第七話 これから
次回もよろしくお願いします。
前回の話でいないはずのライカがいたので修正しました。
進はリーゼの過去を、聞いて、感じた。
無責任なことは言えない。そんな資格などないし、そんなもの存在しない。
だが、前世の時から、人の怨みつらみを聞くのは得意だった。
「なるほどな、確かに悪魔を恨むのは当たり前だ。ならさ……俺と一緒にそのデモゴルゴンとかいうやつを倒しに行かないか?」
それはリーゼにとって予想外の提案だった。
「無茶言わないで、確かにあなたは強いけど、デモゴルゴンは多分、あなたより強いわよ」
それほどまでにデモゴルゴンは強いのか、確かに今すぐとは行かないだろう。元々そんなつもりはない。
「なら強くなればいいのさ、リーゼもライカも、そして俺も」
リーゼはその凛とした整った顔に少し涙を浮かべていた。
「悪魔のくせに、悪魔を倒すなんて、しかもそれは冥界に行く方法だって探さなければいけない。簡単なことじゃないわよ」
そりゃそうだ。簡単に倒せたらつまらない。なら、やるべきことは一つだ。
「わかんねぇけど、強くなりながら一つずつ探して行こうぜ。お前の想いはそんなものじゃないだろ。リーゼ、憎しみも、怨みも、デモゴルゴンを倒せば消えるわけじゃない。それはリーゼが、自分の手で、自分の意志で、感情を斬らなければならない。きっとそれは、ものすごく大変だろうな。でもきっと、それはリーゼ、君の宝になる」
進はリーゼをまっすぐ見て言った。
ここまで聞いたんだ、それ相応の責任を取るべきだろうという決意と、この世界での明確な目標がなかった進にとってももってこいだったのだ。
「そうね……進、ありがとう」
世界一の笑顔を添えて、涙を振り払い、過去に決着をつける覚悟を決めるリーゼ。
そして、ライカもそれに付き合う覚悟を決める。
「リーゼ、私も、リーゼのために、世界のために頑張るよ、3人で世界を救えたらきっと、私達は英雄だね!」
ライカもまた、リーゼに笑顔を向ける。
それがどれだけ、リーゼの救いになっただろうか。あの絶望を抱えたまま、あの日を決して忘れすに生きてきたリーゼの、どれだけの救いに。
「ええ、ありがとうライカ。私達はきっと、これからも最高のパーティーよ」
ライカとリーゼがここまで信頼しあっているのはただずっとパートナーとして戦ってきたからだけではないのだが、それは今は置いておこう。
「ともかく、目標ができたわけだし、まずは2人ともボロボロなんだから、風呂にでも行こうぜ」
そもそもこの世界の風呂がどんなもんなのかわからないけど、というかあるのか?
中世に温泉とか似合わな過ぎるぞ。
「お風呂! 早く行こうよリーゼ!」
ライカが今日一番高いテンションではしゃいでいる。
「はいはい、ライカはお風呂大好きだからね。まぁ私も好きだけど」
リーゼが少し口ごもり、恥ずかしがりながらいう。
(おお、2人とも好きなのか、というか風呂あって良かった)
「なぁ、よければ一緒に」
「「は?」」
調子に乗るなよと透き通っている深緑の目と紅色の目が言っている。
「はい、なんでもないです」
思わず萎縮する。全然悪魔より怖いんだが。
そういえば、デモゴルゴンのことをアドラメレクは知っているのだろうか。
(アドラメレク、デモゴルゴンって悪魔のこと知ってるか)
(ふぁい……はい、あれは原初の悪魔と言われるかなり強力な悪魔です)
(いや何食ってんだよ)
(饅頭ですが)
(え?)
(はい?)
(いやちょっとツッコミたいこと多すぎるんだけど、ってそんなことより、原初の悪魔ってことは悪魔の元凶ってことか?)
