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フツメンofウィザード 〜地味な俺が異世界魔法学園でなぜか注目される件〜  作者: ベルガ・モルザ


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[第百三話、千年の終焉、魔王の覚醒]

毎週、月、水、土、絶賛更新中!!


高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜

レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん


どうぞよろしゅうに〜


プルル… プルル…


「はい、ダミアナでございますわ」

 

その声は、シルクのように滑らかで甘やかだったが、奥底には氷の棘が隠されている。魔王イクノシアの名が画面に表示されたとき、彼女はほんの一瞬だけ微笑んだ。


「今どこにいる? ですか? 時期にエンチャントレルムまで着きますわよ」


風がビュービューと唸りを上げ、肌を打つ冷気が空の高さを物語っている。

はるか下の海面には影が流れ、波の揺れに合わせて形を変えていく。


だが、飛んでいるのはダミアナ自身ではない。

彼女は、ピンク色の鱗を持つ巨大なドラゴンの背中に、悠然と立っていた。


「えぇ… ですから心配は御無用ですわ。キッチリとミカエル様の外見はお作り致しましたので、はい… では」


ダミアナが電話を切ると同時に、バッタ型のバイクのエンジンがブォンと鳴り響いた。バイクの後部座席に座るサミラが、風で乱れる髪を右手で押さえながら、イクノシアからの用件を尋ねる。


「魔王様の催促のお電話ですか?」


「そうですわ。早く帰ってこいと」


「ヴァーゴの谷でドラゴンさん達を操って帰ってくることは話してないのです?」


「えぇ、これはわたくしから魔王様へのささやかなサプライズですので…」


フフンと鼻を鳴らし、黒髪のツインテールを指に巻きつけながら得意げに笑うダミアナ。


「でも、ホントに魔王様の魔力は凄いのですね… こんなに沢山のドラゴンさん達を操れるなんて… 黒いドラゴンの村長さんは抵抗してましたけど」


サミラは、恐怖と関心が入り混じったような目を向ける。


これが千年前に行われた魔法戦争のほんの一部だとしたら——。


サミラの「黒いドラゴンの村長」という言葉に、ダミアナは鼻で笑い、皮肉交じりの声を漏らした。


「あんな老いぼれ、こちらからお断りでしてよ。ルナを傷つけるな? 何様のつもりかしら? せめて年齢に見合った賢さを見せてほしいものですわね。まぁ、運が良ければ生き延びるでしょうし、悪ければ……自然淘汰ってやつですわ」


クスクスと楽しげに笑う二人の前に、バイクにまたがったバイクラートカゲのリーダーらしき男がジェスチャーを交えながら言葉を投げかけた。


「そのなんとか学園についたら、俺たちはすぐに生徒を襲えばいいんだな?」


「そうですわ。ただし黒いローブを着ている人間は襲ってはいけませんわよ」


「了解だぜぇ!」


リーダーが「ひゃっほー!」と叫びながら飛び去ろうとした瞬間、ダミアナが声を張り止める。


「待ちなさい! あとどのくらいで着きますの?」


「30分じゃないか?」


「遅い! あと10分でつかないと、全員首を切り落としますわよ!!」


「えぇ… なんだよそのパワハラ」


「いいから! ドラゴン達のケツを叩いてもっと早く飛ばさせなさい」


「わぁーったよ」


−−−−−−


「みんな! こっちよ! 早く早く!」


ホシノは必死に手を振り、フォールン・レギオンや闇の魔法使いたちから逃げ惑う生徒たちを体育館へと誘導していた。


「さぁ! 体育館に入るんだ! 急いで!」


ガイも声を張り上げ、生徒たちを守るように立ちはだかる。そのとき、一人の女生徒が駆け寄ってきた。肩で息をしながら、震える声で叫ぶ。


「ライラ先生がいません!」


「ライラ先生が?」


ガイが辺りを見渡す。だが、どこにもその姿はない。


ホシノと目を合わせる。彼女も無言で頷いた。ガイはライラを探すために動き出そうとした——そのとき。


「ギャァァァ! やめてー! ライラ先生、痛いよー!!」


生徒の悲鳴が響き渡る。


「アハハハハ! すごい! すごいわ!!」

 

ライラの手に握られた細身の剣が、濡れた光を帯びて鈍く輝く。

 

その刃の根元には、無数の針状の棘が蠢いていたまるで生きているかのように。

 

「普段は大人しくしてるのに……ほら、ね? こんなに、こんなに綺麗に肉を裂くのよ!」

 

