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フツメンofウィザード 〜地味な俺が異世界魔法学園でなぜか注目される件〜  作者: ベルガ・モルザ


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[第百九話、星喰らいの輪舞]

毎週、月、水、土、絶賛更新中!!


高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜

レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん


どうぞよろしゅうに〜

じり、と土が焦げるような匂いが漂う。

 

空間を圧する魔力の奔流――かつてないほどの圧倒的な存在感が、その場を支配していた。


たらり、と。

イクノシアの頬を汗が伝う。


魔王とて動揺することがあるのか――?

だが、眼前の存在は明らかに異常だった。


目を凝らす。

ユウマの手の甲に浮かび上がった紋章、逆十字と日蝕。


「……その模様……そうか……やはりユウマ、お前は……」


イクノシアは自らの手の甲を見下ろした。

そこには、ユウマと同じ紋章が刻まれている。


何かを確信した。


その瞬間――。


「絶対に……」


ユウマが、低く、静かに呟いた。


だが、それは嵐の前触れにすぎなかった。


次の瞬間――ユウマは消えた。


否、背後に回り込んだ。


「許さねぇ!!」


裂帛(れっぽく)の気合とともに、妖刀が振り下ろされる。

刃の弧が空を裂き、イクノシアの首を狙った。


「ッ……!」


とっさに黒曜石の剣を召喚し、迎え撃つイクノシア。

 

だが――。


バキィィン!!


黒曜石の剣は、まるで小枝のように砕け散った。


「チッ……!」


舌打ちとともに、イクノシアは拳を振るう。

直撃すれば一撃必殺――!


だが。


『アイアン・ブラスター』


ユウマの手のひらがかざされる。


瞬間、空間に鉄粉と金属片が集まり、圧縮され――。


ゴッ!!


鉄の塊が炸裂する。

鈍い衝撃音とともに、イクノシアの身体が宙を舞い、吹き飛ばされた。


「ッ……が!」


ユウマは攻撃の手を緩めなかった。

地面を蹴り、刀を構え、一直線に駆ける。

次の一撃で心臓を貫く――!!


だが――


キィン!!


突然、鋭い金属音が響き渡った。

ユウマの手から、妖刀が弾かれる。


「誰だ!」


視線の先に立つ者。

手にはサーベル。


「魔王様は……殺させない……」


冷たく、光のない目でユウマを見据える。

アリヤ


ユウマは手をかざし、魔力を込める。


「どけよ。お前から 消し去るぞ」


しかし、アリヤは微動だにしない。

そのサーベルを静かに構え、ただひと言――。


「やれるものなら……やってみなさい」


その声は、氷のように冷たかった。


だが、その視線の奥には確かな信念があった。


「アリヤ……お主」


イクノシアが彼女を見た。


「私が時間を稼ぎます……魔王様は、早くミカエル様を」


「……助かる」


その言葉に イクノシアは振り向かずに走った。

向かう先――船の上、祭壇の上に眠るレイラ。


「アリヤ、頼むからどいてくれ」


ユウマは低く言った。


アリヤはゆっくりと首を振る。


「嫌……私は私自身のやり方で世界を変える」


「世界を変えるだと?」


ユウマの目が 怒りで揺れる。


「こんなに沢山の人が死んでるんだぞ……!なのに、簡単に世界を変えるなんて言うな!」


沢山の人が死んだ。

それは、事実だった。


アリヤ自身、本音を言うならば争いも、死も、好きではない。


だが 泣き姉。

そして故郷の悲劇を二度と繰り返さないために。

彼女は魔王に仕えることを選んだ。


たとえ それが悪の道であろうとも――。


アリヤは目を閉じた。

深く、長く、呼吸をする。

そして 冷たい声で告げる。


「犠牲はつきものだよ……それがわからないなら、君は絶対に私に勝てない!!」


殺気が弾けた。

 

キィン!!


鋭い金属音が響き渡る。


ユウマの視界に、閃光のような軌跡が刻まれた。

アリヤのサーベルが、躊躇いなく一直線に振り下ろされる。


その速さは――常軌を逸していた。


ガギィィィン!!!


間一髪、ユウマは大きく後方へ跳躍。

宙で一回転し、身を捻りながら、地面へと着地する。


アリヤの剣先が、ユウマが立っていた場所を深く抉った。

 

土煙が巻き上がり、割れた大地が震える。


「……速いな」


ユウマは冷静に呟きながら、右手を軽く上げる。


シュンッ!!


