[第百二話、色彩が徐々に脱色されていく世界]
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地獄の門が開かれた。
闇が裂け。そこから溢れ出したのは、黒い羽根
いや、羽根のように見えたものだった。
それらは落下の途中で 痙攣し、軋みながら"肉"へと変わる。
鳴り響くのは、骨の軋む音、肉が裏返る音。
そして生まれたのは、堕天の軍勢。
彼らは、"生まれる痛み" を感じたかのように、低く唸り声をあげた。
「な、なんだあれは…」
ユウマが驚愕の声を漏らす。
空が黒い羽根で埋め尽くされていく。
降り注ぐ影の雨。その悪魔たちはまるで地獄から解き放たれた亡者のように、翼をはためかせながら地上へと舞い降りる。
「ギャアアアアアッ!!」
先陣を切った悪魔が一人の生徒の肩に爪を立てた瞬間、その体が瞬時に干からび、粉のように砕け散った。
「ひぃ…!!」
生徒たちの悲鳴が響く。だが、フォールン・レギオンはそれを楽しむかのように、不気味な笑い声を響かせながら襲いかかる。
「ユウマ!!」
リンが手を引いて後ろへと飛び退く。その瞬間、先ほどユウマが立っていた場所に何体もの悪魔が降り立ち、地面を爪で引き裂いた。
「こいつら…」
ユウマは歯を食いしばる。
こいつらはただの魔物じゃない。こいつらは 触れた者の魔力を吸い取り、さらに増殖していく。 倒しても倒しても無限に湧く、最悪の敵だ。
「逃げたらやられる…戦うしかない!!」
ユウマは構え、フォールン・レギオンに向かって魔力を解放した──!
ユウマは腰を落とし、両足をしっかりと踏みしめる。背後の足に力を込め、『スチールスマッシュ』を発動。グローブが瞬時に鉄化し、分厚い装甲のように変化する。
筋繊維が軋むように収縮し、全身の魔力が一点に集中する。
「ハアァァッ!!」
ドゴォォン!!
放たれた拳が、フォールン・レギオンの胸部を直撃。黒い体躯が ぐしゃり と折れ曲がり、内側から破裂するように地面へと叩きつけられた。
粘ついた黒い体液が飛び散り、焼け焦げた臭いが漂う。だが──
「ギィィィ!!」
一匹倒したところで、まだまだ無数の影が宙を舞っている。
ユウマの周囲を取り囲むように、フォールン・レギオンたちが低く唸る。鋭利な爪を構え、一斉に飛びかかる──!
「な!」
その瞬間。
──シュン!!
風が切り裂かれる音とともに、ユウマの目の前を一閃の影が駆け抜ける。
スッ──ズズッ…!
飛びかかろうとしたフォールン・レギオンの首が、音もなく滑り落ちた。
刹那、悪魔たちの動きが止まる。
切断された頭部が地面に転がり、その直後、血の代わりに黒い煙を噴き出しながら崩れ落ちた。
「……助かったよ、リン」
短剣を逆手に持ち、静かに佇むリン。
闇の中で煌めく刃を振り払い、滴る黒い血を弾く。
「問題ないわ、それより先の戦闘に備えて魔力供給しとかない?」
「そうだな、そうしよう」
−−−−−−
絶望的な光景を、ただ見つめるしかなかった。
校長室の大きな窓に張り付き、戦場となった学園の敷地を見下ろしていたソフィア。
燃え盛る建物、倒れ伏す生徒たち、黒いフードを被った魔法使いの群れ
「教頭先生、私達も早く生徒を助けに急ぎましょう!」
ソフィアは振り返る。
……だが、その場で凍りついた。
マーシャルの杖が、自分に向いている。
「……教頭先生?」
その一言が、尋常ではない静寂に溶けていく。
そして、マーシャルは、ゆっくりと唇を歪めた。
「竜人ソフィアよ。悪いが、ここで死んでもらう!!」
『ダークバレット!!』
バババババッ――!!
杖の先から無数の漆黒の魔弾が飛び出し、一斉にソフィアを狙い撃つ。
「ッ……!!」
即座に反応し、つま先で地面を蹴る。身体を捻りながら弾幕を回避するが、マーシャルの撃つ弾の数が尋常ではない。
――避けきれない!!
