[第百十話、The Price of Rebirth]
毎週、月、水、土、絶賛更新中!!
高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜
レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん
どうぞよろしゅうに〜
「……準備はとっくにできてる。」
イクノシアの言葉に、雛音は満足げに頷く。
「ならば、いざ……始めるコン♡」
雛音はゆっくりと祭壇の中心へと歩み寄る。その細い指先がレイラの額に触れた瞬間、彼女の四本の尾が魔力を帯び、空間に渦を巻き始める。
「神秘なる魂よ、時を超え、今ここに蘇れ……!」
狐の耳がピクンと動き、呪文の響きに呼応するように魔法陣が燃え上がる。
「……ッ!」
レイラの体がビクンと震え、彼女の口から白い息が漏れる。その瞬間、彼女の体から淡い光が立ち上る。
「ハァァ……これは……素晴らしいコン……♡」
雛音の瞳が快楽に満ちた光を帯びる。まるで獲物を捕らえた肉食獣のような顔だ。
「魔王様ぁ、見てるコン? これが……1000年の時を超えて目覚める、彼女の記憶コン……!」
祭壇の上空に、白い光が漂い始める。その光の中には、確かに人の形があった。顔はまだはっきりしないが、何かが「目覚めよう」としていた。
イクノシアの目が細められる。
「……やはり、レイラは……」
彼の声には、どこか切実な響きがあった。
雛音はその様子を面白そうに眺めながら、クスクスと笑う。
イクノシアは一歩前に進み、レイラを見下ろす。
「もうすぐ……会える……」
イクノシアの声が震える。
焦燥でも、怒りでもなく、ただ歓喜が滲んだ声だった。
「コンコン♡ いい顔してるコンね、魔王様♡ でも、まだこれは“途中”コン。もっともっと……闇と光をかき混ぜてあげなきゃ……♡」
朱色の髪をなびかせながら、雛音がクスクスと笑う。
四本の尾が大きくうねり、魔法陣が赤黒く脈打つ。
「ハァ、ハァ……」
祭壇の中心に囚われたレイラの身体が痙攣する。
彼女の肌から発せられる光が、徐々に強まり、まるで何かが剥がれ落ちていくように見えた。
「う……ぁ……!」
苦悶の表情。
体の奥から、何かが抜き取られようとしている。
それが「何」であるか、本人ですら分からない。
「さぁ……このまま開けるコン♡」
雛音の細い指が空を舞う。
魔法陣の中で、レイラの身体が淡い白光を放ちながらゆっくりと浮かび上がった。
その瞬間――
「お前たち……ッ!」
突然、黒紫の閃光が祭壇の中心に飛び込んだ。
「そこまでだァァァ!!!!」
轟音と共に、ユウマの魔力が爆ぜる。
祭壇を囲むゴブリンたちが一斉に弾き飛ばされ、魔法陣の光が一瞬だけ揺らいだ。
イクノシアと雛音の視線が、同時に彼へと向けられる。
「……ほう。」
「おやおや、意外と早かったコンね♡」
雛音は驚くどころか、ますます楽しそうに笑みを深める。
ユウマは荒い息をつきながら、祭壇に囚われたレイラへと駆け寄った。
「レイラ!! 大丈夫か!!」
だが、レイラの意識は朦朧としていた。
彼女の唇がわずかに震え、か細い声が漏れる。
「ユ……ウマ……」
次の瞬間――
レイラの身体がゆっくりと浮かび上がる。
それに呼応するように、魔法陣が脈打ち、まるでもう一つの影が現れようとしていた。
「な……に……?」
ユウマの表情が強張る。
目の前で起こっている異常な現象に、直感が警鐘を鳴らす。
その時、雛音が嬉しそうにクスクスと笑った。
