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フツメンofウィザード 〜地味な俺が異世界魔法学園でなぜか注目される件〜  作者: ベルガ・モルザ


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[第百十三話、イクノシアの過去]

毎週、月、水、土、絶賛更新中!!


高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜

レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん


どうぞよろしゅうに〜


頭がぼーっとする。

思考が霞み、意識が薄れていく――


気がつくと、俺は見覚えのある場所に立っていた。


(ここは……)


石造りの建物に、大きなステンドグラス。

光が差し込み、神聖な雰囲気を漂わせている。


祝福の光修道院。


確か、レイラが生まれ育った場所。

ってことは……もう、俺はアイツの記憶の中に入ってるってことか。


「やーい! やーい!悪魔の子〜 悪魔の子〜」


突如として弾むような子供の声が響いた。


「なんだ……?」


振り向くと、数人の男の子たちが輪を作り、誰かを囲むように飛び跳ねている。

その中心で小さく体を丸め、顔を伏せている子供が一人


「……あれは、我の幼き頃だ」


「……っうわ! びっくりした!!」


横から突然話しかけてきたイクノシアに、思わず飛び上がる。


「いきなり隣に立つなよ!」


「我の記憶の中なのだから、どこから現れようが我の勝手だろう」


「……まあ、そうだけどよ」


改めて、子供たちに目を向ける。

囲まれているのは、髪の長い男の子。


顔立ちは、男にしてはやけに整っている。

見た目は普通の人間 頭に生えた黒い角を除けば、だが。


(魔族……)


俺は授業で習ったことを思い出した。

魔族は頭に角を持ち、不吉な存在として扱われていた。

この世界の人間にとって、それは忌むべき特徴。


(つまり、この時代から……)


イクノシアは"悪魔の子"として迫害されていたのか。


俺とイクノシアは、しばらくただ黙って、その光景を見つめ続けた。


すると――


「お前達! いい加減にするピーン!!」


弾けるような声が響き、黒い影が勢いよく跳び込んできた。


「なんだあれ……黒いカンガルー? それともウサギ?」


「カンガルーだ。我の星獣、名はホッピー」


「ホッピーって……ホッパーじゃあるまいし……って、お前にも星獣いたんかい!!」


「当然だ」


全身が黒く、小柄なカンガルー。

……ホッパーをそのまま黒く塗ったような姿。


イクノシアにも星獣がいたなんて、初耳だった。


(……あっ)


そういえば、あいつ……

ホッパーを迎えに行った時、意味のわからないことを言ってたな。


「ホッピーに会えたらいいね」


あれ、そういう意味だったのか……。


「イクノシア、大丈夫ピーン?」


黒いカンガルー ホッピーが、小さなイクノシアに駆け寄る。


「うん、ありがとうホッピー……」


ブルラァァァァァ!!!


(えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?)


突然、ホッピーがチビイクノシアをアッパーカットした。


「イクノシアはもっと強くならんといけないピーン! この我のようにな!」


「だ、だからって急にアッパーすることないだろ!!」


チビイクノシアが人差し指をホッピーに向け、ガミガミと文句を言っている。


(まるで俺とホッパーみたいじゃねぇか)


「まるでユウマとホッパーみたいだな」


「人の心読み取るなよ!!」


「仕方ないじゃん、お前は我なんだから」


「うるせぇよ!!」


俺とイクノシアが口喧嘩をしている間に、もう一人、子供が歩み寄ってきた。


「二人とも喧嘩はやめなさい」


白に近い金色の髪。

雪のような白い肌に、綺麗に整った白いワンピース。

整った顔立ちは、どことなくレイラに似ている。


(……あの子、どこかで……)


「なぁ、イクノシア……あの子って……」


俺の問いに、イクノシアは穏やかに目を細める。


「……あの子の名はミカエル。とても美しいだろう」


その言葉を聞いて、俺はハッとする。


確かに、転生の話を聞いたときは半信半疑だったが

こうして見ると、納得せざるを得ない。


レイラがミカエルの生まれ変わりだということを。


すると、彼女に訴えかけるように 

 

