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フツメンofウィザード 〜地味な俺が異世界魔法学園でなぜか注目される件〜  作者: ベルガ・モルザ


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[第百六話、生意気でしょ?]

毎週、月、水、土、絶賛更新中!!


高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜

レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん


どうぞよろしゅうに〜


「クソ…!」

 

握った拳が震える。息が詰まる。

 

ユウマは、荒廃した風景の向こうを睨んだ。


「まだ……イクノシアの船に辿り着けないのかよ……」

 

言葉に出した途端、焦燥が喉の奥で熱を帯びる。

砕けた瓦礫を飛び越え、焦げた地面を踏みしめながら、前だけを見据えていた。その隣で、レイラも荒い息を吐きながら必死に走る。


「ハァ… ハァ… リン、どこにいったのかしら?」


走りながら周囲を見渡すレイラ。リンの姿はない。いつの間にかはぐれてしまったのだ。


「ちょっと、ユウマ!」


だが、ユウマは聞こえていないようだった。必死になって前へ進もうとする彼の背中を見て、レイラは歯を食いしばる。これではダメだ。今、冷静にならなければ――。


「アンタ、ちょっと落ち着きなさいっての!」


レイラはユウマの肩を思いきり引っ張った。


「おわぁ!? なにすんだよ、レイラ!」


「何すんだよ、じゃないわよ!! あんた、リンがはぐれたの気づいてないの!?」


「そんなことないだろ!? だって……あれ? リンは……?」


今になって気づいたように、ユウマは後ろを振り返った。レイラは深いため息をつく。


「だからそう言ったじゃない! ちょっとは冷静になりなさいよ!!」


「ごめん……」


「ごめん、ごめんって……謝ってばっかりで苛つくわね! こんの!!」


レイラがユウマの頬を叩こうとした、その瞬間だった。



『『インフェルナル・シンチェイン!!』』


空間に紅蓮の火花が弾け、燃え盛る鎖が現れる。炎の鎖はまるで意思を持つ蛇のように蠢き、一直線にレイラの腕へと伸びた。


「なっ!」


腕に巻きついた鎖が、熱を帯びたまま締め上げる。火傷のような痛みが走り、レイラの動きを封じる。



直後、別の鎖が地面を滑るように駆け抜けた。


雷鳴のような音とともに、第二の鎖が空間から生まれる。音もなく滑るように迫り、レイラの足を絡め取った。


「――っぐ!!」


雷が弾け、電撃が神経を焼く。体が痺れ、膝から崩れ落ちそうになる。


炎と雷――二つの鎖が絡み合い、十字架のようにレイラの体を宙へと固定した。


ガシャンッ!


鉄の錠が閉じるような音が響く。


レイラの体が宙に浮いたまま硬直し、ユウマは慌てて叫んだ。


「レイラ!!」


炎に包まれた鎖が赤々と光り、雷の鎖が紫電を散らす。捕らえられたレイラは歯を食いしばりながら、燃えるような視線を前へと向けた。


そこに立っていたのは――。


「よくやったわ♡ エシャ、アイシャ♡」


甘ったるくも、どこか狂気を孕んだ声が響く。


ミシェルの背後に、神獣となったエシャとアイシャが静かに佇んでいた。その隣で、ミケロスが歯を食いしばりながら、拳を震わせている。


「ミシェル……それにミケロスまで!お前ら、どうしてレイラを捕らえるんだよ!?」


ユウマが眉間に皺を寄せ、怒りに震える声を荒げる。

 

ミケロスは息を呑んだ。喉の奥で何かを噛み潰すように。

 

「……ユウマ…俺は……」


その瞬間——。


「もしかして、ユウマくん、なんにも知らない感じなのかな?」


ミシェルが顔を輝かせ、純粋無垢な少女のように微笑んだ。だが、その瞳には禍々しい光が宿っていた。


「私たち、オブキュラスのメンバーになったんだよ?」


 ——瞬間、ユウマの目が鋭くなる。


「ジュリア先輩がどうなったかは知ってる……ミケロス、お前、確か一緒にいたんだよな?」


「あぁ…」


ミケロスは絞り出すように答える。


「なんで助けなかった?」


「助けようとしたさ…だけど——」


「お兄様が裏切ったからだよ♡」


ミシェルがくるりと回り、くすくすと笑う。その笑みは幼い少女のそれのようでありながら、どこまでも狂気に満ちていた。


「私はね、あのアバズレ女を地獄の底に突き落としたかったの♡ だから、お兄様に手を差し伸べてあげたの♡ そしたら——」


ピンクの唇が大きく歪む。


「お兄様ったら、裏切っちゃったの♡」


「違う!! 俺は裏切ったんじゃない!」


ミケロスが叫ぶ。しかし、その言葉には確信がない。


ユウマは目を細めた。


「そうか……話は分かった」


そして、低く、静かに——だが確かな殺気を込めた声で告げる。


「今からお前らをぶっ飛ばす…!」


言葉と同時に、ユウマはナックルを握り締め、一気に間合いを詰めた。


 

