[第百一話、つぶれちゃったザクロみたい]
毎週、月、水、土、絶賛更新中!!
高評価にコメントも頼んまヾ(*’O’*)/す〜
レビューなんかもしてもろたら涙ちょちょぎれますわん
どうぞよろしゅうに〜
再び皆がダンスをしている中に紛れ込むユウマとリン。
ユウマの手から伝わる温もりが、じんわりと指先から広がっていく。
それだけで胸が高鳴るのを抑えられない。
(落ち着いて…何を焦ってるの、私…)
ふと視線を横に向けると、リンの表情が少しこわばっているのが目に入った。
彼女の目は焦点を彷徨い、どこか戸惑っているように見える。
「大丈夫か? もしかしてダンスとか苦手?」
ユウマが気遣うように尋ねると、リンは少し驚いた顔をして、すぐに首を横に振った。
「そ、そんなことないから! た、ただ久しぶりに踊るから、ちょっとだけ緊張してるだけ…」
そう言いながらも、彼女の手には少し力が入っている。「緊張してるだけ」と小さく復唱している姿がなんだか可愛らしく思えて、ユウマは自然と笑みをこぼした。
「なら、もう少しリラックスしよう」
そう言うと、ユウマはリンの腰にそっと手を回し、彼女を引き寄せた。
ぐいっと近づいた二人の距離。
ふわっと漂う彼女の髪の香りが、心の奥に静かに沈み込んでいく。そして、螺旋を描くように円を描きながら、ゆっくりとステップを踏んだ。
レイラと踊ったときは、まるで前世で恋人だったかのような心地よさを感じた。
しかし、リンとのダンスは違う。
恋というよりはもっと根源的な、何か。
「なんか俺たち、遠い昔に会ったことのあるような気がするんだ」
ユウマの突然の言葉に、リンは瞬きしながら小さく首を傾げた。
「何言ってるのよ、そんなわけないでしょ? だってユウマは転生者なんだから」
「そりゃあそうなんだけどさ…でも、何ていうか…」
宿命。そんな言葉が、ユウマの中にふと浮かぶ。理解できない思考が、ぐるぐると渦を巻く。
リンは少し膨れっ面になりながら、ユウマの胸を軽く拳で叩いた。
「せっかく二人で踊ってるのに、意味のわからない話しないで…」
「ハハ、確かに…」ユウマが苦笑いを浮かべたとき、不意にリンが口を開いた。
「フェイ先輩のこと、聞いたよ」
その一言に、ユウマの手がピクリと反応する。
「そっか…俺のこと、嫌いになった?」
その言葉に反応するように、リンは顔を上げた。ユウマの目は真っ直ぐで、どこか優しげだった。
「嫌いになってない…ただ…」
「ただ?」
「相手を傷つけたくないからって、中途半端な優しさは見せないで…例えそれが、私でも…」
ユウマは何かを言おうとしたが、言葉が出てこない。
リンは知っている。彼が誰かを大切に想う気持ちを、誰も傷つけたくないという優しさを。でも、それが一番人を傷つけることも。そんな最低な男を、私は好きだ。リンは何も言わず、ユウマの胸にそっと顔を埋めた。
−−−−−−
「あら♡ とってもいい雰囲気ね、あの二人。」
しっとりとした旋律が流れる中、メリファはふわりと微笑みながら、ユウマとリンの姿を見つめた。彼女の視線にはどこか愛しげな色が滲んでいる。レイヴンの胸にそっと顔を預けると、その鼓動が微かに伝わってくるのを感じた。
指が絡まり、リズムに合わせて体をゆらりと揺らす。
美しい夕暮れと、頬を撫でる夜風。
それらすべてが、二人をまるで絵画のように完璧な構図へと仕立て上げていた。
「こうして、三年間メリファと踊れて私は幸せだ。」
レイヴンの澄んだ声が、そっと鼓膜をくすぐる。
「私もよ、レイヴン。」
エメラルドの髪をそっと撫でられるたびに、胸の奥が甘く痺れていく。
レイヴンの指先が優しく髪を梳く。
