表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/187

[第九話、初めての林間学習]

毎週、月、水、金の更新を予定してます。

※夜の21時までには投稿します!

どうぞよろしゅうに〜

「おい、リン!あっちにゴブリンがいる!」


俺の叫びに、リンはすぐさま視線を向けた。街の外れ、闇に紛れて小さな影がうごめいている。


「いますぐ街から離れなさい!」


鋭く命じるが、ゴブリンは耳を貸すことなく牙を剥き、リンに向かって突進してくる。


「くっ…!やるしかないのね。ユウマ、下がってなさい!」


「お、おう…頑張れよ!」


俺のの声が背後で響くのを聞きながら、リンは駆け出した。風が彼女の周囲を巻き込み、なびく髪を激しく揺らす。


『烈風』


唱えた瞬間、鋭い風の刃が疾走し、ゴブリンの身体を一瞬で両断する。しかし、倒れたそばから別のゴブリンが襲いかかり、棍棒を振り下ろした。


「っ…!」


回避が間に合わない――鈍い衝撃が肩を直撃し、リンの身体が地面に叩きつけられる。


「ギギィギ!」


ゴブリンが勝ち誇るように吠え、さらに追撃を加えようとする。だが、リンは素早く身を翻し、ぎりぎりで棍棒を避けた。


腰に下げた短刀を抜き、刃に冷たい光を宿らせる。そして、鋭い踏み込み。ゴブリンの懐に潜り込むと、首元を狙い一閃。


「ギッ…!」


短く悲鳴を上げる間もなく、ゴブリンの喉から血が噴き出した。


リンは次々とゴブリンを斬り伏せていく。しかし、それを上回る速度で、地下水路の奥から新たなゴブリンが湧き出してくる。


「っ…く、数が…!」


倒しても倒しても、終わりが見えない。呼吸は荒れ、手足が徐々に重くなってくる。気づけば、追い詰められていた。


「くそっ!俺にできることはないのか…!」


焦りと苛立ちが入り混じる。リンは必死に戦っているが、ゴブリンの数が多すぎる。このままではいずれ押し負ける――。


「若造!こっちへ!」


低く鋭い声に振り向くと、魔法具を売っているマーリンさんが小さく手招きをしていた。


「なんすか、今大事なところで…」


「しぃー!こっちに気づかれたら厄介なことになる。お前さん、武術の心得はあるか?」


「一応、ボクシングはやってましたけど…」


「なら、ちょうどいい武器がある!これを持って行け!あの子と一緒に街を守るんじゃ!」


「これって…?」


マーリンさんが手渡してきたのは、黒いグローブの形をしたナックル。魔力が淡く脈打ち、ただの武器ではないことが直感的にわかる。


「ありがとうございます!」


俺はそれを受け取り、すぐに走り出した。



 

(このままじゃ、数に負ける…!)


リンは荒れた息を整えながら、迫りくるゴブリンたちを睨む。


(ヤマトマルを呼ぶ魔力も、もう残ってない…せめてサンクチュアリが来るまで耐えないと…)


だが、思考を巡らせる間もなく、ゴブリンの棍棒が振り上げられる。


「ギギ!」


(避けきれない…!)


そう思った瞬間――


「おおおらぁっ!!!」


轟くような怒号。次の瞬間、棍棒を持ったゴブリンが衝撃で吹き飛んだ。リンの視界に飛び込んできたのは、拳を突き出したユウマ。


「大丈夫か!?リン!」


「え?…あ、ありがとう…!」


驚きと安堵が入り混じる。


だが――


(やべぇ…身体の震えが止まらねぇ…!)


ユウマは自分の手を見つめる。心臓がバクバクと音を立て、膝がわずかに揺れていた。殴った感触が、骨を砕いた衝撃が、まだ拳に残っている。


(死ぬかもしれないのがこんなに怖いもんだったのか…)


「ユウマ、ペンダントが光って…!」


「え?」


リンの声に促されて目を下げると、胸元のエーテルペントが鈍く光を放っていた。そして、それと呼応するように――ユウマの手にも淡い光がまとい始める。


(なんだこれ…?)


じんわりと温かく、それでいて異様に馴染む感覚。光は徐々に形を変え、ナックルへと移動していく。やがて――


「重っ!!!」


ナックルが銀色に輝き、鉄のように硬質化した。突然の変化に、ユウマは腕を持ち上げるのさえ一苦労する。


「手に意識を集中して!魔法をコントロールするの!」


「そんなこと言われても、いきなり実戦で魔法を扱うなんて無理だろ…!」


「ユウマ、危ない!」


リンの叫びと同時に、ゴブリンたちが一斉に飛びかかってくる。


(やばい――俺の命、ここまでか…?)