彼女の笑い声は、酒に酔ったかのように軽やかだった。


ガイが駆けつけた先にいたのは、ライラ——いや、もはや彼女は別人のようだった。


黒く鈍い輝きを放つ細身の剣。その刃はなめらかで美しいが、所々に針のような棘が埋め込まれている。彼女はその魔法具を握り、無惨にも生徒たちを切り裂いていた。


その剣が刺さるたびに、生徒の体が内部から裂ける。棘が肉を突き破り、血を噴き上げながら悲鳴が響く。


一撃で即死させるのではない。生きたまま、内側からズタズタにする——極めて残酷な殺戮。


『やめるんだ! ベアクラッシュ!!』


ガイが叫びながら手をかざし、魔法を発動する。


召喚されたテディベアが瞬時に巨大化し、ライラへと突進した。


「おっと!」


ライラは軽やかに後退する。その動きに合わせて黒いフードが脱げ、水色の髪が三つ編みで束ねられた姿が露わになった。


「乱暴だなぁ〜 ガイ先生は」


彼女は目を細め、どこか楽しそうに言い放った。その余裕に、ガイの顔が怒りで歪む。


「生徒になんてことするんだ! アンタは! 腐っても教師だろ!!」


「教師ねぇ……確かにそうかもだけど、教師である前に私は魔王様の手下だもん♪」


「貴様ぁ……!」


ガイの拳が震える。


だがライラは、まるでそんなことなど気にも留めないように、無邪気に笑った。


「そいじゃ! バイバイキーン♪」


ライラが剣を振りかざすと、空気が張り詰めた。  瞬間、無数の黒い針がガイに向かって殺到する。凄まじい速さで飛び交うそれらは、まるで獲物を狩る捕食者のように、無慈悲に空間を裂いた。


「くっ……!」


ガイが反応し、防御魔法を唱えようとしたその時。


『アシッド・シェルター』


低く響く声と共に、半透明な緑色の円形バリアが彼の目の前に展開された。針がバリアに触れた途端、ジリジリと音を立てて溶けていく。まるで氷が熱に炙られるかのように。


「俺様の顧問が闇の魔法使いとは、バカにされたもんだな」


気だるそうに首を回しながら、シルベスターが鞭を片手に歩み出る。


「シルベスター…… よくこの戦場の中で生きていたな」


ガイの目が僅かに光る。教え子の生存に安堵し、彼の肩に手を置いた。


「俺様がこんな雑魚どもにやられるわけないだろ。それより先生、少し大変なことが起きた」


シルベスターは視線を真剣なものに変え、ガイへと静かに囁く。


「メリファが……? 命は……!」


「わからん。キースが向かってるが、フェイが全力で治療中だ」


その言葉を聞いた途端、ガイの顔色が一気に青ざめた。


「おいおい、ペチャクチャ話してんじゃねぇよ」


ライラが舌打ちし、苛立ちを露わにする。その瞳には殺意が満ち、手にした剣が不吉な光を帯びた。


「戦うの? 戦わないの? とっとと決めな」


「……くそ、シルベスター、お前はメリファの元に行ってやるんだ」


ガイの提案に、シルベスターは鼻で笑い、


「いや、ここは俺様に任せてくれ。コイツは俺様の顧問だった女だ。裏切り者がどうなるか、じっくり教えてやるさ」


「……わかった。任せたぞ」


ガイは強く頷き、ライラを睨みつける。その直後、シルベスターが再び言葉を続けた。


「それとガイ先生、奴らはむやみやたらに殺してるわけじゃない。狙ってるのは医療ギルドの連中を優先に。……おそらく、レイラとフェイ以外はもう……」


「なんて卑劣な……!」


その言葉を聞き、ガイは拳を強く握る。


「いつまで喋ってんだよ、野郎共が!!」


ライラが苛立ちの声を上げると同時に、再び無数の針をシルベスターとガイへと放った。


しかし。


「すまんねぇ、先生…… 一瞬で楽にしてやるから、待ってろよ」


シルベスターは冷笑を浮かべながら、鞭を一閃。


「裏切り者がどうなるか、たっぷり教えてやる」


戦闘の幕が上がった——。



−−−−−− 


 

フェイの手が震えていた。メリファの脇腹から溢れる血を止めるべく、彼女の全身から金色の魔力が放たれる。だが、それでも傷は塞がるどころか、闇の力に蝕まれ、徐々に広がっていく。