普段は凛々しいメリファも、このときばかりはただの十八の少女だった。
愛する人の腕の中に抱かれ、心地よい旋律に身を委ねる。
「学園を卒業したら… 一緒に暮らさないか?」
「え?」
ふいに投げかけられた言葉に、メリファは思わず顔を上げた。驚きに目を瞬かせ、レイヴンの瞳を覗き込む。
「ホントに? 本気なの? レイヴン。」
「――あぁ、本気さ。ずっと私のそばにいてほしい。」
その眼差しは冗談などではないことを語っていた。
嘘偽りのない想いが、メリファの心の奥底へと真っ直ぐに届く。
胸が熱くなる。
「もちろんよ。ずっと貴女のそばにいるわ。」
そっとレイヴンの手を強く握りしめる。
−−−−−−
ユウマやリン、メリファとレイヴンが穏やかに踊る中で、こちらの二人はどこかぎこちなくも、甘い雰囲気を漂わせていた。
「フンフーン♪」
軽快なリズムに合わせ、金色の髪を揺らしながらステップを踏むレオ。その様子はまるで舞踏会の王子様のようで、彼を取り囲む観客からは黄色い歓声が飛び交っていた。
一方で、そんなレオと向かい合うルーシーは、視線を落としながらも、ほんのりと頬を赤らめていた。
「あの… レオ先輩。」
彼女の言葉に、レオは軽やかにターンしながら足を止める。
「どうしたんだい? あまり楽しくない?」
「いえ、楽しいですよ… 楽しいのですけど。」
「なにかあるなら言えよ♪」
ウィンクをしながら微笑むレオ。まるでその瞳から小さな星が瞬きそうなほど、華やかな魅力を振り撒く彼に、ルーシーは思わず視線を逸らしてしまう。
「僕、もしかしてからかわれてますでしょうか?」
メガネをグイッと直し、スカートの裾をおもむろに触る仕草をする。
「からかってなんか… あぁ! ごめん! ダンスが楽しくてつい!」
「いえ、問題ありません。」
しかし、さっきまで軽やかに踊っていたレオの表情が、ふと引き締まる。頬を少し染めながらも、意を決したようにルーシーをじっと見つめる。
(今だ… 俺は今日、ルーシーに告白するって決めてたんだ。)
けれど、その緊張感を察したかのように、周囲からざわめきが起こり始める。
「なになに? レオ様が告白?」
「嘘でしょ? あんな子のどこがいいのよ。」
「どうせあの子も捨てられるのよ。」
レオのファンたちが、嫉妬の混じった視線をルーシーに向ける。
その言葉は、ルーシーの心に静かに、しかし確実に突き刺さった。
彼女の顔から徐々に笑顔が消えていく――
その瞬間、レオがきっぱりとした声で言った。
「みんな、俺のことがホントに好きなら、俺の大事な人を傷つけないでほしい。」
その真剣な眼差しに、ファンクラブの女子たちは言葉を失い、何も言わずに静かにその場を去っていった。
レオはふぅと息をつき、再びルーシーへと視線を戻す。
「さ! これで俺とルーシーの二人だけの世界になったな!」
キラーンとおどけるようにウィンクをするレオ。
その姿に、ルーシーは静かに目を伏せながら、心の奥に温かいものが広がっていくのを感じていた。
−−−−−−
「みんなズルい〜! ウチもイチャイチャしたいねんけど〜!」
フェイは地団駄を踏みながら、世の中の不公平さを叫んだ。
それも無理はない。
今、この瞬間の雰囲気は、甘く満ちた幸福感で最高潮に達していたのだから。
ユウマとリン、レイヴンとメリファ、レオとルーシ
それぞれが大切な人と踊り、穏やかな空気が校庭を包み込んでいる。
「ヒーラーガール、私達は私達で楽しみましょう!」
「そうですよ、フェイ先輩!」
ローザとレイラがフェイの肩をぽんぽんと叩き、なだめるように微笑む。
彼女たちだって、本音を言えばユウマと二人きりになりたかったはずなのに。
