[第百五話、壊れた妹と嘆きの兄]
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レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん
どうぞよろしゅうに〜
グシャッ!
一瞬の静寂。
それを破るように、フォールン・レギオンの黒い血が弾ける。
「おぉぉりゃ!!」
ユウマの拳が、まるで鍛え上げられた鉄の塊のように振り下ろされる。フォールン・レギオンの長い爪をギリギリでかわし、重厚なカウンターを打ち込んだ。
だが、倒したはずの一匹の亡骸が地に落ちるよりも早く、今度は二匹、三匹と群れをなして迫ってくる。
「しつこいわね…!」
レイラが苛立ちを滲ませながら両手を掲げ、漆黒の炎を練る。暗闇のような紅黒い火が指先で揺らめき、次の瞬間——
『アビスフレイム!』
轟音とともに直線状の業火が解き放たれた。燃え広がる黒炎が、フォールン・レギオンの群れを瞬く間に包み込み、悽惨な悲鳴が上がる。
「ギィィィ!!」
焼け爛れた身体を振り乱しながら、なおもフォールン・レギオンは力尽くで魔法を発動する。巨大な漆黒の雷球が空に唸りを上げ、轟音とともに落ちてきた。
その瞬間——
『炎衣术 (イェンイーシュ)!』
天を裂くような朱の光が弾け、レイラの星獣・フレイアが真紅の炎を纏う。彼女の姿は炎の衣を纏った朱雀のごとく神々しく、その力で落ちてきた雷球を正面から受け止める。
激しく火花を散らしながら雷と炎がぶつかり合う。しかし、フレイアの燃え盛る翼は、一切の雷撃を焼き尽くし、フォールン・レギオンの攻撃を無力化した。
「オレっちもいいとこ魅せるでござる!!」
風が切り裂かれる音が響き渡る。
レイラの横を疾風のように駆け抜ける影——それはリンの星獣、ヤマトマルだった。美しい翡翠色の羽が宙に舞い、彼の身体は白く輝く巨大な翼と長い尾を持つ神獣へと変貌を遂げていた。
『千鳥!!』
ヤマトマルが羽ばたくと、まるで天空から無数の刃が降り注ぐかのような猛烈な突風が巻き起こる。その一撃は竜巻に潜む刃、フォールン・レギオンの群れを片端から切り裂いた。
黒い血が霧のように宙に舞い、バイクラートカゲたちの隊列も次々に吹き飛ばされていく。
「ハァ… ハァ…」
リンは息を整えながら、再び短刀を握り直した。
敵の数は凄まじい。ひとつ斬れば、またひとつ、どこからともなく湧き出るかのように現れる。
彼女は苛立ちを覚えながらも、また駆け出した。
倒れたフォールン・レギオンの死骸を飛び台に使い、さらなる標的へと向かう。刃が閃き、黒い血が宙を舞う。しかし——
「…こんなんじゃ、魔王の元に辿り着くまでに体力が消耗しちゃう…」
息が上がるのを感じる。体力の消耗が思ったよりも激しい。
それでも、止まるわけにはいかない。
「っく…もうっ!」
リンは額の汗を拭い、再び敵の群れへと飛び込んだ。
「隙ありぃぃ!」
バイクラートカゲの喉が鳴る。エンジンを深く唸らせ、手にした鉄パイプを振り上げた。獲物を仕留める瞬間を確信し、その爬虫類の瞳が妖しく光る。
「避けれない…!」
リンの体が、一瞬ふらつく。疲労が蓄積した身体では、次の動きを速く読めない。手に握った短刀を構え、防御の構えを取る
だが、その瞬間——
——バァン!