『ドラゴンスケイル!!』
ソフィアは腕を振り上げると、マントを翻すように手を振り下ろした。
その動きに呼応するように、空間が波打ち、揺らめく青白い竜の鱗を模した盾が展開され、迫る闇の弾を弾いた。
黒弾が次々とシールドに叩きつけられ、甲高い音を響かせる。
「教頭先生! どうしてこのようなことを!?」
ソフィアが詰め寄ると、マーシャルは静かに、だが嬉々とした表情で左手を掲げた。
そこに握られていたのは、一つのペンダント。
「私はずっと、この時を待ちわびていたのよ。」
その言葉とともに、マーシャルはペンダントをソフィアへ見せつける。
――見覚えのある形。
それは、セレナヴェールの修道院を象徴する太陽と十字架のペンダント……
だが、ソフィアが目にしたのは、それとは異なるものだった。
――逆十字架と日蝕。
それは、闇の組織「オブキュラス」の象徴。
「まさか……教頭先生……貴女はオブキュラスのメンバーだったのですね」
「そうよ!」
マーシャルは狂気に満ちた笑顔を浮かべる。
「闇の魔法使いという存在を隠し通し、ずっと……ずっとあの方の復活を心から望んでいたの!」
「あの方……」
脳裏に過ぎるのは、一人の名… 魔王イクノシア。
「なるほど……さすれば、教頭先生以外にも闇の魔法使いが隠れている可能性があるということですか……」
目を伏せ、静かに息を呑むソフィア。
学園の中に、まだ裏切り者がいるかもしれない。
「すみません…… 私がいたらないばかりに……」
ぽつりと、小さく呟いた。
だが次の瞬間――
その瞳に、蒼き炎が宿る。
竜人族である彼女が本来使うべきではない、禁じられた力の片鱗。
−−−−−−
右の脇腹が大きく抉られ、鮮血が滲む。レイヴンは歯を食いしばりながら、自分のローブを押し当て、必死に傷口を塞いでいた。
「くっ……うぅ……」
苦しげなうめき声が、メリファの唇から漏れる。呼吸は荒く、か細い。
「メリファ先輩!」
駆け寄ったフェイが震える手をかざす。
『セレスティアヒール!』
眩い金色の光が溢れ、傷口を包み込んだ。光が皮膚の奥へと染み込み、通常ならばゆっくりと組織を繋ぎ合わせるはずだった。しかし
「……あかん、なんで……?」
光は傷口に吸い込まれず、まるで拒絶されるかのように弾かれる。
焦るフェイに、レイヴンが声を荒げた。
「もっと強力な治癒魔法はないのか!?」
「そんなん言われても、ユウマと魔力供給せな、上級魔法は使えへん!」
「クソッ……! ユウマはどこにいる!?」
———
「ギャァァァ!!」
「痛い……痛いよ……!」
学園は地獄と化していた。フォールン・レギオンが上空を舞い、無数の裏切り者たちが闇魔法を放つ。倒れ伏す生徒たちの叫びが、夜の帳に響き渡る。
『バーニングブレイクキック!』
熱を帯びた鋼の脚が、飛びかかるフォールン・レギオンを捉えた。ローザの強烈な蹴りが悪魔の首を砕き、そのまま地面へ叩き落とす。
」
一方で、レイラは戦鎚を振り回し、ジュリアを守るように敵を薙ぎ払っていた。
「これじゃあ、キリがないわね……! フレイア! アタシと一緒にユウマのところに行くわよ!」
「了解ピィ!」
「他の星獣たちも各自、主の元に戻っ——」
レイラの言葉が途切れる。視線の先で、奇妙な光が揺らめいていた。
「ボク、どうなってるロン……?」
ルーシーの星獣、ペンドルトンの身体が淡い輝きを放ち始めていた。その光は儚く、美しく… そして、決定的な別れの光だった。
「ペンドルトンが光ってるのだ……ということは……」
ルナの星獣、黒い子ドラゴンのアルインが悲しげに目を伏せる。
「ヤダヤダ! ペンドルトン、どっかいったらダメルー!」
ホッパーがペンドルトンに抱きつく。涙が止まらない。だって、これは——
「ルーシー……うぅぅ……なんで……なんで……最後にお別れの一言も言えないまま、お別れなんて……悲しいロン……」
ペンドルトンの丸い瞳に涙が浮かぶ。星獣は、主と共に生きる存在。だからこそ、主が逝ったなら——
ペンドルトンの身体が淡く、儚く光を放つ。
まるで、夜明け前の星のように、消えていく光。
