まったく思いつかん
題名でも分かるように自分で小説を書こうと思い至ったが何を書こうか自分でもてんで分からない。もっと分かりやすく書こう。今日の午後11時の俺の布団の中での出来事だ。何か情熱的で面白おかしい物語を寝る前に書きたいと思ったのだ。
しかし布団から跳ね起き、机に向かっていざ筆を握ると目の前の作文用紙に書きたいことが思い付かないといった具合だ。いやはや困った。毎日をグータラ過ごすのではなく、何かやりたいから小説を書こうと思ったのだがこの赤村 主水……ここまでものが書けないとは思ってもみなかった。
……ん? なぜ小説を書こうと思ったのかって。それはこの俺のガキの頃の夢が『小説家』だと就寝前に思い出したからだよ。
ピンポーン―――
「誰だよ、こんな時間に?」
深夜の謎の来訪者に1人ツッコミをかましながら玄関のドアを開ける。……ピンポンダッシュとかのイタズラなら承知しねぇぞ。
ガチャッ!
「こんばんは。久しぶりだね、主水」
「……深夜にくるのいい加減やめろよな、左門」
ドアを開けた先にいたのは黒縁メガネをかけた昔からの友達だった。名前は黒縄 左門といい、高校時代からの付き合いだ。ちなみに背は低めで150cmしかない。このことを本人に言ったらキレるぞ。
「この時間帯だから主水のマンションに行きやすいんだよ。周りに人がいないからさ」
左門は昔から人なのに人が嫌いだというやつだった。故に学生時代はほとんど学校に来なかったため2年の時に中退したし、今でも実家の自室で両親に寄生しながら引きこもりニート生活をしていたりする。
引きこもりといっても『1歩も部屋からでられない』といったような重度なものではなく、深夜の時間帯なんかの人通りが少ない時には外にでて俺のような友達の家に遊びに来たりする。そのせいで俺は今苦労しているのだが……。
いや待てよ……よくよく考えてみると深夜にならないと部屋から出られないって十分重度の引きこもりなのでは……
「そんでさ! 父ちゃんからおこづかいをもらったから久しぶりに居酒屋に飲みに行かない?」
「……いい加減働け――」
「主水と久しぶりにオタク談義に花を咲かせたいよ」
人の話聞けよ……。『親にたかるな』や『大人だから働け』などの正論をニートの左門は聞きたくないらしく話を遮ってくる。大の大人がそれでいいのか? まぁ…仕事については退職中の俺がとやかく言う資格はないのだが。
にしてもこの時間から居酒屋かぁ。うーん……。
「……医者から深夜の食事は控えるように言われているんだが…」
日頃からの暴飲暴食がたたってしまい俺の体重はついに93kgとなった。一週間前に病院の医者に聞いた話だと身長が166cmで体重93kgは太りすぎらしい。だからその日から必要以上に食べ物を食べるのを辞めたんだが……
「いいじゃん、今日くらい」
「そうだな。今日くらい良いよな」
即答だった。意志が弱いと自分でも思っている。だがやきとり、ビール、タコわさといった食い物のことを考えるとOKと答えるしかなかった。……明日から頑張ろう。
こうして俺と左門は酒と料理を食べつつ語り合うために行きつけの居酒屋へと向かったのであった。
……今日は飲みに誘われたから仕方ない。小説も明日から頑張ろう。投げ出すんじゃない。明日は必ず書くのだ。