[第百六話、生意気でしょ?]
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「クソ…!」
握った拳が震える。息が詰まる。
ユウマは、荒廃した風景の向こうを睨んだ。
「まだ……イクノシアの船に辿り着けないのかよ……」
言葉に出した途端、焦燥が喉の奥で熱を帯びる。
砕けた瓦礫を飛び越え、焦げた地面を踏みしめながら、前だけを見据えていた。その隣で、レイラも荒い息を吐きながら必死に走る。
「ハァ… ハァ… リン、どこにいったのかしら?」
走りながら周囲を見渡すレイラ。リンの姿はない。いつの間にかはぐれてしまったのだ。
「ちょっと、ユウマ!」
だが、ユウマは聞こえていないようだった。必死になって前へ進もうとする彼の背中を見て、レイラは歯を食いしばる。これではダメだ。今、冷静にならなければ――。
「アンタ、ちょっと落ち着きなさいっての!」
レイラはユウマの肩を思いきり引っ張った。
「おわぁ!? なにすんだよ、レイラ!」
「何すんだよ、じゃないわよ!! あんた、リンがはぐれたの気づいてないの!?」
「そんなことないだろ!? だって……あれ? リンは……?」
今になって気づいたように、ユウマは後ろを振り返った。レイラは深いため息をつく。
「だからそう言ったじゃない! ちょっとは冷静になりなさいよ!!」
「ごめん……」
「ごめん、ごめんって……謝ってばっかりで苛つくわね! こんの!!」
レイラがユウマの頬を叩こうとした、その瞬間だった。
『『インフェルナル・シンチェイン!!』』
空間に紅蓮の火花が弾け、燃え盛る鎖が現れる。炎の鎖はまるで意思を持つ蛇のように蠢き、一直線にレイラの腕へと伸びた。
「なっ!」
腕に巻きついた鎖が、熱を帯びたまま締め上げる。火傷のような痛みが走り、レイラの動きを封じる。
直後、別の鎖が地面を滑るように駆け抜けた。
雷鳴のような音とともに、第二の鎖が空間から生まれる。音もなく滑るように迫り、レイラの足を絡め取った。
「――っぐ!!」
雷が弾け、電撃が神経を焼く。体が痺れ、膝から崩れ落ちそうになる。
炎と雷――二つの鎖が絡み合い、十字架のようにレイラの体を宙へと固定した。
ガシャンッ!
鉄の錠が閉じるような音が響く。
レイラの体が宙に浮いたまま硬直し、ユウマは慌てて叫んだ。
「レイラ!!」
炎に包まれた鎖が赤々と光り、雷の鎖が紫電を散らす。捕らえられたレイラは歯を食いしばりながら、燃えるような視線を前へと向けた。
そこに立っていたのは――。
「よくやったわ♡ エシャ、アイシャ♡」
甘ったるくも、どこか狂気を孕んだ声が響く。
ミシェルの背後に、神獣となったエシャとアイシャが静かに佇んでいた。その隣で、ミケロスが歯を食いしばりながら、拳を震わせている。
「ミシェル……それにミケロスまで!お前ら、どうしてレイラを捕らえるんだよ!?」
ユウマが眉間に皺を寄せ、怒りに震える声を荒げる。
ミケロスは息を呑んだ。喉の奥で何かを噛み潰すように。
「……ユウマ…俺は……」
その瞬間——。
「もしかして、ユウマくん、なんにも知らない感じなのかな?」
ミシェルが顔を輝かせ、純粋無垢な少女のように微笑んだ。だが、その瞳には禍々しい光が宿っていた。
「私たち、オブキュラスのメンバーになったんだよ?」
——瞬間、ユウマの目が鋭くなる。
「ジュリア先輩がどうなったかは知ってる……ミケロス、お前、確か一緒にいたんだよな?」
「あぁ…」
ミケロスは絞り出すように答える。
「なんで助けなかった?」
「助けようとしたさ…だけど——」
「お兄様が裏切ったからだよ♡」
ミシェルがくるりと回り、くすくすと笑う。その笑みは幼い少女のそれのようでありながら、どこまでも狂気に満ちていた。
「私はね、あのアバズレ女を地獄の底に突き落としたかったの♡ だから、お兄様に手を差し伸べてあげたの♡ そしたら——」
ピンクの唇が大きく歪む。
「お兄様ったら、裏切っちゃったの♡」
「違う!! 俺は裏切ったんじゃない!」
ミケロスが叫ぶ。しかし、その言葉には確信がない。
ユウマは目を細めた。
「そうか……話は分かった」
そして、低く、静かに——だが確かな殺気を込めた声で告げる。
「今からお前らをぶっ飛ばす…!」
言葉と同時に、ユウマはナックルを握り締め、一気に間合いを詰めた。
「お兄様!!」
ミシェルが叫ぶ。
ミケロスがエペを召喚し、ユウマの攻撃を受け止めた。その衝撃に、火花が散る。
「残念♡」
ミシェルが微笑む。その瞬間、杖を掲げ——。
『ルクス・ネグラ!!』
黒紫色の雷光が迸る。
螺旋状にバチバチと弾ける雷がユウマを捉え——。
轟ッ!!!