瞬間、空間が揺れ、ユウマの手に漆夜が収束するように収まった。

 

柄を握るだけで、黒い波紋が広がる。

 

刀身が微かに唸りを上げ、ユウマの魔力に呼応するように揺れた。


「まだまだ……ッ!!」


アリヤが再び突進する。

足元を爆発させるような疾走、

空気を引き裂くほどの剣速。


「ハァァッ!!!」


サーベルが横薙ぎに振り抜かれる。


ユウマは、わずかに膝を曲げた。


その瞬間――。


カン!!


漆夜が寸分違わず迎撃。


ガガガッ!!


激しく火花が散る。

刀身がぶつかり合い、金属が削れる音が鳴り響いた。


アリヤの瞳が鋭く光る。


「ッ!!」


ユウマの腕に力が込められる。

圧し掛かる力に対抗するように、刀を押し返す。


だが、アリヤの剣捌きは巧妙だった。

力を受け流すように身を翻し、即座に次の斬撃を繰り出す。


「遅いッ!!」


ユウマが左腕を捻り込む。


その動きに合わせるように妖刀が逆手に振るわれた。


シュバッ!!


アリヤの剣筋を避けながら、ユウマの刃が彼女の脇腹をかすめる。


「くっ――!」


細身のアリヤの体がわずかに傾ぐ。


だが、彼女は倒れない。

血を滲ませながらも、サーベルを握り直し、すぐさま構えを整える。


「……まだまだ……終わらない」


荒い息の合間に、彼女は微笑んだ。


ユウマは刀を構え直し、静かに次の一手を見据えた。



「避けきれない――!」


アリヤは目を強く閉じた。


体がこわばり、死を覚悟する。


だが、次の瞬間――


カァン!!


甲高い金属音が響いた。


(……?)


衝撃がこない。


目を開くと、目の前には姉の背中があった。


「サミラお姉ちゃん……?」


アリヤの目が大きく見開かれる。


ユウマの妖刀を、サミラが笛一本で受け止めていた。

 

その細い腕が、今にも折れそうなほどに震えている。


「だ、大丈夫……アリヤちゃん……」


サミラの声は息が詰まるようにか細かった。

だが、その瞳には揺るがぬ意志が宿っている。


「どうして……?」


アリヤの困惑した声に、サミラは振り向かず微笑んだ。


「お姉ちゃんだもん」


――そう、私は姉なのだから。

可愛い妹が危ないときは命に代えても守らなきゃね。


アリヤの目が揺れる。


その間にも、サミラの腕は限界を迎えようとしていた。

ユウマの刀の圧力に耐えきれず、 笛の軋む音が響く。


「どけろ」


ユウマが低く、しかし荒々しく言い放った。


刀を押し込む腕には容赦がなかった。


「嫌よ!!」


サミラは叫ぶように返す。

キッとユウマを睨みつけ、震えながらも笛を握り直した。


「アリヤを倒したければ、まずは私を倒してみなさい!!」


強い意志を宿した、決死の叫び。


その瞬間――


ギンッ!!


漆夜が青黒い閃光を放つ。


ユウマが、 さらに刀を高く振り上げた。


「――なら、容赦はしない」


刀を振り抜く。


空気が裂ける音。


そして、


ズバァッ!!