ペンドルトンは震えながらルーシーを探すように首を振る。
だが、どこにもいない。
「ペンドルトンが……ルーシーが……嘘でしょ……?」
這うように近づき、焼け焦げた羽根を握りしめるジュリア。ムニンを失い、ルーシーまで失った。涙が頬を伝い、地面に落ちる。
「ルーシー……みんな…ありがとう。」
ペンドルトンの声が震え、次の瞬間、光と共に弾けた。
「こんなの……あんまりだわ……ッ……行くわよ、フレイア!」
怒りと悲しみを胸に、レイラはユウマの元へ向かう。その背を見送りながら、彼女はホッパーに頼んだ。
「ホッパー、ジュリア先輩のこと頼んだわよ! ユウマと魔力供給したら、すぐに神獣になれるようアイツに伝えるから!」
ホッパーは涙を拭いながら、力強く頷いた。
「うん! ジュリアは任せてルー! 邪悪な奴らが寄ってこないように、ホッパーバリアーで守るルー!」
ホッパーがバリアを張った瞬間、上空からローザが降り立つ。騒然とする戦場の中、彼女は鋭い眼差しでレイラを見つめた。
「私も一緒にボーイの元へ行くわ!」
戦場の夜風に、レイラとローザはユウマの元へと駆け出した。
−−−−−−
金と赤の装飾が施され、磔刑のような荘厳さを漂わせる異形の船は、すでに地上へと降り立っていた。
船体の周囲では、ゴブリン達が動き回り、魔法陣を描いたりと儀式の準備を進めている。
中央では、四本の尻尾を揺らした雛音が静かに立ち尽くしていた。
その手には、「ノクターナル・クレイドル」――漆黒の黒曜石でできた儀式の杯が握られている。
杯の内側には、すでに血が満たされていた。
それは戦場で散った生徒たちのものか、あるいは先ほど捧げられた生贄のものか。
「これで、すべては整いましたコン」
雛音が淡々と呟く。
すると、その横で魔導書を広げていたアラビア三姉妹の末妹・アリヤが、くつくつと笑いながら呪文を詠唱し始めた。
『闇は深まり、月は堕ちる。眠れる王よ、今こそ時は満ちたり』
彼女の声に呼応するように、船の周囲に張り巡らされた魔法陣が不気味な光を放つ。
その様子を、黒曜石の王座に腰掛ける魔王イクノシアは楽しげに眺めていた。
「グハハ! 我はとても気分がよいぞ!」
イクノシアは優雅に足を組み替え、片手に持った黄金の杯を軽く傾ける。
椅子の隣に佇むのは、ミシェル。
淡いピンクの髪を揺らし、気味が悪いほど清々しい表情を浮かべていた。
彼女の足元には、鎖に繋がれたミケロスの姿があった。
傷だらけの身体を引きずりながらも、ミケロスは獣のように睨みつける。
「貴様ら…」
その言葉を聞くや否や、ミシェルがゆっくりとしゃがみこみ、楽しげに微笑んだ。
「お兄様ったら、そんな怖い顔しないで? もうすぐ世界は変わるのよ?」
「ミシェル… 目を覚ましてくれ」
だが、ミシェルは気にする様子もなく、戯れるようにミケロスの顎を指で撫でると、くすくすと笑った。
「魔王様、あとどれくらいで完全復活されるのでしょう?」
ミシェルがイクノシアに尋ねると、魔王は酒を口に含みながら答えた。
「月が完全に隠れたとき――我の封印は完全に解かれる」
そう呟いた瞬間、雛音が鋭い視線を夜空へと向ける。
そこには、ゆっくりと欠けていく月があった。
1000年に一度の月食。
闇が極まり、魔王が完全復活する瞬間。
「計画通りですね、コン♪」
雛音の冷ややかな声に、イクノシアは満足そうに頷く。
「ここまでの道のりは長かった…だが、ついにこの世界を恐怖で満たす時が来たのだ!」
ズズズ…
地響きが鳴り、魔法陣がさらに強く輝き始める。
「さて……」
イクノシアはふと、片手を持ち上げると、指先で何かを弄びながら呟いた。
「ダミアナの帰りが遅い……」
その手には、ソサマが握られていた。
イクノシアは不快げに舌打ちをすると、指を滑らせ、通信を開始する。
発信音が鳴る
プルル… プルル…
次回![第百三話、千年の終焉、魔王の覚醒]
第百二話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