「恋だの愛だのもよかばってん、自分ば大事にできん女は、ええ女にはなれんばい。」
どこからともなく響いたのは、ぽっちゃりとした黒猫――シルベスターの星獣・リーナ。
ふわふわと尻尾を揺らしながら、フェイの足元にすり寄ってきた。
「ホパ達と星獣ダンスするルー!」
元気よく手を伸ばすホッパー。
その小さな手がフェイの手を引き、星獣たちと一緒に円を作る。
「そやな… いい女になって、絶対見返したんねん!」
自分を奮い立たせるように、フェイは大きく息を吸い込む。
そして、ホッパーやリエル、ヤマトマルたちと手を取り合い、くるくると踊り始めた。
だが――
「あのピンクの髪は... ジュリア!?」
フェイの目の前に、突然現れた姿があった。
制服は破れ、髪は乱れ、頬は腫れあがり――涙の跡がくっきりと頬を伝っていた。
ジュリアが、校庭にふらつくように現れたのだ。
「アンタ… どないしたん!?」
フェイは驚き、駆け寄ってジュリアの肩を揺さぶる。
ジュリアの両手はぎゅっと握られていた。
その指の間から、黒い羽根がちらりと見えた。
「フェイちゃん… ムニンが…ムニンが…」
その一言が、フェイの胸を締めつける。
「ムニンがどないしたん?」
フェイの問いかけに、ジュリアは涙を流しながら、両手を開いて見せる。
そこには、焼け焦げた黒い羽根が、いくつもこぼれ落ちた。
「それ…ムニンの…」
「うん…」
ジュリアの声は震え、言葉にならない嗚咽が喉から漏れる。
「私… 魔法使いの資格も無くなって…ムニンも死んじゃって…」
ジュリアの声が、悲痛な叫びへと変わっていく。
「全部、全部アイツのせい…」
フェイは息を飲んだ。
「アイツって誰や」
ジュリアは涙を拭うこともせず、握りこぶしを作ると、搾り出すように名前を告げた。
「魔王イクノシア…」
「はぁ!? イクノシアが学校におるん!? いまこの場に!?」
耳を疑うような衝撃的な言葉に、ローザもレイラも、さらには星獣たちまでが動きを止めた。
「だから!」
ジュリアはフェイの腕を強く掴み、泣きながら叫ぶ。
「アイツを止めないと…みんな死んじゃ…!!」
−−−−−−
ジュリアが叫んだ瞬間、夜空に不穏な波紋が広がった。
上空に、突如として黒い裂け目が現れる。
ふと、風が止まった。
校庭のざわめきが、一瞬にして消えた。
まるで音が、この世界から抜き取られたみたいに。
ありえないものを。
校庭の端に立つ街灯の光が、ゆっくりと捻じれた。
影がねじれ、灯りが逆流し、次の瞬間、それは「音を立てずに、そこにいた。」
見えた瞬間、呼吸が止まった。
光が触れるたびに、色が抜け落ちていく。
視線を向けるだけで、世界が少しずつ白黒に染まっていく。
「なんだ…あれは…」
誰かが呟いた。
「船?」
ユウマが指を差した。
「レイヴン…」
メリファが、そっと恋人の名を呼ぶ。
「大丈夫だ、私が守る…」
レイヴンは鋭く目を細め、裂け目を見据えた。
生徒たちのざわめきが次第に大きくなり、不安と恐怖が広がっていく。
一体何が起こっているのか、誰も理解できないまま、ただ異様な光景を見上げていた。
だがレオとルーシーだけは異常な空気を感じ取っていなかった
恋とは盲目である、それを体現するかのように
この場に相応しくない言葉をルーシーに紡ぐ
「ルーシー、俺ずっと君のことがス…」
その言葉が、最後まで紡がれることはなかった。
世界が一瞬、闇に染まる。
音もなく、ただ空間がねじれるように歪み、漆黒の魔力が降り注いだ。
ルーシーの上半身が、形を保ったまま、一瞬だけ揺れる。
だが、次の瞬間、それは無に還った。
そこにあったはずの頭部、腕、胸元までが、何の前触れもなく消失する。