一発の銃声が響いた。
空気が揺れるほどの炸裂音。雷鳴のごとき轟音とともに、バイクラートカゲの頭部が弾けた。皮膚を突き破り、脳天を貫いた弾丸が青白い火花を散らしながら消える。
「この銃声…まさか…」
リンの鼓動が跳ね上がる。
視線を走らせる。左側——そこに立っていたのは、金の髪をなびかせ、冷静な表情を崩さぬまま、バチバチと雷を宿したハンドガンを片手に掲げるルナ。
「リーン! 大丈夫!?」
遠くからジョンが駆け寄る。大きく手を振り、息を弾ませながらも、その顔には確かな安堵が浮かんでいた。
「ジョン…ルナ先輩…」
思わず、リンの胸の感情が溢れる。恐怖や緊張がほんの僅かにほどける。
「二人とも無事だったのね」
「まぁね!」
ジョンが快活に笑う。
「ユウマや他のみんなは!?」
その問いに、リンは少し眉を寄せる。
「ユウマとレイラは多分、もう少し先に行ったはず。一緒に行動してたんだけど、敵が多くていつの間にか離れちゃったみたい」
「わかった! ルナ先輩、僕達もユウマを追いかけましょう!」
ジョンが力強く拳を握る。しかし、その言葉にルナは淡々と銃の弾を装填しながら静かに首を横に振った。
「ジョンはリンと一緒に来て」
「え?」
「私は操られているドラゴンを止めに行く」
張り詰めた空気が、彼女の言葉と共に場を包み込む。
ルナは竜人族だ。
その血が、心が、彼女を導く。かつて魔王の魔力によって操られた竜の悲劇。その過去を知る彼女だからこそ、竜人族の誇りにかけて、この災厄を見過ごすことはできない。
「ルナ先輩…」
ジョンが不安げにルナの腕を掴んだ。その指先は微かに震えている。まるで、もう二度と会えなくなるかもしれない。
ルナはふっと微笑み、優しくジョンの頭を撫でた。
「大丈夫だから、私はいなくなったりしないよ」
それは、嘘ではない。だが、確証があるわけでもない。
「死んじゃ嫌ですから…」
ジョンの声は、かすかに震えていた。
ルナは少し目を細め、「はい」とだけ静かに応えた。
それが、彼女にできる最善の優しさだった。
**
ルナは腕を天へと掲げる。
「——アルイン」
その声が響くと、雲の中から黒い影が姿を現した。
神獣へと進化したルナの星獣、アルイン。
漆黒の鱗が夜闇と溶け合い、金色の瞳が静かに光を放つ。彼の翼が大気を切り裂き、空気がビリビリと震えた。
ルナは躊躇いなくアルインの背に飛び乗る。
「行くよ」
ひと振りの鞭のような尻尾が空を裂き、アルインは天へと舞い上がった。
その先には、魔王の魔力によって操られた竜たちが待ち構えている。
−−−−−−
火が舞う。
無数のドラゴンたちが、夜空を灼熱の嵐で染め上げる。
血の雨が降る。
フォールン・レギオンはその鋭い爪と歯で、生きたまま人間たちを貪り、苦痛の叫びを夜闇に響かせる。
戦場を蹂躙するバイクラートカゲたちは、爆音と共に笑い声を上げ、歓喜に満ちた獣のように生徒たちを嬲る。
「なんて素敵な光景♡」
船の上から、その光景をうっとりと眺めるミシェル。艶やかなピンクの髪を風に靡かせながら、血塗られた学園をまるで美しい絵画のように見つめている。
その隣で、ミケロスの拳が震えていた。
「お兄様♡ 見てみてー! あっちで沢山ひとが死んでるよ!!」
ミシェルは無邪気に笑い、指をさす。その表情には、微塵の曇りもない。
……壊れてしまった。
もう、何を言っても、何をしても、届かない。
ミケロスは、声を失ったまま、ただ立ち尽くすしかなかった。
そんな二人のもとへ、完全体となった魔王イクノシアが歩み寄る。漆黒のマントを翻し、その背後にはダミアナ、雛音、サミラ、アリヤ——オブキュラスの幹部たちが続く。
「さぁ、そろそろ次の段階に移るとしようか。」
魔王は髪をかき上げ、口元に不敵な笑みを浮かべる。
「魔王様、次は何をするの?」
ミシェルが無垢な声色で問いかけると、イクノシアは片眉を吊り上げた。愉悦に満ちた表情を浮かべながら、低く囁く。
「我の愛する人を蘇るための儀式さ。」
その言葉を聞いた瞬間、ミシェルの瞳が輝いた。
「じゃあ、あの赤毛のツインテールのクソ女を連れてくればいいんですよね!?」
「頼めるか?」
「もちろんです! 行こう! お兄様♡」
「……俺は……」
ミケロスは立ちすくむ。
だが、ミシェルは無理やり彼の手を引き、強引に膝をつかせた。
「いいから♡ 早く!!」
ミケロスの顔が歪む。ミシェルは彼の手を自分の手の甲へと押し付け…
契約の刻印が浮かび上がる。
唇が触れた瞬間、魔法陣が展開された。
「んぁ…♡ ホントいうと初めてはユウマくんがよかったんだけど… 仕方ないよね」
ミシェルは頬を紅潮させ、うっとりとした目で兄を見下ろした。
契約が完了したのか、光が静まり返る。
「じゃあ、次はエシャとアイシャを神獣にしよう!」
ミシェルの声が高らかに響く。
ミケロスは、震える声で従うしかなかった。
「星獣アイシャよ、我の力を使い神獣に進化せよ……」
「星獣エシャよ、我の力を使い神獣に進化せよ……」
先ほどまで身を隠していた双子の星獣が、二人の言葉に応えるように飛び立つ。
水色の髪に黒い角を持つ姉のエシャが、ピンクの髪のアイシャの手を握る。
彼女たちの姿は、闇へと包まれた——。
その闇の中で、変化が起こる。
髪が伸び、幼い少女のようだった姿は、美しき悪魔のような神獣へと変貌を遂げた。
「とっても綺麗だよ〜♡ アイシャ」
ミシェルは目をキラキラさせ、神獣となったアイシャの手を握る。
一方、ミケロスの前に立つエシャは、伏し目がちに静かに言葉を紡ぐ。
「あの……ミケロス様……」
ミケロスは顔を上げた。
「エシャ……すまん……」
声は、震えていた。
ミシェル以外は、誰もこの状況に喜びを感じてはいなかった。
それでも、すべてを狂わせた者の命令に従うしかない。
「じゃあ、行こうか! あの女を迎えに!!」
ミシェルを筆頭に、魔王の儀式の次なる犠牲を求め、彼らは動き出した——。
−−−−−−
空を裂く轟音——。
ルナはアルインの背にまたがり、獰猛なバイクラートカゲやフォールン・レギオンを次々と撃ち落としていく。
ドォン!!
