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ハウスシリーズ

住人を追い払う家

作者: リィズ・ブランディシュカ




 新しく引っ越してきた家は、どこか陰鬱な空気をまとっていた。


 中古の家だから、購入を決める前に一度見に来た事がある。


 けれどその時は、そんな風ではなかった。普通の家のように見えたのに。


 目の前の家からは、言葉に表しがたい、嫌な空気を感じた。


 首をかしげつつも、まさかここでやめるなんて言うわけにもいかない。


 お金も手間もかかったんだから。


 それに、新生活の基盤が得られないと困る。


 だから、気にしつつも、さっさと引越の家具や荷物を運びこんだ。


 一人暮らしだから、大した量がないのですぐに終わった。


 ゆくゆくは家族を増やして、家が狭くなったなんて会話をしたいものだが、それは当分先になりそうだ。


 数日後から、新天地での仕事がまっている。


 そこで給料を得て、生活を安定させるのが先だろう。






 荷物を運び入れて、荷をほどいて、生活環境をととのえた。


 そして、新しい生活が始まった。


 しかし、家の中の陰鬱な空気が気になった。


 しかも、どこにいても視線を感じるようになってなおさら。


 日にちが経つごとに、変化は濃い。


 知らない土地だというのに、散歩して気分転換している時の方がよほど気が楽だった。


 もしやこの家には、何か悪い霊でも憑いているのではないだろうか。


 そう思い、その手の人間に相談のメールやら手紙やらをよこした。


 おためしとか無料とかで、お払い師なるものや除霊やさんなるものがやってきたが、彼等は全員首をふって帰っていった。


 それならただの気のせいだという事になる。


 腑に落ちない思いをしつつも、そのうち慣れると結論付けた。


 新しい生活が始まって、疲れているからそう感じるだけだろうと思うことにした。


 しかし、その日の夜。


 その家が、ごうごうと音を立てた。


 大きくゆれて、今にも崩れそうだった。


 俺は慌てて外に出たが、外は揺れていなかった。


 一体なんだったのかと首をかしげて家の中にもどり、眠りにつくが、数時間後にはまたごうごうと音をたてはじめる。


 俺は瞬く間に不眠に悩まされた。


 そうなると、仕事が手につかない。


 華々しい新生活なんてものは、あるはずもなく。


 疲れ果て、やつれるばかりの毎日が待っていた。


 やがて、俺は引っ越しを決意した。


 その家から去る事に決めたのだった。


 最後の日、全ての荷物を出して、その家の扉を閉める時、一瞬だけ何か黒い影のようなものが見えた気がした。


 それは手をひらひらといっていた。


 まるでしっしと何かを追い払うかのようだった。







 後から聞いた話によると、その家の前の住人は家を手放す事を散々しぶったというらしい。


 けれど、ある日突然反対しなくなったため、家は売りに出された。


 その住人の心情に、身に、どんな変化があったのかは誰も知らない。






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