「……え?」
レオの目が見開かれる。
ただ、骨の断面がむき出しになり、食いちぎられた臓器がぶつ切りのように露出している。
気管が、空虚に開かれたまま、まるで叫びをあげようとしているかのように痙攣していた。
心臓が、ぽつ、ぽつ、と緩慢な動きで鼓動を続けている。
まだ、生きているのか。
それとも、死を迎えたことさえ理解できず、身体だけが命の続きを演じているのか。
レオの思考が、白く染まる。
突如として襲ってきた漆黒の魔力の雨。
夜空に響く悲鳴。
ユウマは反射的にリンを抱きしめ、覆いかぶさるようにして守った。
「きゃ!」
「メリファ!!」
レイヴンの叫び声が、闇に溶けるように響く。
漆黒の闇をまとった魔法が、メリファの身体を貫いた。
即死こそ免れたものの、右の脇腹が大きく抉られ、鮮血が雪のように白い肌を染めていく。
「メリファ!! しっかりしろ! おい!! 誰か!! 治療ができるものはいないのか!?」
フェイは息を荒くしながら駆け寄ろうとする。しかし、その足が止まった。
空間の裂け目から、ズズズ……と不気味な音が響く。
金と赤の装飾が施され、磔刑のような荘厳さを漂わせる異形の船。
前方には、宙を這うように無数のゴブリンたちが巨大な鎖を必死に引いていた。
彼らの顔は苦悶に歪み、額には冷や汗が滲んでいる。
ひときわ大きなゴブリンが、先頭で大声を上げながら仲間たちを鼓舞しているが、その表情は明らかな恐怖に染まっていた。
船の車輪部分には、巨大な骸骨の手が絡みつき、船体を引っかくようにして進んでいく。
そのたびにギギギ……と耳障りな音が響き、空間が不吉に歪んだ。
徐々に船は下降し、中央部の漆黒の黒曜石で、できた巨大な王座が姿を現す。
そこに、 イクノシアがゆったりと腰をかけていた。
黄金の盃を手に持ち、口元に薄ら笑いを浮かべながら、静かに酒を嗜んでいる。
彼の周囲には、四本の尻尾を揺らした狐の妖怪 雛音、黒髪に赤いメッシュが入ったアラビア三姉妹の末っ子 アリヤ。
そして、気味が悪いほど清々しい表情を浮かべ、淡いピンクの髪を揺らす ミシェル。
彼女の足元には、鎖に繋がれた ミケロスの姿があった。
影が集まり、染み出すように形を成す。
イクノシアは、まるで「この世に存在すること自体が異常」であるかのように、その場に浮かび上がる。
彼の背後、王座の周囲には「何か」が蠢いている。
生き物なのか、亡霊なのか。
ゆっくりと立ち上がったその男は、静かに黄金の盃を傾けた。
「……お前たちは、よくもここまで欺瞞を積み上げたものだ。」
イクノシアの声は、まるで「時間そのものが語りかけてくる」ようだった。
一音一音が脳の奥に響き、拒絶しようとしても脳髄に刻み込まれる。
「聞け、人間ども。光を知り、愛を知り、己が命を『価値あるもの』と信じた者たちよ。貴様らは、何者だ?」
イクノシアは笑った。
「貴様らは、"何者でもない"。」
その瞬間、世界が軋む音を立てた。
イクノシアの指がゆっくりと動く。
そのたびに空間が歪み、黒い亀裂が校庭の上空に広がっていく。
ゆっくりと、確実に。
世界が凍りついた。
ただの言葉が、ただの動きが、確実に世界を歪ませていく。
まるで、"この世界が彼の到来に耐えられない"かのように。
イクノシアは王座の肘掛けに手を添え、黄金の盃を軽く揺らした。
赤黒い液体が、表面張力でわずかに揺れる。
「さあ、踊れ。」
彼が指を鳴らした瞬間――
空が、裂けた。
次回![第百二話、色彩が徐々に脱色されていく世界]
第百一話を読んでくださったそこのアナタ!
次回も読んでくれると嬉しいです(。•̀ᴗ-)✧