「フフフ……さぁ、クライマックスコン♡」
彼女の四本の尾が、大きく広がる。
その瞬間、魔法陣の光が弾け、レイラの身体から――
もう一つの「魂」が、影のように揺らめき始めた。
ユウマの喉が凍りつく。
「こ……れは……?」
雛音が妖艶な微笑みを浮かべ、ユウマを振り返る。
雛音の橙の瞳が、まるで真実を知っているかのように輝いた。
「ねぇねぇ、ユウマくん? ここでクイズコン♡」
「……?」
「この娘、レイラって名前だったコンね?」
「……ああ、そうだ」
「でも……もし違ったら?」
「……は?」
ユウマの眉がひそめられる。
だが、その言葉を理解する前に――
「魔王様♡ そろそろ教えてあげたらどうコン? この娘の“本当の名前”を♡」
イクノシアは沈黙したまま、じっと祭壇を見つめる。
その目は冷静で、そして確信に満ちていた。
彼は、静かに口を開く。
「……ミカエル」
ユウマの心臓が凍りついた。
「……は?」
「レイラが……ミカエル?」
理解が追いつかない。
ありえない。
そんなはずは――
だが、目の前の光景が、すべてを否定していた。
レイラの身体がゆっくりと光を放ち、それと同時に、彼女の顔が"別人のように"見えた。
「ミカエル……」
イクノシアが、まるで懐かしむようにその名を呼ぶ。
ユウマは反射的に叫んだ。
「嘘だ……!!」
だが、雛音は楽しそうに笑い、肩をすくめた。
「嘘じゃないコンよ♡ だって……魔王様が1000年待ち続けたお方が、この娘の中にいるんだから♡」
ユウマの手が震えた。
信じられない。
レイラが……
ミカエルの転生者?
そんな馬鹿な……!!
ユウマの脳裏に、彼女との記憶がよぎる。
無邪気に笑うレイラ。
怒って拳を振り上げるレイラ。
時折、寂しそうに空を見上げるレイラ。
そのすべてが、ミカエルと呼ばれた誰かの「残像」にすり替わる。
「……やめろ」
ユウマは、歯を食いしばった。
「やめろ!! そんなこと……あるはずがねぇ!!」
拳を固く握りしめ、祭壇の前に立つ。
「レイラはレイラだ!! 俺の知ってる、俺が知ってるレイラなんだよ!!」
だが、魔法陣の輝きは止まらない。
レイラの意識が朦朧としながらも、目を薄く開く。
「ユウ……マ……?」
その声は確かにレイラのものだった。
しかし、彼女の瞳の奥には、違う何かが映っていた。
「やめろ………!!」
ユウマが彼女の手を掴もうとした、その瞬間――
バチィィィンッ!!!!
魔法陣が激しく閃光を放ち、ユウマの身体が弾き飛ばされる。
「ッ……!!」
地面を転がりながら、彼は歯を食いしばった。
そして、目の前に立つ魔王と、嬉々とした笑みを浮かべる狐の妖怪を睨みつける。
「こんなこと……絶対に許さねぇ!!!」
彼の叫びが、祭壇の魔力を震わせた。
バチバチバチッ……!!
魔法陣が咆哮するように光を放ち、周囲の空気が震えた。
黄金と深紅が交差する光の束が、まるで触手のようにレイラの身体を包み込んでいる。
「……っ……あ……」
レイラは苦しげに喉を震わせ、虚空に向かって手を伸ばした。
「レイラ!!!」
ユウマが駆け寄ろうとする。
だが、彼の足元に突如として黒曜の棘が突き上がり、進路を塞いだ。
「邪魔はさせん」
イクノシアの冷ややかな声が響く。
「貴様が触れれば、儀式が乱れる」
「ふざけんな!!」
ユウマは牙を剥くように叫び、地面を蹴る。
だが、足元の魔法陣がさらに激しく光を増し、まるで吸い寄せるようにレイラの体が浮かび上がる。
そして――
ドオオオォォン!!!!!