(そう捉えてもらっていいでしょう)
(なるほどな、じゃあそいつを殺せば何とかなるかもな)
(いえ、それだけではまた同じような者が出てくるだけでしょう。それに、私はデモゴルゴンと戦ったことがありますが、その時は惨敗しました。魔力量は私には底が見えない程です。あの時の屈辱は忘れられませんねぇ。とにかく、今のままでは厳しいでしょう)
(それはまぁ……強くなるしかないな。倒したあとは……そうだな、俺は同族殺しってことにもなるよな、まぁクーデターと言えるか。そしたら俺が悪魔の王になればいいじゃないか!)
(はぁ、何を言い出すのかと思ったら……)
アドラメレクからため息が漏れる。
(え! 結構いい案じゃない!?)
(それがどれだけ大変な事がわかってるのですか? なにも簡単にデモゴルゴンは冥界を統一しているわけじゃないのですよ?)
(そんなことは分かってるよ! それでも……やらなきゃ行けないんだ。手伝ってくれるか?)
(仕方がない、付き合うしか選択肢はないでしょう、あなたの中に居るのですから)
(ありがとな)
おそらく自分で俺から出ることも可能だと思うんだがな。
ま、それは置いておこう。
そうして3人は温泉街へと向かう。
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温泉街はギルド付近の路よりも賑やかだった。
「おお、すごいな」
その賑やかさがあるにもかかわらず、その温泉街はどことなくしとやかで幻想的な場所だった。
まだ昼時にも関わらず温泉街が混むのは、今日は休日らしい。
「そっか、進はノーテルに来るのは初めてなんだっけ?」
そう聞いたのはライカだ。正直迷っている。異世界人というべきか否か。
「あ、ああ、すごい賑やかだな」
「ええ、今日は休日だもの、久しぶりにゆっくり羽を伸ばしたいわ」
リーゼはこういう場所が似合うな、戦闘中とは全然口調も雰囲気も違うけど。
さっきまで殺すとか言ってたとは思えないおしとやかな雰囲気を持ったいい家柄のお嬢様って感じもする。
でも、その瞳は凛としていて相変わらず美しいと思う。
ライカは……なんか子供っぽいな。
泳がないといいけど。
「ライカ、温泉で泳いじゃダメだぞ」
「ちょっと! 子供扱いしないでよね!」
ライカが頬を膨らませる。子供扱いされるのはなれてるようだ。
「なんかリーゼとライカを見てると、お姉さんと妹って感じがするな」
「それってどうゆう意味?」
ライカが言い寄って来た。
「いや何、別にライカが妹だとは言ってないぞ?」
「さすがは悪魔ね」
ライカが嫌なとこを言う。
「別に好きでやってねぇよ」
そんなことを話しつつ温泉に入っていく。
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「ぷはぁぁぁー」
極楽とはこのことだろうか。
日本でもなかなかここまでのお風呂には入った事がない。
「最高だなー」
この時間が永遠に続けばいいのになー
なんて。
「リーゼってIカップ級の割に胸はそこまでは大きくないよねー」
壁の向こうから何やら今日一重要な話が聞こえて来た。
「うるさい、私は元々魔力はIカップ級の9000を満たしてないし当たり前よ」
リーゼが少し怒りと恥じらいを持った声で言う。
「言い訳はいいの、確かGカップだったっけ? そこが私との違いよねー」
「エルフのあなたに言われても、別に悔しくもないわよ」
エルフ? ライカってあのエルフなのか!? どうりで胸がお……魔力がリーゼよりも大きいわけだな。
にしても魔力量がGでIカップ級にいるリーゼってめっちゃすごいな。今度剣を教えてもらうとするか。
「ねぇ、リーゼ。私さ、本当は怖いんだ。悪魔と戦うの。だって、進みたいに強いのだっているわけで、それ以上に強い悪魔だっているだろうし。でも……私信じてるから。これまでの私達と、これからの私達を!」
ライカも、それなりに恐怖心は持ってるらしい。
まあ、悪魔とやり合うのなら当たり前ではあるだろう。
「ライカ……ありがとう。私も信じてる。自分と、皆の力を。」
リーゼの想いがどれほどこの世界を救うだろうか。
そうして、この世界を揺るがす戦いが幕を切る。