、それらと対峙するのは——。


「金髪のローブ、魔導書……あれ、デューク・シルバークロウだよな」


俺の知識が間違いでなければ、魔法の理論と実践の両方に精通し、魔法使いの頂点に立つ男だ。彼は正確無比な詠唱で魔法陣を連鎖させ、次々と敵を討ち払っている。


「前線で剣を振るってるのは……」


黒い刀を操り、まるで風のように戦場を駆け抜ける男。妖刀・漆夜(しつや)を携え、竜の喉を一瞬で裂くその姿——。


「……剣崎小十郎か」


日本の武士のテンプレとも言える風貌、戦場での冷静な立ち回り、そして隙のない斬撃。その姿は、まさに疾風。


一方。


イクノシアの直近の部下、雛音とダミアナもまた戦場にいた。彼女たちはデューク率いる魔導士たちを次々と蹴散らしている。魔法を放つだけでなく、圧倒的な身体能力と戦闘技術で、敵をなぎ倒していく。


——なのにだ。


「なんでお前は離れた場所でホッピーとオセロやってんだよ」


「ラスボスはすぐに出ていったらダメなの」


……は?


俺は戦場を見渡す。炎、閃光、悲鳴、激突——そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の片隅で、のんびりと魔法の力で浮かせたオセロの盤を挟み、一人と一匹が対局を繰り広げていた。


「そんなこと言って〜、戦うのが怖かったんだろう?」

 

「そんなことないやい!」


記憶の中のイクノシアは、オセロの石を指で弾いた。

 

ホッピーはじっと盤を見つめる。


「ホッピーよ」


「なんだピーン?」


イクノシアは盤から視線を上げ、遠くの戦場を見つめた。


「俺の道は……これで正解だったのかな」


「今更ピーン? どんな道にも正解も不正解もない」


「本音を言えよ。ホッピーだって、本当はこんなことしたくないだろ?」


イクノシアの視線は真剣だった。問いかける声には、どこか迷いが滲んでいた。


ホッピーはしばらく黙っていたが——やがて、ゆっくりと口を開いた。


「正直言うと、したくない。でも……我はお前の星獣だから。お前のやりたいことに着いていくだけピーン」


「ホッピー……」


イクノシアが静かに呟いた。


そして、ホッピーは軽く前足を動かし——。


「はい、お前の負け」


「あぁ!? クッソーまた負けた!!」


イクノシアが悔しそうに叫ぶ。ホッピーはケタケタと肩を震わせて笑った。


「さっさと世界を自分のものにして、ミカエルを蘇らせようピーン」


そう言いながら、スッと小さな身体を起こし、戦場を眺めた。


そして——。


「なにがあっても、後悔はするなよ……イクノシア」


ホッピーの言葉に、イクノシアはしばし沈黙した。


「……そうだな」


彼は盤を片付け、立ち上がる。


「このあとどうなるんだ?」


「まぁ、見てな……これが後に魔法戦争の終点と呼ばれる戦いが始まる」

 


