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聖騎士長様は今日も巫女様と!  作者: 巫女服の聖騎士長
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第1話 転生の軌跡

私、夜咲(よざき) (さくら)は巫女である。


知名度の低い小さな村で現巫女の後継ぎとして生まれた。


私の母の家系は代々、この村の歴史ある神社で巫女をしている。


5歳で村の歴史を習い、7歳で巫女の修業をし、10歳で正式に巫女を継ぐ。


本来の巫女はそうだったのだが…


勉強からは逃げ出し、修行もサボって隠れ、巫女継ぎでは儀式も放り出し芸者まがいのことをする始末。


村の人たちからはめんこいめんこいって可愛がられていたが、両親からはよく叱られていた。


そんな私だが、一応巫女を継ぎ4年は巫女としての責務を全うしていた。


祈祷とか獣狩りとかお祓いとか獣狩りとか獣狩りとか獣狩りとか。


悪霊やら妖怪やらをぶっ飛ばしたりもした。


村の人たちに褒めてもらえるから。


褒められると私はもっと頑張れる気がした。


だけど私は頑張り過ぎたようだ。


村に百鬼夜行が向かってきた。


私はいち早く察知し、殲滅に向かった。


勝ったさ、立ってるのがやっとなくらい満身創痍になりながら。


左目は失明し、両腕の骨が砕け、折れた肋骨が肺に刺さっている。


朦朧とする意識の中、ほぼ気力だけで村に戻った。


私を見つけた母が泣きながら私を抱きしめる。


「…本当に……愛されてるんだなぁ…私…」


そんなことを考えながら、母の腕の中で私は静かに息絶えた。






〜 〜 〜 〜 〜








え?生きてるだろって?結論が早いわよ。


これは日本での私の話。


この話には続きがあるの。


今の私の物語、彼と出会うまでの物語…








〜 〜 〜 〜 〜








私は真っ暗な部屋で椅子に座っていた。


スポットライトに当てられ、1人の女の子が姿を表した。


学校でよく見るようなパイプ椅子に座っていた。


背もたれを抱き抱えるようにして。


「Oh…死ンデシマウトハ情ケナイデース」


それがその女の子の第一声だった。


ウェーブのかかった金髪に碧眼、薄いキャミソールのような服を着ている。


見た目は少女そのものだが、英国淑女を思わせる気品と雰囲気だ。


英国淑女を見たことはないけれど。


「何ヲ呆ケテイルノデース?」


その女の子は片言の日本語で問いかけてくる。


思うことや聞きたいことは沢山あったけど、とりあえずひとつだけ聞いてみた。


「…あんた誰よ?」


女の子は開いた口が塞がらないといった様子だった。










〜 〜 〜 〜 〜










「こほん…えー…私は神なのです。女神様なのです。」


(自称)女神は幼さの残る顔で「えっへん!」と言いたげな表情をしている。


片言だった日本語もいつの間にか片言ではなくなっていた。


「…女神様が死んだ私に何の用なのよ?」


訝しげに(自称)女神を見る。威嚇ともとれる語気だったと思う。私の警戒の表れだ。


(自称)女神の自信満々だった顔は途端に慌てたような顔に変わった。


「そんな警戒しないで欲しいのです!私は人畜無害な女神様なのです!」


バタバタと身振り手振りをつけて必死に伝えようとする姿は子供のそれである。


ぶっちゃけ可愛い。


それにしてもコロコロと変わる表情である。


感情豊かでとても人間らしい(自称)女神だ。


人畜無害ってのもあながち間違いではないのかもしれない。


それでも最低限の警戒は怠らない。


油断は心に隙を作る。最愛の母に教わったことのひとつだ。


母さん…どうしてるのかな……


ふと思った。申し訳なさと寂しさで堰き止めていたものが溢れそうだった。


「…辛いよね……悲しいよね……寂しいよね……」


(自称)女神が泣き出しそうな声で話しかけてきた。


私は反射的に(自称)女神を見た。


(自称)女神は椅子には座っていなかった。


代わりに私の体には、柔らかい感触と温もりを感じた。


花に包まれたような甘い匂いがする。


懐かしい匂い。私が大好きだった匂い。


「…お母さん……」


私の堰き止めていた感情が溢れた。


「お母さぁぁぁん…!うわぁぁぁん!」


涙が止まらない。嗚咽で言葉が出ない。


「大丈夫なのです…もう大丈夫なのです……好きなだけ泣くといいのです…」


涙で歪む視界の中、確かにその少女が『女神』に見えた。










〜 〜 〜 〜 〜












落ち着いた。私の心の慟哭を全部吐き出した。


女神は、それを全部受け止めてくれた。


それもあって、私は女神を信用することができた。


私が未だに女神を抱きしめたままなのがその証拠だ。


安心するのだ。この温かさに。


「そろそろ本題に入ろうかと思うのです。」


女神がそう切り出す。私の膝の上で。


「えぇ、構わないわ。話して。」


私はそう答える。


「まず、第一に言わなければいけないことなのです。こほん…貴女を別の世界へ転生させるです。」


「なるほど」


驚くほどアホな返事だった。脳死で返事してそう。


「驚かないですか?異世界転生ですよ。」


あれ?って具合に女神が困惑してる。


困惑する側は私のはずなのに。


「楽しそうじゃないの。」


能天気な私の返答。


「異世界を楽観視しすぎなのです。」


女神が神妙そうに言う。


「まぁ、しかし…貴女ほどの霊力があればある程度はヌルゲーなのですが…」


ははは…という渇いた笑いが聞こえた気がする。


「んじゃ、異世界転生開始よ!」


虚空を指差し、海賊紛いのことを言う。


「勇者として転生させるなのです。でも、自分の好きに生きるといいのです。」


「それじゃあ、行ってくるわね」


親指を立てて、ニカっと笑う。


「困ったら、祈るといいのです。大体いつでも私と会えるのです。」


優しく微笑んだ後、女神も親指を立てて、ニカっと笑った。












〜 〜 〜 〜 〜












こうして私の異世界生活が始まった。






続く




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