振り下ろされた刀が 一閃する。


サミラの体が一瞬にして二つに裂かれた。


「っ……!?」


口を開く。

声にならない 叫びが喉の奥で詰まる。


意識が、まだ続いている。

だが、体が言うことをきかない。


足元から、じわりと 熱が引いていく。


視界が、揺れた。


自分の腕が、自分の足が、どこにあるのか。

何が起きたのか。


わからない。


いや、わかりたくない。


サミラは、震える手を腹部に当てる。


手のひらに感じる 湿り気。

赤い――。

熱い――。


指先が、血で滑る。


「ぁ……」


視線を落とすと、そこには自分の体の断面があった。


真っ二つに裂けた胴体。

切断面はあまりにも滑らかで、違和感がなかった。


けれど、数秒遅れて。


「――ッッ!!」


痛みが襲ってきた。


それは、じわじわと、焼けるような鈍痛。

まるで熱した鉄の棒を体の内側に押し込まれたかのような灼熱の痛み。


胃が、腸が、皮膚が――全てが裂け、溢れ出す感覚。


力が入らない。

膝が崩れ、倒れそうになる。


視界の端で、アリヤの声が聞こえた。


「サ、サミラお姉ちゃん……!?」


姉らしく、笑わなきゃ。


必死に口角を上げようとする。

だが、動かない。


意識が――白く染まっていく。


「ア……リ、ヤ……」


声にならない声が漏れる。

耳が、遠くなる。


足元が、落ちていく。


体が、崩れ落ちる。


やがて――。


サミラは、血の海の中へと沈んだ。


「あ… あぁ… お姉ちゃ…ん…」


アリヤの声が震え、呼吸が乱れる。目の前に横たわるサミラの体からは、絶え間なく赤が溢れていた。指先がまだ温かい。だが、彼女の目は二度と開かない。


崩れるように膝をつき、アリヤはその手を握った。


「なんで… なんでこんなことに…っ!」


嗚咽が漏れる。肩が震え、指先はサミラの手を離したくなかった。 


その光景を見ていたユウマは、静かに息を吸い込み、重く沈む声で言葉を紡ぐ。


「アリヤ… す、すま…」


震える手を伸ばし、アリヤの肩に触れようとした——その瞬間。


――シュッ!


鋭い風を切る音が耳を劈いた。


「ナディアお姉ちゃんだけじゃなくて、サミラお姉ちゃんまで… よくも… 許さない… 許さないんだからぁぁぁぁ!!!」


アリヤの目は、怒りと憎しみで染まっていた。サーベルが閃光のようにユウマの首を狙う。


「っ!」


ユウマの動きが一瞬遅れた。避けられない。


だが——。


――キィン!!


金属が弾ける音が響いた。


「……!」


ユウマの前に、翡翠色のリボンを結んだ少女が立っていた。


短刀を握り、サーベルを寸前で受け止めるリン。


「リン!」


ユウマが声を上げる。


「早く!! ユウマは魔王の元にいって! レイラを使ってなにか儀式を始めようとしてるわ! だから早く!!」


リンの声には迷いがなかった。


「お、おう!」


ユウマは躊躇いながらも、リンの言葉を信じ、魔王の元へ向かって走り出す。


だが、背後から聞こえたアリヤの怒号がユウマの足を止めかけた。


「どいてよ!! 私があの男を殺すんだから!!!」


「殺させるわけないでしょ!!」


リンの声は鋭く、冷静だった。


「ユウマは… ユウマは私の大切な人だから!」


短刀を構えるリン。その目には、確かな決意が宿っていた。


−−−−−−


血のように赤黒い魔法陣が祭壇の床に広がっていく。魔力の奔流が波のように空間を震わせ、宙に浮いた魔法具が淡い光を放つ。




ゴブリンたちがせっせと動き回る。彼らの小さな手が祭壇に並べられた儀式の道具を慎重に調整し、香炉の中に黒い粉を注ぐ。湿った土の匂いに混じって、得体の知れない甘い香りが漂う。


祭壇の中央にはレイラが横たわっていた。手足を鎖で縛られ、胸元には魔法陣が刻まれている。まるで彼女の存在そのものを変えようとしているかのようだった。


「——準備は整いました。」


ゴブリンの一匹が震える声で報告する。


その言葉を合図に、祭壇の横に立っていた影がゆっくりと歩み出る。


「フフッ……やっとこの時が来たコン♡」


柔らかい笑い声が響く。だが、その声音には妙な狂気が滲んでいた。


朱色の髪がふわりと揺れ、狐の耳がぴくりと動く。


妖艶な微笑みを浮かべ。長い睫毛の奥で、橙の瞳が鋭く光る。


「お待たせたしました、魔王様♡」


雛音は艶やかに微笑み、クルリと回るように踊ると、尾がふわりと揺れた。四本の尾が祭壇を囲むように広がり、空気がピリッと震える。


イクノシアは静かに彼女を見下ろし、冷たい声で問いかける。


「……始められるか?」


「もちろんコン♡ ただし、これはとーっても大事な儀式コン。魔王様も……ちゃんと心の準備はできてるコン?」


雛音の指先が宙をなぞる。彼女の爪先から滲むように妖気が広がり、魔法陣がさらに鮮明に輝き始める。血のような光が地面を這い、儀式のエネルギーが高まっていく。


次回![第百十話、The Price of Rebirth] 

第百九話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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