直線状に走る閃光。ユウマの体が爆裂と共に吹き飛ぶ。
「…っぐ!」
だが、ユウマは即座に地面に手をつき、受け身を取る。痺れる腕を振りながら、ミシェルを睨みつけた。
「どうしてこんなことをするんだよ……。ミシェル、お前はこんな酷いことをする子じゃないだろ……」
「は?」
その言葉に、ミシェルの顔が歪む。
「酷いことをさせたのはユウマくん……君でしょ?」
その声には、明らかな怒りが滲んでいた。
「私のことはいつもいつも後回し。他の女の約束事は守るくせに、私の約束は一つも守らない。他の女を見ている目はあんなに魅力的なのに……私を見ている目は子供を見るような目で……」
歯ぎしりする音が響く。
「……なにが言いたいかと言うと、ユウマくんを守るためだよ♡」
そして、ミシェルは柔らかな笑顔で答えた。
「俺を守るためって……だったら、レイラを拘束するのも、他のみんなを傷つけるのもやめろよ!!」
「うるさぁぁぁい!!」
叫び声が校庭に響く。
「レイラとか他のみんなとか……いちいちいちいち名前を出す、そんなところが大っ嫌いなんだよ!! エシャ!! アイシャ!!」
「にゅ!」
「にょ!」
ミシェルが叫ぶと、エシャとアイシャは手を取り合い、宙に向かって片手を掲げる。
闇の炎と雷が融合し、暗黒の嵐のような激しい球体を作り出した。
「ユウマくん……すぐに生き返らせるからね♡」
ミシェルが不気味なほどの笑顔を向ける。その言葉を最後に——。
『エクリプスバーン!!』
エシャとアイシャが同時に叫び、闇雷の球体を放つ。
ズドォォォォンッ!!!
轟音と共に、黒き炎の塊がユウマへと迫る。
正面から迎え撃とうとするユウマ。しかし、爆風が巻き起こるその瞬間——。
『天を裂き、雷帝よ、地を穿て…天裂雷霆(てんれつらいてい!!』
それは呟きに近い声だった。だが、世界は轟音に包まれた。
巨大な雷の塊が、闇雷の球体と激突する。
——ドォン!!!
凄まじい閃光が走り、衝撃波が四方へと弾け飛んだ。
「な……!! 誰よ!!」
ミシェルが目を見開く。
「このレイヴン・アーチボルトを本気で怒らせたこと、後悔させてやる。」
声と共に、ユウマの隣に立つ黒髪の少女。
黒いショートカットを揺らし、ローブのファーをなびかせ、鋭い眼光をミシェルへと突き刺した。
この学園の生徒会長——。
サンクチュアリを束ねる、絶対的女王、レイヴンだった。
「レイヴンさん…!」
ユウマが息を切らしながら、その背中を見つめる。
「早く、レイラを助けろ… 私が時間を稼ぐ」
彼女の声には、確固たる決意があった。ユウマは一瞬ためらうが、すぐに歯を食いしばり、その言葉に従うように走り出す。
「は、はい!」
もたつく足を必死に動かし、レイラのもとへ——。だが。
「待て」
冷たい声が、彼の行く手を阻んだ。
ユウマの前に、ミケロスとエシャが立ちはだかる。
「どけぇぇぇ!」
怒りのままに拳を振り上げるユウマ。
すると、エシャが美しい悪魔の姿で襲いかかる。鋭い爪がユウマの顔面を裂こうとした瞬間。
ユウマはその攻撃を手の甲で受け流し、流れのまま懐へ入り込む。だが、殴らない。
代わりに——。
「行ってこい!」
ドガァッ!!
