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戦場の「天使」の物語  作者: ふるたく
9/10

身を投げ出しても

戦いのさなか、視界の端に、ナナミを見つけた。


やはり、この戦場に来ていた!


俺はナナミにあまり戦場には近づいて欲しくないと言った。


しかし実際には彼女はこの一番危険な戦場に居た。


とはいえ、そこは特段驚かなかった。


彼女は自分の全てを懸けて成そうとしている事がある。


俺の言葉なんかでその信念が揺らぐはずは無かった。


そんな事よりも


俺は、彼女を見た事、それ自体が嬉しかった。



生きていた。


何度か会いに行って、いつも留守だった。


何処かで、もしかしたら、死んでしまっているのかも、という疑念は拭えなかった。


しかし、今、彼女が生きているのを見つけられた。


俺はそれをただただ、安堵していた。


--------------------------------------------------------


ナナミは傷付いた兵士を介護している。


止血をし、前に俺に施した様な術を使い、傷付いた兵士を癒している。


、、、何とかして近づきたかった。


彼女を守る盾になりたかった。


けれど、中々戦いの中、自由には動かないし、俺がナナミのそばに行けば迷惑になるだけだろう。


何も、出来ない。


何も、手伝えない。


、、、せめてこの視界の中に入れておこうと思った。


もし、彼女に危険が及ぶと思われたその時は、この身を投げ出しても


助けに行こう。


そう、思った。


--------------------------------------------------------

大隊長「おい、リオウ、なんだよ、やれば出来るじゃないか」


背中合わせで一緒に戦っている大隊長からお褒めの言葉を頂く。


大隊長「今まで、サボってたな?おめえ」


ニヤリと俺の事を肘で小突く


リオウ「そ、そんな事無いですよ、いつでも俺は全力ですよ」


はあ、はあ、と、肩で息をしながら大隊長に答える。


大隊長「あん?だったら今日のおめーと最近のおめー、何が違う、、、、あん?」


大隊長は俺に語りかけながらその途中で何かに気が付いた様だ。


大隊長「おい、見ろよ、リオウ、あの天使。傷を治療してるぞ」


え?


瞬間、寒気がする



大隊長「なーんか敵の数が減らねえなって思っていたら、ああいう奴が居たワケか、、、」


ちょ、、、、


待って、、、、


まさか、、、、


大隊長「リオウ、ああいうヤツは最初に叩かなくちゃ駄目なんだ。分かるか?

治療して貰えると思ったら天使族の奴ら、思い切って突進してこれるから、、、」


大隊長「な!!!!!」


大隊長が落雷の如く、治療している天使、、、


ナナミに


突進する!!!


、、、俺は


俺は!!!!


(全てと引き換えにしてでも守りたいと)


(思った)

--------------------------------------------------------


ブシャアアアアアア


肩から先が無くなっている


大隊長「何、」


血が滝の様に吹き出る


大隊長「してんだ?」


俺の右半分は、、、、


大隊長「おめー、、、、、」



大隊長の、大剣によって


粉々に吹き飛んでしまった、、、、


ナナミ「リ、リオーーーーーー!?」


ナナミが背後から叫んでいる


きっとナナミの体にも俺の血が振りかかってしまった事だろう。


それが申し訳なかった、、、


リオウ「すいません、大隊長、、、この天使だけは、勘弁してください。」


大隊長とナナミの間に立って応える。



俺には大隊長の大剣を防ぐ事は出来なかったから、


せめて大剣の軌道を逸らそう




と、



この身を投げ出した



大隊長「、、、、、、、、、、」



時間にして僅か数秒



それが永遠とも思える長い時間に感じる



ナナミ「リオーーー!?大丈夫!?リオーーー!?!!!」


ナナミの慌てふためいている声が聞こえる。



でも、良かった。ナナミは大丈夫だったみたいだ。



大隊長「どけ、リオウ。敵を庇うようならば次はテメエごと横に切り裂くぜ」


大隊長は本気だ。


その殺気で樹々が震えるようにざわめき立つ


俺は左手で腰の短剣を握り


リオウ「大隊長、この天使だけは、勘弁してください」


と、同じ事を口にした。


肩口から血がドクドク流れ落ちる



出血が多過ぎて気が遠くなる。




立って、、、、いられない。



でも、



今、膝をつく訳には、、



いかない、、、、、、、



大隊長「、、、、、、そうか、覚悟しろ」


大隊長は大剣を横薙ぎに構える。



大隊長の右手が動き出す、、、!



(ここまで、か、、、、)



先に俺が死んでは、ナナミを守りきれないと言うのに、、、、


(俺の命はここまでようだ、、、、、)



(悔しい)


でも、せめて、少しだけ、あと、ほんの少しだけでも


(彼女の盾になれたら)


そう思ったのに、、、、


それなのに


俺は、その時、膝から崩れ落ちて


ナナミにもたれるように倒れて、しまい


大隊長の大剣は


俺を



斬らずに



すり抜けて、



俺の背後に迫っていた天使兵を横薙ぎに切り裂いていた、、、、


--------------------------------------------------------


、、、、一体、何が起きたのか。


ナナミは必死で俺の肩の止血を試みている


ナナミの両腕は俺の血で真っ赤に染まってしまっている。


大隊長はその様子をじっと見ている。


大隊長「戦いの終了の合図だ」


と、空を見つめて呟いた。


見るとみるみる内に両軍とも戦いをやめ、本拠地に戻ろうとしている。


大隊長「撤退する」


大隊長は俺を一瞥した後、


「リオウは戦死した。そう報告する」


と、独り言の様に言い残し、


大剣を納めて去って行った。


ナナミ「リオウ、リオウ、、、、」


ナナミの必死の治療が続く


一体、何が起きたのか分からなかったが


今、ナナミが生きている、その事実だけで安心した。


(少しはナナミの役に立ったのだろうか、、、?)


微妙なところではあったが、、、


なんとか、助ける事が出来たよな、、、?


多分、出来た


出来たと、思う、、、、、


と俺は、満足げに、俺は口元を緩ませる


ナナミ「リオウ、リオウ」


ナナミの泣きそうなその言葉には申し訳なかったが、ナナミの治療はとても心地良くて、


俺は


そのまま


眠りに、


ついた、、、、、、、



、、、、、、、、、、、、、




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