「くそ…なんで…! なんで止まらんのや…!」


彼女の隣では、同じくレイラが治癒魔法を施していた。額に汗が滲み、必死に手を動かしているが、状況は悪化するばかり。


「姉ちゃん! 姉ちゃん!! 目ぇ開けろよ!!」


キースがメリファの冷えゆく手を握りしめ、涙混じりに叫ぶ。彼女の唇は青ざめ、息も浅い。キースの声が届いているのか、かすかに瞼が震えるだけだった。


だが、戦場に休息などない。フォールン・レギオンや闇の魔法使いたちは、弱った者を狙うように次々と襲いかかってくる。



ローザはティアと共に最前線に立ち、次々と敵を叩き落としていく。彼女の蹴りがぶつかるたび、骨が砕ける音が響く。


一方、レイヴンも心中のざわめきを振り払いながら、雷の魔力を全身にまとい、リュカと共に戦い続けていた。だが、焦燥感は募るばかり。チラリと後ろを振り返れば、メリファの意識が遠のいていくのが見える。


そこへ、ようやくユウマとリンが駆けつけた。


「みんなー! 無事……って、メリファさん…?」


ユウマの足が止まる。目の前の惨状を見て、リンも思わず息を飲んだ。


「嘘…」


フェイは荒い息をつきながらユウマを見上げ、弱々しく手を伸ばす。


「やっと来た……ハァ……ハァ……早く、魔力供給、頼むわ…!」


その体は限界だった。長時間の治癒魔法の使用により、魔力の枯渇は目前。レイラもまた、肩で息をしながら必死に持ち堪えていた。


ユウマは一言も発さず、フェイのスカートを乱暴に捲り上げると、彼女の丸みを帯びたお尻に口づけを落とした。


「んっ…」


ゾワリとした感覚が全身を駆け巡る。途端に体が軽くなり、内側から湧き上がる魔力の充足感を感じる。


続いて、ユウマはレイラにも唇を重ね、魔力を分け与える。


身体にみなぎる力が戻ってきたのを感じたレイラは、ユウマを見つめ、短く告げる。


「ホッパーを神獣にしてあげて。いま、ホッパーはジュリア先輩をたった一匹で守ってるから」


「ジュリア先輩を? どうして?」


レイラは、ユウマや周囲の仲間たちに向かってジュリアが魔法使いの資格を失ったこと、そしてムニンが命を落としたことを語った。


聞いた瞬間、フェイの瞳から涙が溢れた。


「うそや……ムニンが……ジュリアが……」


嗚咽が漏れる。だが、涙を流しながらも、彼女はメリファの治療の手を止めなかった。


本当なら、皆がその場に膝をついて、号泣してもおかしくない。だが、ここは地獄と化した戦場——涙を流す暇すらない。


ユウマは目頭を乱暴に拭い、決意を固めた。


「星獣ホッパーよ、我の力を使い、神獣に進化せよ!」


ユウマの中で魔力が爆発するように広がる。圧倒的な力の波動が伝わってきた。


ユウマは何も言わず、イクノシアがいる船へと駆け出した。


「ユウマ! 待ちなさいよ!」


「待って! 私も行く!!」


レイラとリンが後を追い、戦場を駆け抜ける。

 


−−−−−−  



魔王イクノシアは、静かに夜空を見上げた。  

空は黒く染まり、赤黒い雲がゆっくりと渦を巻いている。


その中心に浮かぶ月は、薄暗く血のような色合いを帯びていた。  


「……来たか」


魔王の唇が僅かに歪む。遠くの空がざわめいた。風が逆巻き、地響きのような低音が響き渡る。次の瞬間、黒い影が一斉に襲来した。  


ドラゴン。そしてバイクラートカゲの群れ。それは、まるで嵐のようだった。


翼を広げたドラゴンたちが、怒り狂う風を切り裂きながら舞い降りる。巨大な鱗に覆われたその身体は、光を拒む闇の影のようで、咆哮一つで大地が震えるほどの迫力を持っていた。  


その背に乗るのは、ダミアナ


彼女の隣には、黒髪を風に靡かせながらサミラが乗っている。2人は、そのままドラゴンの背から飛び降り、異形の船へと降り立った。  


同時に、バイクラートカゲたちもエンジンを噴かしながら地上に降り注ぐ。彼らの乗るバイクは、バッタと機械が融合した異様な形状をしており、背中には巨大な剣や斧を背負った魔族たちがまたがっていた。  


空は、まるで黒い悪夢に飲み込まれたかのように、一部が影に覆われていく。

 

その光景を、戦場の遠くから ルナ は息をのんで見つめていた。  

 