ユウマの目の前に広がるのは、魔力が乱れ飛び、空が紅蓮に染まる地獄絵図だった。


地を揺るがす咆哮とともに、操られた竜人族が咆えながら突撃する。彼らはかつて誇り高き戦士であったが、魔王イクノシアの支配により、完全なる戦闘兵器と化していた。


彼らの上空では、漆黒のドラゴンたちが翼を広げ、魔導士軍を焼き尽くすべく炎を吐き散らす。


対する魔導士軍も、負けじと魔法陣を展開し、迎撃の構えを取る。デュークが冷静に指を振るうと、空中に無数の魔法陣が浮かび上がった。


『エレメンタル・ドミナンス』


大気が震える。


炎・雷・氷・風が複合された巨大な魔力の奔流が、一気に竜人族の軍勢へと襲いかかった。


「ギャアァァァッ!!」


凍りつく竜、燃え上がる竜、雷撃に貫かれ落下する竜――。デュークの魔法は、まるで天地そのものを揺るがすかのように戦場を支配していた。


「さすがだな……だが、"それ"に頼りすぎるのはよくないぜ… デューク!」


疾風が吹き荒れる。


次の瞬間、小十郎が、漆夜を携え、閃光のように飛び出した。


「疾風剣術・双影斬!!」


剣閃が閃いたかと思えば、操られた竜人族の兵士たちの首が一瞬にして飛ぶ。


「ちっ、見えねぇ……!」


戦場の端にいた魔導士たちが息を呑む。


剣崎はまるで風そのものだった。圧倒的な速さと剣術の精度で、魔王軍の前線を瞬く間に切り崩していく。



「ほぅ……」


剣崎とデュークの猛攻を受け、前線が崩れる中、魔王イクノシアはナックルを握りしめながら立ち上がった。


『ネザーストーム・クラッシュ』


ゴロゴロ……!!


黒い雷雲が戦場の上空に広がった。


バリバリバリバリッッ!!!


漆黒の雷が降り注ぎ、魔導士たちの陣形を次々と破壊していく。


「うぐっ……!!」


魔導士の一人が雷撃を受け、皮膚が黒く焦げながら崩れ落ちる。



「ホッピーパンチ!!」


黒いカンガル ホッピーが飛び出し、拳を振るう。


「チッ……ッ!」


剣崎がとっさにサイドステップでかわすが、ホッピーの拳が地面にめり込むと、爆風が起こり、魔導士たちが吹き飛ばされる。


「なっ、なんなんだアイツ……!? ただの星獣じゃないのか!?」


魔導士の一人が震えながら呟く。


「ホッピーエネルギー弾!!」


今度は、ホッピーの手から黒い球体が放たれた。


それは一直線に飛び、魔導士軍の兵士たちを数十人まとめて吹き飛ばした。


「グハァァァ!!」


爆風に巻き込まれた者たちは、木の葉のように宙を舞い、地面に叩きつけられる。

 

『"鮮血の宴"!!』


ダミアナが大鎌を振るい、宙を裂いた。


その瞬間、血のような霧が立ち込め、魔導士たちの体を絡め取る。


「なっ……なんだ!? 身体が……動かない……!」


「そのまま、美しい血の花を咲かせなさいですわ!」


ダミアナがゆっくりと大鎌を振り下ろす。


ザシュッ!!!


魔導士の首が、鮮やかな赤い弧を描いて宙を舞った。


「次は誰かしら?」


彼女は妖艶に微笑みながら、さらなる獲物を求めて視線を彷徨わせる。


『"黒雷妖術・百鬼雷陣"!!』


雛音が札を宙に舞わせると、空間が裂け、そこから無数の妖怪たちが飛び出した。


天狗、鬼、化け猫……。


「ヒャッハー! 祭りだコン!!」


妖怪たちが魔導士軍に襲いかかり、阿鼻叫喚の地獄絵図を作り出す。


「うわあああ!! やめろ、やめてくれえええ!!」


魔導士たちが一人、また一人と喰われ、切り裂かれ、血を流しながら崩れ落ちていく。


「ニョホホ……やっぱり祭りは最高コン♪」


雛音は妖怪たちを指揮しながら、余裕の笑みを浮かべた。



「魔王イクノシア……ッ!!」


剣崎が疾風のように駆ける。


「"疾風剣術・神速斬!!"」


ズバァァァン!!!


剣崎の姿がかき消えたかと思えば、次の瞬間、イクノシアの背後に回り込んでいた。


「……フッ」


イクノシアの服が裂け、血が滲む。


「ほう……痛いな」


イクノシアは血を拭い、ナックルを握りしめた。


『ヘルブレイズ・ナックル!!』


ゴオオオオッ!!!


黒炎を纏った拳が炸裂する。


剣崎は素早くバックステップで避けるが、その炎が爆発し、衝撃波が魔導士軍を襲う。


ユウマの目の前で、戦場はさらなる混沌へと突入していった。



『グラヴィティ・フィールド』


デュークが静かに呟くと、足元に無数の魔法陣が展開される。


バシュゥゥゥッ!!


