第三十八話 決して届かない刃
ずびばぜんでじだ
進とクレアは、亜神保護施設の外–––レンガが敷かれているまだできたばかりの路の上で対峙した。進がフレイザーで弾いた魔力弾により空いた壁の穴から外に出たのだ。
中で戦い眠っているライカを巻き込むわけにはいかないので、進は外に出て悪魔を誘導した。
クレア……いや、目の前の少女の姿をした悪魔は、進よりは低いものの、かなりの魔力量を有していた。
「クレア……頼むから戻ってくれ!」
進は、必死な形相で呼びかける。
「……お兄……さん……?」
クレアは、ゆっくりと膝をついた。
「クレア! 戻ったのか!」
進は救われたように表情を和らげる。
「うん……その……ごめんなさい」
クレアは下を俯く。
「謝る必要なんてない。悪いのは悪魔だ。君は悪くない」
進はそういいながら、クレアの元へ歩み、膝をつく。しかし、未だその場を埋め尽くす、禍々しい魔力は消えていない。
「進! ダメ!」
ようやく起き上がったリーゼは、手を伸ばす。
しかし、進の耳には入っておらず、そのままクレアを抱きしめる。
ニヤ……とクレアは表情を変えた瞬間。
爆音と共に、進の腹部を魔力弾が貫いた。
「ガハッッ……」
進は口から血を吐き出し、その場に倒れた。
「キャハハハハハハ! お馬鹿なお兄さん。流石に死んじゃったかな?」
悪魔は不敵な笑みを浮かべる。
「キサマァァァァァアア!!」
リーゼは、魔力も王都の戦いで尽きているにも関わらず、悪魔に向かって剣を握り突き進む。
しかしそれは、あまりにも無謀であった。
「お姉さんじゃ、死んであげない。囚われの人形劇」
地面から10体程の泥人形が這い上がり、クレアを守るように立ち塞がる。
リーゼは、泥人形に渾身の一振りをぶつける。
「……っ!!」
しかし、一つの泥人形にすらその剣を手で止められてしまう。
そうしている間にも、リーゼは直ぐに囲まれてしまった。
泥人形はケタケタと笑いながら、包囲網を狭めていく。
「魔力があれば……」
リーゼは街での戦闘を進に任せなかった事を悔やんだ。確かに魔力さえ有れば泥人形はどうにかなったかも知れない。しかし、リーゼ1人ではクレアを倒しきる事はどちらにしろ難しいのだが。
そして、数体の泥人形がリーゼに触れようとする。
リーゼは、持ち前の技量で剣を振るい抵抗するが、すぐに捕まってしまう。そして、泥人形の1つがリーゼの腕を持ち、二つがリーゼの体を地面に押さえつけた。
そして、腕を持った泥人形はリーゼの腕を引っ張る。
「ァァァァァァァアア!!」
リーゼの断末魔が、まだ名前のない街の中に響き渡った。
そのリーゼの表情は、今までに無いほど崩れ、様々な感情が入り混じっていた。
すでにリーゼの左腕は折れ、このままいけば泥人形に引きちぎられるだろう。
「崩壊!!」
その救いの声が、リーゼの叫びをかき消すように響いた瞬間。泥人形は姿を消した。クレアは四凶悪魔ではないものの、それに準ずる魔力総量を有している。それは進を超えるものでは無くとも、ライカでは及ばない。しかし、すでに魔法を多く使っているクレアに対し、さらにその魔力量を半減させる事は、クレアの魔法をレジストするには十分であった。
「ッッ……ライカ……助かった」
リーゼは右手で左肩を押さえて言った。
「そんなことより、進!」
ライカは進に駆け寄り、回復ポーションを取り出す。
しかし、進の腹部にはすでにポッカリと大きな穴が開いていた。
「進! ねぇ! 起きてよ!」
ライカはポーションを進に飲ませ、進の体を動かす。
しかし、反応はない。
「ライカ! 早く剣を持って! 相手はまだ死んでない!」
リーゼはポーションを飲み、脱臼していた肩はすでに治っていた。
「でも進が!」
「そんなことはわかってる! 進の仇を取りたくはないのか! ライカ!」
ライカはその言葉に押し黙る。そして進の肩に少し触れて立ち上がった。
「進。待っててね」
そう言い、ライカは腰に携えた双短剣を手に取る。
「リーゼ。魔力はどのくらいある?」
「もう……ほとんど残ってはいない」
「そう。じゃあいくよ。標的必中」
ライカは静かにそう唱え、リーゼと自分の攻撃を必中とする。
そして、リーゼがライカの前を走り、クレアの視線を引きつける。リーゼはクレアへ飛び込み、大上段から一刀を振り下ろす。
「ハァァァァァァァ!」
クレアはそれに対し、右手を魔力で固め手刀で受けた。魔力の残ってないリーゼは、悪魔が憑依したことにより幼女とは思えない力を出すクレアに弾き飛ばされる。
しかし、
「影による除去」
ライカによる不意の一撃。それも、リーゼの攻撃により体勢が崩れており、完全な背後からの一撃。ライカは殺ったと思った。しかし
キィィンという人肌に当たったとは思えない音が鳴り、ライカの短剣は弾かれた。
確かにクレアの首に当たっていた。
しかし、刺さらなかったのだ。悪魔の力による身体装甲をライカの刃は破ることができなかった。
「キャハハハハハハハ! お姉ちゃんの力じゃ私には傷一つつけられやしないよ。キャハハハハハハハ!」
クレアはライカに向けて手刀を放った。ライカはそれに反応するも、圧倒的な力の差で20メートル程吹っ飛ばされた。
「あーあ。もう終わり? 魔力を減らされた時は焦ったけど。そもそも私の体に傷一つつけられないんじゃ話にならないじゃん。キャハハ! 哀れな人間」
えぇー
まずは謝罪させて下さい。2月一杯投稿しなかった件についてですが、
決してやる気が出なかった訳ではなく、見聞を広めるために様々な作品を読んでいた為、執筆が進みませんでした。要約するとサボってましたすみませんでした。今月は頑張ります。