そう思った、その瞬間。

 


「フリーズスパイク!」


凛とした女性の声が背後から響いた瞬間、鋭い氷の槍がいくつも宙を駆け、俺の目の前を通り過ぎた。氷柱は寸分の狂いもなくゴブリンたちの心臓を貫き、その場に倒れ込ませる。


「もう大丈夫ですよ。二人とも、あとは僕に任せて。」


落ち着いた声音に振り向くと、そこに立っていたのは――


「あ、あなたは…!」


見覚えのある姿。黒い制服に身を包み、知的な眼差しを浮かべる女性。間違いない、以前見かけた委員長キャラの先輩だ。


「ペンドルトン、一気に決めますよ。」


「了解したロン!」


ペンドルトンと呼ばれた小さなペンギンの星獣が、ぷくっと頬を膨らませる。そして――


『アイスペンブリザード!』


冷たい霧が周囲に広がると、ゴブリンたちの動きが急激に鈍くなっていく。ただ凍らせるのではなく、行動を制御する魔法のようだ。


「今ロン!」


ペンドルトンの合図にルーシーは軽く頷き、水色の本を開く。彼女の周囲に魔力が集まり、空気がピンと張り詰める。


(これだけの数を一掃するには、上級魔法しかない…だけど、魔力供給なしでの使用は今のところ一回が限界。失敗すれば…僕がやられる。)


水色の魔法陣が輝きを増し、彼女の黒いスカートと髪が風に揺れた。そして、力強い詠唱が響き渡る。


『氷の嵐よ、荒れ狂え! ブリザード・ストーム!』


冷たい強風が吹き荒れ、氷の粒が渦を巻くように舞い上がる。視界を白く染めるほどの猛吹雪がゴブリンたちを包み込み――瞬く間に氷漬けにしてしまった。


「す、すごい…!」


思わず声を漏らすリン。


しかし、その場に立ち尽くしていたルーシー先輩は、力を使い果たしたのか膝をついた。


「ルーシー、大丈夫ロン!?」


「うん、大丈夫…ありがとう、ペンドルトン。」


よろけながらも立ち上がり、星獣の頭を優しく撫でる。


「ペンドルトン、周囲にまだゴブリンが残っていないか見回ってくれる?」


「了解したロン!」


ペンドルトンはピシッと敬礼をし、そのまま素早く辺りを巡回し始めた。



「君たち、大丈夫そうでよかった。」


ルーシー先輩は俺たちに向き直り、改めて自己紹介をする。


「僕の名前はルーシー・ノーザンライト。2年生です。 よろしくね。」


凛とした表情のまま、差し出された手。俺とリンは握手を交わす。


「ケンザキ・リンです。」


「ハヤシ・ユウマです。」


「なぜゴブリンが出現したのかは分からないけど、君たちのおかげで被害を食い止められた。本当にありがとう。」


その言葉に、少しだけ誇らしくなる。だが――


「おーい!ルーシー!無事か!?」


突然、背後から男の声が響いた。


「レオ先輩!問題ありません!無事にゴブリンを倒しました。」


「さすがだな。よくやった。」


そう言うと、レオさんは自然な仕草でルーシーの頭を撫でる。


(イケメンは何やっても許されるのかよ…俺がやったら間違いなく殴られるぞ。)


「もう、頭を撫でないでください!」


「すまんすまん。」


レオさんが軽く手を上げながら謝ると、視線が俺たちへ向く。


「ところで、この二人は?」


ルーシー先輩が簡潔に状況を説明すると、レオさんは納得したように頷いた。


「なるほど…君たちも頑張ってくれたんだな。よくやったよ。」


そして、穏やかな笑みを浮かべながら手を差し出す。


「俺は3年生のレオ・デュークだ。よろしくな。」


知ってますよ。チートキャラの人、って覚えました。


「後は俺たちサンクチュアリに任せて、君たちは休むといい。ご苦労様♪」


軽く手を振ると、ルーシー先輩と共に足早に去っていく。


---


「今日は…疲れたな。」


俺は空を仰ぎながら呟く。


「ほんとに。でも、楽しかった。それに、魔法が使えるようになってよかったね。おめでとう!」


「これでようやく、俺もみんなと同じスタートラインに立てたな!」


「ふふっ…まだ星獣を召喚できてないでしょ?」


「そ、そっか…(笑)」


お互いに顔を見合わせて、苦笑する。


「それじゃあ、また明日。」


「うん、また明日。」


こうして、長く慌ただしい一日が終わった。


なんだか、リンとの距離が少し縮まった気がする。


(帰ったら、風呂にでも入るか…)