「でも! ホッピーが!」


「我のせいにするなピーン!」


「全く……」


ミカエルは肩をすくめ、やれやれと首を横に振った。


そして


彼女はチビイクノシアの手をそっと握り、優しく微笑んだ。


「でも、ちゃんと闇の魔法は使わないっていう私との約束守ったね。偉いぞ」


「う、うるしゃい……僕に指図をするな」


「なに? 顔が赤くなって照れてんの?」


「イクノシアが照れたピーン!」


「うるさーい!」


アハハ、と笑い声が響く。


それを見て、俺は思わず口を開いた。


「なんだよ、イクノシア。思ったより楽しい子供時代送ってるじゃねぇか」


「……このときだけさ、幸せだったのは」


イクノシアの横顔は、どこか懐かしむようで、それでいて寂しげだった。


胸の奥に、鈍い痛みが走る。


「いやいや、イクノシアさんよ。俺なんか小学生の頃からイジメられてたんだぜ? こんな可愛い子も味方してくれなかったし……お前は幸せ者だよ」


「……我が何故 '悪魔の子' と呼ばれていたのか、教えてやろう」


イクノシアの声が低くなった。


周囲の風景が、ふっと静まり返る。


魔族。


人の姿をしているが、人とは異なる存在。

人間を憎み、人間を捕食する異種。

人もまた、魔族を忌み嫌い、滅ぼそうとしている。


だが――


イクノシアは "完全な魔族" ではなかった。


「幼い頃、我を育てていたシスターに告げられた言葉がある」


−−−−−−


「"イクノシア、あんたは人間でもなければ魔族でもないの"」


俺の眉が跳ね上がる。


「じゃあ、僕は何なの?」


記憶の中のチビイクノシアが、怯えながら問いかける。


そして、シスターは冷たく言い放った。


「アンタはどっちでもない。ただの '生き物' さ」


−−−−−− 


その瞬間、何かが胸に重くのしかかった。


俺はイクノシアを見据える。


「お前は、ハーフってことだよな」


「……そうだな」


イクノシアは淡々と頷いた。


だが、その表情には僅かな陰りがある。


「でもさぁ……このシスターも嫌味な言い方するよな〜 普通に 'ハーフ' って言えばいいのに」


「仕方ない。我はそういう存在だ」


イクノシアの声には、もう何も感じていないような乾いた響きがあった。


……その言葉に、俺は思わず笑った。


「仕方ない、とか思っちゃうとこ……俺に似てるな」


「……」


イクノシアが、ゆっくりと俺を見た。


「だから、そう言ってるじゃん。"ユウマ、お前は我だ" って」


「いや、俺は俺だっての」


俺は腕を組み、軽くため息をつく。


「まぁいい……次の記憶にいくぞ」


イクノシアは、目の前の光景を指でスライドさせるように動かした。


すると――


時間が、まるで早送りされるように流れ出した。


世界が歪み、色が流れ、場面が切り替わる。


「では次は……我が '人間に復讐を…いや 。」


イクノシアが静かに告げた。


「魔王になった記憶を見せてやろう」 


眩い光が視界を覆う。

白く、神聖な光――なのに、胸の奥がざわついた。


「……ここは?」


気づけば俺は、先ほどの修道院とは異なる場所に立っていた。

高くそびえる天井、白い石畳。

荘厳な雰囲気に包まれたその空間の中央には


血の匂いがこびりついた、古びた祭壇があった。

白い石畳に広がる紅い痕跡。乾ききった血が、床の隙間に黒ずんで染み付いている。


「……ここは、大天使の儀式が行われた場所」


隣に立つイクノシアの声は、低く静かだった。

目を向けると、彼の金色の瞳には感情の波がなかった。


「"大天使" の儀式……?」


俺は眉をひそめる。


(たしか、大天使ってのは……)


この世界において "神の使い" とされる存在。

しかし、その具体的な情報は伝説のように曖昧だった。


「大天使とは、神に選ばれし者。"人の意志" を捨て、世界を導く絶対者のことだ」


イクノシアが淡々と語る。


「だが、そのためには '生贄' が必要だった」


「……生贄?」


俺の心臓が跳ねた。

そして、次の瞬間――


バァンッ!!