突如、空間が歪み、重力の異常な力が戦場を包み込んだ。


「な、なにですの……!? 身体が重い……ッ!!」


ダミアナの華奢な体が地面に引き寄せられ、大鎌を振るうことすらままならない。


「ちょっと待つコン! これはズルいコン!!」


雛音も必死に身をよじるが、足元の重力が増幅され、動きが極端に鈍る。


「重力を操作する魔法だ。お前たちの動きは、もう見切った」


デュークの瞳が鋭く光る。


『クロノ・ケージ』


バキィィィン!!!


巨大な魔法陣が、デュークの足元から広がると、ダミアナと雛音の体がバリアのような透明な檻に閉じ込められた。


「これは……ッ!!」


「封印魔法ですわね……!!」


バリアの内側の時間が停止する。


ダミアナと雛音が焦りの色を見せる中、デュークは静かに手を掲げた。


『エターナル・バニッシュ』


魔法陣が光を放ち、二人の体が徐々に透明になり始める。


「待て待て待てコン!! これ、マズいコン!!」


雛音が必死にもがくが、時間の檻の中では、すべてがスローモーションのように遅くなる。


「ふざけ……ないで……ください……まし……!!」


ダミアナの口から、苦しげな声が漏れる。


彼女たちの身体が、まるで存在自体を削り取られるように、ゆっくりと光に包まれていく。


デュークの口元に、わずかな哀愁が滲んだ。


「お前たちは強かった。……だが、終わりだ」


バシュゥゥゥッ!!!


封印の光が炸裂し、ダミアナと雛音の身体は完全に光の中に消えた。


「二人とも……封印した……!」


デュークは静かに息を吐き、戦場を見渡した。


だが、その瞬間。


「お前ェェェェェ!!!」


凄まじい怒声とともに、黒い炎が戦場を焼き尽くすように広がった。


仲間を失い、憤激するイクノシア


「雛音……ダミアナ……ッ!!」


イクノシアの拳が震えていた。


これまで、どれだけの戦いをしても、自分のそばには常に二人がいた。


だが、今は――。


「……ふざけるな……!!!」


ズオォォォォォッ!!!


イクノシアの魔力が暴走する。


黒い稲妻が大地を裂き、周囲の竜人族や魔導士たちが巻き込まれていく。


バリバリバリバリッッ!!!


地面がひび割れ、空が揺れる。


「貴様……貴様あああああああああああ!!!」


魔王の咆哮が戦場に響き渡った。

 


「ホッピーパンチ!!」


ホッピーが拳を振り上げ、剣崎に向かって跳びかかる。


だが――


「遅い」


ズバァァァンッ!!!


剣崎の斬撃が、一閃した。


ホッピーの拳が振り下ろされる前に、漆夜の刃がその小さな身体を貫いた。


「が……ッ!!」


ホッピーの表情が、一瞬だけ止まる。


ズシュッ……!!


赤い血が弧を描きながら、戦場に散った。


「ホッ……ピー……」


イクノシアの顔が、蒼白になる。


ホッピーの小さな体が、ゆっくりと地に倒れる。


「ウソだろ……ホッピー……?」


イクノシアは、まるで時間が止まったかのように、その場に立ち尽くした。


「ホッピー……!!」


イクノシアが膝をつき、ホッピーを抱き上げる。


カンガルーの小さな身体は、ひどく冷たかった。


「負けちゃった……」


ホッピーの声が、かすれた。


「バカ言うなよ……冗談は寄せよ」


イクノシアは、必死に微笑もうとした。


だが――


ホッピーの手が、そっと力を失い、イクノシアの腕の中に落ちた。


「ウソ……だろ……?」


その瞬間。


「クソォォォォォォォォ!!!」


怒りと悲しみが交じり合った絶叫が、戦場に響き渡った。



地面に倒れたホッピーを抱きしめたまま、イクノシアは震えていた。


涙は流れない。


代わりに、凄まじい魔力が、彼の周囲に渦巻いていた。


(全部……全部奪いやがって……)


「おい、魔王イクノシア」


デュークが、静かに歩み寄る。


その隣には、小十郎が漆夜を構えたまま立っていた。


「お前の時代は終わった」


デュークの目が、鋭く光る。


「……サラバだ、イクノシア」


次回![第百十五話、こんな気持ち結晶のように] 

第百十四話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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