---


翌日


4月16日


「今日は皆さんに、1週間後に行われる林間学習について説明します。」


先生の言葉に、教室内がざわつき始めた。


「林間学習だって…」


「姉ちゃんが言ってたけど、マジで地獄らしいよ。」


クラスメイトたちがヒソヒソと噂話を交わす。


「はいはーい、私語はそこまで! 今から、2日間共に行動する班を決めますので、みんな順番に前に来て、この箱からくじを引いてね~!」


先生に従い、生徒たちは列を作り、順番にくじを引いていく。引いた紙には、班の番号が書かれている。


やがて、ほとんどの班が埋まり、最後に残ったのは4班(あと2人)と6班(あと4人)。


そして、残ったメンバーは――


俺、ジョン、レイラ、リン、ミケロス、ミシェル。


(マジで頼むぞ、神様…!)


「次、ユウマ君からよ~。」


「よし、行くぞ!」


気合を入れて箱に手を突っ込み、勢いよく引いた紙を確認する。


「お、6か。」


「僕も6だ!」


「最悪……6。」


「6。」


「フン…4か。」


「4だって。」


俺、ジョン、レイラ、リン、ミケロス、ミシェル


それぞれが番号を確認し、リアクションを取る。


「では、各自班に分かれてくださいねー!」



「ジョーン!」


「ユウマー!」


「お前と一緒で俺は嬉しいよ~!」


「僕もだよ、ユウマ~!」


「アタシは最悪だけどね。」


レイラがジト目でこちらを見てくるが、気にしない。


「レイラもリンもよろしくな!」


「フーンだ!」


「よろしくね。」


(あっぶねぇ…!ミケロスの野郎と同じ班にならなくてよかった…!)


ちらりと視線を向けると、ミシェルがミケロスと一緒の班になっていた。


(ミシェル…可哀想に。 あんな兄と一緒とか、大変だろうな。)


「私、ドジで失敗ばかりするけど…一生懸命頑張ります。」


「よろしくね!ミシェルちゃん!」


「お前ら、俺の足を引っ張るようなことはするなよ!」


「兄様、そんな言い方はよくないです」


神様、どうかお願いです。この林間学習、何事もなく楽しい思い出として終わらせてください。


同時刻―― ギルド『サンクチュアリ』


「これは…」


レイヴンの鋭い声が響く。彼女の視線の先には、黒い魔法陣が刻まれた石板があった。


「気づくのが早いねぇ、さすがレイヴン。」


レオが腕を組みながら言う。


「これをどこで見つけたんだ、レオ。」


「昨日、ルーシーとゴブリン被害に遭ったカラビアの地下水路だ。おそらく、これがゴブリン召喚の鍵だったんだろう。」


レイヴンは沈黙し、しばらく石板を見つめる。


「……闇のギルド『オブキュラス』が動き始めたか。」


[おまけ]


「キャー♡ レオ様、待ってー!」


「……毎日毎日、よく飽きないな、あの子たち。」


学園の廊下に響く黄色い悲鳴。追いかけてくる女生徒たちを背後に感じながら、レオはため息混じりに呟く。


「先輩、こっちです! 早く隠れて!」


「え、あっ…」


ルーシーに腕を引かれるまま、狭いロッカーの中に押し込まれるレオ。


「キャー♡ 待って待ってー! …あれ? レオ様は?」


足音が遠ざかり、静寂が訪れる。


「ふぅ…助かったよ、ルーシー。って、おい、どうした?」


(あわわわわ……僕まで一緒にロッカーに入ってしまった……!!)


ルーシーの脳内は一瞬にしてパニック状態。


(しかもこの中、狭い! 先輩の顔が近い! 近すぎる! しかも、手を壁についた状態だから……これ、壁ドンになってる!?)


鼓動が爆音のように響く。


(ホントに無理です。ルーシー・ノーザンライト、本日命日です。いままでありがとうございました。)


「おい、ルーシー? 返事をしてくれー!」


「なんか、あのロッカーやたらとガタガタ動いてるロン。変なの。」


次回! [第十話 みんなで楽しい林間学習]

第九話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