「お兄様!!」


ミシェルが叫ぶ。


ミケロスがエペを召喚し、ユウマの攻撃を受け止めた。その衝撃に、火花が散る。


「残念♡」


ミシェルが微笑む。その瞬間、杖を掲げ——。


『ルクス・ネグラ!!』


黒紫色の雷光が迸る。


螺旋状にバチバチと弾ける雷がユウマを捉え——。


轟ッ!!!


直線状に走る閃光。ユウマの体が爆裂と共に吹き飛ぶ。


「…っぐ!」


だが、ユウマは即座に地面に手をつき、受け身を取る。痺れる腕を振りながら、ミシェルを睨みつけた。


「どうしてこんなことをするんだよ……。ミシェル、お前はこんな酷いことをする子じゃないだろ……」


「は?」


その言葉に、ミシェルの顔が歪む。


「酷いことをさせたのはユウマくん……君でしょ?」


その声には、明らかな怒りが滲んでいた。


「私のことはいつもいつも後回し。他の女の約束事は守るくせに、私の約束は一つも守らない。他の女を見ている目はあんなに魅力的なのに……私を見ている目は子供を見るような目で……」


歯ぎしりする音が響く。


「……なにが言いたいかと言うと、ユウマくんを守るためだよ♡」


そして、ミシェルは柔らかな笑顔で答えた。


「俺を守るためって……だったら、レイラを拘束するのも、他のみんなを傷つけるのもやめろよ!!」


「うるさぁぁぁい!!」


叫び声が校庭に響く。


「レイラとか他のみんなとか……いちいちいちいち名前を出す、そんなところが大っ嫌いなんだよ!! エシャ!! アイシャ!!」


「にゅ!」


「にょ!」


ミシェルが叫ぶと、エシャとアイシャは手を取り合い、宙に向かって片手を掲げる。


闇の炎と雷が融合し、暗黒の嵐のような激しい球体を作り出した。


「ユウマくん……すぐに生き返らせるからね♡」


ミシェルが不気味なほどの笑顔を向ける。その言葉を最後に——。


『エクリプスバーン!!』


エシャとアイシャが同時に叫び、闇雷の球体を放つ。


ズドォォォォンッ!!!


轟音と共に、黒き炎の塊がユウマへと迫る。


正面から迎え撃とうとするユウマ。しかし、爆風が巻き起こるその瞬間——。


『天を裂き、雷帝よ、地を穿て…天裂雷霆(てんれつらいてい!!』


それは呟きに近い声だった。だが、世界は轟音に包まれた。

 

巨大な雷の塊が、闇雷の球体と激突する。


——ドォン!!!


凄まじい閃光が走り、衝撃波が四方へと弾け飛んだ。


「な……!! 誰よ!!」


ミシェルが目を見開く。


「このレイヴン・アーチボルトを本気で怒らせたこと、後悔させてやる。」


声と共に、ユウマの隣に立つ黒髪の少女。


黒いショートカットを揺らし、ローブのファーをなびかせ、鋭い眼光をミシェルへと突き刺した。


この学園の生徒会長——。


サンクチュアリを束ねる、絶対的女王、レイヴンだった。


「レイヴンさん…!」


ユウマが息を切らしながら、その背中を見つめる。


「早く、レイラを助けろ… 私が時間を稼ぐ」


彼女の声には、確固たる決意があった。ユウマは一瞬ためらうが、すぐに歯を食いしばり、その言葉に従うように走り出す。


「は、はい!」


もたつく足を必死に動かし、レイラのもとへ——。だが。


「待て」


冷たい声が、彼の行く手を阻んだ。


ユウマの前に、ミケロスとエシャが立ちはだかる。


「どけぇぇぇ!」


怒りのままに拳を振り上げるユウマ。


すると、エシャが美しい悪魔の姿で襲いかかる。鋭い爪がユウマの顔面を裂こうとした瞬間。



ユウマはその攻撃を手の甲で受け流し、流れのまま懐へ入り込む。だが、殴らない。


代わりに——。


「行ってこい!」


ドガァッ!!