扉が開く音。

息を切らしながら、誰かが祭壇へと駆け込んできた。


「ハァ……ハァ……!!」


息を切らし、必死の形相で駆け込んでくる少年



祭壇の上には、磔にされた少女の姿があった。

金色の髪は白いドレスにかかり、だがそのドレスは血に染まっていた。


「……ミカエル?」


呆然と呟く俺の声は、届かない。

ただ、"過去のイクノシア" が絶叫するのを見つめることしかできなかった。


「ミカエル!!」


少年のイクノシアが駆け寄ろうとする――

だが、その瞬間、周囲にいた大人たちが彼を地面に押さえつける。


「何しに来た、イクノシア?」


ズカズカと足音を立て、白装束の神父が前に出た。

神父は、冷たい目でイクノシアを見下ろす。


「ミカエルを離せ!!」


沈黙。


「……離せ?」


神父の声が、低く反響する。


「何故だ? ミカエルは選ばれし者なのに?」


…………嗤うような口調だった。


その言葉に、磔にされたミカエルが かすれた声で答えた。


「……はい」


「嘘だ!! ミカエル、本当のことを言えよ!! 本当は大天使になんかなりたくないって言ってたじゃないか!!」


イクノシアの叫びをよそに、神父は無表情にタバコをふかした。


「これは 神聖な儀式 なのだよ」


その言葉を合図に――


「さあ、やりなさい」


大男が、無表情のまま 斧を振り上げた。


「……っ!!」


俺の身体がこわばる。

全身が粟立ち、嫌な予感が全身を駆け巡る。


斧が振り下ろされる瞬間、時間が引き伸ばされたかのように、空気が軋んだ。

「イクノシア……ずっと、愛し――」


ドシュン。


肉が裂ける音。骨が砕ける鈍い響き。

一瞬遅れて、紅い飛沫が視界を染めた。


ミカエルの瞳から、生の光が抜け落ちる。

そのまま、祭壇の上で首が傾き――もう、二度と起き上がることはなかった。

 


息が詰まる。

何かを叫ぼうとしても、声にならない。


血が飛び散り、ドレスがさらに赤く染まる。

そして、そこにいたはずの少女の 命の灯火は――


消えた。


「ミカエル……?」


過去のイクノシアは、呆然とその光景を見ていた。

大好きだった少女の命が無残に奪われる瞬間を、ただ見届けることしかできなかった。


「……」


震えながら、イクノシアは拳を握る。

走馬灯のように、ミカエルとの記憶が蘇る。


−−−−−− 


幼い頃、彼女に告白したとき


『え? 私のことが好き?……私もイクノシアのこと好きだよ』


大天使に選ばれた日の、彼女の悲しそうな顔


『本格的に選ばれちゃったみたい、本当はイクノシアと結婚して、幸せな家庭を築きたかったのに。ごめんね』


儀式の前日、涙を流しながら震えていた彼女――


『逃げたい……怖い……助けてよ……』


−−−−−−


「なぁ、ユウマ。お前は思わなかったか?」


隣で、イクノシアが呟く。


俺は、言葉を返せない。


「我は思ったよ。何故、あのときミカエルを連れて逃げなかったのか」


苦しげに、イクノシアが歯を食いしばる。


「何故、あのとき"助けて"と叫んでいたミカエルに気づかなかったのか」


「……」


「いや、気づいていた。けれど、"仕方ない" と思っていたんだ」


あの時、イクノシアは信じていた。

"神聖な儀式だから、大丈夫" だと。

ミカエルは、"絶対に死ぬことはない" と。


だが――


結果は、惨劇だった。


「悔やんでも、悔やんでも、ミカエルは帰ってこない」


イクノシアは 虚ろな目 で呟いた。


「生きる目的を見失った我は、ひとつの考えに辿り着いた」


俺は、彼の横顔を見つめる。


「世界を征服し、新たな世界を作れば……ミカエルを蘇らせることができるのではないかと」


その言葉を聞いた瞬間、全身が寒気に包まれた。


「……ミカエルのために、世界を……?」


「そうだ」


イクノシアが、ゆっくりと目を閉じる。


「だから、魔王になったのさ」


彼の口元に微笑みが浮かぶ。


だが、それは哀しみに満ちた微笑みだった。


「……もう少し、待っていてくれ……愛しい人よ」


静かに呟かれた言葉が、胸に突き刺さる。


イクノシアは、復讐のために生きているんじゃない


ただ、大切な人にもう一度会いたいだけなんだ


「さあ、ユウマ」


視界が再び白く染まる。

イクノシアの声が、遠くで響く。


「ここからが本題だ」


次回![第百十四話、イクノシアの過去Part2] 

第百十三話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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