6 翌日
それからも僕の生活に変化はなかった。
山野さんのおかげで僕の一人の時間を邪魔するヤツはいない。
……はずだったんだけど。
「おはよう!横峯君!今日は何読んでるの?」
何故か山野さんは懲りずに僕に話しかけてくる。
「……。」
「私ね?これ!昨日この小説買ってみたの!」
「……。」
「結構面白いの!あのね、これは主人公が」
「ちょっと!!聡子?!もうやめなよ!こんな奴放っときなって!!」
「……主人公がね?普通とは違うの!いい人風なんだけど実は」
「聡子!!いい加減にしなよ!ほら!!」
「あっ、ちょっ……。」
山野さんが友人に引っ張られていく。
何がしたいんだろう?
本当に僕の事が好きとか?
ははっ!!バカバカしい!
いい加減しつこいんだよね。
「お前、調子乗ってんじゃねえの?委員長が話しかけてやってるからってよお!!」
「あれ?僕の事無視するんじゃなかったの?ダメだよ、話しかけたりしちゃあ。」
「こ、この野郎!!」
ガンッ!!!
ソイツは机を蹴っ飛ばして、悔しそうに去って行った。
くだらない。
本当にくだらない。
翌日。
教室に入ると、昨日僕の机を蹴っ飛ばしたヤツと、周りのヤツらがニヤニヤと笑いながら僕を見てきた。
なんだ?
と、自分の机を見てみると、『学校来んなよ ぼっち野郎』と書いてあった。
小学生かよ。
くだらない。
と、思っていると、
「おはよう、横峯君!」
いつものように、山野さんが僕に話しかけてきた。
「昨日はね!前に横峯君が買ってた小説を買ってみたの!」
しつこいね。
「それでね?読んでみたんだけど」
と、山野さんが机の落書きに気付いた。
「!!ちょっと!!誰?!こんなことしたの!!」
うるさいな。
「誰なの?!!名乗り出てよ!!絶対許さないんだから!!!」
「うるさいな、ちょっと静かにしてくれる?」
「よ、横峯君?!」
「別にこんな事、どうでもいいよ、くだらない。」
「えっ?」
「くだらないって言ったんだよ。」
そう言って、机の上に教科書とノートを広げる。
「ほら、これで何も見えないでしょ?はい、解決。」
「え、えっ?よ、横峯君?それでいいの?」
「いいよ、別に。どうでもいい。」
「は、え……?」
落書きを書いたと思われる連中は、怒りの表情で僕を睨んでいる。
これでは終わらないよね?
どうせ、ここからエスカレートするんだろ?
そしたら証拠をつかんで、追い込んであげるよ。
もう僕はこういった事は経験済みなんだよ。
そう考えていたら、山野さんが走って教室を出て行った。
何だ?教師でも呼ぶ気なのか?
今呼んだって、証拠も無いし、どうにもならないよ。
山野さんが帰って来た。
雑巾と、消毒用アルコールを持って。
「確かこれで消えるって、何かで見たことがあるの。」
そう言って、僕の机を拭き始めた。
僕の机はすぐに綺麗になった。
「ほら!消えた!!」
本当に嬉しそうに僕に向かって笑顔を向ける山野さん。
何を考えてる?
その様子をヤツらは相変わらず、憎々しげに睨みつけていた。