ユウマはエシャを強引にミケロスへと投げ飛ばした。
「にゅ! ミケロス様、ごめんなさいにゅ!」
エシャが地面に転がり、ミケロスの足元に倒れる。
「いや、大丈夫だ…って……なっ!?」
ミケロスはすぐに顔を上げる——そこには拳を構えたユウマがいた。
「……っ!」
反射的にエペを構える。しかし、ユウマの拳は、ミケロスの頬を殴ることはなかった。
代わりに——。
「おい! レイラの鎖をほどけ!」
胸ぐらを掴み、怒鳴りつける。
ユウマの目は、今にも爆発しそうな怒りと、それ以上に焦りで満ちていた。
「……」
ミケロスは目を伏せる。沈黙が、重くのしかかる。
その横で、雷が弾ける轟音が響いた。
−−−−−
レイヴンの身体が青白い稲妻で覆われていた。
その電光が、彼女の瞳に宿る。
視界にとらえられないほどの速さで、彼女はミシェルとアイシャの間を縫い、蹴り、殴り、叩き伏せる。
「チョコチョコとゴキブリみたいにうっとうしいレズビアンが!!」
ミシェルが轟音のような声で叫ぶ。
「アイシャ!!」
その言葉に、アイシャが頷く。
両手をレイヴンへ向けて掲げ——。
『ダークライトニング!!』
バチバチバチッ!!!
黒い雷が走る。純粋な雷ではない、闇を孕んだ、歪んだエネルギーが。
だが、レイヴンは避けない。
「雷魔法なら負けはしない…」
彼女の拳に雷が宿る。
そして。
「行くぞ!!」
闇雷の直撃を正面から受けながらも、拳を振りかざし、アイシャへと突っ込む。
---
「ミケロス…」
ユウマが低く、静かに呼ぶ。
「……俺は、お前を……信じたかった……」
怒りが、悲しみが、全ての感情が、拳に込められていく。
「頼む、どいてくれ」
ミケロスは、ユウマの目をじっと見た。
その瞳には、決意が映っていた。
彼は、唇を噛みしめる。
「……っ!」
ミケロスが、強くエペを握る。
その瞬間——。
バチィッ!!!
雷の拳が、闇の雷を突き破る。
レイヴンの一撃が、アイシャを吹き飛ばした。
ミシェルが目を見開く。
「アイシャ!!」
レイヴンは静かに、だが確かに宣言した。
「言ったろ… このレイヴン・アーチボルトを、本気で怒らせたこと……後悔させてやると。」
雷鳴と共に、レイヴンの拳が闇を切り裂いた。
「……これで終わりだ!!」
目の前の敵を睨みつけ、全身の魔力を拳に込める。
レイヴンの拳がアイシャへと振り下ろされる、その瞬間。
「待った、だ。」
ぬるり、とした黒い影が割り込む。
アイシャの背後から、黒曜石の鎧を纏った巨躯が、悠然と拳を掴んでいた。
「なっ……!」
「ずいぶん元気がいいな、ガキ。」
魔王イクノシアの手が、レイヴンの拳を包み込んでいた。
「……ッ!!」
一瞬、世界が静寂に沈む。
そして——。
ゴキィッ!!!!
「ぐああああああッ!!」
骨が砕ける音が響き、レイヴンの腕が不自然な角度に折れた。
衝撃に耐えきれず、彼女の身体は弾かれるように吹き飛んだ。
地面を転がりながら、レイヴンはすぐに受け身を取る。
痛みに顔を歪めるも、動きを止めない。
「……イクノシア… 許さん…ッ!!」
腕が砕かれたことなど気にも留めず、まだ動く左腕で、再びイクノシアへと殴りかかった。
「おお、まだやる気か?」
ニヤリと笑う魔王。
「いいねぇ、その無謀さ、嫌いじゃない。」
そして。
『ネザークレイヴ』
イクノシアの手のひらから、黒い歪みが広がった。
闇そのものを削り取り、存在ごと呑み込む魔王の闇魔法が——レイヴンを覆い尽くそうとした。
「——ッ!」
レイヴンは避けられないと悟る。
しかし、次の瞬間——。
まるで天を裂くように、青白い光が目の前に現れた。
「な……に?」
それは、竜魔法の障壁だった。
「この学園を守るのは、生徒だけではありませんよ。」
静かに響く、澄んだ声。
小柄な影が、ゆっくりと前に出る。
その小さな背中を見て、ユウマも、レイヴンも、ミケロスも、ミシェルでさえ息を呑んだ。
そこにいたのは——。
この学園の校長、ソフィア・スカーレット。
「……ソフィア校長……」
ユウマが呟く。
「魔王イクノシア……」
彼女は静かに、だが確かな決意を持って言った。
「ここで、あなたを倒します。」
次回![第百七話、無様なる反抗それでも足掻くか]
第百六話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