魔法陣の中心で、"何か" が引き抜かれた。
「――ッ!!」
レイラの身体から、青白い光が飛び出す。
それは宙に漂いながら、ゆっくりと形を成し始めた。
イクノシアが低く息を吐く。
「……来たか」
「ミカエル様……!!」
雛音が陶酔したような声を上げた。
そして――
ユウマの目の前で、奇跡の光景が展開される。
青白く透き通るような裸の二人の少女が、宙に浮かんでいた。
一人は レイラ。
もう一人は ミカエル。
二人は、まるで運命に抗うかのように、手を繋いでいた。
互いの存在を確かめるように、しっかりと指を絡めている。
「っ……ミカエル……」
イクノシアが、まるで愛しいものを懐かしむような目で、その光を見つめた。
彼の手の甲の紋章が脈動し、魔法陣がさらに強く輝く。
すると――
青白い二人の魂が、ゆっくりと棺へと吸い込まれていく。
「待てよ……!」
ユウマが歯を食いしばる。
思考するよりも先に、全力で地を蹴った。
魔法陣の光が炸裂する。
普通ならば、ここに入ることすら許されない領域。
だが――
ユウマは、無理やり 魔法陣の中へと飛び込んだ。
「何……!?」
イクノシアの目がわずかに見開かれる。
ユウマの指が、宙に浮かぶレイラの身体を掴んだ。
「……ッ……はぁ……!」
ユウマは、呼吸を乱しながら、宙に漂うレイラの腕を引き寄せる。
だが。
レイラとミカエルの魂は、二人で手を繋いだまま、棺へと吸い込まれていく。
「やめろ!!!」
ユウマが、レイラの"魂ではなく"、"身体"の方を引き寄せる。
すると――
バチバチバチバチッ!!!!!
魔法陣の光が炸裂する。
"ミカエルの魂"だけが、棺の中へと吸い込まれ、レイラの魂はレイラの身体へと戻る。
「――んぁぁ!!」
レイラの身体が大きく震え、ユウマの腕の中で倒れ込むように落ちた。
だが。
彼女の瞳は、まだ開かれない。
「……っ、レイラ!!」
ユウマは必死に彼女の肩を揺らす。
それでも、彼女は微かに息をするだけで、目を覚ますことはなかった。
「レイラ……」
ユウマが顔をしかめる。
その瞬間――
ズドンッ!!!
大地が揺れ、空気が裂けるような衝撃が走った。
「ッ……!!」
ユウマが振り返る。
そこには――
黒曜石の棺が、音を立てて軋んでいた。
「――ぁ……」
かすかな声が、棺の中から漏れる。
「ッ……ミカエル様……!!」
雛音が歓喜の悲鳴を上げる。
そして――
「これは……」
イクノシアが静かに目を細める。
「まだ"未完成"……か」
棺の蓋が、ゆっくりと開かれる。
そこに横たわっているのは――
「っ……!!」
まだ完全に復活していない"ミカエル"の肉体 だった。
「ミカエル……」
イクノシアがそっと手を伸ばす。
だが――
彼女はまだ、"目を覚ましていない"。
「やはり……"レイラの魂" が必要だったか」
イクノシアが静かに呟く。
その言葉を聞いた瞬間――
ユウマの目に、激しい怒りの色が灯る。
「……お前、まだレイラを……!!」
ユウマの拳が震え、手の甲の紋章が脈動する。
「"ミカエルの魂" だけじゃ……まだ不完全とか、わけのわかんないこと言いやがって……!」
雛音が、楽しげにくすくすと笑う。
「当然コン♡ だって、ミカエル様の"完全なる復活"には……"レイラの魂も" 必要だからコン♡」
「……!!」
ユウマの呼吸が乱れる。
「つまり、まだ……"終わってない"コンよ?」
雛音の指が、ふわりと宙を舞う。
すると、ユウマの腕の中にいるレイラの身体が、まるで再び引き寄せられるように浮き上がりそうになった。
「レイラは……"依り代"に過ぎない」
イクノシアが、冷静に告げる。
「お前は……"レイラ"を救いたいのか?」
ユウマは、歯を食いしばる。
「当たり前だろ……!!」
「……ならば……"力"で示せ」
イクノシアの手が、ゆっくりと黒き魔力を帯び始める。
「……貴様の全てを持って、我を阻止してみせよ」
ユウマは、レイラの身体をそっと横たえ、ゆっくりと立ち上がる。
彼の眼に宿るのは――
かつてないほどの憤怒。
「言われなくても……!!」
ズドンッ!!!!
ユウマの魔力が爆発する。
次回![第百十一話、ノリで作った薬の副作用]
第百十話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