「どうして…… ドラゴン達が…」


彼女の瞳が、恐怖と驚愕に染まる。  



−−−−−−


  

異形の船の甲板に降り立ったダミアナとサミラが、魔王の前で膝をついた。  


「魔王様、ただいま戻りましたわ」  


ダミアナが余裕の笑みを浮かべながら、優雅に一礼する。サミラも無言でそれに続いた。  


「ふむ……遅かったな」


魔王は退屈そうに足を組み替える。その圧倒的な存在感に、船上の空気が一層重くなる。  


「しかし、その遅れを取り戻すだけの土産があるようだな?」


「もちろんですわ。ドラゴンたちを完全に支配し、魔王様の軍勢に加えました。それと——」


ダミアナが合図すると、ゴブリンたちが大きな棺桶を運び始める。  


「ミカエル様の身体を持ち帰りましたわ」


棺桶は黒曜石で作られた重厚なもので、その蓋には魔法陣が刻まれていた。運ぶゴブリンたちは明らかに苦しそうにしているが、誰一人として文句を言うことはない。


魔王は興味深げに棺桶を見下ろした。  


「よくよった……損傷が激しかったのでは?」  


その問いに、ゴブリンの一人が恐る恐る答える。


「は、はい……顔の損傷が激しく、まだ完全に形状を作り直すことができませんでした……」

 

沈黙。


ゴブリンの声は、怯えに震えていた。少しでも魔王の機嫌を損ねれば、即座に殺されるのは明白だったからだ。  


だが


「別によい」  


魔王は目を伏せた。  


「我が完全に復活した後に、存分に仕上げてやる。それまでは大切に守れ」  


「は、はい!」  

 

ゴブリンは震えながら深く頭を下げる。  


その様子を眺めながら、魔王はふっと笑った。


「……さぁ、始めようではないか」  


その一言が、すべての合図となった。  


雛音を中心に、ダミアナ、サミラ、アリヤ、そしてミシェル。  


五人が魔王の周囲を取り囲み、静かに魔法陣の中へと足を踏み入れる。  


船の甲板に刻まれた巨大な魔法陣が、ゆっくりと血のような赤黒い光を放ち始めた。


イクノシアはゆっくりと立ち上がると、黒曜石の王座を降り、船の中央へと歩を進めた。


そこには、緻密(ちみつ)な魔法陣が刻まれている。


禍々しい模様が刻み込まれた円陣の中心に立ち、彼は腕を広げた。


「さて……千年の時を経て、ようやく我が完全なる姿を取り戻す時が来た」


その言葉に、周囲のオブキュラスの幹部たちが一斉に動いた。


雛音が静かに前へ出る。


「儀式を開始するコン」


彼女の声に従い、ダミアナ、サミラ、アリヤ、そしてミシェルがそれぞれの持ち場へと配置された。


五人は魔法陣の周囲を囲み、それぞれが異なる言葉を紡ぎ始める。


——禍々しくも厳かなる呪文。


その声が重なり合うと同時に、魔法陣が淡く光を帯び始めた。


最初は微かな輝きだったが、徐々に強さを増し、やがて船全体を包み込むほどの光を放つ。


雷が轟いた。


天を裂くように、漆黒の雲がうごめき、船の上空に暗黒の空間が生まれる。


生ぬるい風が吹き荒れ、周囲のゴブリンたちは怯えたように身を縮める。


しかし、呪文を唱え続ける五人の表情は揺るがない。


魔法陣の輝きはさらに増し、光の柱が天へと伸びていく。


「さあ……我が肉体よ、完全なる姿へと戻れ……!」


イクノシアの体がゆっくりと浮かび上がる。


船全体が震え、異界のエネルギーが膨張する。


その瞬間——魔王の身体と、最後のパーツの胴体が、一つに結びついた。


強烈な光が炸裂し、船全体が一瞬、白く染まる。


その光が収まったとき——そこに立っていたのは、完全なる魔王イクノシアだった。


長き封印から解き放たれた、全盛期の姿。


彼はゆっくりと腕を上げ、己の肉体を確かめるように指を動かした。


「フフ……フハハハハハ!!!」


魔王の哄笑が、天地を震わせる。


「ついに、我が完全に蘇ったぞ! 愚かな者どもよ、この世界に恐怖を刻みつけてやる!」


その宣言と同時に——周囲の空間が激しく揺らぎ、闇の波動が広がった。


次回![第百四話、蒼炎と闇槍の鎮魂歌(レクイエム)]

第百三話を読んでくださったそこのアナタ!

次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧

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