ユウマはエシャを強引にミケロスへと投げ飛ばした。


「にゅ! ミケロス様、ごめんなさいにゅ!」


エシャが地面に転がり、ミケロスの足元に倒れる。


「いや、大丈夫だ…って……なっ!?」


ミケロスはすぐに顔を上げる——そこには拳を構えたユウマがいた。


「……っ!」


反射的にエペを構える。しかし、ユウマの拳は、ミケロスの頬を殴ることはなかった。


代わりに——。


「おい! レイラの鎖をほどけ!」


胸ぐらを掴み、怒鳴りつける。


ユウマの目は、今にも爆発しそうな怒りと、それ以上に焦りで満ちていた。


「……」


ミケロスは目を伏せる。沈黙が、重くのしかかる。


その横で、雷が弾ける轟音が響いた。



−−−−−



レイヴンの身体が青白い稲妻で覆われていた。


その電光が、彼女の瞳に宿る。


視界にとらえられないほどの速さで、彼女はミシェルとアイシャの間を縫い、蹴り、殴り、叩き伏せる。


「チョコチョコとゴキブリみたいにうっとうしいレズビアンが!!」


ミシェルが轟音のような声で叫ぶ。


「アイシャ!!」


その言葉に、アイシャが頷く。


両手をレイヴンへ向けて掲げ——。


『ダークライトニング!!』


バチバチバチッ!!!


黒い雷が走る。純粋な雷ではない、闇を孕んだ、歪んだエネルギーが。


だが、レイヴンは避けない。


「雷魔法なら負けはしない…」


彼女の拳に雷が宿る。


そして。


「行くぞ!!」


闇雷の直撃を正面から受けながらも、拳を振りかざし、アイシャへと突っ込む。



---


「ミケロス…」


ユウマが低く、静かに呼ぶ。


「……俺は、お前を……信じたかった……」


怒りが、悲しみが、全ての感情が、拳に込められていく。


「頼む、どいてくれ」


ミケロスは、ユウマの目をじっと見た。


その瞳には、決意が映っていた。


彼は、唇を噛みしめる。


「……っ!」


ミケロスが、強くエペを握る。


その瞬間——。


バチィッ!!!


雷の拳が、闇の雷を突き破る。


レイヴンの一撃が、アイシャを吹き飛ばした。


ミシェルが目を見開く。


「アイシャ!!」


レイヴンは静かに、だが確かに宣言した。


「言ったろ… このレイヴン・アーチボルトを、本気で怒らせたこと……後悔させてやると。」


雷鳴と共に、レイヴンの拳が闇を切り裂いた。


「……これで終わりだ!!」


目の前の敵を睨みつけ、全身の魔力を拳に込める。


レイヴンの拳がアイシャへと振り下ろされる、その瞬間。


「待った、だ。」


ぬるり、とした黒い影が割り込む。


アイシャの背後から、黒曜石の鎧を纏った巨躯が、悠然と拳を掴んでいた。


「なっ……!」


「ずいぶん元気がいいな、ガキ。」


魔王イクノシアの手が、レイヴンの拳を包み込んでいた。


「……ッ!!」


一瞬、世界が静寂に沈む。


そして——。


ゴキィッ!!!!


「ぐああああああッ!!」


骨が砕ける音が響き、レイヴンの腕が不自然な角度に折れた。


衝撃に耐えきれず、彼女の身体は弾かれるように吹き飛んだ。


地面を転がりながら、レイヴンはすぐに受け身を取る。


痛みに顔を歪めるも、動きを止めない。


「……イクノシア… 許さん…ッ!!」


腕が砕かれたことなど気にも留めず、まだ動く左腕で、再びイクノシアへと殴りかかった。


「おお、まだやる気か?」


ニヤリと笑う魔王。


「いいねぇ、その無謀さ、嫌いじゃない。」


そして。


『ネザークレイヴ』


イクノシアの手のひらから、黒い歪みが広がった。


闇そのものを削り取り、存在ごと呑み込む魔王の闇魔法が——レイヴンを覆い尽くそうとした。


「——ッ!」


レイヴンは避けられないと悟る。


しかし、次の瞬間——。


まるで天を裂くように、青白い光が目の前に現れた。


「な……に?」


それは、竜魔法の障壁だった。


「この学園を守るのは、生徒だけではありませんよ。」


静かに響く、澄んだ声。


小柄な影が、ゆっくりと前に出る。


その小さな背中を見て、ユウマも、レイヴンも、ミケロスも、ミシェルでさえ息を呑んだ。


そこにいたのは——。


この学園の校長、ソフィア・スカーレット。


「……ソフィア校長……」


ユウマが呟く。


「魔王イクノシア……」


彼女は静かに、だが確かな決意を持って言った。


「ここで、あなたを倒します。」



次回![第百七話、無様なる反抗それでも足掻くか] 

第百六話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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