ルナのアサルトライフルが、鳴り響く雷鳴のように敵を撃ち貫く。
「っ…まだまだ!!」
彼女は流れるような動きで、アサルトライフルを捨て、即座に別の武器を召喚する。
拳銃——ライフル——ショットガン——。
武器が次々とルナの手に生まれ、容赦なく敵へと弾丸を撃ち込んでいく。
狙いは正確。フォールン・レギオンの鋭い爪がルナを掠める前に、その頭部を一撃で吹き飛ばした。
「ルナ! まだ行けるな!?」
アルインの低い声が響く。
「問題ない……!」
空中に爆発が広がる。焼け焦げた翼を持つフォールン・レギオンの群れが、空から落ちていく。しかし、それでも数は減らない。
——敵が多すぎる!
ルナは歯を食いしばる。
その時だった。
背後から強烈なプレッシャーが押し寄せる。
——ドラゴンブレス!
無数の魔王に操られたドラゴンたちが、一斉に灼熱の業火を吹き放った。
「まずい…!!」
アルインが大きく旋回し、火炎を避ける。しかし、フォールン・レギオンたちがルナの動きを読んでいたかのように、横から飛び込んでくる。
「チッ……!!」
ルナは咄嗟にアルインの背から飛び降りた。
背後から火炎が襲いかかる。
ルナは空中で回転し、身体を捻ると——。
片目が蒼く燃え上がった。
——圧倒的な魔力が周囲に放たれる。
彼女の手のひらが蒼黒く光を帯びる。
周囲の空間が軋み、波打ち、そこから "何か" が湧き上がるような錯覚を覚えた。
紫黒色の光が収束する。
空気が震え、異常な熱がルナの手元に集まっていく。
エネルギーの蓄積。
それはまるで——宇宙の終焉の如く。
『漆黒の虚空より流れ出る、暗黒の根源よ。深淵の奥より湧き立つ、無限のエネルギーを我が手に集めよ。』
その声が響いた瞬間、周囲のフォールン・レギオンが一斉に身震いした。
『蒼き星の終焉を予示する力を、我が前に具現化せよ。』
ルナの手に宿るエネルギーが、さらに強烈な輝きを放つ。
光線の放出。
『絶望と無を宿し、虚無の力を束ねし者よ。神々の裁きの如く、闇を穿ち、無限の破壊をもたらす。至高の力を、今ここに!』
その声が轟いた瞬間——
——漆黒の光線が、閃光となって世界を貫いた。
『ネクロニウム』!!
紫黒い破壊光線が一直線に撃ち放たれる。
あらゆるものを焼き尽くし、貫き、蒸発させる——まさに"崩壊"の一撃だった。
フォールン・レギオンが、バイクラートカゲが、灼熱の闇に消えていく。
「アルイン!!」
ルナの叫びに呼応し、空を舞う漆黒のドラゴンが口を大きく開いた。
『ドラゴンレイ!!』
神獣へと進化したアルインが、魔王に操られたドラゴンの群れに向け、強烈な光線を解き放つ。
その威力は凄まじく、操られたドラゴンたちの身体が、次々と貫かれ、蒸発していった。
敵軍の戦力が、一瞬にして半減するほどの殲滅。
空には、消えゆく蒼き光だけが残った。
ルナは息を整え、すぐにアルインの背に再び飛び乗る。
目の前にはまだ戦場が広がっていた。
だが、一つだけ確かなことがある。
——彼女は、戦いの中で決意を固めた。
竜人として。
そして、ルナ・ドレイクとして。
「……ごめんね、操られて苦しかったよね… 私がみんなの仇を討つね…」
彼女の蒼い瞳が、次なる敵を見据えた。
次回![第百六話、生意気でしょ?]
第百五話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




